スポーツ・インテリジェンス オリンピックの勝敗は情報戦で決まる
和久 貴洋
本書は、日本オリンピック委員会(以下JOC)情報・医・科学専門部会委員である和久先生が、オリンピックで成績を上げるためには情報戦略がいかに重要かということについて述べている。
ここ近年、オリンピックにおける日本人メダリストが少ない理由として、中国・韓国人メダリストと比べ20~24歳の選手が台頭していないこと、また世界ランク8位以内の選手が少ないことを挙げている。あらゆるデータを基に解析して、諸外国と比較した結果から、原因を推測し、情報を国や競技団体にフィードバックして競技成績につなげていくという情報戦略である。実際にはこれだけでなく、海外からの有益なスポーツ医科学情報をいち早くキャッチすることが重要である。
スポーツ医科学に関する情報は諸外国を見ても、シークレットな部分であり、多くはオリンピックのプレ大会で発表されることが多いが、その時点で情報を得たところでもう遅い。普段あまり表に出ないシークレットな情報を入手するコツが記載されている。
たとえば、2012年ロンドンオリンピックで有名になったマルチサポートハウス。この存在が日本選手団から多くのメダリストを誕生させるきっかけになったと言っても過言ではない。そのマルチサポートハウスの計画は2004年のアテネオリンピックで、アメリカが実施したという情報からスタートしており、ロンドンオリンピックで日本選手団独自のマルチサポートハウスを実現させるための過程が記載されている。
リオデジャネイロオリンピック、東京オリンピックに向けて日本人メダリストを多く誕生させるためには、この情報戦略がキーであることを本書を読むと理解できる。
(鈴木 健大)
出版元:NHK出版
(掲載日:2015-05-29)
タグ:情報戦略
カテゴリ その他
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スポーツ・インテリジェンス オリンピックの勝敗は情報戦で決まる
和久 貴洋
国立スポーツ科学センターに情報戦略部門が設置されて以来、情報戦略分野において活躍してきた和久氏が、これまでの活動内容や展望をまとめた興味深い一冊だ。
イギリスやオーストラリアを始めとした世界各国の取り組みはもちろん、日本の「マルチサポート・ハウス」についても、設置に至るまでの経緯が裏方のスタッフ視点で紹介されている。これらから言えるのは、現代のトップスポーツは選手発掘やスポーツ医・科学サポート、情報分析など総力戦であるということだ。総合的な強化を行うには時にイノベーションが必要になるが、過去の例をみてもオリンピックの自国開催は大きなチャンスだという。
もちろんオリンピックなどのトップレベルに限った話ではなく、インフォメーション(生情報やデータ)とインテリジェンス(分析・評価された知識)の違いや扱い方のわかりやすい解説は、勝利に向けた戦略を立てる上で大いに参考になる。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:NHK出版
(掲載日:2013-11-10)
タグ:情報
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