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1日5分!「座り」筋トレ―超簡単「貯筋」運動のススメ

スポーツ科学の第一人者として多くの筋を測定してきた福永氏による、一般向けに平易に書かれた本。普段の生活の中でトレーニングを行うことは可能であり、日本人は「貯筋」運動をすべきであるという趣旨である。
 可能であればトレーニング指導の専門家がついて指導したほうがよいとしながらも、時間的・経済的に難しい場合は、何かをしながら立つ、座るといった簡単な運動をすることで十分に筋を鍛えていくことは可能であり、その刺激により、QOL(生活の質)を高めることができるという




福永哲夫 著 190ページ、新書判、879円
講談社

基礎から学ぶ!スポーツ救急医学

強烈な原体験
 高校時代に所属していたラグビー部は弱小の割に練習は厳しく、毎日早朝練習も行っていた。その日もあくびをこらえながら最寄り駅から電車に乗り込もうとしていたら、近くに住むチームメイトの母親がそんな時間に電車から降りてきて、私の姿を見るなり泣き崩れた。そしてそのチームメイトが明け方に泡を吹いて全身痙攣を起こし、病院に救急搬送されたと聞かされた。
 彼はその1週間ほど前に練習で頭を打ち脳震盪を起こしていたが、その後も頭痛をこらえて練習に参加させられていた。慢性硬膜下血腫、と今ならわかる。この仲間としての罪悪感を伴う強烈な事件が、アスレティックトレーナーを目指した私にとっての原体験と言っていい。

重篤な傷害への処置
 さて、埼玉医科大学総合医療センター救急科の輿水健次氏による本書は、基礎から学ぶスポーツシリーズの一冊で、RICE処置を中心にした応急手当の本とは一線を画し、選手の命に関わる重篤な傷害に対する救急処置に多くのページが割かれている。「基礎から学ぶ」シリーズとはいえ、CPRの方法やAEDの使用法、突然死や心臓振盪などその内容は、少なくとも日本赤十字社や消防署が主催する救急救命講習会に参加したうえで読むほうが、なるほどとうなずくことは多いはずだ。あるいは本書に出会うことでそのような講習会に参加しようと考える人が増えればなおいい。また、事故防止についての一節も必読である。
 確かに、スポーツ現場で起こる傷害のほとんどが、簡単な創傷の手当やRICE処置でまかなえるものである。しかしスポーツ現場に関わるものは、本書に書かれた内容は熟知しておくべきである。冒頭の話は今から30年近く前の話であり、真夏の炎天下でも水分補給がほとんどないまま練習していたあの頃に比べれば、選手の健康や運動に伴うリスクに留意する指導者が圧倒的に多いと言えるだろう。しかし時折報道されるように不幸な事故はいまだに起こり、指導者にもっと知識と自覚があれば、あるいは準備されるべきものがあれば、もしかしたら防ぎ得たのではないかと感じることもあるのだ。

アスレティックトレーナーの役割
 アスレティックトレーナーはそのようなアクシデントを未然に防ぐことがその重要な役割であり、何か起こったときには最善の対応ができなければならない。そのためには知識と技術を身につけることは言うまでもないが、さらに重要なことはそのような状況において最善の判断をし、よどみなく動けるかということだ。
 1989年、NHLのあるゲーム中にゴールキーパーであるClint Malarchukの喉元を対戦チームの一選手のブレードが襲い、頸動脈が損傷されるという事故が発生した。
 吹き出した血液が氷上にみるみる血溜まりをつくる中、彼のチームのアスレティックトレーナーは一瞬の迷いもなく、出血部に手を入れ止血を試みた。そして他の幸運も重なり、奇跡的に同選手は命を取り留めた。
 この事故について学んだとき、果たしてこの動きが自分にできるかどうか、戦慄を持って覚悟させられた。そして現場にいるときには、先の原体験も併せて、良くも悪くも常にある種の怖さを感じていた。一生このような状況に出会わない指導者やトレーナーのほうが多いだろう。しかし選手の命を預かっているという自覚の元に最善の対策を講じておくことが必要だ。  蛇足ながら、緊急開頭手術をうけた冒頭のチームメイトだが、結婚を2回もし、子どもを3人ももうけているくらい元気に過ごしていることは幸いである。
(山根太治・日体協AT、鍼灸師)



輿水健治 著 176ページ、A5判、1,680円
ベースボール・マガジン社

解剖学教室へようこそ

大昔、人間の身体の構造は何もわからず、解剖をしてそれを描写するところから始まった。もちろん、臓器の名称、役割などもわからないまま何もないところから解剖が始まり、努力の末、少しずつ現在まで発展してきた。
 本書では、解剖学の歴史とともに養老氏のものの見方が理解できる。「なぜ解剖をするのか、だれが解剖を始めたのか、何が人体を作るのか」。このようなことは改めて考えはしないかもしれない。しかし、ただ単に人体の構造と機能を理解するだけでなく、現在に至るまでの過程を知ることよって、さまざまな視点から人体について見ることができるようになるであろう。
 他にもさまざまな解剖に関する本を出版されているが、本書には養老氏の原点があらわれているように思う。
(清水 歩)



養老 孟司 著
筑摩書房

天才キッカー岩本輝雄のサッカーキックバイブル

サッカーの本場ヨーロッパで「うまい・賢い」と呼ばれる選手は日本のそれとは少し異なる。日本の場合はいわゆる足技に着目するが、ヨーロッパでは、どのような状況でもしっかりボールを止めて、蹴ることのできる選手を指すことが多い。この著書は、世界レベルを実体験として持っておられる岩本輝雄氏ならではの構成となっている。
 岩本氏と言えば、日本代表に選出された94年以降、キック・シュート力の素晴らしさが群を抜いていた。今の若い世代の選手にはわからないかもしれないが、現在のJリーグの選手と比較しても、そのシュート力には目を見張るものがあった。  その岩本選手が現役時代、とくに重要視してきたキックとトラップのバイブルがこの著書である。本の最初に「止める、蹴るができなくては話にならない」と強調するほどこだわってきたキックとトラップ。そのトレーニング方法、各キックにおけるポイントとアドバイスが細かく説明されている。たとえば2種類のインステップキックに関しては、どの場面で用いるのか、という使い分けについても説明されており、キックと動作をうまく行うだけでなく、試合の中でそのキックをどのように活かして行くのか、という点まで考慮されている。この点は、選手のみならずサッカーを根本から理解したいと思っているトレーナー、トレーニングコーチの方にもお勧めである。
 また、DVDによって文中の説明を動作として見ることもできるため、とくにサッカーを始めたばかりの選手には教本ともなり得る1冊である。
(太田 徹)



岩本 輝雄 監修
カンゼン

ハ-トで感じるストレッチ――からだの声に耳をすませば女はもっと輝く

ストレッチといっても、拮抗筋を収縮させて行うものとは違い、骨盤や肩周辺を動かしてやろうというもの。リンパも流れてすっきりするだろう。左右のゆがみもなくなり、こりもほぐれるだろう。
 本を片手に行えるのは手軽でいい。覚えてしまえば、お気に入りのリラクゼーション系音楽でもかけて、ゆったりと行える。自分自身と向かい合い、内面を見つめながら行え、効果も高まるのではないだろうか。気持ちのよい身体を手に入れると同時に、心もストレスから解き放たれそうだ。
 白地に可愛いハート、ピンクの帯は、見ているだけでもやさしい気持ちになれる。デスクワーク中心のOLさんや、小さな子どもがいて自分の身体に気を遣ってあげることを忘れがちな若いお母さんへのプレゼントにもいいかもしれない。
(平山美由紀)



松本 義光 著
ハートフィールド・アソシエイツ

子どもの運動能力を引き出す方法~親子遊びと姿勢チェックが第一歩~

コーディネーショントレーニングとコンディショニングを中心に、その意味や重要性を丁寧に解説している。親向けの本にしては専門的な言葉が多く、とっつきにくい感じを受ける方もいるかもしれないが、それでも頑張って読んでみてほしい。それだけの価値のある本だろう。
 私が思うに、コーディネーショントレーニングとコンディショニングの共通点は、どちらも即効性がなく効果がわかりにくいが、それでいてとても重要な要素であることだ。だからこそ、日々の小さな積み重ねが、後々の大きな差となって現れる。
 本書では、親子での遊びやスキンシップを通して、子どものコーディネーション能力を高めたり、正しい姿勢を習得できるよう、さまざまなメニューが紹介されている。
 ただ、私も3児の父であるが、経験上、親が子にこのような”指導”を行うことは非常に難しいだろうと思う。なぜなら、親は子どもの能力を高めてやろうという狙いをもって接しているが、子どもは純粋に親と遊んでいるだけであり、つまらなければ違う遊びをせがむからだ。子どもからすれば、せっかく楽しく遊んでいるのに、親がコーチ面をしてあれこれ指示を出してくるのがうるさいのかもしれない。
 ならば、親も純粋に子どもたちと遊べばよい。
 本書にあるような遊びのメニューや理論的背景を踏まえつつ、とにかく親子で体を動かして思い切り遊ぶ。これに勝る幼年期のトレーニングはないように思う。親の役割は、子どもに、身体を動かして遊ぶことの楽しさを伝えることである。
 親に必要なのは、一にも二にも体力なのだ。
(尾原陽介)



佐藤 雅弘 著
高橋書店

平泳ぎが速くきれいに泳げるようになる!

水泳の中でも平泳ぎに的を絞って、大変わかりやすい指導書となっている。前半部はまず水に慣れ、恐怖心なく呼吸ができることを主眼としたメソッドを紹介。パート2では、ありそうでなかった、具体的な平泳ぎの悩みに答える形式で、初心者が陥りがちな平泳ぎの悪い癖を1つ1つ丁寧に解説し、解決法を提示している。
 しかしこの本は決して初心者向けだけではない。パート3では一気にレベルが上がり、アスリートレベルが水中での運動感覚を体得し、より楽に速く泳げるようになるためのテクニックや方法を惜しみなく紹介していく。効果的な力の入れ方と脱力のテクニックの要素を含め、この指導書の内容は具体的で説得力がある。
 スポーツの現場に携わっていると、陸上でのスポーツ、とくに球技スポーツを専門とするアスリートは、意外に水泳が不得手であることに気づく。ここ数年はクーリングダウンとして水の浮力を用いた効果が注目されているだけに、この傾向は積極的休息の一手段として、水泳を用いようとする指導者にとって芳しくない。そのような選手たちの指導にも十分に活用のできる本である。
 最終章であるパート4では、非常に簡易ではあるがトレーニングやコンディショニングについての説明もされている。普段運動を積極的に行っていない一般の人々向けに、自宅で気軽にチャレンジできる種目を紹介している。付属のDVDも非常にわかりやすいため、抵抗なく平泳ぎにチャレンジしていくには、うってつけの本かもしれない。
(弘田雄士)



高橋雄介 著
高橋書店

からだの不思議――だれでもわかる解剖生理学

身体に対する興味を引き出すのに、とてもよい読み物だ。
 そこで、本書を病院、医院、また整骨院などにおいてみてはどうだろうか。口、胸、腹、尻、頭脳、四肢などについて、普段疑問に思う事柄を各章ごとに答えてくれる。読みきりなので、どこから読んでも理解できる。待ち時間のうちに1つ2つ知識が深まるだろう。
 本書は、もともと看護学生を対象にした『クリニカルスタディ』という雑誌の連載から始まっており、専門用語も出てくるが各ページごとのイラストはとてもわかりやすく、絵を見ると文章を読みたくなる。ふりがながあるともっと読者層が広がるのに。
 筆者も書いているように、「生理学」「解剖学」と難しく構えないで、「身体って面白いな、よくできているな」と自分の身体をいとおしく思うことから始まれば、さらにつっこんで調べてみたくなるだろう。
(平山美由紀)



坂井建雄 著
メヂカルフレンド社

跳び箱ができる!自転車に乗れる!

この本は、前作「かけっこが速くなる!逆上がりができる!」に続く第2作目と して出版されている。
 今回のテーマは「あそび運動」をテーマとしており、私たち大人も身に覚えのある、“昔遊び”がいくつも紹介されている。しかし、昔懐かしい遊びが単純に紹介されている本ではなく、「あそび」を手法として子どもたちの発育発達に役立つ運動プログラムを分かりやすく説明してくれている。
 とくに興味深いのは、子どもたちに気づきを与えるための「コツ」が整理されていること。私たちが子どものころにつかんだ「動きの感覚」を「理解しやすいフレーズ」で言い直し、さらに段階的に学習できるよう組み立てて紹介されている点はとても興味深い。
 スポーツや人体の仕組みについて知識の少ない、お父さん、お母さんたちが子どもと一緒になって読むことのできる「体育の自習本」として十分活用できる内容である。
 その一方で、スポーツに携わる専門家にとっても参考になる部分が多い。それは、指導をする側のわれわれが「ついついやってしまう失敗」を紹介していることである。子どもの「気づきを待てるかどうか?」は、専門家だからこそ振り返っておきたい点だと感じている。
「一つの動きを5個の言い方で説明する(できる)」というフレーズも紹介されている。日頃から、伝えるための工夫について試行錯誤をするのだが、単純な表現ながら子どもの心に届く核心をついている。子どもに興味を持たせ続けることは実に難しい。  子どもたちが自分から望んで身体を動かそうとする場面をつくり、タイミングよくアイコンタクトを行うことが(文中では、「指摘せずに、ほほ笑む」と表現されている)、われわれの指導場面にも重要な要素として再認識させられた。
 本書は、子どもの身の丈、子どもの目になって関わりたい、と心から感じさせてくれる一冊として、ぜひ広くお勧めしたい。
(青島大輔)



下山 真二 監修
池田書店

基礎から学ぶ!筋力トレーニング

パーソナルトレーナー資格取得のために、理解を深める参考書としてもってこいではないだろうか。
 まず、冒頭では筋力トレーニングの効果が述べられ、筋肉の基礎知識へと入っていく。現代はこんなところまで一般の人が知り得るのか…、と指導する側の質(知識)の向上の必要性を感じさせられる。
 次のプログラム作成方法は、基礎事項、一般向け、選手向けと、対象や目的に応じた例が多種紹介されている。
 そして、実技編では基本事項と実技に分かれ、豊富な写真はスタート、フィニッシュ、NG、そしてバリエーションや補助の仕方も載っている。一部位のトレーニングでも、マシーンやダンベル、チューブ、自体重など、ツールもさまざまに紹介されていて、多様なシーンでの指導にすぐ役立ちそうだ。もちろん自分のトレーニングのバイブルとしてもグッドだ。これで1600円は安い。
(平山美由紀)



有賀 誠司 著
ベースボール・マガジン社

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