トップ > フォーラム > ブックレビュー > バックナンバー

筋肉バランストレーニング

タイトルにある筋肉バランスを本書では筋力をつけるための「筋強化(Contract)」、柔軟性を高めるための「ストレッチ(Stretch)」を融合させ、同時進行でトレーニングすることによって筋肉の状態をよくしていくと記している。  本書はPart1「理論編」、Part2「実践編・カテゴリー別」、Part3「実践編・動作別」の3つのセクションと日常動作でできるかんたん筋バランスチェック法から構成されている。
 チェック法から静的なトレーニング、動的なトレーニングという流れになっており、各トレーニングの写真はよいフォームと悪いフォームが同じページに記載され、わかりやすくなっている。さらに、悪いフォームのときの対処法まで記載されているところが勉強になる。  単純にトレーニング法を紹介しているのではなく、さまざまなチェック法を知り、そこから実践的なトレーニングへつなげることができるので、トレーナーの価値を上げられる1冊になっている。
(長谷川大輔)



佐藤 拓矢 (著)、 安藤 邦彦 (監修)

健康とスポーツ

本書は、玉川大学の体育教員が授業で使用している資料をまとめ、一般教養としても役立つよう、テキストとして出版したものである。健康やスポーツに関して幅広い項目が採用されており、たとえばフィットネス、タバコや薬物乱用、筋生理学、トレーニング、スポーツ傷害と予防法、救急処置がある。それぞれ簡潔にわかりやすく説明している。
 デンマーク体操や体育祭なども取り上げられ、玉川大学における体育教育が感じ取れる内容となっている。



玉川大学教育学部編

インナーマッスルを使った動きづくり革命 Part1

 現場でのトレーニング指導歴20年を超える森川氏が、現場で試行錯誤を繰り返す中で、コツコツと積み上げてきた経験をわかりやすい表現で紹介している本である。PART1と銘打っており、現在も引き続き連載中の内容を最初にまとめたものとなる。
 今回は下肢、とくに垂直方向へアプローチするジャンプを中心とした切り口になっているが、実体験をもとにした説明には説得力がある。できるだけ自身の感覚を正確に表現しようとして、より専門用語が増えてしまっている感はあり、難解な部分はあるかもしれない。それでも現在、通りいっぺんの指導になっているという危機感を持つ指導者には、十分刺激を受け得る一冊だ。
 評者も股関節の小殿筋に対するアプローチなどは、大変新鮮で早速現場指導に取り入れたいと考えている。
 今後は水平方向での切り返し動作や、体幹と融合した肩甲骨や上肢の動きなどにおいても、存分に現場でのトライ&エラーを反映した内容を提供してくれるに違いない。今からPART2の出版を楽しみに待ちたい。
(弘田雄士)



森川 靖 著

使える強い筋肉をつくる

 「筋トレ=動けなくなる」
 そう思っている、選手やコーチは現場ではまだまだたくさんいる。
 「なぜ、筋肉をつける必要があるのか」「使える筋肉にするには、どうしたら良いのか」、そんな疑問へのヒントが非常にわかりやすく書かれている。DVDで実技を紹介してくれているのもありがたい。
 トレーニングに決して王道は無い。しかし、ここで紹介されたものを実践し続ければ「デカくて、強くて、使える」最強のアスリートボディに近づくのは間違いない。
(森下 茂)



谷本道哉 著

ようこそ、これからのSkin Careへ

 “SkinCare”と聞いて、男性(もしくは女性の中にも…)は“自分には関係ない”“興味がない”なんて思う人もいるかもしれない。
 しかし本書には、そんな人も気軽に読めるように1月〜12月と季節毎にテーマを変えたり、対談形式にすることで読みやすさを増している。
 量的には少し多いと感じる部分もあるが、細かいセクションに区切られているため興味を持ったセクションだけを見ることができるし、スポーツとスキンケアの関係や、男性の髪やヒゲの悩みについてのセクションもあるため、男性も十分楽しめる内容となっている。
(藤井 歩)



上田由紀子 著

キッズテニス −「好き」を見つける 「楽しい」を育む−

 キッズテニスのメニュー例が示されているが、ハウツー本ではない。本書は、なぜキッズテニスなのか、キッズテニスを通じて何をどうしたいのか、という著者の考えが詰まっている。その答えの1つとして「総合型地域スポーツクラブ」が挙げられており、著者はそれを理想としている。
 しかし、本書の発行は2004年。末端のスポーツ現場にいる私は、現在、総合スポーツクラブは早くも転換期にきていると感じている。地域に根づいた多種目多世代コミュニティーとしての「総合型地域スポーツクラブ」が提唱され、行政の後押しもあって各地で競うように設立されたが、理念のみが先行し、運営が立ち行かなくなるクラブや矛盾を抱えて立ち往生しているクラブが増えてきている。そして、これからはクラブの淘汰・再編・統合が進むだろうと感じている。
 なぜ、そうなってしまったのか? 多くの総合型スポーツクラブはその目的が「総合型スポーツクラブの設立」だったからだと思う。総合型スポーツクラブを通して何をしたいのか、という目的も無くただヨーロッパのシステムを模倣した結果なのだろう。
 また、「子どもの頃はいろんなスポーツをやるとよい」と言われ、スポーツクラブを掛け持ちする親子も多い。親も子もヘトヘトだ。さらに指導者も困る。うまいけど他のクラブとの掛け持ちで練習を休みがちな子と、下手だけど毎日真面目に練習にくる子と、さあ、先発メンバーに選ぶとしたらどっち? 確かに「総合型スポーツクラブ」なるものが各地に存在するようにはなった。しかし、どこかで何かを履き違えてしまったような気がする。果たして、著者が見た夢は実現したのだろうか。そんなことを考えながらこの本を読んでみるのもよいと思う。
(尾原陽介)



伊達 公子 著

「体幹」ランニング

 一昔前までは、一部アスリートや指導者、トレーニング愛好家にしか馴染みのなかった感のある「体幹」という言葉だが、現在では一般のフィットネス現場においても形を変え品を変え、頻繁に耳にする。部活動の練習で顧問の先生が「もっと体幹を安定させて!」などと声をかける場面や、フィットネスクラブで「コア(体幹)○○」と命名されたスタジオレッスンに接したことのある人は少なくないだろう。
 本書もそんな「体幹」を身近なテーマとした一般ランナー向けのランニング指導書である。著者はさまざまなメディアでもお馴染みのランニング指導の第一人者、金哲彦氏。氏のマラソン中継での解説などと同様、一般ランナーの目線に立った平易で分かりやすい語り口で、ランニングにおける体幹の重要性やそこを上手に使うためのトレーニングなどを解説してくれている。
 とは言え、多くの一般ランナーにとっては体幹を意識して走る、といきなり言われてもなかなかピンとこないであろうし、昨今のランニングブームの中でもそうしたフィジカルな部分とテクニカルな部分双方に興味を示している人はまだまだ少数派だろう。ともすれば、文字通り(?)「コア」なランニングファンのための一冊になってしまう可能性もある。が、本書はその部分を豊富な写真やイラスト、日常生活の中で行えるエクササイズ紹介などをふんだんにちりばめることによって回避し、むしろその入り口のハードルを下げることに成功している。言わば、「難しいことを簡単に伝える」というスポーツ指導、トレーニング指導の現場における恒久的な課題を軽快にクリアしているのである。
 一方で、フォースプレートによる接地時間の計測データや、3カ月ピリオドでフルマラソン向けに期分けされたトレーニングプログラムなどが掲載されている点も大きなポイント。こういった部分は先ほど述べた「コア」なランナーも十分興味をそそられる内容のはずである。コストパフォーマンス(1200円)という面から見ても、多くの一般ランナーに対しての「推薦図書」として紹介したい一冊。
(伊藤謙治)



金 哲彦 著

若さを伸ばすストレッチ

 ストレッチは「できる、できない」ではなく、「やるか、やらないか」。やり続けることができるかにかかっている。
 モデルは柔軟性の高い女性ではなく、体のかたいフツーのお父さんのイラスト。「これなら自分にもできるかも!」と思わせられる。ストレッチとは何か、体が柔らかいとなぜいいのかを、最新の運動生理学に基づき、わかりやすくのべている。
(平山美由紀)


 伊藤氏によると、ストレッチングが苦手になる理由の1つに、ストレッチに関する書籍のモデルが、柔軟性が高いために、写真のような姿勢が取れないことではないかということから、あえて身体の固い人を起用してイラスト化している。
 本書では、わかりやすい言葉や、具体的な例、Q&A方式を用いて、ストレッチングの意味や理論的裏づけ、活用場面に応じたストレッチングの具体的な方法について述べる。
 若さを保ち、より伸ばしていくためのストレッチングということを一般向けにまとめている。

 

伊藤マモル 著
193ページ、新書判、756円
平凡社

世界でただ一人の君へ ~新人類北島康介の育て方~

 これは水泳コーチのみならず、部下を持つ人、子を育てる人、あらゆるスポーツの指導者、あらゆる芸術の指導者、人を育てることに関わる全ての人が読むべきドキュメンタリーである。
 2004年アテネオリンピック金メダリスト北島康介選手。今や誰もがその名を知るトップアスリートである。しかし、北島選手は最初から「金メダリスト」であっただろうか。生まれながらにして金メダルを取れると約束された人など、この世に誰一人として存在しない。では、なぜ彼は「金メダリスト」となり得たのか。彼と関わるすべての人、そして指導に当たった平井コーチが彼の能力を見出し、その能力を伸ばしたことにほかならない。
 そして、平井コーチの指導から見えるコーチングの神髄とは人間性である。人を育てるときに、何よりも見落としてはならないものではないだろうか。金の卵を育てるためには、相手を信じ、相手とともに長期戦を戦い抜く努力と根気を惜しんではいけないことに気づかされる1冊である。
(梅澤恵利子)



平井伯昌 著

ジュニアサッカーコーチングメソッド

ゴールデンエイジと呼ばれる年代があり、神経系発達の著しい時期で将来のポテンシャルに大きく影響することは知られている。そんな大事な年代へのコーチングが具体的かつ豊富な経験談から綴られている。
 サッカーのコーチングにおいてジュニア期をさらにU-6年代、U-9年代、U-12年代と区切り解説してある。初めにジュニア期の全体を通した特徴やコンセプトについての総論、次に3つの年代の各論へと続き、理論の後に具体的なトレーニングメニューの紹介といった流れになっている。
 各年代での特徴や相違点などが、心理面と身体面の双方からはっきりと述べられておりわかりやすい。サッカーの指導はもちろんだが、土台となる人間形成における教育やトレーニングに対して楽しむ(Fun)という気持ちを育む重要性を念頭におき、その他の要素を展開している。
 著者の海外での豊富な経験から、日本と各国の違いや多様なトレーニングメニューが記載されている。トレーニングメニューはアレンジ次第で他の競技でも用いることが可能であり、ジュニア期を指導するさまざまな競技の指導者の方々にはぜひ、読みこなしていただきたい1冊である。
(池田健一)



平野 淳 著

気象で読む身体

「腰が痛むからもうすぐ雨が降る」たまにこんなことをいう人がいますが、雨の日とか寒い日とかには痛みを持つ人は敏感になります。世間一般では漠然とこのような話を聞きます。ところが先端医療の現場で気象との兼ね合いで治療を進めるといった話はあまり耳にしません。基本的に気象という条件は考慮されることがないというのが現状のようです。本書は気象と人の身体の関係をテーマに具体的な問題について多方面から分析をしています。
 意外に古くから気象と身体の関係については研究があったそうです。20世紀の初めのころから世界各地でさまざまな試みがされていて、ドイツでは医学気象予報が現実にあるのを知り、驚きました。わが国でも気圧と喘息の因果関係の研究が進み、馴染みの深いところでは天気予報の花粉情報も気象と身体の関係をわれわれに教えてくれます。
 このように一部で研究が進む一方、本書では医学者が身体を気象から切り離し天気という条件に目を向けることがないのでさらなる実用化が進まないという問題点を指摘しています。曖昧なものは対象としないという現代医学の性格上やむを得ないかもしれません。また病気を治すということが第一義的になる半面、健康を維持するという予防医学がどうしても遅れがちになるという面も指摘します。  それでもヒポクラテスの時代から気象と身体の関係について考えられ「生気象学」という学問が近年生み出され、気象と身体の関係が科学的に研究され、進行中とのこと。われわれの日常生活とは切っても切れない冷暖房と身体の話、自殺と季節の関係、誰もが知りたい脳卒中になりやすい環境など、読めば読むほど興味深い項目がいくつもあります。
 もっと知りたいことがたくさんあります。本書では研究が例示的に紹介されるにとどまり、なるほどと思うような理論や仮説はありません。おそらくまだまだ解明されていない事柄も多いのでしょう。そういう点ではさらに研究が進み体系化することを願わずにはおられません。研究対象があまりにも深遠なので困難な研究なのはわかりますが、まず多くの研究者の意識がそちらを向くことの必要性を感じます。
 読み終えたとき、人の身体も自然の一部ならば気象などの自然現象と切り離して考えることが非合理的だとさえ思えてきました。
(辻田浩志)



加賀美 雅弘 著

日本人が知らない松坂メジャー革命

2006年4月カンザスシティロイヤルズの本拠地カウフマン・スタジアムにいた。興奮と緊張さめやらぬスタジアムは…寒い。観客のほとんどはニット帽、手袋、ジャンパー、さらには毛布を持参してかけている人たちもいた。  とてつもなく寒い中、お目当ての選手があらわれた。
 日本時代の青と白のユニフォームからグレーと赤色に変わったユニフォームに袖を通した、背番号「18」が登場。大きな歓声とは対照的に、静かに落ち着いて見える一人の日本人ピッチャーがマウンドに姿を現した。松坂大輔投手(ボストンレッドソックス)である。松坂投手は、マウンドに向かうとき、3塁線を片足(右足でとび、左足で着地する)で飛び越える動作を必ずすることに気づいた。彼にとってこの動作には一種の願掛けの意味を持つのだろうかという思いで彼の行動ひとつひとつを観察していた。
 試合終了後にESPNを偶然目にして、彼は試合中に笑っていた。この笑みが意味するのは本人にしかわからないだろうが、余裕があったのか? 心の底からベースボールを楽しんでいるのか? 相手のレベルの高さにゾクゾクするというような意味での笑みだったのか?  実際にスタジアムに行くことによって感じること、連日放送されるスポーツニュースを見ることでしかわからないこと、そして、書籍を読むことで知ることができること。
 ボストンレッドソックス松坂大輔の一挙手一投足、それをとり囲む日米のメディアと日米ファン。レッドソックスの試合の全米ネットワークや日本での放映権、選手たちの番組出演の際の収入はどうなっているのか。文化や地域にとらわれないスポーツのある生活の大切さと意味。まだ「知らない」ことを知るきっかけになるのでは。
(大塚健吾)



アンドリュー・ゴードン 著

スポーツ救急医学

この本では競技スポーツの現場で、さらには海や山のレジャーで発生が予想される傷害に対する応急処置が網羅されている。
 とくに、野球などでボールが胸に当たった際に発生する心臓震盪に関して一般の読者にもわかりやすく書かれている。
 心臓震盪の発生メカニズムから現場での応急処置や予防に至るまで豊富なデータと著者自身の経験が紹介されている。
 運動・スポーツを実際に指導する教師やコーチのみならず、子どもの安全なスポーツ環境をつくるため保護者にもぜひ一読していただきたい。
(村田祐樹)



輿水 健治 著

フェルデンクライス・メソッドWALKING―簡単な動きをとおした神経回路のチューニング

本書のタイトル、フェルデンクライスメソッドとは物理学者モーシェ・フェルデンクライス博士によって開発されたメソッドで、「動き」を通して人間の持つ潜在能力を引き出す学習システムである。私は体験したことがないが、聞くところによると当メソッドは、レッスンでのさまざまな動きを体験することで、これまでに身に染みついた動きから離れ、より自然な動きや姿勢を獲得し自分の身体への気づきを高めることができ「心地よい体の動きが“脳”を刺激し活性化させる」ボディーワークだそうである。
 本書では、レッスンの具体的な方法が豊富な写真と付属のDVDで解説されており、寝て行うレッスン、立位・歩行によるレッスン、トレッドミルでのレッスンと段階的に進みそれぞれの実践者にあったプログラムを選べるよう構成されている。ただ、理論的背景などにはあまり触れられておらず、なぜそのような姿勢や動作なのかの説明がないのが残念だが、姿勢や動作を改善することでパフォーマンスを向上させようとする選手・指導者やリハビリテーションに関わるセラピストには、新たなアイデアを引き出してくれる一冊となるだろう。
(打谷昌紀)



ジェームズ アマディオ 著

命のカウンセリング

4歳で一家離散、中学生で暴走族の仲間入り。15歳の時に友人の無免許運転で起きた事故が原因で脊髄を損傷。このような壮絶な経験をした著者が、事故の後遺症による激痛による苦しみ、生きていることの無意味さ、自殺未遂、次々に起こる身近な人の死を経て、現在は心理分析士として苦しい状況に追い込まれて"心の感覚が麻痺"してしまった人達の相談に当たっている。
 本書では著者が実際に行っているカウンセリングやグループセラピーの様子を例に挙げて、どのようなキッカケで心身の歪みが出来、どのようにして問題解決していくかを説明している。ともすると異様とも感じるグループセラピーの様子ではあるが、普通には起こり得ない状況を経験してしまった人には必要なことなのかもしれない。生と死とは、それほどに人の心に影響を与えるものなのだと改めて思わされる。
 立場上、身体の相談から派生して心の相談に応じることも多いが、心の相談に関してこのような世界もあるのかと衝撃を受けた1冊である。
(石郷岡真巳)


 小学生のころから自分で稼いでいた著者。それは貧困と暴力、一家離散という状況で育ったことによるもの。暴走族に入るなど、荒れた生活を送る。その後、交通事故で車椅子での生活となり、人生に絶望し、自殺しようと東尋坊へ行くが、その旅の中で誰かに必要とされることが、相手にとって迷惑ではなく喜びなのだということに気づいた。一方で友人からの相談に背を向けたことで友人の自殺を止めることができなった、という罪の意識も背負うことになる。その後も度重なる「逃げる」経験を経て、筆者は自殺しようとする人専門のセラピストになった。
 後半部からはグループセラピーを受けているかのようである。心が凍り付いてしまうと、表情が固まり、身体にも影響が出てくるということが実例を通して語られる。他者とのコミュニケーションを取ることに恐怖を感じていたり、きつい状況で「助けて」と言えなくなっている人に対する直接的なアプローチが描かれている。



長谷川泰三 著

トップ > フォーラム > ブックレビュー > バックナンバー