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からだにはココロがある

身体に存在するココロについて書かれた本。
ココロを介して人間の身体と心は密接につながっているとし、そのココロの構造を知り、うまくつきあっていくことで、自己の本来持っている能力を引き出す方法を知り、生かす。
その方法を登山に見立て紹介。



高岡英夫著 四六判簡易上製 249頁 1,400円+税
総合法令

人のためになる人ならない人

「熱血」しないコーチになるために
冒頭から私事で恐縮だが、私自身のスポーツとの出会いは40年以上前であり、現在もスポーツ界の片隅で禄を食んでいる。
したがって、当然多くのコーチとの出会いがあった。
その多くがいわゆるTVの青春ドラマに出てきそうな明朗、爽快、活発、颯爽、堂々といった日本語をそのまま体現した熱き、熱き、熱血型指導者であった。

しかし、本書には、(選手の)ためになる(コーチ)とは熱血型コーチであるとは一言も書いてはいない。
著者は、まずコーチとは本来“馬車”を意味し、お客(選手)が望むところに連れて行くのがコーチの仕事だと説く。
なるほど。
しかし、私が出会ったコーチは皆「俺について来い」式で、どこへ行くかさえ言ったことがない。
まして、どこへ行きたいかなんて聞かれたこともない。
こりゃ、えらい思い違いをしていたぞ、とばかり先に読み進めると、コーチのスペル「C」「O」「A」「C」「H」のそれぞれの頭文字を使って、コーチに必要な資質が述べられている。
例えば、「C」はComprehension(理解、包容力)で、選手や子供を一人の人間として理解し、それぞれの共通点や相違点を受け入れるといった具合だ。
こりゃ、本当にえらい思い違いをしていたぞ。

「檄」を飛ばさないコーチになるために
私も含めて、コーチは概ね声が大きい。
なぜなら、練習のときは選手の掛け声やボールの弾む音、シューズが床に擦れる音、選手の激しい息遣いに負けないために自然と腹に力が入り、声が大きくなる。
それに、声が大きいほうが威圧感があって選手を掌握しやすいではないか、と考えるとなおさら声のトーンが上がり、こうなると単なる声ではなく「檄」に変わる。
やっぱり、コーチは声がでかくなけりゃと思っていたら、本書には一言もそんなことは書かれていない。
コーチの「H」はユーモアの「H」だと著者は言う。
選手が苦手なことをさせられているときは、大幅なエネルギーの消耗を伴う。
そんなとき、コーチが檄を飛ばしてもさらにエネルギーを消耗させるだけで、結果として選手は萎縮してしまうと言う。
ここは、むしろユーモアが必要だと言う。
米国には「Fun is Medicine」(ユーモアは良薬)とう言葉もあるそうだ。
元気のないときほど、檄飛ばして気合入れるんじゃないのか。
こりゃ、えらい思い違いをしていたぞ。

「期待」しないコーチになるために
コーチは、大方自分のチームや選手に期待をかける。なぜなら、期待通りの結果が出れば、自分への評価にもつながるし、応援してくれている地元にも顔向けができるからである。
しかし、著者は「期待」は「怒り」の原点だと断罪する。
なぜなら、「期待」することは、ある枠にはめた比較思考、つまり何かと比較して、それよりもよい結果を残すことを要求することだという。
だから、「期待」が大きいと落胆も大きくなり、「お前たち、なにやっているんだ! たるんどるぞ!」てな怒りになるというわけだ。
そう言われると、相手が自分のチームより格が下のときは、「期待しているぞ!」なんて言わないな。

期待を顔に出さず、熱くならずに冷静に、ユーモアをもって選手やチームに接する。
そんなコーチがこれからの日本のスポーツシーンを必ずや変えていくことだろう。

もしもし、そこのコーチ。何か、えらい思い違いをしていませんか?



辻秀一著 四六判ハードカバー 172頁 1,400円+税
バジリコ社

魂の箱

「やはりこんども、諦めない者たちが書きたかった」筆者平山譲は、「あとがき」にこう記している。

魂の箱(soul box)
1991年6月14日、主人公畑中清司は名古屋市総合体育館特設リング上に立っていた。
WBC世界ジュニアフェザー級の王者として、彼は挑戦者ダニエル・サラゴサの顔面を、幾度も右ストレートで強打していた。
試合は一方的なチャンピオンペース。
しかし、第5ラウンドに奇跡が起こる。それも、挑戦者に……。

「あたるとは思わなかった」パンチが致命的となり試合の形勢は逆転する。
そして、敗戦。
彼にとって世界王者として闘った最初の試合が、皮肉にも生涯最後の試合となった。
その翌年、彼は引退のテンカウントゴングを受けることになる。
畑中は、荒れた。
飲み、酔い、潰れた。
リング上で闘う術を失った彼は、今度は虚無感、絶望感と闘わなくてはならなかった。
しかし、彼は、その闘いにも敗れてしまう。

それから
引退から2年が経っていた。
食べていくためのカネさえ窮していた畑中は、ある人を訪ねるために横浜の地に足を踏み入れる。
その人の名は、元世界フライ級王者花形進。
畑中は、世界挑戦5度目でチャンピオンベルトを手に入れた苦労人花形の中に引退後のあらたな目標を見出せればと、彼の経営するボクシングジムを訪れたのだった。
「引退後、なにされました?」畑中は花形に開口一番そう訊いた。
「俺、引退してから焼いてたよ、焼き鳥」
「なあ畑中、世界チャンピオンになったからって店をもたせてくれるほど、世間はあまくねえよ、世界チャンピオンもな、第二の人生はまた、四回戦ボーイからだよ」

その日以来、畑中は働き始める。
しかし、それは単なる改心ではなく、新たな人生の目標を見出したからに他ならない。
「俺は闘うことでしか生きられん」
「だって、俺は、ボクシング屋やから」
「SOUL BOX HATANAKA BOXING GYM」はこうして生まれる。

教育者
その「魂の箱」の門を二人の青年が叩く。
一人は、まったく自分自身の存在価値を見出せず、ただただ現在を彷徨する高校生。
もう一人は、無軌道な青春を過ごした結果、取り返しのつかない過ちによって、無二の親友を失った不良少年。
その二人に対して畑中が注ぎ込む熱情と彼らが迷ったときに畑中が見せる笑顔がいい。
「本書は、ある路地裏の小さな箱(ジム)から、自己の存在証明にのぞむ者たちの心のありさまを探求した記録である」と筆者は結ぶ。

久しぶりに、魂の熱くなるのを感じさせる作品に出会った。
近頃感動する心を失いかけている諸君、自らの魂に衰えを感じ、日常生活に倦んでいる諸君、読むべし!



平山譲著 四六判ハードカバー 272頁 1,700円+税
実業之日本社

コンビニ・外食大活用 食べて勝つスポーツ栄養の基礎知識

栄養サポートが得られにくい、大学スポーツ選手や社会人になりたてのスポーツ選手を念頭に書かれたスポーツ栄養の本。
コンビニや外食での食事選び、自炊開始のコツ、スポーツ栄養学の活用など、豊富なイラストで紹介。



齊藤愼一著 A5判 142頁 1,200円+税
講談社

子どものメディカルフィットネス

副題に「レジスタンストレーニングによる体ほぐしの運動」とある。
体ほぐしは、平成10年度の学習指導要領改訂で出てきた言葉で、「体と心の両面から健康をとらえる」ことを目指している。
その狙いは、1体への気づき、2調整、3仲間との交流だそうだ。

全体は、理論とトレーニングの実際から成り、トレーニングでは自重、チューブ、ボール、水中運動などが取り入られている。

「体ほぐし」というとストレッチやどちらかというと力を抜く運動を想定するが(もちろんストレッチについても記されている)、レジスタンストレーニングという筋肉を使い、体を意識させ、体や動きをコントロールする運動が上記の1~3につながるという道筋をわかりやすく説く。

近年は高齢社会と老人医療費の高騰から、老人問題が大きな問題とされているが、国の将来を担うのは子どもである。子どもの身体への着目が始まり、いろいろな書物も出てきた。
これもその中の1冊であるが、「子どものメディカルフィットネス」と呼んだ着眼点が面白い。



財団法人日本健康スポーツ連盟監修、都竹茂樹、梶岡多恵子著 B5判 134頁 2001年10月30日刊 1800円+税
ぎょうせい

図説NPO法人の作り方

本書では「はじめに」で明確に「21世紀はNPOが主役の時代である」と記している。
また「NPOは、企業や行政では扱いにくいニーズに対応する活動を自発的に行う組織であり、第三の組織を築いている。
また、人々が交流し、地域に新たな活力を生み出す核にもなり、21世紀の社会でも大きな役割を果していくものと期待されている」と言う。

この意味で今注目されるのが、スポーツNPOであろう。
本書はスポーツNPOにスポットを当てて書かれたものではないが、書名の通り、これからNPO法人を作ろうとしている人には非常に参考になる。つまり、多くの人が得意としない分野、簿記、会計、税務を詳しく解説している。

著者はドラッカーの次の言葉を引用している。
「非営利組織(NPO)は、よき意図をもってよいことをしたいということだけでは十分ではない。成果をあげ、この世に変化をもたらすために存在しているのだ……そのためには、すぐれたマネジメントが必要である……非営利組織には、ビジネスと違って業績を測るめたの利潤というものさしがないからである」

この言は、本誌34号で紹介した河村剛史氏の講演内容とぴったり重なる。優れた実務書である。



鶴田彦夫著 A5判 236頁 2002年2月15日刊 1550円+税
PHP研究所

サプリメント健康バイブル

著者となっている日本サプリメント協会は、2000年10月から現代人の健康とサプリメントに問題意識を持つ医師、文筆家などが集い、活動を開始、2001年6月にサプリメント関連では日本で最初(唯一)のNPO法人の認証を得た(http://www.j-sup.com)。

全体は、サプリメントの基礎/新しい栄養学/あなたの悩みにこのサプリメント/栄養素別サプリメント事典/主要サプリメント製品リスト/編集委員からの健康アドバイス/現場ルポ「サプリメント探偵団が行く」の全7章から成っている。
うち3章、4章が全体の約6割を占める。
3章では、「これが効く!」「メカニズム」「こんな症状のときは要注意」と各症状へのアドバイスがつく。
医師が関わるNPOらしく、内容は医学的なところが多く、これまでのサプリメント書とは趣が異なる。
4章では「なぜ効くのか」という項目もある。
これがなかなか勉強になる。読んで面白い。



日本サプリメント協会(NPO)著、帯津良一監修 A5判 262 頁 2002年1月1日刊 1238円+税
SAPIOムック、小学館

キンダーコーディネーション

副題は「子どもとスポーツの関わり」で、「コーディネーショントレーニング実践例100」というフレーズもついている。

著者は、順天堂大学助教授でハンドボール部の監督でもある東根氏と幼年体育学園代表の平井氏である。
著者は、昔の子どもの遊び、鬼ごっこ、石けり、竹馬などを挙げ、すべてとは言わないが多くがコーディネーショントレーニングにもなっていた点を指摘している。
「実践例100」も実に遊びの要素が多い。
従って、子どもは面白く、楽しく行う。

スポーツのあり方が問われるようになり、指導者のあり方も同時に問われ始めている。
「勝つチームを目指すべきか、楽しむチームを目指すべきかで悩む」という声をよく聞くが、著者はどちらも大事で、どちらか一方にしか価値がないというのは偏った考え方だと言う。
そしてこう述べる。
「指導者が、大きな度量で子どもたちと戯れるならば、やはり大きな度量の子どもになると思います。早く結果を出そうとすると、つい急いでしまいます。ちょっと立ち止まる勇気を持ちましょう」

コーディネーショントレーニングの入門編でもあり、また指導者入門にもなっていると言える1冊である。



東根明人、平井博史著 A5判 170頁 2002年3月12日刊 1500円+税
全国書籍出版

自分を守る患者学

副題は「なぜいま『統合医療』なのか」。
著者はヤギを使った人工心臓の実験で世界記録を作ったことで広く知られている。
東京大学医学部医用電子研究施設の教授、施設長を歴任、退官後の平成10年に「日本代替・相補・伝統医療連合会議」を設立。
現在もその理事長で、平成13年には「日本統合医療学会」を設立し、代表を務めている。

この略歴で、本書のアウトラインが掴めた人もいることだろう。

Complimentary and Altemative Medicine(相補・代替医療)という言葉をすでに見聞きした人は多いだろう。
長いので通称CAMとも表記される。
何に対して相補・代替なのかというと「西洋医学」である。
いわば現代の西洋医学以外の医療がCAMになる。
例を挙げると、中国・インドなどの伝統的東洋医学、ハーブ、鐵灸、瞑想、音楽、指圧、あるいは手かざしまでも含め、あらゆる医療行為がCAMに含まれる。

著者は、特に日本ではCAMについてあまりにも身近であることもあって、諸外国に比較し、国としての取り組みも国民の意識も遅れている点を指摘している。
すでに欧米はCAM導入に積極的で、それが医療費抑制にもつながっている。
また、曖昧なものも多いので、研究にも熱心で、効果があると判断されたものをリストし、それについては保険が適用される点も指摘している。
さらにこのCAMにとどまらず西洋医学と伝統医学との融合、「統合医療」を提唱し、「なによりも患者さん一人ひとりに最も遭した医療とは何かを指向する道程」を急いでいると言う。
医療をもう一度冷静にみる本。



渥美和彦著 新書判 192頁 2002年3月1日刊 660円+税
PHP研究所

病を癒し、運勢を見抜く驚異の「気能力」

中国天山気能法の第32代当主である悟楽大使が生み出した「悟楽気能法」。
悟楽大使という人間の中で「気エネルギー」と「超能力」が1つに融合したパワーを「気能法」と言う。
その考え方や実践法などを紹介した1冊。



悟楽著 四六変形判並製 176頁 1,200円+税
現代書林

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