ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
先を読む頭脳
羽生 善治 松原 仁 伊藤 毅志
天才棋士羽生善治氏をモデルにして氏の将棋における思考を解き明かした内容。羽生氏本人の解説と伊藤毅志氏・松原仁氏による専門的な分析が並行して1つのテーマについてそれぞれの立場からの見方を示しています。なんとなく「Q&A方式」のような印象があり、まるで羽生氏の頭脳の秘密に対する謎解きというスタイルに引き込まれました。
まず羽生氏の印象は悟りを開いた高僧のように実に穏やかに淡々とご自身の将棋観を解説なさいます。泰然自若というか自然体というか、勝負師というようなギラギラした情熱というものも感じず、極めて冷静な自己分析を披露されます。そこには伝説の棋士坂田三吉のようなドラマ性はまったくありません。逆に人間羽生善治の「静なる凄み」さえ感じてしまうのです。
ここで述べられた羽生氏の解説をさらに専門的な知識をもとに分析し羽生氏の思考のエッセンスを見出します。羽生氏の真似はできないまでも我々にも参考になるような情報がいくつか提供されます。
これら異質な切り口から見た「将棋の思考」がパラレルワールドのように最後まで続くのですから読んでいても息が抜けません。なぜならば羽生氏の思考のなぞ解きを早く見たいからです。
「頭のいい人になりたい」子どもの頃からそんな願望は誰しもあると思います。「先を読む力」はまさにもっとも得たい能力の1つ。本書にはそのヒントや秘密がたくさん記されています。私に実行できるかどうかは別としても…。
(辻田 浩志)
カテゴリ:その他
タグ:将棋
出版元:新潮社
掲載日:2013-03-13