日本のプロ野球界では、1960年代から外国人選手を「助っ人」と呼ぶようになった。その頃、著者である牛込氏は大洋ホエールズ(現横浜ベイスターズ)の球団通訳として外国人選手と関わっていたが、熱心な仕事ぶりを買われ、その後スカウトとして活躍することとなる。
プロ野球の勝負を盛り上げてくれる外国人選手は、正にチームの「助っ人」である。現在は各球団に外国人の主力選手が名を連ねているが、当時は外国人選手を獲得するためのネットワークも少なく、スカウトとして活動し始めた頃は選手の情報集めや、交渉は非常に困難だったそうだ。さらに、著者は野球の経験もなければ専門的な知識もほとんどなく、通訳とスカウト業務をする中でその知識を得ていき、人脈を広げ、選手やスタッフへの細かい気配り・心配りで信頼を得ていった。
著者は、別の仕事でアメリカに行っても、車で5~6時間程度の距離に目にかけている選手やお世話になっている人がいれば、足を運んで先方に会いに行ったという。これは1つの例だが、こういった努力が身を結んで、数々の名選手を球団の助っ人として獲得し、結果を残してきた。
どの職業でも、よい仕事をして結果につなげるには相手への気配りや身を削ってでも相手のために動く積極性、何より熱意が必要になる。本書はこれらの大切さを教えてくれる。
日本のスポーツ界で、トップレベルの「勝負の世界」の舞台裏を支えた著者の経験や思想を、われわれも仕事で活かすことができれば、結果につなげるための財産となるだろう。
(山村 聡)
牛込惟浩 著
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