皮膚は考える
傳田 光洋
皮膚は最大の臓器であるというところからこの本は始まる。皮膚は外界とのバリアであり、他人の皮膚を移植することはできない。だが、それだけではない。「皮膚はそれ自体が独自に、感じ、考え、判断し、行動するものです」と著者は言う。
皮膚表皮は外胚葉由来の器官で、中枢神経系も同様、眼や耳などの感覚器も同様である。1980年代になって、皮膚、とくに表皮は外部刺激によってさまざまな神経伝達物質を合成、放出していることもわかった。たとえばサイトカインも表皮にあるケラチノサイトカイン細胞が合成、放出している。それのみならず、末梢神経系が放出する神経系の情報伝達物質や各種ホルモンすら、ケラチノサイトカインは合成、放出している。
また、著者は皮膚は光を感じて、その情報を内分泌系、神経系に伝えている可能性があると言う。ブラインドサイトという言葉を聞いたことがある人も多いだろうが、視覚を失った人でも外部の光に応じて生理的変化が起こり、光の動きもある程度わかる。
さらに皮膚についての言及が進み、総じて本書のタイトルとなる。その他、「皮膚は電池である」とか、皮膚をきれいにすると体内もきれいになるのではないかとか、興味深い話に満ちている。思わず皮膚を触り、からだを見つめたくなる本である。
2005年11月2日刊
(清家 輝文)
出版元:岩波書店
(掲載日:2012-10-10)
タグ:皮膚
カテゴリ 身体
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賢い皮膚 思考する最大の“臓器”
傳田 光洋
皮膚は外界と接しており、内外を区切る役割を持つ。細菌やウイルス、乾燥などから身を守り、熱など危険なものを察知して致命的な事故を防ぐ役割を持っている。サブタイトルにあるように最大の臓器でもあると考えられるのだそうだ。著者は皮膚の研究を続けていく中で考察を深めていくが、それをもとに皮膚の構造や機能について広い視野から最新の研究成果をまとめている。
興味深いのは、表皮にポリモーダル痛み受容器があるという発見である。神経伝達物質の存在やその受容器の存在についても明らかになっており、皮膚が情報処理をしている可能性について示唆している。本書ではさらに一歩踏み込んで東洋医学的なアプローチの有効性についても仮説を示している。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:筑摩書房
(掲載日:2010-03-10)
タグ:皮膚
カテゴリ 身体
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皮膚は考える
傳田 光洋
いつも見ているヒトの身体って、よく考えてみればその大半が皮膚だったりします。知ってはいるもののそれ以外の組織について目に触れるものは髪や爪、あとは眼球の一部くらいのものかもしれません。我々が視覚や触覚で身体だと認識しているものは皮膚についてだけと言ってもいいでしょう。その皮膚についてもせいぜい身体のパッケージというくらいのイメージしかないのが正直なところであり、それ以外のさまざまな機能についてはあまり関心もなく知らないことが多いのが実際のところ。本書は知られざる「皮膚」の役割からその重要性を教えてくれました。
「内臓」に対して皮膚は「外臓」であると興味深い表現を使われていますが、臓器としての皮膚の役割についての説明により、皮膚に対する認識を新たにしました。「保護膜」としての皮膚は我々も知るところですが、病気で内臓を摘出しても死ぬとは限らないが、皮膚がヤケドなどで三分の一ほど失われると死に至ると説明されます。そういわれると皮膚と内臓の重要性は同等のものとして考えるべきだと再認識しました。ともすれば大切にしまわれた内臓と外界にさらされた皮膚とだったら、どうしても内臓のほうが価値が高いように考えがちですからね。
冒頭から皮膚の重要性を説かれた後に皮膚の機能が明らかにされていきます。免疫と皮膚の関係についてはアトピーなどの問題点に言及します。それだけではありません。ドーパミンなどの神経伝達物質の合成や分解の機能があるといわれたら、まさかと思うのが普通だと思います。そのほかホルモンとの関係に深く関与しているという予想だにしなかった真実が書かれています。さらには皮膚は光を感知する能力があるのではという仮説にも驚きました。
「皮膚は考える」というタイトルですが、脳と同じ機能を持ち精神をつかさどるという要素もわかってきたそうです。当然皮膚は人の心にも影響があるという最後の部分はインパクト十分。軽く見ていた皮膚もあまり知られていなかった役割を理解すれば、その付き合い方も変わり、快適な生活を送ることが可能になるのではと感じました。
(辻田 浩志)
出版元:岩波書店
(掲載日:2012-10-16)
タグ:皮膚
カテゴリ 身体
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