感受性を育む 現象学的教育学への誘い
中田 基昭
本書においては、神谷美恵子ほか、そしてサルトル、ブーバー、メルロ‐ポンティ、ハイデッガー、フッサールの思索を紹介しながら、段階的に「感受性」に迫っていく。
著者は教育実践の場に関わりながら、知的障害をこうむっている子どもたちの他者関係、あるいは小学校における教師と子どもたちの関係を現象学に基づいて解明するということを研究テーマとしている。先人の言葉を手がかりにしながら、意識とは何か、身体とは何かという問いを深めていくのである。この深みのある読みから導かれるものが、読み手として抱える問題と、うまくリンクした瞬間、読み手自身の立ち位置とそれを取り囲む構造が立体的に意識できるようになる。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:東京大学出版会
(掲載日:2009-01-10)
タグ:教育 感受性 現象学
カテゴリ その他
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教養としての身体運動・健康科学
東京大学身体運動科学研究室
駒場にある東京大学の身体運動科学研究室にはたびたび訪れる。
この本は、「はじめに」によると、東大教養学部前期課程基礎科目「身体運動・健康科学実習」の教科書として、東大大学院総合文化研究科スポーツ・身体運動前期部会の教員の共同執筆によって編集されたものである。
簡単に言えば、大学の教科書であるが、まさに「教養としての身体運動・健康科学」の書である。スポーツ、スポーツ科学、スポーツ医学を語るとき、あるいは議論するとき、共通の基盤が求められる。その基盤として、本書に記されていることは理解しておきたいと思わせる内容になっている。
「教養としての」という表現は考えると深い意味がある。東大では新入生はすべて教養学部に入学し、そこで前期課程と呼ばれる2年間の教養教育を受けたのち、教養学部を含めた各専門学部(後期課程)へ進学するという。その前期課程での身体運動・健康科学のテキストというわけである。巻末の資料に収められた「ヒポクラテスの養生論」「貝原益軒の養生訓」「ロックの身体の健康について」など歴史的文献も役立つ。お手元にぜひ1冊。
2009年3月23日刊
(清家 輝文)
出版元:東京大学出版会
(掲載日:2012-10-13)
タグ:教科書 教養 運動科学 健康科学
カテゴリ スポーツ医科学
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描かれた技術 科学のかたち サイエンス・イコノロジーの世界
橋本 毅彦
銅版画、絵、スケッチ、設計図など、過去の科学技術が描かれたものを、技術史の立場から語っている。当時の最先端の考え方、時代の要請について細かく述べてあり、それらが生まれる過程と必然性がよくわかる。地域的には西洋、東洋を問わず、またさまざまな年代にわたってトピックが取り上げられている。
一枚の絵から、ここまでの豊かな背景が読み取れることに驚く。現代に生きるわれわれも、後世からみれば当時の最先端と呼ばれるような何かを、絵や図の形で残していくのであろう。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:東京大学出版会
(掲載日:2009-08-10)
タグ:技術史
カテゴリ その他
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バイオメカニクスで読み解くスポーツ動作の科学
深代 千之 川本 竜史 石毛 勇介 若山 章信
最初に身近な例を用いた問題を示し、それに対する答え、さらに解説という形で構成。スポーツ動作や人体について、バイオメカニクスの立場で読み解いていくが、扱っている内容は広いが理解しやすい。
本書はバイオメカニクスの考え方をわかりやすく伝えている。序章でスポーツバイオメカニクスの魅力について4項目が挙げられているように、謎が解けたり、意外な発見があったりすることが実感でき、より身近に感じられるようになるだろう。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:東京大学出版会
(掲載日:2012-10-15)
タグ:スポーツバイオメカニクス
カテゴリ スポーツ医科学
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子どものからだ 科学的な体力づくり
宮下 充正
副題は「こうすれば科学的に体力がつくられる」といったハウ・ツーを意味しているのではない。体育教育のなかで、科学に基づき、子どもを健全に、発育・発達させようということを広く深くアピールする書である。すでに各紙誌で書評が載せられているので、目を通された人も多いだろう。本書はあとがきによれば『教職研修』(教育開発研究所機関誌)に昭和52年から2年にわたり掲載されたものをUP選書の1冊としてまとめられた。したがって、当初は学校の教師を対象として書かれたわけであるが、通読してみると、ここに述べられ指摘されている問題は、教師に限らず、父兄を含め、諸活動の指導者に大きく関わるものばかりである。受験地獄といわれ、頭ばかり強調され、一方で「落ちこぼれ」などという不快な言葉も取り沙汰されている今日、「近頃の子どもは体力がない」などと大人はどうして他人事のように嘆いていられよう。教師、父兄、指導者はもちろんのこと、誰もが「子どものからだ」について正しい認識を持つ必要性はいくら強調してもしすぎではない。全体を通じ、厳しく鋭い指摘が随所にみられるが、読者はそこに著者の子どもに対する深い愛情を見出さずにはいられないだろう。事実、著者は長年、子どもの野外活動に熱心であり、自ずと本書の説得力も増している。子どもの体育・スポーツに関係する人にはぜひとも一読していただきたい書である。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:東京大学出版会
(掲載日:1980-12-10)
タグ:子ども
カテゴリ 身体
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保健体育講義資料
東京大学教養学部体育研究室
少し古い本だが、手許に置いておくととても便利なもの。書名が『保健体育講義資料』(東京大学教養学部体育研究室編、<財>東京大学出版会)とちょっととっつきにくい雰囲気だが、要はスポーツ医科学に関する主要な図表を編んだもので、大きく①体力論、②健康論、③体育論の3つに分けられ、これまでの研究の成果が一堂に会しているというもので、何かを調べる、考える際の材料になる。そこで書名をもう一度考えてみると、この本の性格がつかみやすいのではないだろうか。だが、別に講義のためだけでなく、これはアイデアの宝庫のような本で、監督・コーチ・トレーナーなど、時間が空いたときに、なんとなく頁を繰っていると、ひょっとすると大変なヒラメキが生ずるかもしれない。本の使い方は様々なのだという好例の一冊だ。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:東京大学出版会
(掲載日:1986-04-10)
タグ:資料集 スポーツ医科学 図表
カテゴリ スポーツ医科学
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〈知的〉スポーツのすすめ スキルアップのサイエンス
深代 千之
運動が苦手な姪っ子に指導
高校に入学したばかりの姪っ子が球技大会でバレーボールをすることになった。ところが彼女は子どもの頃からスキップが正しくできないくらい運動が苦手。うちに遊びにきたときにちょっと見てやろうと広場に行ったが、ボールの中心をたたけない、下半身の動きと上肢の動きのタイミングが合わない、自分の立ち位置から一歩分でもボールがずれると落下地点に身体を移動できない、となかなかの強者だった。子どもの頃からダンスのほうのバレエを習っていたので、それを糸口にアンダーハンドサーブとアンダーハンドレシーブを何とか形にしようと、おじさんは奮闘することになった。スポーツ科学を学ぶ人にこそ
さて本書は、『運動会で1番になる方法』などの著者であるバイオメカニクスの第一人者、深代千之氏によるもので、「東大教授が教える(運動の)上達法!」と銘打たれている。前半は走・跳・投打というスポーツにおける基本動作を巧みに実行するための理論が展開されている。後半ではやや専門的な内容で、脳による運動のコントロール、筋生理、バイオメカニクスの基礎について解説されている。
一般人への啓蒙書という位置づけとのことだが、本書は運動上達を目指す一般の人々というより、スポーツ科学を勉強している指導者や学生にこそ手にとってもらいたい仕上がりになっている。バイオメカニクスといえば物理学の基礎知識を必要とした難解な学問だと敬遠しがちな学生でも、本書を通読することでその知識を現場に活かすためのつながりを発見できるに違いない。パフォーマンス向上はもちろん、傷害予防のためのドリルや負傷選手を競技復帰まで回復させるアスレティックリハビリテーションにもその考えを応用しやすくなるはずだ。
つながりのヒント
つながりと言えば、本書ではバイオメカニクスと運動生理学やスポーツ心理学とのつながりを理解しやすくなるヒントも含まれている。解剖学や生理学など別々の教科で勉強する基礎医学も、当然のことながら人の身体として統合して理解されるべき内容である。構造によって機能は決められるが、機能的な必要に迫られて改変されてきた構造があり、構造をより効率的に使おうとすることで新しく生まれた機能がある。さまざまな側面から人間の構造と機能のつながりを解き明かし、より効率的な機能に結びつけていくというこの学問は、ばらばらの「点」になりがちな学問をつなげるという側面もあるように思う。
誰かがやっていた、あるいは誰かが言ったというトレーニング原理のようなものが独り歩きして一種流行をつくった現象にも触れられている。ご本人にはそのつもりはないかもしれないが、本質を見極める前に流行に流される傾向にある態度を科学者の立場からそれとなくたしなめている感覚があることにも好感が持てる。
よりよい動きへ
さて、姪っ子の指導。限られた時間の中で、しかも1度きりの指導で何が変わるのかへのチャレンジは、バレエのジャンプ動作を少しづつ変化させてスクワットジャンプの形にし、そこに手を振り上げる動作を加え、タイミングを同期させ、ジャンプの程度を減らしてアンダーハンドサーブの身体の使い方に近づけるというシンプルなもの。ボールを使ったのは最後のほうだけだったが、なんとか相手コートに入るかなというくらいにはボールが飛ぶようになった。身体の移動に関しては、ボールを投げる方向を決めておいて一歩移動してボールをキャッチする練習を各方向行い、ボールをキャッチする高さを徐々に下げて、アンダーレシーブの形に近づけた。結果、誰かが拾ってくれるだろうというボールの上がり方をするようにはなった。
もっといい方法もあるだろうし、本番までの練習でどれだけ上達するかわからないが、ボールを打つという運動の結果だけにとらわれず、ボールを打つためにどのように身体を動かすのか姪っ子自身に考えさせ、そうすることで動きが改善される実感を持ってくれたとしたら、トレーナー活動をしてきたおじさん冥利に尽きるというものである。
(山根 太治)
出版元:東京大学出版会
(掲載日:2012-07-10)
タグ:スキル
カテゴリ 指導
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教養としてのスポーツ・身体運動
東京大学身体運動科学研究室
東大生の必修実技実習科目「スポーツ・身体運動」(1年生)の教科書として新たに編集されたテキスト本。もちろんそれ以外の読者の目に触れることも意識して編集されており、教官が所属する大学院総合文化研究科の身体運動科学グループからのメッセージとして受け取ることもできる。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:東京大学出版会
(掲載日:2000-07-10)
タグ:運動
カテゴリ スポーツ医科学
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筋力強化の教科書
石井 直方 柏口 新二 高西 文人
この書籍は、長年トレーニング業界に携わってこられた筆者たちが「筋力トレーニング」の基本について述べた書籍です。書籍の前半部分では、筋トレの基本について生理学や健康に関する情報が述べられており、後半部分ではBIG3とベントオーバーローイングなどトレーニング種目の基本について語られています。
著者の3名は、研究者・医者・指導者とそれぞれ違った立場の方が、筋力トレーニングの基本をさまざまな角度から語られている書籍です。これは、ここ近年の情報ではなく、30年ほど前の1990年頃から積み重なった情報です。近年の筋力トレーニングの情報発展に寄与してこられた方々が、どのように「筋力トレーニング」を捉えて実践に落とし込んだか歴史を知るために必読の書籍です。
本書の後半の部分では、BIG3など実際のトレーニングの方法論について述べています。各種目の説明のページでは、フォームに関して細かく紹介されています。写真に線を引いてバイオメカニクスの視点で、より安全で効果の出る方法を説明しています。
私も、この業界に携わるようになって20年です。間違いなくこの書籍の情報からスタートしています。そして、現代では情報が大きく様変わりしたように感じます。しかし、基本となる土台は変わることはありません。改めて、基本に立ち返るときに参考にしたい書籍です。
(中地 圭太)
出版元:東京大学出版会
(掲載日:2022-09-05)
タグ:トレーニング
カテゴリ トレーニング
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