ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
オリンピックに賭けた人生 ゴールドメダリストへの夢
三宅 義信
日本の夏季オリンピックでの金メダル獲得数は、団体を含めて、1928年のアルスデルダムから2012年のロンドンオリンピックまでで300個になる。いかに金メダリストになることが困難なことかがわかる数字だろう。並外れた”才能”を持った者でしか辿り着くことのできない名誉である。だからこそ大衆は、彼らに熱狂しもっと知りたいと思う。
本書は、重量挙げで2大会連続オリンピック金メダルを獲得した三宅義信氏の半生がまとめられた本だ。どのような家で生まれ育ち、競技を始めたきっかけから、練習メソッドまでが詳細に綴られている。そこから三宅選の強さの秘訣は、恵まれた体型や才能だけでなく他選手をよせつけない圧倒的な質と量を誇る練習にあることがわかる。たとえば、他の選手たちが1日当たり100トンほどしか重量を挙げないところを、三宅選手は5倍もやる。減量方法からコンディショニングも、自分で色々な方法を試し、最良の方法を探し出す。自ら積極的にコーチを探して教えを乞いに行く。徹底して心身を鍛え抜いたという自信が、本番の実力発揮につながっているのだった。
重量挙げは、世界の力自慢が集まって行うシンプルな競技のようにみえるが、選手間の心理戦も競技に多大な影響を及ぼすのだそうだ。競技者自らが語った、オリンピックでの選手同士の駆け引きの描写はリアルで引き込まれる。数々の写真とともに(三宅氏が重量挙げ選手として成熟していく過程を視覚的に捉えられてこれがなによりも面白い!)、重量挙げという競技、そして金メダリストの人生や哲学の奥深さに触れられる貴重な読書体験になった。
(清水 美奈)
カテゴリ:人生
タグ:ウェイトリフティング オリンピック
出版元:ジアース教育新社
掲載日:2013-04-03