昔、生物で習った「ミトコンドリア」について知っている人は多い。
本書にも記されているが、若い人に対して行ったアンケートでもなんと80%は「知っている」と回答。
ところで、ミトコンドリアの色は?となると、多くの人が「緑」と答える。
理由は、ミトコンドリアに「ミ・ド・リ」の文字があるからだそうで、また話題になった映画『パラサイト・イブ』でもミトコンドリアは緑のイメージで統一されていたそうだ。
実際に生きている細胞のミトコンドリアは赤茶色で、これは鉄分を含んでいるから。
その映画『パラサイト・イブ』のもとになったホラー小説を書いたのが瀬名氏で、一方の太田氏は、日本医科大学教授で『ミトコンドリア病』などの著書もあるミトコンドリア研究者である。
ミトコンドリアはエネルギーの生産工場として知られているが、実はそれだけではない。
また、DNAというと細胞核内のものを考えるが、ミトコンドリア内にもあり、ミトコンドリアDNAと呼ばれる。
これらが生体に対して大変な仕事をしている事実がどんどん発見されている。
長距離ランナーのミトコンドリアDNAの塩基配列を調べると、ランナーに比較的多くみられるミトコンドリアDNA配列は、なんと鳥類のそれと同じだった(鳥類は活性酸素がつくられにくく酸素消費量が多いわりに寿命が長い)というような話もあり、生命科学の面白さを満喫することができる。
瀬名秀明、太田成男著 B6判 221頁 2000年12月1日刊 571円+税
角川ONEテーマ21、角川書店
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