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「導具」を使った健康体操--オリジナル手具体操のすすめ

日常生活で健康体操(運動)を楽しく継続させるために、長年の体操指導の実績を持つ著者が、健康体操を楽しく継続させるために開発した「導具=動きを導くための物」と体操の方法を紹介。



春山文子著 B5判 96頁 1,500円+税
文芸社

図解雑学 スポーツの科学

手や足はなぜ動くのか。筋肉はどのようにして縮むのか。筋肉を縮めるエネルギーはどこから生み出されるのか。イラストを多用して生化学・物理学・力学まで解説。



特定非営利活動法人スポーツインキュベーションシステム著 B6判 224頁 1,200円+税
ナツメ社

決定版!!  100km.ウルトラマラソン

「知能」としてのランニング
人は一体いつ頃から、自らの「本能」という呪縛から開放されて「知能」としての走りを満喫できるようになったのだろうか。

――生きているものは、すべて動くと言っても過言ではない――生命科学における生体運動に対する知見である。その分野の専門書によれば、神経細胞などがまったく見られない原生動物でさえ、細胞中に運動支配中枢が存在し運動すると言う。
しかし、決してむやみやたらと動き回っているのではない。
自らの生存に不適合な環境を避け快適な環境下に移動するための、いわゆる適応的行動を起こしているのである。これを走性(taxis)と言う。

この「走性」と似たものに「反射」がある。反射は遺伝的神経機構の産物という点で、生まれつきの行動と定義できる。つまり、本能の一種である。

人間が立ち、歩き、走る、という一連の二足直立運動は、この反射機能によるところが大きいことは周知の事実である。
つまり、人間の行動の本来的に意味するものは、外界からの刺激に対する単純適応行動反応と見ることができる。しかし、これだけでは人間の行動を説明するのには十分とは言えない。
なぜなら、人間の行動を理解する場合、学習に基づく行動反応を無視できないからである。
学習に基づく行動反応とは、知能のことである。

つまり、「走る」という行為とは違い、「ランニング」という行為は、マズローの欲求段階説に従えば、生理的欲求や安全欲求を満足させるための行為ではなく、さらに高位の、自己実現を可能とさせるための行為と言える。
人間独特の知能あってこそ可能な行為が、ランニングと言えるのだ。

ランナーの数だけあるランニング
ところで、私事で恐縮だが、このランニングとは私自身何を隠そう20年来の友(?)なのです。
この20年間、太ったと言っては走り、うまい酒が飲みたいと言っては走り、旅行先で走り、引っ越したと言っては走っている次第です。
知らない町を走るのは、案外楽しいのだ。
しかし、今回初めてこの本を手にしたときは、タイトルや目次などをざっと見て正直言って驚嘆してしまった。
なにしろ、著者を筆頭に100 km、200km、果ては4200kmも走った人も出てくるではないか。
多くとも10 km程度のジョギングしか経験したことのない私にとって、本書を精読するまでは、ここに出てくるランナーの皆さんは別世界に住む方のように思えた。
ところが、読み進むに従って、これは間違いであることに気づく。
みんな普通に生活している人々なのである。
著者の文章の優れているところが大きいが、行間のあちこちから、本書に出てくる人々の走る姿が見え、走っている沿道の応援する人々の声が聞こえてくる。
読んでいて、何かとても美しい小説に出会ったような錯覚を覚えた。

それと、本書のもうひとつうれしいところは、出てくるランナー皆さんのそれぞれのトレーニング方法が紹介されていること。
要は、みんな自分の好きなようにやっていて、それがこのランニングの一番大切なところだという筆者のメッセージがよくわかる。ランナーの数だけランニングの方法があるということなのだ。

本書を読んでウルトラマラソンに目覚める方も多いのではないだろうか。
そう書いている私もなにやらお尻がムズムズしてきました。
(久米秀作・帝京平成大学情報学部福祉情報学科助教授)



夜久弘著 A5判 192頁 1,600円+税
ランナーズ

フットサル教本

少ない選手の数で、広いグラウンドがなくてもできる、ミニサッカー(フットサル)。
フットサルの歴史から技術、戦術、その指導法やトレーニング方法、さらに競技規則解説まで豊富なイラストと写真でわかりやすく解説。



日本フットサル連盟監修 松崎康弘、須田芳正著 B5判変形 168頁 1,900円+税
大修館書店

ブロッキング技術トレーニング

陸上競技のみならず、あらゆるスポーツ動作が滑らかに、効率よい動作になる加重のライン「ブロッキング・アクシス(軸)」について、CD-ROM付きで、具体的に解説(動画)。
すぐに試してみたくなる理論!



籾山隆裕著 模範動作CD-ROM付き 184頁 2,000円+税
陸上競技社

イルボンは好きですか?

月刊スポーツメディスンで連載中の山田さんの最新の書。
写真は原山カヲルさん。
著者は、週刊朝日の仕事で韓国のスポーツ選手を取材、毎月韓国に行く生活を過ごしてきた。
その中で、スポーツ選手のみならず、特に「新世代」と呼ばれる高校生、大学生に興味を持ち始めた。
この本はその新世代75人へのインタビューをまとめたものである。

タイトルの「イルボン」はもちろん「日本」の意味だが、韓国の若者に、日本の国のイメージ、日本人のイメージなどをどんどん聞いていく。
著者は当初、日本の若者と同じだと思ったのが、やはり違う点を見出していく。
その彼らの素顔を原山さんがカメラに収めていく。

ワールドカップを機に日本と韓国の交流は以前より盛んになりつつある。
互いの国に対するそれぞれのイメージがあるが、やがてそれは変貌するかもしれない。
サッカーのワールドカップは単にスポーツイベントではないと言われる。
それが本当にどういうことかがわかるのは間もなくである。



山田ゆかり著 四六判 224頁 1,600円+税
朝日ソノラマ

ウエルネスグリーンレポート2002

財団法人日本ウエルネス協会が発行する機関紙「ウエルネスムーブメント」の別冊保存版(2002年春季号)。
同協会は、昭和57年(1982年)設立の厚生労働省が所轄の財団法人。
通常この種のものは「白書」と呼ばれるが、グリーンレポート「緑書」としたのは、「時代状況をより積極的に捉え、現状分析にとどまらずに、ウエルネスという新しい視点でライフスタイルの提言、提案をしようという試みから」とのこと。

本書を作成するために特別の調査を行ったわけではないが、「世代別ウエルネスライフヘの提言」では、乳幼児期、学童期、思春期、青年期、壮年期、中年期、高齢期、後期高齢期ごとに章を設け、広い範囲から適切なデータを選択して紹介している。
また、「主要省庁における2002年度予算と重点施策の概要」という章を付し、各省庁のウエルネス関連の予算項目と予算額が列記されている。



財団法人日本ウエルネス協会編 A4判 122頁 2,500円+税
財団法人日本ウエルネス協会

からだの日本文化

『しぐさの日本文化』や『複製芸術論』で知られる著者の「肩のこらない」からだにまつわる日本文化の話。 頭、顔、肩、背中、腹、ヘソ、ウエスト、ヒップ、腰、尻、足の11項目でまとめられている。

例えば、「少し具合の悪いところができると、日本人は何でも『からだ』のせいにする。カナダ人は『精神』のせいにする」(P.38)。
だから、日本人は医者やマッサージ師に駆け込み、カナダ人は精神分析のクリニックに向かうと言う。
「屈は尻に出て又鼻に逆戻り」というなかなか味わい(?)のある秀句も紹介されている。
どこの国の人であろうと、この身体は同じようなもののはずだが、そこに文化が加わると、どうも同じようではない。
鼻を高い、低いと日本語では表現するが、例のクレオパトラの鼻については、フランス語では「もしクレオパトラの鼻がもう少し短かったら」と表現されているとか。

しかし、どうしても私たちはこのからだに染みついた文化から離れることは難しい。
それなら、他の文化ではどうかを知り、見方を変えてみるのも、からだによいかもしれない。
軽く読めるが、う~んと考えるところは多い。



多田道太郎著 四六判 244頁 1,600円+税
潮出版社

ハーバードの医師づくり

副題は「最高の医療はこうして生まれる」。
著者は、京都大学医学部、同大学院などを経て、マサチューセッツ総合病院(MGH)とダナ・ファーバー癌研究所でリサーチフェロー、MGHで内科クラークシップを経験した。

この本、名にし負うハーバードの話と、あまり深く考えないで読み始めたが、どんどん引き込まれ、読んだあとは、「どうも、倫理自体もアメリカに教えられるようになったか」と思った。

ことは医療の話である。
「医師づくり」と書名にあるが、書かれていることは医療をどうするかという問題にほかならない。
これはアメリカの医療、その教育システム改革の話と言ってもよい。
「医師づくり」つまり、教育とその教育を支える理念、またその倫理感の徹底ぶりがすごい。
「教授」は権威や権力を振りかざすことなく、教えること、相手が学ぶことを大切にする。
患者にはすべてを正直に話す。
ミスを犯したら、「私たちはミスをしました」ときちんと説明する。
いかなる患者もいかなる理由でも差別されない。
その他、様々なことを知っていくにつれ、ここまでやるかと思う。
だが、ハーバードやMGHも過去はそうではなかった。
すべては変革の努力の結果である。
またよりよい医療を提供する努力が今もなされている。
世界一力のある国が医療の分野で何をしているのか、この本は医療関係者にはぜひとも目を通しておいていただきたい。



田中まゆみ 四六判 222頁 2002年3月1日刊 1,800円+税
医学書院

スポーツ少年のメンタルサポート 精神科医のカウンセリングノートから

精神科医である著者が、スポーツによって生じる子どもたちの「ココロの悲鳴」について精神科医の立場から警鐘を鳴らす。
これまでにはない新しい視点で書かれている。
スポーツに携わる指導者およびスポーツ少年を持つ親にお勧めの1冊。



永島正紀著 A5判 190頁 1,800円+税
講談社

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