はり100本
竹村 文近
「指一本でも楽になってもらうために全力をつくせ」。師事していた関卓郎氏のこの教えを実践している鍼灸師の竹村氏の著書。鍼灸の効用、実際の治療の流れをから、これまで鍼を刺してきた人々の話、恩師の言葉、鍼灸師のあり方まで多岐にわたって綴っている。副題は『鍼灸で甦る身体』。
竹村氏は、現代人は鍼応えがないと言い、そのからだを「鬱の身体」と表現する。本来、適度な抵抗があるはずの身体が「まるで豆腐に鍼を刺すように、ぷすぷすと何の手応えもなく鍼が通ってしまう。あるいは、逆に、生ゴムのようにネチネチとした、きわめて不快な必要以上の抵抗感がある」とのこと。腰痛や肩こり、胃もたれ、女性の生理不順など、治療に訪れる人が持つこれらの症状は、いずれも身体の鬱が原因と指摘する。
その鬱を取り除く最も効果的な手段の1つが鍼灸であり、本書には各界の著名人を含めた治療の実例も紹介されている。著者のからだへの深い洞察には驚かされるばかりで、ぜひ読んでほしい一冊である。
2006年5月16日刊
(長谷川 智憲)
出版元:新潮社
(掲載日:2012-10-11)
タグ:鍼灸
カテゴリ 東洋医学
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経絡ストレッチと動きづくり
向野 義人 朝日山 一男 籾山 隆裕
「ヒトの体には、目には見えない秘められた情報伝達系が存在していることは間違いないと考えられます。この情報伝達系をどのように用いればよいかを古人は書き残してくれており、その有用性は現在に至るまで光を放っています」
いきなり引用で恐縮だが、経絡・経穴についてわかりやすい表現である。著者は続けてこう記している。「経絡・経穴は古人から現代人へ贈られた貴重な宝物なのです」。
この本では、簡便に異常な経絡を探し出す経絡テストと、そのテストで見つかった異常な経絡にストレッチを加え、全体のバランスを整える経絡ストレッチ、さらには目標とするパフォーマンスの改善のための動きづくりまでをカバーしている。
前半(1、2章)は経絡と経絡テスト、経絡ストレッチの実際を、後半(3章、4章)は動きづくり理論と軸体操、各種スポーツの動き作りの実践編からなる。よくまとまっていて、実践に役立つ本である。
向野義人編著、朝日山一男・籾山隆裕著
2006年5月15日
(清家 輝文)
出版元:大修館書店
(掲載日:2012-10-11)
タグ:ストレッチング 経絡
カテゴリ 東洋医学
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よくある症状への手技治療 経絡を用いた按摩・指圧の実技
田中 勝
臨床家が日常的に診ることが多い「肩こり、五十肩、腰痛、膝痛」について、臓腑と経絡の関連に着目して行う手技治療を解説。田中氏の行う按摩は、中国古典医学の臓腑経絡説を重視している。これは胸腹部には12の臓腑があって、それぞれの臓腑が気を発生することによって、胸腹部の募穴、背腰部の兪穴、顔面の感覚器官、上肢に6経、下肢に6経と経絡に気が回ることで人体は生命活動を行っているという考え方からきている。田中氏は募穴を診断に用い、背部兪穴、膀胱経2行線の経穴を治療に用いていると説明する。これらをもとに基本的な治療手順を紹介し、1つの痛みの部位に対し、「患部+背部兪穴+手足の要穴」の3つに治療ポイントを絞り、日常臨床で役立ち、活用できるように紹介している。
2008年7月1日刊
(田口 久美子)
出版元:医道の日本社
(掲載日:2012-10-13)
タグ:東洋医学 手技治療 徒手療法
カテゴリ 東洋医学
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トップアスリートを育てる スポーツ東洋医学
丸山 彰貞
名前から見れば、スポーツにおける東洋医学の使い方というイメージがあるが、読み進めて行くと、東洋医学だけでなく、心理検査を東洋医学の治療効果を測定するものとして用いていることがわかる。とくに治療前、治療後で実施しているのが興味深い。メンタルトレーニングを大きなものと捉えて実施していることも、治療家を志しているものとして共感できるものである。
読み進めるにあたっては、とても読みやすく丁寧に書いてあるが、ほとんどが東洋医学の基礎がなくては難解な部分が多い。著者はスキー競技を中心に活動されているため、データのほとんどはそれらに関わるものであるが、もっとほかの競技の治療経過も見てみたい。
一文を紹介する。「スポーツをするとリラックスできるのに、なぜスポーツ選手にリラックスが必要なのか」と著者の恩師のスポーツ心理学の教授が、心理学の大家から問われたらこう答えたそうだ。「では落語家が落語をしていて悩むのはなぜでしょうか」。ここから著者の強い信念と、深い情熱、偏らない心が読み取れる。
(金子 大)
出版元:産学社
(掲載日:2012-10-13)
タグ:治療 メンタル
カテゴリ 東洋医学
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鍼療法図鑑
ハンス-ウルリッヒ・ヘッカー アンゲリカ・シュテフェリング エルマー・T・ポイカー ヨルグ・ケストナー カイ・リープヘン 兵頭 明 東出 顕子
原題は『Color Atlas of Acupuncture』で、ドイツで出版された東洋医学のポケットアトラスである。
内容は3つに分かれ、取穴法では取穴部位、刺入の深さ、適応症、中国伝統医学における主治という項目があり、カラーイラストや写真でも解説されている。臨床上で注意すべき点や、文献に関する記述もある。耳穴はノジェ式と中国式の2つが紹介されている。トリガーポイントについては、定義から入り、どのように治療を行うのかについてまとめている。その後、個別の筋肉の説明、トリガーポイントや痛みの投射領域について解説される。
鍼治療の組み立てのヒントにもなる書籍である。盛り込まれている内容の割に、コンパクトにまとめてあり、持ち運びにも適している。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ガイアブックス
(掲載日:2012-04-10)
タグ:鍼
カテゴリ 東洋医学
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M-Test 経絡と動きでつかむ症候へのアプローチ
向野 義人 松本 美由季 山下 なぎさ
M-testとは、これまで「経絡テスト」と呼ばれていた東洋医学の考え方をベースとし、身体の動きに対してさまざまなテストを行い、動作の異常を評価し、治療に活用するものである。侵襲なく評価できる方法であり、今後の活用が期待されている。本書では、広く臨床現場において、診断・治療の手段の1つとしてM-Test(経路テスト)を取り入れてもらえるようにというコンセプトが伺える。
東洋医学に触れるのは初めてという人向けの項目から、知識を踏まえての実践手順はもちろん、すでに活用している人にとっても興味を惹かれるだろうここ最近のトピックまで網羅されている。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:医学書院
(掲載日:2013-02-10)
タグ:Mテスト 経絡テスト
カテゴリ 東洋医学
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毎日5分! 親子スキンタッチ健康法
大上 勝行
子育てのアイデアの1つとして「スキンタッチ」をご存じだろうか? 私は鍼灸師として治療法の情報を得ている際に、技術名として見かける程度であった。
世のお母さん、お父さんは育児についての情報を集める際に、スキンタッチを見聞きする機会はあるのだろうか。もし、ないのであれば、本書はスキンタッチが子どもの健康の一助に、親子のコミュニケーションの1つとして役立つと知ることができる参考書となる。
スキンタッチは、江戸時代からある小児はりという技術をアレンジしたもので、もともと鍼を刺さずに刺激を加える技術の小児はりを、さらに簡略化した治療法だ。自宅にあるスプーン、歯ブラシ、ヘアドライヤーを使用して、赤ちゃんから10歳までの健康管理をすることができる。
詳しいやり方は本書にて学んでいただきたいが、赤ちゃん特有の寝つきの悪さ、夜泣き、成長とともに現れるおねしょ、おもらし、風邪をひきやすい子など、子どもに多い35症状に対するスキンタッチの実践方法を知ることができる。35のやり方を全て覚えることは困難であるが、基本の型は多くなく、自身のお子さんが該当しそうな症状のページを開けば、見開きのイラストを見て即実践できる内容である。
この親子スキンタッチをすれば、全ての症状がすぐ解消というわけではないが、定期的にお子さんの身体に触れることで、日々変化する子どもの体調や成長を感じとるコミュニケーションにもなり得る。
育児に終わりは見えないが、子どもが健やかに育ってくれることは親の願いであり、健康的だからこそ、親御さんが一息つける時間もあるのではないかと考える。
全ての子どものいる家庭に一冊、本書をお勧めしたい。
(橋本 紘希)
出版元:亜紀書房
(掲載日:2021-06-14)
タグ:小児はり コンディショニング
カテゴリ 東洋医学
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漢方方剤大法口訣
張 明澄 桑木 崇秀
神保町でふらっと入った古書店で、手に入れた本書。極めて簡潔に書かれているのが目を引いた。学生時代、ある疑問が生じたときに、東洋医学の教科書を繰ってみると、古典のどこそこに記載あり、などとあるだけで混迷を極めた結果理解を諦めて、試験用に丸暗記してしまったという、苦い記憶がある。
本書は「透派」と呼ばれる家学を公にしたもの、らしい。こうした家学から入ると、学習期間を6年間ぐらい短縮できる、と中国ではいわれているとも、序文にある。
本文は、証候篇、診断篇、治則篇、本草篇、方剤篇に分かれ、それぞれ原文、訳文、句解、訳解、註釈、補註となる。
訳はこなれていて、読みやすく、なによりコンパクトだ。それは、本書が組織的系統的にまとまっていることを示している。しかも、なんと原文は、詩の形をとっていて韻を踏んでいるので、中国語話者にとってはとても身につけやすいのだという。
本書の内容についての正否は、半可な鍼灸師である自分には判断がつかないが、どちらかといえば近寄り難い本が多い分野で、複雑さよりも単純さに重きをおくことで、理解しやすいようにしてくれている親切さが嬉しかった。
また、神保町をぶらついてみようと思う。
(塩﨑 由規)
出版元:香草社
(掲載日:2022-09-26)
タグ:漢方
カテゴリ 東洋医学
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美容と東洋医学 人間美と健康美の原点
王 財源 大形 徹
はるか昔から、ひとは美を追求してきた。
医学という範囲からは、逸脱したもののように扱われることが多いが、本来、美と健康は相補的な関係にある。古典を軸に、東洋医学で取り上げられてきた美について遡及的に考察する本書。ホリスティックな視点から、ひとを捉え、とかく局所的になりがちな現代医学や、それに馴染んだ現代人に、異を唱えるような本は珍しくない。しかし、美について、医学や健康と同じ文脈で語られることは少ない。
美容や整容は、QOLの向上に寄与する。顔は明るく、意識は溌剌として、ものごとに意欲的になる。
いつもばっちりお化粧をしてくる方や、身だしなみに気を使っている方の日々の活動性は高い、と普段の患者さんのことを鑑みて思う。反対に、整容や服装の乱れは、注視すべき項目でもある。
本書における美、というか、古くから考えられてきた美は、外形的なものだけにとどまらない。ひとが目指すべき理想や、精神性までをも射程に収める。
日頃目にする、まるで老いることを悪であるかのように喧伝するアンチエイジング的な視点には違和感を持っていた。
自然であるはずの老に美を見いだせないのは、人工的なものに囲まれた現代人の不自然さを示しているようにも思える。
(塩﨑 由規)
出版元:静風社
(掲載日:2022-10-25)
タグ:美容
カテゴリ 東洋医学
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