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20歳の時に知っておきたかったこと

スタンフォード大学で行われた集中授業の内容を紹介したものである。
 常識にとらわれずに常に異なる側面から物事を考え行動する。スポーツにおいても金銭やトレーニング環境など満足のいく環境を得ることは非常に難しい。ただ文句を言っていてもその環境は変わらない。ではどのようにしたらそれを変えることができるのか。
 考え方を変え、行動を変えることによって満足のいく環境を得られるのではないだろうか。その考え方を変えるヒントが書かれている。
(澤野 博)



ティナ・シーリグ 著

ホイッスル! 勝利学

健読んでいる間、ずっと苦しかった。「本気でぶつかっているのかい?」と問い詰められ、「“エッジ”に立って飛んでみろよ」と挑発され、「目標は手の平に載っている。握る努力をするのかしないのか。決めるのは自分自身だぜ。」と試されたみたいだ。
 本書は本来、「たとえ持って生まれた人柄や個性は変わらなくても、考え方の習慣はトレーニングで変えられる」という前向きな内容の本である。
 しかし、私にはそう感じられた。家庭と仕事とボランティアでのスポーツ指導と、どれもこれも言い訳ばかりの中途半端。ああ、なんてダメなオレ…。読み進めるにつれ、どんどんどんどん自虐的な気分になってゆくのだ。
 この本は、今まさにプレーヤーとして夢を追っている小中高生向けに書かれている。しかし、指導者にこそ読んでほしい本、いや読むべき本である。
「本気」なのか? 「断固たる決意」はあるか? 指導者たる者は、生徒に精神論を語る前に、自分のことを見つめなおし、「できない自分」と向き合う勇気を持たなければならない。
 落ち込んでいる場合ではない。私も「できない自分」と向き合おう。そして、心の中に本気の火を灯し、「今、この瞬間」に全力を尽くそう。読後には、そういう気持ちにさせてくれた。背中を押してくれる一冊である。
(尾原陽介)



布施 務 著

すぐに役立つサプリメント活用事典

健康的な生活を維持するためには、「運動‐休息‐栄養」のライフバランスが大切であり、本書では、その中の1つである「栄養」に焦点を当てている。必要な栄養素量を継続的に摂取することは難しいのが現実であることから、日々の食生活に存在する不適切な部分を補正する目的で開発された「サプリメント」に注目し、その理解を深めることで、健康的な体調の構築に貢献しようとするのが本書の目的である。
 本書の最大の特徴は、子どもから大人まで幅広い対象の抱える問題を意識した、「目的別サプリメントの選び方」の構成と豊富さにあるだろう。まず、1つの課題について、見開きで完結している点である。決して長すぎることなく、問題の原因と解決策を平易な言葉で簡潔に記述し、キーワード化がされているのでポイントを理解しやすい。次に、日常生活を通じた注意点と、推奨サプリメントの内容について、イラストで表現している点である。これによって、視覚的側面からも読者の理解促進に働きかけているように感じる。要は、「一般読者」の視点に立って、繊細な配慮がなされていることで、知識の理解向上が進みやすいように構成されているということである。単なる知識の獲得だけでなく、指導者として、選手への配布資料の作成にも大変参考になる。
 また、具体的な方法に加え、「栄養素を体内に取り入れる」という行為についての本質的部分に対しても、一般読者に簡潔かつ適切に伝達することを試みている。具体例として、「サプリメントに期待される役割」についての記述を以下に引用して紹介したい。
 食事には栄養の補給(1次機能)、味覚を楽しむ、満足感を得る(2次機能)、病気予防や症状の改善(3次機能)という3つの機能があり、サプリメントはこのうち1次機能と3次機能を補うものです。
 毎日の食事では不足しがちな栄養素を補うことに加え、カルシウムとマグネシウム、ナトリウムとカリウムなど体内での栄養のバランスを整える、体質や環境に合わせた機能性成分を補給する?などがサプリメントを摂取する目的である。
 この部分について、前半部では「食事とサプリメントの関係」、後半部では「サプリメント摂取の目的」を理解することができるのではないだろうか。
 本書は、一般的なニーズに対応することを目的としていることから、内容について大変理解しやすいだけでなく、「指導者の選手に向けた配布資料作成時の参考文献」としても参考になる一冊になるのではないかと考えている。「指導対象への伝達方法」という側面からも学びを得ることができる。
(南川哲人)



古田 裕子:著 山田 昌彦:監修

「遊び」の文化人類学

「遊び」をテーマに書かれた本ではありますが、意外なほどその内容に遊びはありません。むしろ純粋なる学術的研究発表の性格が色濃く出ます。
 本書を語るにあたってオランダの歴史学者ホイジンガとフランスの社会学者カイヨワの存在は無視できず、彼らの研究が下地になっているともいえるでしょう。ただ筆者はホイジンガの「ホモ・ルーデンス」ではヨーロッパの文化に立脚した視点にとらわれて客観的評価はできないと指摘したうえで、独自の視点で「遊び」を評価・分析をしています。確かに本書は筆者の主観的要素を排除しているようなのですが、その分無機質な印象を感じました。読み物として捉えた場合、読み手が何を求めるかによっても両者の評価は変わるように思います。
「遊びとは何か」という命題から本書ははじまりますが、「競争」「表現・模倣」「偶然」「めまい」という要素を基軸とするとするカイヨワの「遊び」の定義づけをベースにしてさらに深く分析を進めます(批判的な部分もありますが)。
 すべての行動から動物として必要な生存や種族保存などを目的とする行動を除いたものを余暇行動として、それを遊びと定義するならばその範囲はあまりにも膨大になります。そういった広範な「遊び」をいくつかの要素に分類するところは説得力十分。細やかな分類と具体的な例を挙げての評価は世界中いろいろな形式で存在する遊びを整理しています。そしてそれらの遊びがどのように伝播していったかという遊びのネットワークも論じられ、多方向からの視点による切り口で解明されます。
 納得しつつ読み終わって、1つ疑問が生じました。本書が書かれたのは1977年なのですが、当時と今とでは情報の流通のシステムが変わりました。ネット社会になって近年社会も急激な変化を見せました。はたして本書の定義が今も変わらず当てはまるのだろうかということです。ホイジンガやカイヨワのころと青柳氏のころでは時代背景が異なります。それと同じように現在と昭和中期とでは背景の差は歴然です。「遊び」の定義にも時代背景による考え方の差を感じたのですから、今という時代においてまた違った要素も芽生えているかもしれません。「遊び」と「文化」が限りなく近いものであるとするならば、そういう可能性があるようにも思えるのです。21世紀という時代の遊びはどのように評価されるのだろう? そんな興味がわいてきました。
(辻田浩志)



青柳 まちこ 著

アスリートのための食トレ

スポーツを行うアスリートにとって練習、補給、休養の3つはどれが欠けてもいけないものである。本書は「食べ物の力で強くなる!」をテーマに、食べることと食べ物に含まれている栄養素だけではなく、食べものの姿や色を見たときの楽しさや調理しているときの音やにおいなど、それらをすべて含み、食べ物の力として紹介している。  本書はスポーツの年間計画に合わせたピリオダイゼーションで食事トレーニングを「座学期」「準備期」「試合期」「オフ期」の4つにわけている。そして、その食トレで使用する代表的な100種の食べ物のプロフィールとそれらを使用した家庭料理のレシピが載っている。
 「座学期」では基礎的な栄養学から給食と家庭食のよい関係の築き方、コンビニやファーストフードの上手な利用法が書いてあり実践的で勉強になる。冒頭にある食生活チェックリストはアスリート用だけでなく、保護者・指導者用のチェックリストと両方の視点からチェックできるので実用性がある。
 「準備期」では大会に向けて食トレを通して心の準備や体調管理、食からのケガへのアプローチ、上手な減量、増量のコツから海外遠征まであらゆる状況に対応した内容にまとまっており勉強になる。
「試合期」では試合前、当日の朝、試合後の食トレが書かれている。1点気になったのは持久系の内容は載っていたがそれ以外が載っていなかったのが残念と感じた。
「オフ期」ではオフ期の体重増加の注意事項だけではなく、お菓子やジュースとの上手な付き合い方や引退から進学までの引退後の食トレが載っており、とくに保護者にとっては勉強になる内容にまとまっている。
 全体的に幅広い年齢のアスリートや指導者、保護者に向けられて作られたと書籍だと感じ、多くの人に読んで実行してほしい。しかし、幅広い読者層を狙ってしまったことですべての読者がこの一冊で食トレを理解し実行できるかは疑問が残る。ジュニアに向けた内容が多く載っていたが、そのジュニアの食事をつくるのは保護者であり、必ずしも保護者がスポーツに関わっていたとは限らないので、ピリオダイゼーションの一言では難しいのではないかと感じる。簡単にでも何かしらの競技の年間スケジュール例を挙げて記載してほしかった。
 レシピでは逆に一人暮らしのアスリートや指導者には難しかったのではないかと思う。単品の料理が多く載っているのはありがたいが、実際にどのようにその単品料理を組み合わせるのがよいのかがわからない。文字では説明されていたが、写真でも1食での組み合わせはもちろんだが、3食での組み合わせ、希望を言わせていただくならピリオダイゼーションに分けた組み合わせが載っているとよりわかりやすかったとのではないかと感じた。
(長谷川大輔)



海老久美子 著

捕手論

野球においての捕手とは、野手の中で唯一正反対を向き投手の放った球を捕る。また、ホームベースを守り得点の最後の砦としての役割を担うポジションである。
 さて、みなさんは捕手に対してどんなイメージを持っているだろうか。投手は華々しく野球の花形であるのに対し、捕手はマスクを被りどこか陰湿で裏方的な印象がある。
 そんな捕手にスポットを当て、あらゆる角度から捕手についての解説が述べられているのが当書である。
 著者の取材に応じた数々の歴代捕手方からの貴重な経験談や具体的なゲームシーンの例を多く用いて捕手を解明しており、捕手というポジションの奥深さを感じられる。その中でもキャッチング技術は勿論のこと、配球のリードも捕手としての醍醐味である。そこにはバッターの特徴の他に投手との信頼関係、チームの作戦など様々な要素が絡まり複雑さが伺える。また、他の野手とは違い正対しているポジションである上、審判や打者と近距離に位置することから相互に影響している。
 色々な働きをする捕手はその呼び名を正捕手、正妻、女房役、司令塔などとされるが、その多面性からどれも判然とされていない。捕手が担う役割についてはまだまだ書き足りない程だが、野球の中で大切な要である反面、面倒なポジションといえる。
 本書はそんな捕手の無限ともいえる魅力を十分に感じられ、1度でも野球に打ち込んだことのある方やプロ野球好きの方などにとっては面白みを味わえるだろう。
(池田健一)



織田 淳太郎 著

ティーチング ピラティス

この本は解剖から疾病、エクササイズまで写真や図などで示しながら分りやすく解説されています。具体的なエクササイズに入る前に、そのエクササイズを選択するのに必要である姿勢評価や機能評価について、安静時の姿勢だけではなく、立ち座り、前屈などの動作時の運動順序の要点がまとめられているところも非常にわかりやすい。
 1つひとつのエクササイズに関しても、開始肢位から呼吸をともなった動き方、そしてその時の注意点や指示にまで細かく説明がされています。さらにエクササイズの変法やプログレッションも加えられていて実践的でもあります。
 何のためにこのエクササイズを使うのかという目的を理解し、クライアントに対してより効果的にエクササイズを提供するために、非常に勉強になる本です。解剖学、運動学、リハビリテーションの教科書であり、もちろんピラティスの教科書として、医療従事者からボディワークのインストラクターまで幅広い方におすすめできる本です。
(大槻清馨)



新田 收、小山貴之、中村尚人 著

DANCE Anatomy

著者のJacqui Greene Haas氏はピラティスインストラクターであり、アスレティックトレーナー。著書は9つの章から成り立っています。

1 ダンサーの動き
2 脊柱
3 肋骨と呼吸
4 コア
5 肩甲帯と腕
6 骨盤と股関節
7 脚部
8 足首と足部
9 ダンスのためのカラダ全体のトレーニング

 1章は骨や関節の動き、骨格筋(主働筋、拮抗筋、共働筋、固定筋)の説明の他に動きの基本面(矢状面、前額面、水平面)やメンタル面、コンディショニングにおける原則(オーバーロードの原則、特異性の原則、ウォーミングアップ&クールダウンの重要性など)などが記載されていてトレーナーの方にとってはよい復習になりそうな内容になっています。  2章から9章に関しては、各章ごとの筋肉の名前や関節の動きの説明と一つのエクササイズに対して見開き1ページでじっくり説明がされています。
 左側のページはエクササイズのイラスト(主働筋が色分けされている)で右側のページが実際にそのエクササイズはダンスのどの動きで使われるのかというのがイラストつきでの解説。そのほかに、エクササイズの注意点やエクササイズのバリエーションの説明がされています。
 著者は前書きで以下の言葉を残している。「筋肉がつくりだす動きをわからないままで、あなたはどうやって効率的なコンビネーションをやるんですか?」「間違った筋肉の使い方を続けることは、オーバーユースによるケガの原因になりますよ」  この言葉を聴くと、著書が少し専門的で難しいと(ひょっとしたら)思っているダンサーは身が引き締まるのでないでしょうか。
 そして、トレーナーの方は著者のこの力強い言葉に共感を覚えるのではないでしょうか?
(編注:本書は英語で書かれています)
(大塚健吾)



Jacqui Greene Haas 著

早実vs.駒大苫小牧

今年のドラフト会議でその動向が注目された斎藤佑樹投手。彼を語る上で2006年夏の甲子園を欠かすことはできない。
 37年ぶりの決勝戦の引き分け再試合を戦った早実、駒大苫小牧の両チームでは何が起きていたのか。徹底した取材によりその舞台裏が明かされる。来シーズンのペナントレースをより楽しむためにも、あの夏の出来事をもう一度確認していただきたい。
(村田祐樹)



中村 計・木村 修一 著

馬を走らせる

競馬がとりわけ好きなわけでもなく、賭け事も好きなわけでもない。競馬はウン十年の人生で1回しかしたことがない(しかも惨敗)。
 しかし、なぜか競馬場は数ある“行ってみたい場所”の1つであった。つくり上げられた美しい馬体で走る馬の姿を、青空の下で見てみたかったのだと思う。この本を読んでその気持ちが増したことは言うまでもない。

 小島太氏。北海道で生まれ、周囲に馬がいる環境で育ち、騎手として30年、騎手を引退した翌年から調教師という、筋金入りの"ホースマン"である。とにかく馬に対しての愛情に溢れている。ある人に言われた"馬バカ"が最高の褒め言葉だと自ら認めるほどの、馬バカっぷりである。そんな"馬バカ"の目線を通して、どのような過程を経てあの美しい馬体が作られ、競走馬として最高の舞台へ送りだされるのかが書かれており、競馬場に行ったことのない"にわか馬好き"はよりいっそう興味がそそられる。  また、厩舎の経営者として、馬主、調教師、(馬の)生産者、育成者、厩務員、騎手、そして競馬ファンなど、馬を通して関わる全ての人に対する配慮や、最高の状態でレースに出走させるために作りあげていくマネジメント論は、「出走する馬」=「試合に出場する選手」として読み進めていくと、チームスタッフや企業、指導者、父兄など、選手を取り囲む様々な人々に関わることになるトレーナーにとって勉強になることが多い。
(石郷岡真巳)



小島 太 著

フルスイング

高山豪人さんを知っている人は、ほとんどいないだろう。
プロ野球選手を夢見る彼は、24歳という若さで交通事故によってその生涯を閉じる。
そんな彼の野球人生を、父親である高山信人氏が綴った。

著者は最後に日本の野球界に対する率直な思いを書いている。
そんな中で、指導者についてこう言う。
「タイムリーエラーやチャンスで三振した選手を頭ごなしに叱るシニアの監督も大勢いたが、その監督は自分のための試合をしているのであって子供のための試合をしていないと感じた。」
残念ながら、このような指導者は野球に限らず日本全国に大勢いる。
私自身、指導者の端くれとして考えさせられる言葉である。

筑波大学サッカー部監督の風間八宏氏は、指導者とは何か? こんな風に言っている。
「子供が自分の道を自分で選んでいけるように環境をつくってあげるのが指導者です。子供たちの才能を引き出すことが重要であって、指導者が思ったことを子供たちにやらせることが重要なのではない。」

ある一人の無名な青年の人生を綴った本である。しかし、そこから考えさせられることはあまりにも多い。
人は、いつかは死ぬ。豪人さんのように唐突に夢を終えなければならないこともある。
だから思うのである。
「たかが、野球。されど、野球」
目の前のことに全力を尽くすことの大切さを。
(森下 茂)



高山 信人 著

SPORTS もうひとつの風景

スポーツには、見ている人に大きな感動や夢、希望、大きく言えば、人々に生きる力を与えてくれる普遍的な価値があるように思えます。なぜ見ている人を魅了するのか、いろいろ考えても答えは見つかりません。本書では、各スポーツで活躍する選手や指導者、関係者の一人一人に、スポットライトを当て、日頃、見聞きしない話が書かれています。
 栄光の陰には、大きな挫折や不運な出来事がある中で、その自己と真摯に向き合い、現実に起きたことを、未来へ向けて挑戦していく姿が多く取り上げられています。本当に強い人間になっていく人は、「筋書きのない人生を、自分自身の可能性を信じて努力していける人ではないか」と、多くの実体験を通して語られているように思えます。現場で指導されている方々が読まれることで、目標や夢を諦めない大切さを伝えられるのではないでしょうか。スポーツを通して努力していくことの大切さが伝わる一冊だと思います。
(辻本和広)



佐藤 次郎 著

医の倫理と法

倫理とは何か?  簡単にいうと「人の行うべき正しい道」ということで、「道徳」と同義で用いられることも多くあります。
「倫理」は文化や宗教、国家のイデオロギーによってその捉え方は異なることがあります。そのため本書では、「医師の職業倫理」「終末期患者の医療」「生殖医療の倫理的問題」「医学研究の倫理」について他国の動向や日本の歴史的・文化的背景を踏まえて、今の日本の法律や現状について解説されています。
 第二章の「医師の職業倫理」では、インフォームドコンセントを中心に日常業務における医師の責務、医師や医療機関の法律上の責務について述べられています。
 第三章の「終末期患者の医療」では、安楽死や尊厳死、臓器提供の問題について海外での判例や日本の現状について説明されています。
 第四章の「生殖医療の倫理的問題」、第五章の「医学的研究」では急激な科学技術の変化によって生まれてきた問題について法律的・倫理的側面から問題提起がされています。
 本書は、一般の医学生や看護師などの医療従事者の人たちが知っておくべき「医の倫理」についての基本的事項をわかりやすく解説してます。しかし身体に関わる職種の方々にとっても「倫理」を今一度考え直す良い機会になるのではないだろうか。
(山際政弘)



森岡 恭彦 著

自分でつくる筋力トレーニングプログラム

現役でトレーナーをしている人たちでも頭を悩ませるトレーニングのプログラム作成について基本的な部分を抑えた本であり、プログラム作成のながれから始まり、基礎知識・年齢別・競技別の作成方法も記載されている。
 この本の流れに沿ってプログラムの作成を行うことによって、自分に必要なプログラム作成ができるよう一つ一つ丁寧な説明や、エクササイズリストも掲載されているのでトレーナーなどをつけることが難しい選手たちにも読みやすい内容になっている。
 また、プログラム作成でつまずきやすい問題のアドバイスも掲載されているため、現役トレーナーが行きづまった際に目を通す本としても役立つ。 (戸谷 舞)



有賀 誠司 著

医療の限界

日本の医療は崩壊の危機に瀕しているという筆者。筆者が主張する問題とは「医療をめぐる事故や紛争の大小」ではなく、「医療自体に対する国民の態度の変化」だという。
 医療行為を行う医師に責任があるのは間違いなく事実であるが、社会の側にも問題があることを問いかけている。日本人を律してきた考え方の土台が崩れている。
「死生観の喪失」
「生きるための覚悟がなくなり、不安が心を支配している」
「不確実なことを受け入れない姿勢」
 安心・安全神話が社会を覆っているからこそ、患者も医師もリスクを負うことを恐れる。その結果双方の間に軋轢が生まれるだけなく、本当に医療を必要としている人にさえ被害が及ぶ。医療だけでなく、教育問題、社会問題の原因にもつながる内容がリアルに載せられている一冊である。
 そもそも「絶対」など存在しないのだ。今生きていることさえ、明日は絶対ではないのである。それを頭でわかっても心で受け止めきれないことが、医療崩壊にもつながっていると言える。医療だけでなく、現代社会に対してのメッセージが込められた一冊に感じた。
(磯谷貴之)



小松 秀樹 著

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