冒頭に「結論からさきに書くと、『人生の目的は自由だ』と僕は考えている」とありますが、次のページから前半部分までは一見自由に思えることの多くが何かに支配されているんだと筆者は語ります。なるほどと思う反面、これでは我々が考える自由のすべてが否定されるように感じ、このあと収拾がつかなくなるのでは、といらぬ心配さえしました。
そのあと、筆者の価値観や世界観に基づく「自由」が語られます。それは自由の定義づけなどの普遍性のあるものではなく筆者の考え方そのものと言ったほうがいいかもしれません。やりたいと思うことができないのが不自由なのであれば、努力してそれをかなえることが自由というくだりは、なるほどと思う発想です。一風変わったとも思える視点から展開される「自由」についての話は、まさに「自由な発想」からくるようです。
われわれの住む社会において「自由」というのは国家や会社など自分を取り巻く環境を相手としたものというのが一般的な「自由」の概念ですが、本書に書かれた自由は自らの心をその対象とするようです。われわれはさまざまな経験により多くのことを学習します。やりやすい方法を覚えたり、危険を察知することも経験によって理解したりします。しかし筆者はあえて大切な財産でもある「経験」に対し再び検証することを勧めているように感じられました。
「常に自由でありたい」という願いは皆共通です。そのひとつの方法として自分を見つめなおしてみることを筆者は提案しているようです。数多くの項目に分けていろいろな角度から見る「自由」は説得力十分。
読んでいる途中に感じた不安感みたいなものも、読み終えるとスッキリ。痛快ともいえる「自由観」です。
(辻田浩志)
森 博嗣 著
|