動作の意味論 歩きながら考える
長崎 浩
動作に関わる本である。しかし、普通の運動生理学や医学の本というより、哲学的な視点から人間の動作を理解するための本という感じである。正直に言うと、内容や文章で用いられている語句は難しい。私見ではあるが、自分が身体を動かすときにはこんなことを考えて動く必要はないideaばかりなので、アスリート自身が読むような本ではない。どちらかというと、身体運動を研究したり分析したりする必要のある、運動指導者や医療関係者が読むための書籍である。
具体的には、神経系と運動器系がどのように人間の運動・動作・行動を成しているのかについて、エビデンスを用いたり、過去の著名な研究者の文献などを引用しながら広く書かれている。ただ、初めに言ったとおり、哲学的な内容になっているため、普通の身体に関する本として読むと理解に苦しむ部分がある。運動生理学や医学的な知識を得るためではなく、もっと根本の「動作とは何か」という部分で見識を広めるために読むとよいと思われる。
個人としては、第7章の「脳は筋肉のことなど知らない」と第8章の「日常動作が壊れるとき」が興味を引いた。普段、医学的知識を得ることが常の私にとって、「中枢神経系が筋肉のことを知らない」という観点は非常に独特であったし、8章に登場するブルンストロームやボバースの評価と治療についての内容はとても勉強になった。
時間を見つけ、何度も何度も読んで理解を深めるのもよし、自分の興味のある章のみを読むのもよしの作品となっている。
(宮崎 喬平)
出版元:雲母書房
(掲載日:2011-12-13)
タグ:運動 哲学 運動生理学
カテゴリ 人生
CiNii Booksで検索:動作の意味論 歩きながら考える
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:動作の意味論 歩きながら考える
e-hon
介護と建築のプロが考えた「生活リハビリ」住宅
三好 春樹 吉眞 孝司
バリアフリーという言葉はすっかり定着し、その意味を知らない人は少ないだろう。だが、ではそのバリアフリーはいかにあるべきかとなるとよくわからない。
この本は副題として「バリアフリーは間違っている」と記されている。著者の三好氏は、特別養護老人ホームの生活指導員となり、その後理学療法士の資格を取り、85年に退職、現在は「生活とリハビリ研究所」を開設している。もう1人の著者である吉眞氏は、県立宇都宮工業高校建築科で建築学を学び、吉眞建設株式会社を設立、本格的木造住宅を数多く手がけ、日本の建築文化を受け継ぐ職人が絶えないようにと、在来工法も重視している。
三好氏は、車椅子が実は段差に強いこと、スロープは上りも下りも脳卒中の人には危ないことなどを挙げ、「介助が大変だからバリアフリーとか、介護対応型など、何か理想に近づけるのではなく、これまでのやり方があり、それをいかにして継続するかをまず考えるべき」という視点を提出する。
吉眞氏はもっと根本の木の家のよさを建築という立場で語っていく。住居や環境となると当然、建築家の出番である。「そりゃ、そのほうがいい」という住む立場で納得できる発言が多い。介護は介護する側も大変だが、される側の身になってこそであろう。住宅の見直しはとても重要と知らされる。
2005年4月30日刊
(清家 輝文)
出版元:雲母書房
(掲載日:2012-10-09)
タグ:暮らし 介護 建築 生活
カテゴリ 身体
CiNii Booksで検索:介護と建築のプロが考えた「生活リハビリ」住宅
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:介護と建築のプロが考えた「生活リハビリ」住宅
e-hon