勝利への「併走者」 コーチたちの闘い
橋本 克彦
「勝ち負けだけを追求するのではない」では何をもってスポーツの目的とするのか? お金や名誉のため、自分の限界に挑戦するため、チームのため、人間としての成長のためなど、そこには選手の数だけ無限の言葉が並ぶ。
しかし、著者の関心は別なところにある。「いったい人は、なぜ、どのように勝ったり負けたりするのか。その過程が描く曲線、ドラマはどのように生まれ、頂点を描くのか」
著者は、選手の人間としての生き方の曲線を知りたいと思い、コーチを訪ね歩くことになった。なぜコーチかというと、選手が描く人間のドラマの当時者でありながら、一方ではもっとも客観的な観察者であり、一番近い目撃者がコーチだからだ。コーチこそが、スポーツ選手の描くドラマの報告者としてふさわしい、そんな思いからできたのが著書である。
1978年サッカーワールドカップで優勝した、アルゼンチン代表監督のメノッティはこう表現する。
「世の中にサッカーなどは存在しないんだ。サッカーをプレイする人間だけが存在する。だからサッカーが進歩したというなら、それは人間の進歩にほかならない」
勝ち負けを超越したもの、いや、勝つことにこだわるからこそ生まれる物話がいくつもある。
(森下 茂)
出版元:時事通信
(掲載日:2012-06-04)
タグ:ノンフィクション 指導
カテゴリ 人生
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スポーツ・コンディショニング
窪田 登 上田 雅夫
今日はコンディションがよいとか、どうもコンディションが悪くてとか、とかくスポーツマンはコンディションという言葉をよく用いる。その場合、どうも体がだるいとか、いつもより力が出て体も軽いとか感覚的に体調をとらえていうことが多い。筋力、柔軟性、持久力、スピードなど体力の要素を細かくチェックして、その総体の状態をコンディションというわけだが、この本では「選手が体力を調整したり高めていくためのトレーニング」をコンディショニングとし、コンディショニングの総論から入り、筋力トレーニング、スタミナ・トレーニング、柔軟性トレーニング、スピード・トレーニングのそれぞれに関する理論と方法を多くの写真を用いて示している。
スポーツマンにとって嬉しいことに、野球、テニス、バレーボール、ゴルフ、水泳についての個別のコンディショニング・プログラムを詳しく述べた章もある。
さらに、本書の特徴のひとつとして、心理学者の上田氏が第9章「メンタル・コンディショニング」を執筆、スポーツマンの心理面に興味深く触れている。なかでも人間関係について述べられた部分は、コーチと選手、あるいは選手間の交流を考える意味で考えさせられる。「親のこころ」「成人のこころ」「子どものこころ」の3つで構成されるという自我の話は、コーチには必読である。
このように、スポーツ・コンディショニングについて総合的にとらえ、細かく解説する本書は、コンディショニング・プログラムを効果的、合理的に作成し、うまく実行していくうえで恰好の書となる。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:時事通信社
(掲載日:1981-06-10)
タグ:コンディショニング
カテゴリ 運動実践
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働き盛りのストレス解消法
ジェア・イエイツ 大原 健士郎 枝窪 俊夫
ストレスがたまる、ストレスを解消したいというような表現はよく耳にする。ストレスが不快感につながることは多いがストレス自体は「生命力を適当に持ち合わせた人にあっては、適当量のストレスがむしろ必要である場合もある」(序より)というように必ずしも悪いばかりではない。そこでストレスを管理するという考え方が出てくる。小社刊の『健康・体力づくりマニュアル』でもストレス管理は詳しく述べられている。酒やタバコで気晴らしをするのは程度の問題もあるだろうが、やはり健康という視点から捉えると、もっと積極的方法に置き換えていく心構えが必要といえるだろう。
この本は「働き盛りの」という言葉が冠されてはいるが、ストレスは何も働き盛りでなくても多い。職場や学校など、集団社会ではかなりのストレスにさらされている。こんな本を読んでみるのも意義深いだろう。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:時事通信社
(掲載日:1984-02-10)
タグ:ストレス解消 運動
カテゴリ 運動実践
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復刻新装版 ランニング
金栗 四三 増田 明美
著者の名は「かなくり しそう」と読む。日本マラソンの父と呼ばれ、日本人初のオリンピック選手である。大河ドラマ『いだてん』の主人公といえば、ご存じの方もいるのではないだろうか。私は彼を、100年先の未来から来たトップアスリートと呼びたい。
本書は1916年(大正5年)に発刊された「ランニング」の復刻版である。マラソンに関する技術的な解説以外にも、食事や休養、運動時の服装やシューズにいたるまで事細かに書かれているが、その内容は100年前に書かれたとは到底信じられないほど「最新」であった。その一部を引用して紹介しよう。
「さてこの心身の調和したる発育を達成するには、単に駈歩(走る練習)ばかりでは不足する傾向がある。この他にもなにか運動をして各筋肉や、関節を動かすことが大切である」
「脚は駈歩には直接他(上半身など)よりも関係があるから、十分脚の筋肉や関節を強くし自由に運動をできるようにしておかねばならない」
なんと金栗は今から100年も前に、競技練習以外に筋力トレーニングやストレッチを行い、筋力や柔軟性を向上させる重要性について認識していたのだ。それも長距離走でである。これが私が金栗四三を「100年先の未来から来たトップアスリート」と呼ぶ理由である。
本書はただ当時の技術解説書の枠を越え、金栗から私達へのスポーツ発展を願うメッセージと言えよう。私達が未来へ何を残していくべきか。本書を読めば見えてくるかもしれない。
(川浪 洋平)
出版元:時事通信社
(掲載日:2020-10-24)
タグ:ランニング マラソン
カテゴリ スポーツ医科学
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サッカー日本代表帯同ドクター 女性スポーツドクターのパイオニアとしての軌跡
土肥 美智子 いとう やまね
アスリートをサポートする専門職の中でスポーツドクターにフォーカスした本書。サッカー日本代表帯同のエピソードが中心となっており、鞄の中身や、受傷した選手の治療時のやり取りなど、非常に臨場感がある。スタッフ間の連携も興味深い。
後半は、スポーツドクターになる方法やその役割、そして女性ならではのキャリアプランについて、自身の歩みや日々心掛けていることを紹介している。ちなみにJFA会長の田嶋氏と家庭を持っているが、当然専門分野が違うため干渉はしない。ただ日本サッカーの未来について志を同じくする部分があるとわかる。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:時事通信社
(掲載日:2021-02-10)
タグ:スポーツドクター サッカー
カテゴリ スポーツライティング
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