本書は経済学者である吉本氏が、生活の裏側から社会のしくみを紐解いている。
とくに私が注目したのは医療費の問題。現在は少子化を受けて、地方自治体で子どもに対する診療費や治療費を無料化にしようとする動きがある。
しかし、医療費が無料となれば小さなことでも診療を受けようと普通の人は考えるはず。また診察を受ければ薬も無料、つまり病院に行けば診察を受けたうえに市販されている薬を買わなくて済むわけだ。こうして単純に症状の小さな患者が増えると、診察時間までの時間が長くなるだけでなく、診察を受けるにあたって長期間を要する場合もある。それに加え日本の医師不足の現状は深刻化をたどっている。病院側も小さな症状を訴える患者が増えるため、あまり収入につながらないというサイクルができてくる。しかもその税金は今の子どもたちに後回しされるだろう。つまり著者が重要視する生活における取引コストは、あまりよくないということだ。
意外とわからないことが多い生活における取引コスト。本書は他にもさまざまな観点で経済を捉えている。私も買い物をする際に、サービスや商品はなぜこの値段なのかと考えるようになった(M)
吉本佳生著、B6判、284頁、2007年9月13日刊、1,680円
ダイヤモンド社(03-5778-7240)
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