転倒予防教室 第2版
武藤 芳照
副題は「転倒予防への医学的対応」。東京厚生年金病院で開催されている転倒予防教室の5年間の集大成である。初版は1999年。丸3年で第2版が出た。
転倒についての定義、骨粗鬆症との関連など、転倒の原因や特徴、医学・科学的側面を述べ、転倒によって生じる医療経済面での影響を調査。そのうえで、転倒予防に向けてどのようなアプローチをつみ重ねてきたのか、転倒予防教室における実際の活動の中で得られた、貴重な具体的事例に沿った形で述べられている。
いかにして事故の危険を回避しながら、最大の効果を生み出していくかについて、数々の失敗例が挙げられているのを読むと、スタッフの試行錯誤してきた様子がよくわかる。また、転倒予防教室という場を、よりよいものに育てていこうとするには、内科医、整形外科医のみならず、 運動指導士や看護師、理学療法士など、多岐にわたる専門家の多角的なサポートが必要不可欠であったことも読み取れる。
これを反映して、本書も医師のみならず、看護師、理学療法士、健康運動指導士、教育関係者、事務関係者など幅広く、実に約40人の執筆・執筆協力者の手によってまとめられている。
この教室については、月刊スポーツメディスン34号で紹介したので、そちらも参照していただきたいが、スポーツ医療が高齢社会に大きく貢献できる分野としてこの転倒予防が挙げられる。ますます、この分野の研究や実践は盛んになるだろうが、転倒予防教室の最終的な目標は転倒予防を越えたところにあると思わざるを得ない。
(清家 輝文)
出版元:日本医事新報社
(掲載日:2003-03-15)
タグ:転倒予防
カテゴリ 医学
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変形性膝関節症の運動・生活ガイド 第3版
杉岡 洋一 黒澤 尚 武藤 芳照 伊藤 晴夫
副題は『運動療法と日常生活動作の手引き』。第3版には黒澤尚・順天堂大学教授が編者に加わり、97年に出版された第1版、99年に出版された第2版の内容を骨格としながら、最新の研究成果で得られた科学的根拠に基づく運動療法プログラムや健康情報への対応の仕方などをQ&A形式で解説している。
「日常生活の中で治していけますか」という問いについては、関節軟骨が磨り減っていくという原因を直接治す根本的治療法がまだないこと、変形性膝関節症が高血圧症や糖尿病などの生活習慣病の1つであることに触れ、「自分でやれることは自分でやっていく」という心構えが必要であるとしている。そのやれること、注意点を示しているのが本書であり、痛みの出ない階段昇降や杖の選び方・使い方、日常様式の工夫など日常生活にすぐに活かせる事柄も取り上げている。
変形性膝関節症は適切な運動によって改善や進行を予防することにもつながるが、それぞれの人に適した方法で運動を行わなければ逆に症状を悪化させることにもなる。やれることをやる前に、まず本書を一読しておくとよいだろう。
杉岡洋一監修、黒澤尚、武藤芳照、伊藤晴夫編集
2005年11月1日刊
(長谷川 智憲)
出版元:日本医事新報社
(掲載日:2012-10-10)
タグ:変形性膝関節症
カテゴリ 医学
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患者指導のための水と健康ハンドブック
武藤 芳照 太田 美穂 田澤 俊明 永島 正紀
日本全国における水不足は94年が記憶に新しい。そのときから飲料水としての水が注目され、今ではお金を出して購入することが当たり前の時代になった。その種類も多用で、消費者の水への関心は高い。「人のからだは水に満ちています」から始まる本書は、「水と健康医学研究会」での特別講演や一般研究発表を骨組みとし、同研究会のメンバーを中心に「水」についてアプローチしている。副題は『科学的な飲水から水中運動まで』。
ヒトと水との関係を基礎に、「正しい水の飲み方は?」「水の心理的効果は?」など患者が抱くであろう45の質問を取り上げ、医科学的な知見から人体にとっての水の意義について解説、健康増進、疾病の治療、予防、リハビリテーション、水に関わる外傷・疾病・事故、さらには入浴に至るまでわかりやすくまとめている。
本書は、私たちのからだと水が大きく関わっていることを改めて考えさせられる内容である。また、私たちの健康を水を通して考えることは、環境としての水への理解にもつながるだろう。
2006年3月30日刊
(長谷川 智憲)
出版元:日本医事新報社
(掲載日:2012-10-10)
タグ:水 水中運動 水分補給
カテゴリ スポーツ医科学
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転倒予防教室 転倒予防への医学的対応
武藤 芳照
人は必ず年を取ります。年をとればとるほど、身体は衰えていくものです。健康のために身体を動かしてい人は多いと思います。
「いつまでも元気な身体でいたい」誰しもが思い、願っていることです。
本書は「いつまでも…」というクライアントのニーズに応えるために実際の運動指導だけでなく、転倒のメカニズムや身体の特徴、評価方法やチェック表など多く載せられています。また、多くのデータとともに転倒予防教室での指導の流れやシステムなども紹介されており、より現場で使える一冊です。
(大洞 裕和)
出版元:日本医事新報社
(掲載日:2012-10-16)
タグ:転倒予防
カテゴリ スポーツ医科学
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患者指導のための水と健康ハンドブック 科学的な飲水から水中運動まで
武藤 芳照 水と健康医学研究会
日常生活の中でも密接な関係にある、水と身体を関連づけて述べた本である。
私がとくに有益だと感じた部分は、MRIの画像種類の違い、水と脳梗塞や心筋梗塞との関連、ミネラルウォーターの区別などである。Q&A方式での内容となっているため理解もしやすいことが読みやすさにつながっている。
様々なドクターが執筆されているので文面もバラエティに富み、そういう部分でも楽しめた。トレーナーの方々でも水に関わる業務があるのなら、読んでおいて損はない。
(河田 大輔)
出版元:日本医事新報社
(掲載日:2013-01-28)
タグ:水分補給 熱中症
カテゴリ スポーツ医科学
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異所性脂肪 メタボリックシンドロームの新常識
小川 佳宏
この書籍のタイトルでもある異所性脂肪とは内蔵脂肪、皮下脂肪といった脂肪組織とは別に、本来脂肪の蓄積をしない部位に蓄積する脂肪のことである。とくに肝臓、筋肉、膵臓などに蓄積し、臓器障害だけではなく血糖や血圧に関わることも明らかになってきた。
本書では、メタボリックシンドロームや糖尿病、循環器疾患との関連について述べており、各科の先生が新しい知見をまとめている。異所性脂肪という概念を知る入り口としてお勧めの一冊である。
(安澤 佳樹)
出版元:日本医事新報社
(掲載日:2016-02-02)
タグ:メタボリックシンドローム 脂肪
カテゴリ 医学
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女性アスリートの健康管理・指導 Q&A
能瀬 さやか
近年、国際大会での女性アスリートの活躍が目覚ましい。実は、21世紀になってからのオリンピックの日本人出場者・金メダリストは女子のほうが多い。そこを目指す育成年代の選手が増えるのは当然の流れで、サッカー、ソフトボール、格闘技に至っても女性アスリートの競技人口は増加傾向だ。それと同時に指導者やトレーナー・医療従事者は女性アスリートのサポートについてこれまで以上に学ぶ必要がある。
さて、本書ではタイトル通り、女性アスリート特有の医学的課題についてQ&A形式で解説されている。その数なんと103項目。男女の身体的特徴の違いから女性アスリートの三主徴・月経痛、妊娠・出産・更年期世代、パラアスリートのスポーツまで幅広く扱っている。
Q&A方式なので、専門用語や難解な文章は少なく、現場の素朴な疑問や不安に対して一問一答で情報を得ることができる。女性スポーツに関わる医療従事者やトレーナーはもとより、「他人に聞きづらく」「正しい情報にたどり着くことが難しい」女性の身体や性に関する知識を必要とする女性アスリート本人や、その保護者にも是非読んでいただきたい。本書は心強い「相談窓口」となるはずだ。
(川浪 洋平)
出版元:日本医事新報社
(掲載日:2020-11-05)
タグ:女性アスリート
カテゴリ スポーツ医科学
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レベルアップ! スポーツ外傷の診かた
齋田 良知
これは良書だ。何度も見返すことになると、まだ通読していないながら思う。
さまざまなスポーツの外傷30症例が記載される本書。患者と現場ドクターとコンサルト医の対話形式が、まず読みやすい。患者の訴えもリアルで、イメージしやすい。
医師同士の会話では、画像診断で注意すべき点や、保存療法と観血療法それぞれの予後、各種分類やリハビリのプロトコルなどが、参考文献つきで示される。かといって、無味乾燥とした情報の羅列になっていないのがよい。患者、現場医師、指導医の間で、実際にケガをした時点から時系列で、診断プロセスの過程が見える。
どうしても専門書は、かたくて、実感を伴わない、時に机上の空論に思えてしまうこともあるが、この本にはそれがない。対話形式でないと書けないような臨床的なポイント、経験的にはこういえる、という点も含め描かれているのが他書にはない本書の特徴だろう。
知識を現場でどう運用するか、というHow to本として優れている、と感じた。電子版付きなのも嬉しい。
(塩﨑 由規)
出版元:日本医事新報社
(掲載日:2022-06-24)
タグ:外傷
カテゴリ スポーツ医学
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痛み探偵の事件簿 炎症? 非炎症? 古今東西の医学を駆使して筋骨格痛の真犯人を暴け!
須田 万勢 小林 只
西洋医学と東洋医学に通じた写六先生が指導役となって、数々の難事件(症例)を解決していく。メインで治療にあたるのはワトソン役の先生で、最後には患者に薬を出しまくるモリアーティ役の先生が登場するという珍設定。
だが当然ながら、内容はまじめ。主にエコー下でのファシアハイドロリリース(FHR)を用いて、治療にあたる。超音波診断装置で癒着部位を確認しながら、生理食塩水を注射していくと、組織がミルフィーユ状にほどけていき、疼痛が消え、可動域が改善する、という。エコーの動画をQRコードで読み取って見ることができる。
ときおり、『fasciaリリースの基本と臨床』を引用しながら、最新の解剖学的知識、東洋医学的視点からの仮説を、写六先生が教えてくれる。
著者はダニエル・キーオンの『閃く経絡』の翻訳にも関わった医師で、現在はリハビリスタッフや鍼灸師など、コメディカルスタッフと協調しながら、患者の治療にあたっているという。
前回に引き続き、対話形式の本で、改めて気づいたのは、診断プロセスでよくある見落としについて、理解あるいはイメージしやすい、ということだろうか。今回はワトソン役の先生がいろいろ間違ってくれるのがありがたい。治療が難航しているとき、写六先生が現れ、的確なアドバイスをくれる。ホームズの名言の引用も忘れない。
FHRじゃなきゃだめなのかどうか、は自分には判断がつかないが、ファシア、エコー、鍼灸など、トレンドを押さえつつ、東洋医学と西洋医学の視点が入っている本というのはあまりないので、その点貴重だと思う。
共通言語としての解剖学は東西問わず必須だ、という意を強くした。
(塩﨑 由規)
出版元:日本医事新報社
(掲載日:2022-06-27)
タグ:fascia ハイドロリリース
カテゴリ 医学
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