スポーツ哲学の入門 スポーツの本質と倫理的諸問題
シェリル・ベルクマン・ドゥルー 川谷 茂樹
タイトルに入門とある通り、スポーツ哲学のトピックが網羅された労作だ。とくに現代社会におけるスポーツの価値や、ドーピングなどの倫理的問題について多くのページを割いている。すぐに目を通せる分量でも、結論を得られる分野でもないが、スポーツに関わるなら知っておくべき内容ではないだろうか。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ナカニシヤ出版
(掲載日:2012-08-03)
タグ:スポーツ哲学 倫理 ドーピング
カテゴリ スポーツ社会学
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スポーツ倫理学講義
川谷 茂樹
まず「倫理学」で躊躇する。「講義」で、う~んと思う。それに「スポーツ」がついているので、「ま、読んでみるか」と開いた。ところがである。「これは」と思い、ついに読みきることとあいなった。以降、「この本、読んでおいたほうがいいよ」と各方面に薦めることになる。
冒頭、著者はこう言う。
「スポーツの存在がたとえ自明の事実であるとしても、スポーツそのものは必ずしも自明ではない。別の言い方をすれば、一度考え始めるとなかなかうまい解答が見つからない、多くの問題がスポーツには存在する」
その問題とは「相手の弱点を攻めるのは卑怯なことなのか」「いついかなるときもルールを守らなければならないのか」「格闘技などで暴力が容認されているのは、なぜか」「ドーピングはなぜ悪いのか」である。「これらの問いは、総じてスポーツに関わる行為の道徳的善し悪し、あるいはその根拠への問い、すなわち倫理(学)的な問いである」
本書は、スポーツマンシップについて3講義、スポーツと暴力、スポーツの本質、スポーツの周辺、スポーツの「内」と「外」の各講義、計7講義からなる。スポーツマンシップとは勝利の追及が大原則と言う著者の切れ味は鋭い。「スポーツとは何か」が本書の大きな問いだが、哲学者がそれを考え、答えている。刺激に満ち、再び考える芽をいくつも伸ばしてくれる1冊。改めてお薦めしたい。
(清家 輝文)
出版元:ナカニシヤ出版
(掲載日:2012-10-09)
タグ:スポーツ倫理 倫理学
カテゴリ その他
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スポーツ倫理学講義
川谷 茂樹
今、ロンドンオリンピック、それに引き続いてパラリンピックが開催されている。ニュースを聞いていると、金メダルを逃した選手、選手の取り巻きからこんな声が聞こえてきた。「銀メダルが金メダルより素晴らしい」。私は違和感を禁じえなかった。「おいおい、本気? 金メダルが取れる状況にあっても、取らなかったかも知れないって言っているんだよ。本気で銀メダルのほうが素晴らしいって信じているの? あなたが金メダルを取っていたらそんなコメントしないよね。それがどうしてかって一度考えてみたら?」
スポーツは「清潔、健康的、紳士的」などなど漠然としたプラスイメージを持たれている反面、オリンピックのように「競技スポーツには“勝利”の二文字しかない」という残酷な一面を持つことを誰でも直観的に感じているのではないだろうか。競技スポーツとは、決められたルールに基づいて一番優れた選手(あるいはチーム、団体)を選ぶことにほかならない。ある競技に参加する、と決めた瞬間に選手は頂点を目指す宿命を背負う。身体を強化し、肉体を苛め抜き、精神を鍛錬する。そうしてただひたすら勝利を目指す。選手が目指す方向は、先に示したスポーツが持たれている「健康的」というイメージからどんどん離れていくのである。
その一方で「オリンピックには参加することに意義がある」という言葉も残されている。勝たなくてもいいのか? 参加しているだけで本当に競技者としての意義はあるのか?
同時にスポーツはエンターテイメントとしての性格を強く帯びている。オーディエンスはヒーロー、ヒロインの登場を待ち、その活躍に期待する。見ていてワクワクしないようなスポーツは単純に言って「つまらない」のである。つまらないスポーツにはスポンサーはつかない。すなわち経済的に成り立たない。実に残酷である。
このようにさまざまな顔を持つ「スポーツ」と我々オーディエンスはどのように関わっているのか、関わっていくべきなのか。そもそもスポーツの根源と思われているスポーツマンシップって何? そう考えを進めると、私はどんどんわからなくなった。本書はこれらの疑問を丁寧に解き明かし、こんがらがっていた思考の糸を少しずつ解いてくれる。論理展開に慣れないうちは論点がどこにあるのか見失うこともあったが、哲学、倫理学、法律などとは無縁の私でもわかるように論理を進めてくれている。また、格闘技由来のスポーツの一例としてボクシングを取り上げ、その意義を考えている。
結論には賛否両論あろうかと思う。ただ、その賛否両論はきっと感情的な問題だけであって、議論の本質は多くの方の納得を得られる内容ではないかと思う。読後、「人間ってぇのは自分の得にならないことは積極的にやらない。もしかしたら競技スポーツとは、人間のエゴがもっとも露骨にぶつかり合う場面の1つかもしれないなあ…」と思った次第。皆さんは何を考えるだろう。
(脇坂 浩司)
出版元:ナカニシヤ出版
(掲載日:2013-03-29)
タグ:倫理学
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スポーツ哲学の入門 スポーツの本質と倫理的諸問題
シェリル・ベルクマン・ドゥルー 川谷 茂樹
タイトルに入門とある通り、スポーツ哲学のトピックが網羅された労作だ。とくに現代社会におけるスポーツの価値や、ドーピングなどの倫理的問題について多くのページを割いている。
すぐに目を通せる分量でも、結論を得られる分野でもないが、スポーツに関わるなら知っておくべき内容ではないだろうか。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ナカニシヤ出版
(掲載日:2012-08-10)
タグ:哲学 倫理
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