痛みのカルテ
伊藤 正治
スポーツマンのみならず、“痛み”は厄介なもので、医学的にもなぜ痛みが生じるのかは結局よくわかっていない。痛みの程度は、人によっても、またそのときの環境や精神状態でも違うし、痛みの表現も人種間で大きな差があるといわれている。痛みに強い人、弱い人がいるのも経験的に私たちは知っている。スポーツマンの多く、とくにコンタクト・スポーツの選手は比較的痛みに強く、陸上競技などの選手は痛みにとても敏感である。
痛みに関する本はかなり出ているが、今回紹介するのは、30年近いキャリアを有するベテラン医学記者が、専門家に会って取材、ジャーナリストらしい切れ味で、まとめたものである。全体の構成は、「基礎編」で痛みの総論を行い、以下、「頭痛」に始まり「足の痛み」まで、身体の上から下まで10章に分け、その発生原因、症状、診断、治療並びに予防をその痛みに応じて記すというものである。テニス肘、野球肘、半月板・靭帯損傷などスポーツ関係のものも含まれているが、スポーツマンも人間、こうした全般的痛みの本を持っておくと、何かと便利だろう。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:共同通信社
(掲載日:1983-11-10)
タグ:痛み
カテゴリ スポーツ医科学
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仮面の家
横川 和夫
実際にあった事件のルポルタージュ。事件の詳細については書くのを避けたい。読んでいる途中、ほんとうに胸が苦しくなった。事件の経緯をなぞっていくと、まるで八方塞がり、残る道は最悪の選択しかない、という心境になる。加害者は、ひとに尊敬されるような人格者で、誠実なひとだ。被害者の息子は、まるで最後の結末を招き入れるかのようにもみえる。あくまで、そう描かれているだけで、ほんとうのところは分からない。しかし、このルポが現実感をもって眼前に迫ってくるのは、間違いない。ひとごとではすまない、という気がする。
無意識下で抑圧された感情が、もっとも身近で大切なひとに、思いもしない形で反射する。誰も自分はそうならない、なってはいない、とはっきり言明することができない。そう言えるとしたら、逆説的ではあるけれど、この病理の前兆ともいえるからだ。自分の中に潜む、固定観念からの脱却以前に、思考の枠組みという前提に、自身が気づくことの難しさを感じた。
(塩﨑 由規)
出版元:共同通信社
(掲載日:2022-09-01)
タグ:家族 ルポルタージュ
カテゴリ その他
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