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DVD『よくある症状への手技治療──経絡を用いた按摩・指圧の実技』

臨床家が日常的に診ることが多い「肩こり、五十肩、腰痛、膝痛」について、臓腑と経絡の関連に着目して行う手技治療を解説。田中氏の行う按摩は、中国古典医学の臓腑経絡説を重視している。これは胸腹部には12の臓腑があって、それぞれの臓腑が気を発生することによって、胸腹部の募穴、背腰部の兪穴、顔面の感覚器官、上肢に6経、下肢に6経と経絡に気が回ることで人体は生命活動を行っているという考え方からきている。田中氏は募穴を診断に用い、背部兪穴、膀胱経2行線の経穴を治療に用いていると説明する。これらをもとに基本的な治療手順を紹介し、1つの痛みの部位に対し、「患部+背部兪穴+手足の要穴」の3つに治療ポイントを絞り、日常臨床で役立ち、活用できるように紹介している。(T)




田中勝出演、約65分、2008年7月1日刊、8,400円
医道の日本社(03-3341-3470)


DVD『よくある症状への手技治療──経絡を用いた按摩・指圧の実技』
まんが 医学の歴史

この本は医学史を紹介しているものだが、その特筆することは「まんが」で書かれていることである。しかも、そのまんがは、婦人科の医師である著者の茨木氏ご自身で書かれていること。医学部の学生の頃に同人誌や投稿用のまんがを書いていたそうで正真正銘のプロなのである。本書は、月刊誌『看護学雑誌』で「まんが医学の歴史」という連載をはじめたものを、本書の前半を雑誌連載(2003~2005年分32話)、後半書き下ろし(20話)でまとめられたもの。医学のはじまりから、東洋医学の考え、解剖学のはじまり、顕微鏡の発明、日本医学の歩み、抗生物質の発見、DNAの発見、移植医療の進歩、生殖医療の進歩と目次の一部をみていっただけでも、過去から現代の医療まで壮大な物語が1冊にまとめられている。現代の医学がどのように発展し、どのような人たちが関わってきたのか、356頁にぎっしりとまとめられている。(T)



茨木保著、A5判、356頁、2008年3月1日刊、2,310円
医学書院(03-3817-5600)

誰でもわかる動作分析――私もこれで理解できました

この本の著者である小島氏の職業は作業療法士。小島氏は「まえがき」で、地球上の生物は、「ある法則」に基づいて動いており、生物の動きはその「ある法則」で説明できると言う。ただ、物理学や運動学、人間工学の用語を用いると、とたんに難解になる。
そこで簡単に「よりわかりやすく」理解できるようにまとめられたのがこの本である。たしかに読み進めていくと、頁を専門用語が埋めることもなく、実にわかりやすく、イラストを豊富に使い、身近な事柄を例にあげて説明されている。たとえば、ハンマー投げと砲丸投げの動作からわかった「反対の法則」など、思わず、「なるほど」とうなずいてしまう。
序章と最終章を含め、全11章でまとめられ、各章の最後には、まとめが記されている。さらに「実習」の頁があり、読むだけでなく、実際にその法則や動作を体感することもできる。スポーツの動作解析というよりも、小島氏が作業療法士という立場から、人間の動作という点に重点を置いているため、介護やリハビリ、高齢者の動きといった面から説明されている。
動作分析を読み解く「法則」を理解すると、日常の動きだけでなく、もちろんスポーツ動作も理解できる。スポーツの指導にも活かせる。「動作分析は、むずかしそうで……」という方。「私もこれで理解できました!」(T)



小島正義著 A5判、130頁、2008年9月10日刊、2,100円
南江堂(03-3811-7239)

いのちを救う先端技術

副題は「医療機器はどこまで進化したのか」。冒頭、著者は、「医療機器」とは何か基本的なことが理解されていないと言う。「医療機器とは病院や診療所で使われている機器がその主軸を占めるもの」であるが、「医療機器」という言葉はやっと最近になって一般化したとのこと。法律用語としては「医療用具」と言われる時代が長く、政府が名称を変えたのは2005年4月。また「医療機器」は「薬事法」という法律のもとで規制されている。薬の中の小さな項目ということになるか。妙な話ではある。
さて、著者は工学部出身で、医療機器メーカーなどを経て、現在は医療機器開発コンサルタント。サイエンスライターとして著書も多い。
この本に登場する医療機器は、人命探査装置、心電図、ホルタ心電計、心磁計、血流計、脳波計、脳磁計、痛み測定装置など多数あるが、血圧計、体温計も実はそう簡単でないことがわかる。また、百円玉くらいの大きさのチップを貼るだけで連続して体温が計れるようになったそうだ。これは病気だけでなく、スポーツでも使えそうだ。貼った部分の体温をずっとみることができる。いろいろ貼って運動すると、またわかることも多いのではないだろうか。
多数の装置や機器には歴史もあり、発見もある。「医療機器」という冷たい世界が、何か人間味のある温かい世界に見えてくる。おすすめの一冊です。(S)



久保田博南著、新書判、222頁、2008年9月2日刊、756円
PHP研究所(03-3239-6233)

「北島康介」プロジェクト2008

言葉通りの結果と期待以上の感動 北京オリンピックの表彰台に立つ3人のアスリート。中央は一段高いはずだが、頭の位置が皆変わらない。そんな体格的に決して恵まれているわけではない中央のアスリートは、試合前に誰よりも強い眼の光を放つ。自ら世界記録を出して金メダルを獲得することを明言した。周囲の期待を一身に背負っていた。他人には計り知れない重圧の中、その言葉通りの結果を、そして期待以上の感動を見せつける。そんな男にはなかなかお目にかかれない。
本書はその男、北京五輪で2つの金メダルと1つの銅メダルを獲得した競泳平泳ぎの北島康介選手と、彼を支える「チーム北島」についてのドキュメントである。言わずとしれた平井伯昌コーチを軸に、映像分析担当・河合正治氏、戦略分析担当・岩原文彦氏、肉体改造担当・田村尚之氏、コンディショニング担当・小沢邦彦氏という「5人の鬼」が描かれている。2004年に刊行された『「北島康介」プロジェクト』に、新たな取材をもとに加筆され、北京五輪を前に発行されたものである。

勝負の「鬼」
北島選手はまさに勝負の「鬼」と呼ぶにふさわしい眼光を持っている。その彼が「鬼」と呼ぶ平井コーチは、一見すると温和そうな風貌である。しかし、「選手をコーチのロボットにしては駄目だ」「選手はコーチを超えていかないと駄目だ」「選手は勝手に育つんです」「康介の康介による康介だけの泳ぎを考えた」「既存の××理論などに康介をはめたのではない。康介から良いところだけを引っぱり出すために何かをプラスしたのではない。余計なものを削ぎ落としてシンプルにした」といった語録を見ると、確固たる己の人生哲学を基礎にコーチングしていることがわかる。
もちろんこれらの発言そのものではなく、それを北島康介というたぐいまれなるアスリートの中に昇華させたことが凄いところだ。100mと200mがまったく別物だという水泳界のそれまでの定説を「やり方しだい」と考えを巡らせたことや、一般的には欠点とされる身体の硬さを、逆にどう活かすかという工夫につなげたエピソードなどにそれが垣間見える。そのほかにもさまざまな観点から北島選手をサポートし育て上げるチームの奮闘は読み応えがある。それにしても0.1秒の違いを身体で感じ取る感覚が必要になるのだから、常人には理解できない世界である。

チームの相乗効果
いわゆる集団競技でも、強いチームは選手やスタッフの巡り合わせがいい。互いの相乗効果でチーム力が期待以上に上がるからだ。チーム北島は高いプロ意識と実力を持った専門家の集まりだが、このチームの相乗効果というものがどれほど凄まじいものだったかは、その結果を見て推して知るべし、である。もちろんアテネ五輪以後の4年間だけでもその過程で失敗や苦悩がどれだけあったのか想像もつかない。
そんなことを考えると、「よくやった」と気安くほめることさえはばかられる思いがする。ただただ感動するのみ。たとえどんな結果であったとしても、それは国を代表して五輪に参加した多くのアスリートに対しても同様である。(山根太治・日体協公認AT、鍼灸師)



アテネオリンピックと北京オリンピックにて、2大会連続で100m平泳ぎ、200m平泳ぎの2種目共に金メダルを獲得した北島康介選手。そのメダルの陰には、通称「チーム北島」と言われる各分野のスペシャリストである5人のスタッフの存在があった。
本書では、コーチである平井氏と北島選手が出会ったときから、アテネオリンピックで金メダルを獲得するまでのスタッフ5人と北島選手の努力の日々が描かれている。
北島選手とコーチである平井コーチが出会ったのは、北島選手が14歳のとき、特別泳ぎが速いわけでもなく、体格も決してよいとは言えない平凡な選手の一人であった。ある日、平井コーチの仕事先でもあり、北島選手が通っていたスイミングスクールで二人が会話をしたとき、「何者も恐れないというような光のある眼」に将来性を強く感じ、平井コーチは北島選手を育てることを決心する。その後、北島選手をオリンピック選手に育てるため、平井コーチに加え、映像分析、戦略分析、肉体改造、コンディショニングのスペシャリストが立ち上がり、アテネオリンピックで金メダルを獲得するまでのそれぞれのスタッフから見た北島選手の当時の様子やスタッフの率直な気持ちが描かれている。
チーム北島と言われる5名のスタッフも、オリンピックで戦う選手を支えている立場だからこそ感じるプレッシャーや不安や苦悩の日々があったことを改めて感じとることができた。また、北島選手自身もメディアでは映し出されていない、大会前後の気持ちや想像を絶するような努力の日々が描かれている。
このように、選手からスタッフまで、さまざまな視点から描かれている1冊である。
(清水歩)



長田渚左 著、239ページ A6判、599円
文藝春秋

岩崎トレーナーのテーピングテクニックのすべて

NECレッドロケッツ(女子バレーボールチーム)のアスレティックトレーナーである岩崎由純氏(NATA公認アスレティックトレーナー)が、シリーズ1「足部・足関節をきわめる!」として、足部・足関節における基本と応用を紹介したDVD。テーピングの切り方のコツから治療院で応用できる簡単な巻き方、さらにトップアスリートに施すテーピングのテクニックやひとりで巻くときのポイントまで詳しく解説している。足部や足関節はどの競技でも、受傷しうる部位である。アスレティックトレーナーはもちろんのこと、これからアスレティックトレーナーを目指す学生、さらには競技スポーツに携わる指導者にも参考になる内容となっている。(T)





岩崎由純出演、約88分、2008年8月11日発売、8,400円
医道の日本社(046-865-2161)


岩崎トレーナーのテーピングテクニックのすべて
iPS細胞ができた!

1996年クローン羊「ドリー」の誕生のニュースは全世界を震撼させ、次いでES細胞(胚性幹細胞)が発表された。再生医療への研究はさらに進み、2007年11月20日、山中伸弥教授のチームがヒトの皮膚からのiPS細胞(人工多能性幹細胞)作製成功を発表した。 ES細胞もiPS細胞もどちらも、期待されている再生医療であるが、ES細胞は受精卵を壊して使うもので、受精卵を使用することから倫理面と他人の細胞を使うため拒絶反応の問題があった。一方、iPS細胞は皮膚細胞など自分自身の体細胞を使用するため拒絶反応がない。したがって、自分の悪くなった臓器の細胞をiPS細胞から再生することで、将来的に自分の細胞で病気を治すことができるようになるのではないかと注目されているものだ。本書は、このiPS細胞を研究し作製に成功した山中伸弥氏と京大ウイルス研究所所長などを経て現京大名誉教授の畑中正一氏との対談で構成されている。一見難解な話も読み進めていくうちに、決して楽ではなかった研究の過程やiPS細胞を発見したときの喜び、これからの再生医療に対する思いなど、山中氏の人柄が聞き手の畑中氏によって引き出され、読者もワクワクした気持ちで引き込まれていく。また、文字が大きく読みやすい装丁で最後まで飽きずに読むことができる。最先端医療の未来を感じる一冊である。(T)



山中伸弥、畑中正一著、B6判、166頁、2008年5月31日刊、1,155円
集英社(03-3230-6080)

ACL損傷予防プログラムの科学的基礎

ACL(前十字靱帯)損傷は、1970年代後半、世界が競って診断と治療を研究した分野であり、スポーツ整形外科最大のトピックとして受け止められたと言ってよいだろう。
その診断と治療については、一定のレベルに達し、当初は一部の医療機関でしか実施されていなかった関節鏡手術は今や多くの医療機関で行われるものとなった。
しかし、いかにACL損傷の治療が進んでも、復帰までには半年はかかり、その間のブランクは大きい。やはり受傷しないですむのが一番なのは他の疾患と変わりない。
そこで現在は本誌でも紹介したように、その予防プログラムの研究開発が各国で盛んに行われ、わが国でもいくつかのプログラムがスタートしている。その科学的データをレビューしたのが本書である。
スポーツに通じた理学療法士が集まり、世界中の文献を渉猟し、報告し合い、それをまとめる作業の成果がこの1冊である。ACL損傷の疫学・重要度、危険因子、メカニズム、予防プログラムの4章に分けて整理されている。何かと参考になる1冊と言えよう。(S)



福林徹、蒲田和芳監修、B5判、150頁、2008年5月12日刊、3,150円
ナップ(03-5820-7522)

スポーツ傷害のリハビリテーション

昔読んだ原書に「スポーツ医学とは結局リハビリテーションのことである」というようなくだりがあった。言いすぎではあるが、的を射たところもある。診断・治療・予防というなかで、近年は「予防」への関心が高まりつつある。右に紹介するACL損傷の予防に関する本もその流れにあると言ってよいだろう。
だが、実際にはケガしたアスリートや愛好家の治療が優先する。受傷の瞬間からリハビリテーションは始まるという考え方もあり、アスリートにとっても競技復帰にはいかにリハビリテーションを適切に行い、その後のトレーニングを行うかがキーになる。
本書でも、「特に重要な位置を占めるのがリハビリテーション」と言いながらも、医師と理学療法士をはじめとするリハビリスタッフの意思の疎通が十分でない点を指摘する。また、リハビリの手法や方針がともすれば経験的・慣習的なものに頼っていたり、独善的なものに陥りがちだと言う。
そこで、「科学的理論や根拠」を大事にし、神経生理学、バイオメカニクス、運動生理学などの側面から最近の知見を解説し、アスレティックリハビリの実際について、部位ごとに、整形外科医が解説し、それを受けて理学療法士が手技やストラテジーを解説するという形式をとっている。326図、2色刷り(一部4色刷り)でわかりやすい。(S)



ジェリー・リンチ 著、水谷豊・笈田欣治・野老稔訳、321頁 B6判、1,890円
大修館書店

察知力

著者は世界で活躍する中村俊輔選手。ケガに見舞われた時期もあったが、今もなお輝かしい姿を見せている。そんな中村選手が成功へ向かうとき、必要なものと掲げるのが「察知力」だ。 高校2年生のときからつけているというサッカーノート。壁に当たったときにこのノートを開くからこそ、人生の無駄な時間を省くことができると記している。また自身の海外生活についても「言葉が話せなくても、チームメイトとその場にいることが大切」と、海外では自分から飛び込んでいく姿勢が大事であるという。ケガをした際の苦しい経験についても「いまできることと、できないことを認識した上でフレキシブルな状態を維持しなくてはならない」と、ケガを負ったときの柔軟な姿勢を保つなど、自身の考えをまとめている。 普段は無口な印象の中村選手。何より本書を通して驚いたのは自身のサッカーに対する哲学である。学ぶところはかなり多い。是非一読願いたい。(M)



中村俊輔著、新書判、213頁、2008年5月30日刊、777円
幻冬舎(03-5411-6222)

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