シドニー!
村上 春樹
「そんなもの、ただのメダルじゃないか。オリンピックなんてちっとも好きじゃないんだ」という帯にあるセンテンスは、必ずしも中身を象徴していない。シドニーオリンピックと並行して過ごした“村上氏の”Sydneyを、自身で懇切丁寧に記したものであるから、サイドストーリーを味わいたい人にはお薦めだろう。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:文藝春秋
(掲載日:2001-05-10)
タグ:オリンピック
カテゴリ その他
CiNii Booksで検索:シドニー!
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:シドニー!
e-hon
1Q84
村上 春樹
青豆と天吾、小学生のときに2年間同じクラスであっただけの2人。しかし、分かち難く結ばれた縁によって、次第に接近していく。ストーリーは、1984年現在の世界ではなく、青豆が言うところの「1Q84」、天吾が「猫の町」と呼ぶ異世界で、進行していく。ただ、単純なパラレルワールドではない。それは、ふかえりという、女子高生と、天吾が共作した小説の世界だ。ものごとは、オーバーラップしながら、ひとと、ひとならざるものが織りなす世界を描く。
回路を辿り、あちら側とこちら側を行き来するリトルピープル。リトルピープルが作る「空気さなぎ」。知覚するもの、パシヴァと、受け容れるもの、レシヴァ。実体であるマザと、分身ドウタ。鍵は「さきがけ」という宗教組織と、そこから逃げ出してきた女子高生、ふかえりが握っていると思われたが、話の重心は、だんだん青豆と天吾に移っていく。
いくつかは、実際の事件が下敷きになっているのがわかる。他の設定についても、もしかしたら鋳型となるものがあるのかもしれない。ふかえりの父、リーダーは、はるか昔から人々は、リトルピープルと呼ばれるものと交流してきた、というようなことを、死ぬ間際、青豆にたいして言っていた。レシヴァである彼を介して、彼らはこの世界になにかしら、働きかける。彼が回路であり、後継者として天吾はいた。パシヴァとしてのふかえりは媒介者として存在する。
話は、青豆と天吾と、小さいものが、1984に戻ってきたところで終わる。
ああ、もしかしたら、そういうことってあるのかも。村上春樹を読むと、随所でそう思うことが多い気がする。
(塩﨑 由規)
出版元:新潮社
(掲載日:2022-09-20)
タグ:物語
カテゴリ その他
CiNii Booksで検索:1Q84
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:1Q84
e-hon