“十人十色”という言葉がある。選手が10人いれば、最適のコーチングも10通りある。同様に10の地域にある10のチームにも10通りの指導論が存在する。屋外競技ともなれば常夏の地の常識と雪に覆われた地の常識が通用しなくても当然と言えば当然である。
本書は雪国にあるだけでなく、中学に硬球を使ったシニアリーグがなく、ほぼ全ての選手が硬式球初心者である秋田商業高校の、いわゆる“常識”の疑い方について書かれている。
雪国であることと初心者が多いことの2つが“常識”を通用させなくするきっかけとなり、その見直しは守備や打撃、走塁などの技術論だけでなく、チームとしての組織論にまで及んでいる。本書では「○○のウソ」と表記しているが、著者が本文中で述べているように、この内容を押しつけようとしているのではなく、いわゆる“常識”について見つめ直し、別の解釈ができるという意図であろう。
だが一番重要なのは、たとえば著者が行っているように「雪国」と「初心者」という自分たちの出発点をしっかりと認識して、その出発点から目的地(目標)を真っ直ぐに見据えることであると示唆しているのであろう。
(渡邊秀幹)
小野 平 著
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