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疲れたときは、からだを動かす!

スポーツ医学の分野でよく知られた山本氏による一般向けの疲労回復のコツを示した本。副題は「アクティブレストのすすめ」。アカデミズムの代表的出版社である岩波書店から出たのだが、硬い本ではないので、気軽に読める。
全体的に、スポーツ選手の疲労回復法を紹介し、それを一般の人にわかりやすく、実施しやすいように紹介したものである。
スポーツ選手なら多くの人は経験しているだろうが、からだがだるいときに、休んでいるより、ジョッグなど軽い運動をしたほうが、調子がよくなる。これは「積極的休養」と呼ばれ、「休養日」であっても、何もしないのではなく、からだを軽く動かしたり、著者が記しているようなプールなどを使ったアクアエクササイズなどが効果的である。もちろん、試合後も同様。コンディショニングの一環としてのアクティブレストの例も本書ではいくつも紹介されている。
それは一般人でも同じというのが、本書の主張である。スポーツ現場の例を出し、実験結果も示し、ストレッチング、筋力トレーニング、入浴法(せっけんマッサージ、交代浴など)、ウォーキング、そしてアイシングについても触れられている。(S)



山本利春著、四六判 126頁、2006年9月26日刊、1,260円
岩波書店(03-5210-4000)

スポーツマッサージ

軽擦に始まり軽擦に終わる。私も学部時代はコンディショニング論でマッサージの講義を受けたことがあるが、いざ基本的な知識を現場で使おうとなると、種目別にはどういった箇所の障害が多いとか、またそれにたいしてどのようなアプローチしていいのかわからなかった。
本書ではマッサージの歴史的変遷にも触れ、その意義や基本的な知識とともに、マッサージを種目別・部位別に触れる筋肉がわかりやすい図や絵を用いて説明している。また手技の知識では本文と平行し付録のDVDでスポーツマッサージに用いられる手技や、全身のスポーツマッサージ法にも触れ特殊なスポーツ傷害予防目的のコンディショニングエクササイズも紹介されている。いずれのマッサージ法はアスレティックトレーナーが現場で実践している手法であり、現場で培われたノートのようになっている。(M)



福林徹著、溝口秀雪編集、B5判、256頁、2006年9月25日刊、7350円
文光堂(03-3813-5478)

コレステロールに薬はいらない!

書名はいささか極論だが、本書で問題としているのは、「コレステロール基準値」とその基準値をもとに処方される「コレステロール低下剤の副作用の害」である。
そしてコレステロール値が低すぎて危険な領域にあると思われる人が、330万人いると言う。
著者が問題にする現在の基準値、つまり高脂血症のコレステロール値「220mg/dl」は低すぎる。さまざまな疫学的データから「220~240」がもっとも長生きしている事実を出し、そもそも「220」という数値に科学的根拠がないことを指摘する。アメリカの基準は240であるし、諸外国の例も220という低値ではない。 また、細胞の働きに欠かせないコレステロールが少なくなると、がん、感染症、うつなどにつながる。コレステロール低下剤使用により、寿命を短くしている患者さんが多い。著者の主張はだいたいこういうことになる。
一方的主張ではなく、細かいデータを掲載し、説得力ある論理になっている。この基準値を決めたのは日本動脈硬化学会であるが、日本人間ドック学会は2009年9月、この基準は実質的でないとし、「高脂血症のガイドラインは、疾患別の学会が独自に作るのではなく、多くの学会が力を合わせ、国レベルで作成していくべきではないか」とし、「女性は260までは治療は不要」としているとのこと。
この本を読んでどう判断すべきか。専門家同士の議論に委ねるべきところが多いにせよ、患者あるいは患者予備軍として、読んでおくべき本であろう。(S)



浜六郎著、新書判 220頁、2006年9月10日刊、701円
角川書店(03-3238-8521)

イチローのメンタル――ケータイでできる野球のメンタルトレーニング

こころの「深み」
人間は誰しも欲を持つ。たとえ幼児といえども欲を持っている。おなかがすいた、何か食べたい、眠りたい等がそれだ。アメリカ心理学会の会長を務めたこともあるアブラハム・マズロー(1908~70年)は、これらの欲求を生理的欲求と呼び、人間の最も根源的な欲求と位置づけた。そして彼が最も人間として価値が高く、最終的に追い求めるべき欲求と考えたのは「自己実現の欲求」である。マズローは、人間がその一生涯において、生まれながらに持っている生理的欲求や安全保障の欲求から徐々に社会的欲求を萌芽させることで自らを高めてゆき、最終的に「自分とは何か」の解答として自己実現の欲求を満足させるまでのプロセスを見事に説明してくれた。が、言い換えれば彼のこの試みは、人間のこころの「深み」を追求するプロセスであったと言える。そして、彼はこのプロセスを純粋理性としてではなく実践理性的テーマとして追求することこそが心理学に与えられた命題であると考えたのである。

ケータイ・トレーニング
この言葉は私の造語である。今回ご紹介する本のサブタイトルに「ケータイでできる、野球のメンタルトレーニング」となっていたので、こんな造語が思いついたのである。それにしても、(スポーツ)トレーニングまで携帯電話とは。マズローさんも生きていたらさぞ驚かれたことでしょう。まさに、これは実践的かつ直接的なメンタルトレーニング・アプローチである。具体的にはどういうものかと言うと、本書の「Ⅱ章野球のメンタルトレーニングプログラム内容」のところに「QRコード」なるものが表示されていて、カメラ機能やバーコードリーダー、音声再生機能のある携帯電話でこのQRコードを読み取ると、今回のメンタルトレーニングサイトが表示され、実行できるようになっている。評者もQRコード読み取りに少々てこずりながら(笑)サイトに入ると、男性の声でこのメンタルトレーニングの概要が流れてきた。そして現在の自分の客観的な状況として心拍数の測定と進んでいくのであるが、全体的に少々時間がかかるのでパケット通信料金がかなり高額になりそうだ。そこで、本書中にも電話会社と毎月定額でかけ放題の契約を結ぶことが望ましいとの注意書きがある。それにしても、恐るべし携帯電話。評者は授業中に携帯電話をいじっている学生を注意したら「今、辞書で字を調べているところです!」って言われて恐縮した経験があるが、これからは練習中に携帯電話を使っている選手がいても、頭ごなしには注意できないなんてことあるのかな? 著者は、今年の9月にメジャーで6年連続200本安打を記録したマリナーズのイチローのメンタルトレーニングを担当した経験を持つ。本書中にもイチローの自筆による、高校時代に書いた目標が掲載されているが、著者も指摘するように、イチローの特徴は普通の人間が目標とする“夢”のもう一歩先の夢を見据えているところにあるようだ。自己実現の方法は人によって様々だが、“心”をトレーニングすることでさらに一歩先を目指せるとしたら、信じてやってみる価値はあると思いませんか。

最後に
皆さん、私の担当は今回で終わりです。足掛け5年、これまで約50冊の書評を書かせていただきました。書く側はいたって気楽。知らない本は読めるし、好きなことを勝手に書いてよいし、で大変楽しい経験でした。が、書かれた側の皆様はさぞかしお怒りでありましょう。確か、吉川英治氏の名著「宮本武蔵」の一節に「“墨を白紙に落とすが如く”人間のやったことは一生涯消えるものではない」というような件があったように記憶しております。この責任は、私、しっかり墓場まで持っていく覚悟ですので、何卒ご容赦のほどを。では皆さん、また何処かで。
(久米秀作・帝京平成大学現代ライフ学部人間文化学科助教授)



豊田一成 著、A5判 159頁、1,785円
アイオーエム

フェルデンクライス・メソッド WALKING

フェルデンクライス・メソッドの療法士として14年の経験を持ち、日本、ヨーロッパ、アメリカで療法士育成にあたるとともにプロスポーツ選手のトレーナーとしても活動するアマディオ氏が、寝た状態、立位・歩行、トレッドミルでのレッスンを紹介している。
副題は「簡単な動きをとおした神経回路(ニューロ・ネット)のチューニング」。著者が開発したトレッドミルのレッスンは陸上競技選手を始めとするプロスポーツ選手を対象とした内容で、寝た状態、立位・歩行のレッスンはトレッドミルがなく、手技療法を受けられない人のためのプログラムである。本書写真のモデルであり、実際にフェルデンクライス・メソッドを取り入れているJリーガーの丸山良明選手は「ちょっとした運動で、眠っている神経や筋肉を刺激してやることで、楽に当たり前のことができるようになる。だから、必然的にケガも少なくなるということだと思います」とその効果を語る。DVDつき。(H)



ジェームズ・アマディオ著、B5判 96頁、2006年7月30日刊、2940円
スキージャーナル(03-3353-3051)

人体 失敗の進化史

獣医学博士、獣医師である遠藤氏は、遺体を文化の礎として保存すべく「遺体科学」を提唱、遺体を知の宝庫と捉え、これまでも数々の著書を出版している。本書では、これまで解剖に携わった数々の動物の遺体から得た知識を基に、人間の身体について考察している。
人間の進化としてはよく二足歩行が取り上げられる。手に自由を与えたことにより脳を発達さえ、言語をも獲得したわけだが、「新しい身体は祖先を設計変更することでしか、生まれてこない。それが地球上で進化を繰り返していく生物たちの、逃れられない運命なのだ」と遠藤氏は記す。先祖となる生き物の身体の設計図が原点になっているからこそ、異なる進化をたどった鳥類や魚類などの身体の設計図を知ることは、ヒトがなぜ今のように進化したのかを知るうえで多くの情報をもたらしてくれるわけである。
では、私たちヒトとは、地球の生き物として、一体何をしでかした存在なのか。本書でも自問しているこの問いに対して、遠藤氏はヒトを前代未聞の改造品と位置づけ、“行き詰った失敗作”と結論づける。そこに至る経緯については本書を一読いただきたいが、読み進めると「そうなのかもしれない」と思わず感じてしまう。(H)



遠藤秀紀著、新書判 251頁、2006年6月20日刊、777円
光文社(03-5395-8114)

競技力向上と障害予防に役立つ 経絡ストレッチと動きづくり

「ヒトの体には、目には見えない秘められた情報伝達系が存在していることは間違いないと考えられます。この情報伝達系をどのように用いればよいかを古人は書き残してくれており、その有用性は現在に至るまで光を放っています」
いきなり引用で恐縮だが、経絡・経穴についてわかりやすい表現である。著者は続けてこう記している。「経絡・経穴は古人から現代人へ贈られた貴重な宝物なのです」。
この本では、簡便に異常な経絡を探し出す経絡テストと、そのテストで見つかった異常な経絡にストレッチを加え、全体のバランスを整える経絡ストレッチ、さらには目標とするパフォーマンスの改善のための動きづくりまでをカバーしている。
前半(1、2章)は経絡と経絡テスト、経絡ストレッチの実際を、後半(3章、4章)は動きづくり理論と軸体操、各種スポーツの動き作りの実践編からなる。よくまとまっていて、実践に役立つ本である。(S)



向野義人編著、朝日山一男・籾山隆裕著、B5判 104頁、2006年5月15日、1,785円
大修館書店(03-3295-6231)

給食の味はなぜ懐かしいのか?

副題は「五感の先端科学」(先端科学に「サイエンス」とルビが振ってある)。
さて、誤解のないように、まず本書は「給食」の本ではないと言っておこう。副題のほうが正確に内容を示している。第一部「感覚器官のサイエンス」では、味覚(伏木亨・京都大学大学院教授)、嗅覚(高田明和・浜松医科大学名誉教授)、触覚(宮岡徹・静岡理工科大学、井野秀一・東京大学助教授)、聴覚(岩宮眞一・九州大学教授、戸井武司・中央大学教授)、視覚(三上章允・京都大学教授、廣瀬通孝・東京大学教授)との対話。第二部では、「五感・クオリア・脳」と題し、脳科学者・茂木健一郎氏、臨床哲学者・鷲田清一氏との対話が収録されている。
これだけのメンバーだから面白くないはずがない。「感覚」という科学として取り扱いにくかったものが、どんどん解き明かされていく。なぜ、あるものを心地よく感じ、別のものを不快に感じるのか。文字や匂いからある色を感じたりするのはどういうことか。リラックスしたほうがなぜ感覚は鋭くなるのか。
感覚は誰にもあるが、見ても見えていなかったり、聞いても聞こえていなかったり。不思議な世界、五感は「5つの感覚」を超越していく。勉強になることも多いので、おすすめ本です。(S)



山下柚実著、新書判 268頁、2006年7月10日刊、819円
中央公論新社(03-3563-1431)

部活動指導者に贈る「指導心得83ヶ条」

心のバレー
「心のバレー」こと土屋幸一郎氏のことをご存知の方は、全国に大変多くいらっしゃることと思う。本書は、1992年に土屋氏が発刊した「心のバレー」の廃刊に伴い、続編として上梓されたものである。
ここで改めて、著者土屋幸一郎氏のバレー指導者としての系譜を見てみよう。土屋氏は「教職について4年目の1971年に大栄町立大須賀中学バレー部の顧問に就任、『出ると負け』の状態から出発。1973年、地区大会優勝、県大会初出場。1975年、関東大会初出場」と破竹の勢いでチームを引っ張っていく。そして、「1976年には、千葉県大会初優勝を飾る」ことになる。以来「18年間の指導で、千葉県大会優勝10回・準優勝5回・3位3回」。ここまで読むと、とても恵まれた環境の下で著者は競技をされていたように勘違いしそうだが、実はむしろ劣悪とも言える環境の元で著者はこの栄光を手に入れたのである。「理屈は無用、情熱と信念で実績を作り、いっぱしの教祖様になれ。まねるな見るな独裁者たれ」。「アイデアは日常茶飯事の中にある。幼稚で単純・気楽・無責任な思考法が源泉」。これは、本書のタイトルにもある“83ヶ条”の条文の一部である。一見すると、やや宗教がかった言葉とも読み取れるが、解説を読んでいくと、これらが著者独特の経験哲学から生み出された言葉であることに気づく。たとえば“教祖様になれ”については、「指導者にカリスマ的な要素が必要だが、これは誰にも備わっているものではない。(中略)カリスマになれないまでも、近づきたいと思えば、子どもたちが納得するような結果を見通す目をもつことに努めることだ。(中略)これは『勘』ではなく『読み』で、実際には予言・透視力といった神懸かり的なものはないのだが、場合によっては神秘的な印象を与えることになる」といった具合である。評者もこういった“教祖”的発言は、確かに人やチームを導く力として必要だと思う。ある著名なマラソン指導者は選手に対してその日の大会のタイムをずばり予測し、選手を驚かせるとも聞く。これは決して著者の言うように指導者の超能力の成せる業ではない。毎日選手といると自然と見えてくる“風景”のようなものなのである。

褒めてやらねば、人は動かじ
指導者と選手は、果たして何で結ばれているか。“心”? 本書のタイトルからしてみれば、こう結びたいところであるが、残念ながら違う。答えはコミュニケーションだ。ところが、このコミュニケーションが難しい。なぜなら、このコミュニケーションにはある性質が存在するからだ。それは、コミュニケーションをとろうとする二人が同時にしゃべることができないという性質だ。つまり、コミュニケーションをとろうとすると、片方は黙っていなくてはならない。スポーツの場合、この片方は多分ほとんど選手側であろう。つまり、指導者は選手をコミュニケーションによって拘束しているとも言える。“拘束”とは辞書的に解説すれば「相手の行動の自由を縛ること」である。指導者がする注意、指示すべてが選手を拘束する。こういった状況の中で、選手がのびのびと行動するためには、指導者自らが選手を拘束から解き放つようなコミュニケーションをとる必要がある。コミュニケーションとは、言語だけではない。非言語、つまり指導者自らの行動もまた立派なコミュニケーションである。選手に模範を示したり、一緒になってやることは選手を拘束せずにコミュニケーションをとる最良の方法なのかもしれない。「どんな子にも認められる言動(バレー技術には限らない)や、プレーはあるもので、『よし』と思ったら、即これを公表するか、見本を演じさせる」という著者も“褒める”というコミュニケーションで選手の拘束を解いているように見える。指導心得のひとつ「してみせて、言うて聞かせてさせてみて、褒めてやらねば人は動かじ」(山本五十六)の言葉を引用する著者の慧眼に敬服する。
(久米秀作・帝京平成大学現代ライフ学部人間文化学科助教授)



土屋幸一郎 著、バレーボールアンリミテッド発行、新書判 1,200円(送料・税込)
星雲社

パワー革新

絶対値の革新
「パワー」という用語がもともと理工学用語であったことは周知の事実である。すなわち効率とか仕事率と言われたもので、「単位時間当たりの仕事」ないし「力×速度」と定義されるわけだが、この「パワー」という概念が今までにスポーツの分野に与えた影響は計りしれない。 たとえば、このパワーを測定するという考え方はすでに1921年にサージェント. D.Aによって垂直跳びテストとして発表されたし、体力の古典的定義者として有名なキュアトン.T.Kも1947年には体力の一要素としてパワーの存在を認めている。その後も疾走中のパワーの研究や、自転車エルゴメーターのペダリング運動中のパワー、そして最大無酸素パワーテストとしてマルガリヤの階段駆け上がりテストなど、パワーの研究は盛んに行われているのだが、これらのほとんどは「身体効率(physical efficiency)」を主なテーマとして進められたと言える。 もちろん、こういった基礎的研究の重要性を軽視する意図は全くないが、単位時間当たり、ではなく絶対値としてのパワーの大きさがスポーツに与える影響を正面から見据えることも、ある意味大切なのではないか、と評者はひそかに思っていたのである。なぜなら成績を前提としてスポーツを考えた場合、パワーの絶対値が持つ意味は大きいからである。その点で、本書は絶対的なパワー値を高めるためにはどのような器材が有効か、どのような方法が有益かを平易に直接的に説いているわけで、パワートレーニングについて十分な知識を持たない高校生や中学生等にはとくに好書と言える。 パワーユニット
「パワー」に近似した言葉に「瞬発力」がある。どちらも似たような意味を持つので「パワーを高めたい」と「瞬発力を高めたい」という両者にあまり明確な違いを指摘することは難しいが、強いて言えば、前者は“力”を中心にパワーを捉えたと聞こえるし、後者は“スピード”に重点を置いてパワーを捉えたとも聞こえる。
いずれにしても、筆者が言うように「パワーとは、身体の動力」である。したがって、この意味を我流で解釈すれば、どれほどの重量物をどれほどの速さで動かせるかがその人の絶対的パワー評価となる。
「スポーツ選手におけるフォース(力)とは物体を持ち上げたり、移動したり、遠くに投げたりする身体の能力であります。(中略)押す力の能力などもその範疇に入ると思います」。この文章からも推察されるように、筆者は「パワー」というものは物体を素早く動かす力と定義して、そこに力点を置いてトレーニング方法を説いている。なかでも、今回パワー・トレーング器材として初めて筆者が開発した「パワーユニット」は、筆者の長年の研究と執念に裏打ちされた力作だ。パワーユニット器具の構造は、牽引物に取り付ける鎖と圧縮コイル・スピリングにワイヤーが付いており、そのワイヤーの先に人間の胴体に巻くベルトが付いている。このパワーユニットの心臓部は「圧縮コイル・スプリングス」で、この開発には、間違いなく筆者の英知と最大の努力が傾けられたのだろう。言葉ではなかなかイメージが出しにくいが、本書には図解入りで説明されているので、詳しいことは本書をお読み下さい。 
ついでと言っては失礼だが、筆者は「スーパーフットボール」というサッカーとアメリカンフットボールとラグビーのよい点を併せ持ったようなユニークなスポーツの創始者としても有名だ。地元足利市ではジュニアの育成に長年尽力されている。 ユニークな指導者がつくった夢のパワーアップマシンを、ぜひ読者の方々にも一度試してもらいたいと思う。なお、本書は自費出版のため、本購読希望者は以下の連絡先にどうぞ。
(久米秀作・帝京平成大学現代ライフ学部人間文化学科助教授)



佐々木正省 著、足利工業大学・健康科学研究室、B5判変形 114頁、1,050円
JAS出版 佐々木(Tel0284-21-4886、Fax0284-21-4893)


パワー革新
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