応援する力
松岡 修造
「押せ・押せ・やるぞ!」
野球部の応援リーダーが声をかける。なぜだかわからないが、チャンスの時に「押せ・押せ」の応援をスタンドですると、得点が入るのだ。というより、「押せ・押せ」をすれば得点が入るのだと信じていた。それは、高校時代の野球部での応援のことだ。私が所属していたチームは、全員野球をモットーに日頃から、「声」の力を信じていた。指導係の先輩からは「本当の声を出せ」と毎日のように言われ、我々は必死になって「声」をはりあげ練習した。
そして、迎えた夏の大会。ベンチ入りできない多くの野球部員がスタンドから、仲間を信じて「声」を出すのだ。まさにグラウンドとスタンドが一体となって戦っていた。残念ながら甲子園にはあと一歩届かなかった。しかし、あのときのスタンドで感じた「目に見えない力」の存在を私は信じている。
著者の松岡修造さんは、「応援する力」の存在を自身の選手時代に味わった。それは1995年ウィンブルドンでの3回戦のことだ。2セットを取られ、もう後がない4セット目、単純なミスをしてしまい、気持ちの上ではもう完全に負けていた。そのとき、「修造、自分を信じろ!」と観客席から声が響いた。この声をきっかけに、別人のように変わることができ、接戦を制した。そして、それは松岡さんのその後の「応援人生」の原点となるのだ。
著書の最後に松岡さんはこう語る。
「僕はこれまで応援していたのではなく、応援することにより、紛れもなく自分自身が応援の思いを受け取って前に進んでいたのです」と。
そうなのか、私たちもグラウンドの仲間を応援することで、自分達が前に進めていたのかもしれない。
ならば、松岡さんが言うようにいつでも誰かを「応援」していきたい。
(森下 茂)
出版元:朝日新聞出版
(掲載日:2015-03-19)
タグ:応援
カテゴリ 人生
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応援する力
松岡 修造
熱血応援のイメージが強い著者。選手として五輪に出場した際から各競技会場に足を運んでいた。そこまでするのは、海外での試合中声援に力をもらった経験、そして自分で自分を応援しようとしてもなかなかうまくいかないことを身をもって知っているからだ。
ただ、本書は「自分がいかに応援しているか」ではなく、「応援することによっていかに力を与えられたか」に多くのページが割かれている。「応援」はスポーツに限ったものでなく、家族や同僚など身近な存在相手にも行える。ただ「頑張れ」と言うのではなく、状況やその人に合ったやり方を見極める、それが応援する力だ。
応援は時に「苦言」と思える場合もある。それもポジティブに受けとめられる、「応援せずにはいられない人」であろうという著者のメッセージには、日々の取り組みを振り返らずにはいられない。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:朝日新聞出版
(掲載日:2014-07-10)
タグ:応援
カテゴリ その他
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