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ボディポテンシャルトレーニング

本書はボディポテンシャル協会が監修として、人間本来の機能を回復し、スポーツ動作、日常的な動作においても、そのボディポテンシャルを高めるべくまとめられた一冊である。
パート1の「骨格をイメージしながら動く」ではボディエクササイズの意義と実践にふれ、効果的なアドバイスを充実させている。パート2の「目的別トレーニング」では身体の基礎的な知識と、日常生活における動作と腰、肩、首、膝、股関節、また便秘やO脚、猫背など、その動きと障害の関わりについて絵や写真、図を用い項目別に詳しくアプローチしている。最後の「スポーツ動作への意識を高めるトレーニング」では野球、バスケット、バレーボール、水泳、ランニング、マラソン、ゴルフ、エアロビクス、テニスなど、各種目におけるボディポテンシャルに効果的なエクササイズを写真でわかりやすく解説している。(M)



橋本維知子著、日本ボディポテンシャル協会監修、A5判 127頁、2006年6月10日刊、1470円
山海堂(03-3816-1617)

MBAが会社を滅ぼす

副題に「正しいマネジャーの育て方」とある。もちろん、これはビジネス界の話。スポーツ医科学の関係者にはあまり関係がない、とは思わない。
その理由は2つある。
まず、ビジネス界でマネジメントを行うことは、スポーツ界やその他団体や組織のマネジメントを行うことと同じあるいは共通することが多いという点。
もうひとつは、本書では日本のビジネスのマネジメントの話がたくさん出てくる。日本のやり方のよさを知るのは、どの世界の人にも参考になるという点。
本書は2部立てで、Part 1は「MBAなんていらない」、Part 2は「マネジャーを育てる」。Part 1は、ビジネス界でもてはやされているMBA教育のあり方がいかに間違ったものかを筆鋒鋭く、痛快なまでに論じていく。「そうだ、そうだ」と思う人も少なくないだろう。それをアメリカ人が書いているのがまた面白い。Part 2は一転して、建設的になる。まさにマネジャーの育て方を述べていく。実際に行われているプログラムで、Part 1と比べ、痛快さはさほどない。しかし、じっくり読めばこちらのほうが奥深い。構成力見事な書である。(S)



H・ミンツバーグ著、池村千秋訳、A5判 554頁、2006年7月24日刊、2,940円
日経BP社(03-6811-8200)

ラグビー・ロマン

副題は「岡仁詩とリベラル水脈」。大阪の天王寺中学(現在の天王寺高校)を卒業、同志社大学予科(入学して2年時、学制が変わり大学に)に進み、ご存じのように後は同志社大学ラグビー部を率いた岡氏の伝記のようなものである。星名秦氏をはじめ、「リベラル水脈」と呼ばれる人たちとの熱き、また清々しい交流が描かれていく。
1973年、同志社の岩倉グラウンドで選手が日射病で死亡する。新聞の見出しは「死のグラウンド三十周――校内で翌日発見」。これでは暑い日にシゴキで死なせたと思わせる。選手は夜遅くまでアルバイトしていた。練習は通常のものだった。シゴキはそもそも岡氏がもっとも嫌うもの。練習後、人目のつかないところで倒れ、死亡した。
「いまでも悔やんでも悔やみきれない。私のラグビー人生のなかで最大の痛恨事です」と岡氏は言う。この事件で岡氏はいったんラグビーから遠ざかる。
その後、大学選手権で四度の優勝を果たしたが、そこまでに至る道、そこからの道は読者を引きつけてやまない。「ラグビーとは自由に創造するもの」、この“岡イズム”に触れると、ラグビーをやりたくなる人が多いだろう。だがラグビーに限らず、スポーツ全体が「自由に創造するもの」。今、それが欠けているのではないだろうか。(S)



後藤正治著、新書判 232頁、2006年9月20日刊、777円
岩波書店(03-5210-4111)

PILATES Mastery ピラティス・マスタリー

ピラティス・エクササイズはジョセフ・H・ピラティス氏によって考案され、そのエクササイズの基本は体幹部(コア)と呼吸(ブリージング)にあるという。著者の二人はそのピラティス氏に習って現在では職業団体フィットネス・オーストラリアから、オーストラリアで初めてフィットネス・ピラティス・インストラクター養成コースの認定を受ける。そんな二人が本書ではピラティスの概要やエクササイズの方法等のコンテンツを担当している。またカーネギー・カイロプラクティック&リハビリテーションをオープンしていることで知られている新関真人氏が解剖や生理、姿勢検査、臨床的な観点から見たエクササイズの注意点をまとめている。
現在ピラティスの有効性が、フィットネス、スポーツ、舞踏、医療の分野にまで注目を集めているが、本書では「動く」を考える“骨・筋肉・神経の強調の仕組み”を、ピラティスの基礎知識に沿ってわかりやすく解説し、またエクササイズ効果を高める“ボディプレースメント(準備、動作時の姿勢)”にも理解を深めることができる。(M)



アマンダ・トゥレイズ、マリーナディグビー著、B5判、192頁、2006年11月9日刊、2,520円
スキージャーナル(03-3353-3051)

楽しく踊れるズンドコ体操

まず表紙からおもしろい。写真からコンセプトがにじみ出ている。健康運動指導士、健康運動実践指導者、医学体操専任指導士、日本エアロビクスフィットネス協会公認インストラクターでもある太藻ゆみこ氏が書いた『楽しく踊れるズンドコ体操』はDVD付きで、誌面、DVDも読者が踊りやすいように左右逆に踊っているので、画面に合わせて踊れる親切さもある。しかも「ダンス体操」というダンスと体操をひとつにしたもので、体操の号令のようなものではなく、音楽で動きの楽しさを獲得できるものになっている。
また踊るときの選曲もいい。「きよしのズンドコ節」から始まり、「元気を出して」、「さくら(独唱)」と続き、それぞれの曲の雰囲気に合わせた体操ダンスのポイントもあげている。
聴きなれている音楽のリズムで自分の体を動かし汗をかくことも、実際はかなり難しいことである。だが本書を通して楽しく取りむことで、ダンスや体操がより身近で親しみやすいものになるだろう。(M)



太藻ゆみこ著、AB判31頁、DVD20分、2006年10月20日刊、1890円
日本放送出版協会(048-480-4030)

Fromシアトル アスリート新化論

身体と心に目覚めを問いかける
ヨガの教本? いえ、著者はアスレティックトレーナー。ポーズを説明するだけの教本ではありません。トレーナーがヨガという手法を中心にアスリートに自分の身体と心に目覚めてもらうよう問いかけているのです。もちろんアスリートといっても競技選手だけを意味するのではありません。身体を動かすことを愛するすべてのヒトにその思いは向けられています。
スポーツ界ではずいぶん浸透してきたアスレティックトレーナーという専門職ですが、基本的な業務は以下のとおり。アスリートの健康管理、傷害予防、傷害の応急処置、アスレティックリハビリテーション、そしてトレーニングにコンディショニング。つまりはケガをしているかどうかにかかわらず、アスリートとタッグを組んで、強くそして高いパフォーマンスを実現できる心と身体をつくっていくことがその役割となるのです。 そのためには強さを求めるトレーニング、巧みさを求めるトレーニング、強い精神力を求めるトレーニングなど、さまざまな形の鍛練が必要になります。ただしトレーニングだけがすべてではありません。何を食べ、どう休み、強い心と身体を得るためにどのような心構えでいるべきかを考え、そして行動する力も必要です。突きつめれば、日常生活、いや生き方そのものを問いかける必要があるのです。そのような「気づき」を得たアスリートは、トレーナーの思惑をはるかに超えて成長することがあります。そんなときは、やられたあ、というなぜだか少し悔しいような気持ちとともに、その何倍もの誇らしい喜びを感じることができるものです。逆にトレーナーがいくら力んで自説を押しつけても、アスリート本人がやるべきことに気づき、理解し、それを実行に移せなければ、トレーナーの自己満足に終わってしまいます。そしてそんなことも往々にして起こるのです。

きっかけをつかんでほしいの気持ち
この本の著者は、そんな落とし穴に、ともすれば落ちてしまうことの危うさに数々の経験を通じて気づいているのでしょう。だからこそ、きっかけをつかんでほしい、気づいてほしい、という気持ちが文中に溢れているのです。ここに気づけばもっと身体をうまく使えるよ。こんな風に考えればもっと楽に身体が動かせるよ。ここを少しうまく動かせば頭の中で描いているイメージと実際の身体の動きが近づくよ。そして身体を動かすことがもっと楽しくなるよ。そんな声が聞こえてきそうです。
すべてのレベルの、すべての競技の、すべてのポジションの、すべてのアスリートに、たったひとつの理論が当てはまるわけではありません。アスレティックトレーナーは自分のスタイルを持っていながら、一人一人のアスリートにどれだけ効果的な方法があるのか悩みに悩んで対応していたりします。この本ではヨガという手法を選んでいて、それは正しい選択のように思います。ヨガを通じて、身体の、そして心のありように気付き、それを高めていくこと、これはとても楽しいことのように思います。
(山根太治・日本体育協会公認アスレティックトレーナー、鍼灸師)



山本邦子 著、A5判 202頁、1,575円
扶桑社

子どものからだと心白書2006

毎年暮に発行される白書の最新版。総論、生存、保護、発達、生活、講演録の大項目からなり、グラフ、表などの資料とその分析で構成されている。
冒頭、編集委員長の野井真吾氏は、今年ほど、「読者の皆さんの『子ども理解』が一層深まりますように!」との想いから本書を刊行したことはありませんでしたと述べている。いじめ、虐待、不登校、自殺、誘拐殺人、子どもを取り巻く環境悪化の報道は社会不安をももたらしている。
「保護」の「E.心」の項目では、長期欠席(30日以上)について、小学校では59,315人から59,052人にわずかだが減少、しかし、中学校では127,621人から128,562人増加。中学校では1975年あたりをU字の底に年々増加している。病欠は減り、不登校が増えている。
暴力行為は、小学校で2000件台の大台に乗ってしまった点に注目される。
いじめでは、85年、小・中・高で155,066件だったのが翌年66%の急減、その後も一貫して減少傾向。しかし、白書は「文部科学省の報告と、現状の諸矛盾は明らかにされなければなりません」と記している。
子ども虐待では、児童相談所の虐待相談処理件数が、全国で33,408件から34,451件とやや増加。
薬物乱用では、中学生・高校生の覚醒剤事犯の補導が11.6%から18.2%に増加している。
以上は、白書に収められたデータのごく一部でしかないが、子どもの世界は大人の世界の鏡でもある。どこまでこれらのデータを読むか。本書の随所の収められたショートコメントも重要である。(S)



子どものからだと心・連絡会議編集・発行、A4判 176頁、2006年12月9日刊、2,100円
ブックハウス・エイチディ(03-3372-6251)

SPAT─超短時間骨盤矯正法

現代では10時間座りながらパソコン作業や、通勤通学は重い荷物を肩に抱えて働いている人は少なくない。それと同時に自分のからだが思い通りに動かない、痛みがあるなど疑問を感じている方もいるだろう。 骨盤の歪みも人間の生活習慣の歪みから引き起るもので、本書は、誠快醫院院長・鹿島田忠史氏がまとめた豪華版で付録DVDとともに骨盤の矯正とその重要性について触れている。副題は「歪み診断から矯正完了まで5分でできる!」とあり、その内容も専門書のように濃いが、写真や絵を使いわかりやすく説明。著者が故・橋本敬三氏より学んだ操体原理に基づいて開発した簡敏なもので、その成果は現場でも素早く確実な効果が挙がっている。手技療法を専門とする方々はもとより、これからトレーナーを目指す方々の、幅広い知識の獲得また実践の応用にも活かされるのではないだろうか。(M)



鹿島田忠史著、B5判 256頁、13,650円
源草社(03-5215-1639)

上手なからだの使い方

今月号の特集でも登場する未病の治に有効と言われている東洋医学。本書は著者がスポーツ医学の臨床や体育教師の生活で気づいたことを書き溜めたもので、副題は「未病の治を目指して」。 なかでもインパクトのあったのは“脳は一生使い続けても疲れない”という項。詳しい内容については本書を参照していただきたいが、全体を通してからだを動かすことの意味にまで疑問を投げかけ、私たちの“身体”とは何かを考えさせられる。 また最後に「これからの医学は疲れや軽い痛みなど微症状をもっと上手に扱うノウハウを研究すべきだと思います」と話している。たしかに日本の医療は一次予防にシフトし始めている。そういった意味でも東洋医学の研究が進むにつれて、今後世界的にも重要な役割を担っていくのではないか。本書は注目されつつあるこの分野の経験的バイブルのような役割を果たすとともに、西洋医学に携わる方でもおもしろく読める内容になっている。(M)



渡曾公治著、B6判 203頁、2006年10月20日発行、1,785円
北溟社(03-5225-0723)

金哲彦のランニング・メソッド

トレーニング・ジャーナル1月号でも紹介させていただいたNPO法人ニッポンランナーズ理事長・金哲彦氏がまとめたランニングメソッド。専門書にありがちな文字の羅列はなく写真や表もきれいでとても見やすい。副題は「羽が生えたように動きが軽くなる」。私も学生時代は10kmを36分くらいで走れたが、その際のフォームや練習方法がいかに大事かを経験している。この本に早く出会っていればとも正直感じた。
内容も専門的だが運動素人の女性や、中年からランニングを始める方へも勧めたい。たとえば“丹田”と“腹筋”の意識の違いって何かわかるだろうか? 位置的には微妙ではあるが、この微妙なランニング感覚の違いまでを教えてくれるのだ。またランニングにおける傷害や、その対策として栄養面や、ボディケアにも本書では触れ、ここに書き溜められたメソッドを理解するだけで十分満足できるランニング・メソッドを獲得できるであろう。(M)



本書は、ランニングが持つ本来の楽しさを味わってもらい、ランナー人口を増やすことに重きをおいた内容となっている。その楽しさを味わうためには、身体が軽く・疲れない走り方=「正しいフォーム(姿勢・動き)」が必要であり、その必要性が一貫して書かれている。疲れが出たら、ウォーキングに戻るものの、正しいフォームを忘れないように気をつけること。痛みが出たら、フォームに問題があるので、正しい動き・姿勢に気をつける。など、「正しいフォーム」を徹底して教えてくれる。ほかにも、ランナーへのボディケアとして自分の身体に興味を持ってもらい、生活スケジュールにも工夫を入れるコツが掲載されている。
これは、健康のための入門書ではなく、コーチの視点から書いた入門書であるが、中・上級者も一見の価値のある内容となっていることは間違いない。一過性のブームに終わることなく、マラソンを生活の一部に取り入れて、マラソン人口を増やしていこうとする著者の気持ちのよくわかる一冊となっている。(上村聡)



金哲彦著、A5判 159頁、2006年12月5日発行、1,155円
高橋書店(03-3943-4525)

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