相変わらずの健康ブームであり、運動ブームである。街を歩けば鮮やかなウェアのランナーたちとすれ違い、車を運転すれば颯爽と追い越していくのは自動車ではなくロードバイクだったりする。
1978 年以来の「国民健康づくり対策」によって日本は文字通り国を挙げて健康寿命(介護を必要とせず自立した生活ができる生存期間。日本は世界第一位)の延伸を図っており、とくにウォーキングやランニングといった持続性の高い(とされる)世間で言うところの有酸素運動が推奨されているのはよく知られている通りである。
が、これらを継続してもらうことはフィットネス指導の現場では意外に難しい。たとえば中高年の主婦層を指導対象とした場合、「お買い物で毎日歩いてるから大丈夫よ! ガハハハハ!」と、オバチャンならではの異様な自信と体格で(?)こちらの意図をガブリ寄り、運動の強度も頻度も不足してしまうという悲しい事態が発生したりするのだ(苦笑)。
さて、そこでノルディックウォーキングである。その名の通り北欧生まれのこのユニークなスポーツは、ここ数年、とくにフィットネスや生涯スポーツの分野で大きな広がりを見せており、2007年には国際ノルディックウォーキング協会公認の「日本ノルディックフィットネス協会」も設立されているそうである。
本書では、ストックを用いることにより通常のウォーキングよりも心拍数が24%上昇、身体活動強度は5.2METs相当、などのエビデンスだけでなくアウトドアで行えるグループプログラムとしての利点なども各地でのさまざまな活動報告とともに紹介されている。とくに、第2章でレポートされている高齢者の体力づくり教室やフィットネスクラブのプログラムとしての実践例などは、前述のような悩み(?)を抱える民間フィットネス指導者としても大変興味を惹くものである。
歴史がありフィットネス効果も高いスポーツということで、トップアスリートや芸能人が実践・宣伝すればマラソン同様、瞬く間にブームが巻き起こるかもしれない。文体も平易で読みやすいので「先物買い」ではないが(笑)、入門書として一読の価値ある一冊である。
(伊藤謙治)
松谷 之義 著
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