トップ > フォーラム > ブックレビュー > バックナンバー

温泉教授の湯治力

「いい湯だな~~」温泉につかると、そんな鼻歌の1つも出てきそうです。浮き世の喧噪から逃れて温泉に入ると身も心もリラックスするからなのでしょう。癒しブームとも言われますが、温泉こそが私たち日本人にとって癒しの元祖ではないでしょうか。そんな温泉の指南書ともいえる一冊。
 古来より身体をきれいにする目的のみならず、病気治療の目的があることは温泉を語る上で忘れてはなりません。日本書紀に湯治の記述があるというから驚きです。相当古くから温泉は病平癒に利用されていたようです。また日本人の温泉好きは神事に由来するという推論はとても興味深く読めました。
 古来、日本人の温泉好きは変わらないのですが、昨今の温泉ブームにより平成以降多くの温泉施設がつくられました。しかしその中には「温泉」とは呼べないまがいものの温泉があると言います。さらには昔からの温泉でも賞味期限が切れたものがあるそうです。まさか温泉に賞味期限があるとは思いませんでした。それならばホンモノの温泉とはどんなものか? 具体的なポイントを明らかにしてくれていますので、温泉選びの目安になるでしょう。私もかつて温泉宿に泊まって露天風呂を楽しんだのですが、上がったあと身体から発せられるカルキの臭いに気分を悪くし、興ざめした経験があります。本書を読んでそのカラクリがわかりました。次の機会にはきちんとした温泉選びができそうです。
 温泉に入るときの心構えまで書かれているのだから至れり尽くせり。「温泉教授おすすめ 全国の湯治宿145選」と題したデータベースまであれば、あとに必要なのはお金と時間だけ。
 裸で湯船につかっている光景がいくつも頭の中に浮かんできました。
(辻田浩志)




松田 忠徳 著

勝利のチームメイク

「勝てるチーム」と「勝てそうだけど勝てないチーム」との差、「それ」ってなんだろう。「それ」を知りたい指導者や選手はたくさんいる。
 古田敦也(元ヤクルトスワローズ選手兼監督)は、平尾誠二(元ラグビー日本代表監督)との対談の中で、こんなことを言っている。
「お前だってやればできるんだ」っていう言葉は、それこそ小さい頃から聞かされるじゃないですか。でも、いまいち信じきれない自分がいるんですよね。高校時代、強豪校と対戦するときに『同じ高校生なんだから勝てるぞ!』と先生に言われても『勝てるわけないじゃん』って思っているクチだった僕が、初めてプロでリーグ優勝して『やればできるんだ』って実感できた。実感すると『できる』ということを信じられるようになれる。大げさに言うと自分を信じられるようになる。『奇跡は、信じていても必ず起こるものではない。でも、信じない者には起こり得ない』というじゃないですか。それと同じで、『できる』と思えるかどうかは、勝負事で勝つか負けるかにとっては、大きな差を生むような気がするんです。」
 もちろん、「それ」に答えはないが、この言葉は大いなるヒントを与えてくれる。
 また、平尾と岡田武史(元サッカー日本代表監督)との対談で、

平尾:そうなんですよ。最初に、できない原因を「知る」。で、原因を知ったら。それをどう解決したら「できるようになるか」を理解するんです。これが「わかる」。この二段階を経て、初めて実習なんですよ。ここを指導者は十分認識しないと。 岡田:でもな、そういう理屈がどんどんわかってきてさ、教え方もそれなりに巧くなっていくとするじゃない。それだけでも必ず、壁にぶち当たる。スポーツは人間の営みなわけだから当たり前と言えば当たり前だけど、「おい、頑張れよ」の一言だけで、すべて事態が解決できてしまうこともあるじゃない?

 岡田の言葉が物語るように、選手へのアプローチや、チームづくりに、「答え」はない。野球・ラグビー・サッカーと競技は違えど、その道で、闘い、結果を出し、また試行錯誤している彼らから学ぶべきことは、たくさんある。
(森下 茂)




岡田 武史 著

「ゼロ成長」幸福論

この本は筆者が家を35年ローンで購入したところからスタートする。少し前によく言われていた「勝ち組」「負け組」。筆者の考える負け組とは年収がいくらであろうと、「金の問題で、動ける自由を失った人」だそうだ。何十年ものローンを組んでしまえば仕事も辞めるに辞められない。家のローンを払うために生きることは果たして幸せだろうか。  お金があれば確かに生活は潤うかもしれない。テレビ、ゲーム機、DVDプレイヤー、エアコン、今では我々の生活に欠かせないこれらのモノはなくても私たちは生活できていたのである。しかし私たちはお金を稼いでも新しいモノに変えてしまうのだ。周りの人たちが持っているものを持っていないことに対して、私たちは劣等感を感じてしまう。
 お金があって自分の納得のいく仕事ができている人もいるだろう。だがそれはほんの一握りなのである。人よりよい家に住むこと、人よりよい車を買うこと、人よりたくさんお金を稼ぐことだけが成功ではない。もちろんお金があるに越したことはないだろう。だが、低賃金でも自分が納得し、関わった人たちを幸せにできることも1つの成功の形である。本書はそういった脱競争主義をテーマにした作品である。
 本書ではさまざまな環境に身を置いている人物の話が描かれており、改めて仕事の意味、価値観や自分にとっての成功は何かを考えさせられる。私たちは何のために働いて賃金を得ているのだろうか。人によってその答えは違うだろう。サラリーマンだけが生きる道ではないことを教えてくれるだろう。こんな不景気な時代だからこそ、自分のあり方を改めて考えてみてはいかがだろうか。
(三嶽大輔)




堀切 和雅 著

ナンバ健康法

日本古来からある、日本人の身体に合う運動方法、身体の使い方があるとしたら、一度実践してみる価値はあるのではないでしょうか?
 昔の生活では、移動はほとんどが徒歩で、荷物を運ぶ飛脚では1日に300kmを走る人がいたそうです。フルマラソンで 42.195kmですからとんでもない数字です。
 身体を動かすのには、ちょっとした意識とコツがいります。そのコツがつかめたとき、楽に身体が動かせるようになったり、気持ちよく身体が動かせるようになったり、競技者であればパフォーマンスが上がったりします。
 現代で300kmを走るということはまずありませんが、通勤など日頃の生活で気持ちよく身体を動かせるようになったら…、肩コリや腰痛がなくなったら…、もっと競技パフォーマンスが上がったら…、本書はそんな身体の使い方ができる、古武術、ナンバについて書かれています。
(大洞裕和)




金田 伸夫 著

養生の実技

作家として言わずと知れた五木寛之氏が50年間行ってきた身体養生の方法を綴った本である。
 病気はなおらない、そして自らの感覚が大事であると考える五木氏。自分が身体によいと思うことを行い、よくないと思えば一般的な治療法であっても行わない。身体にメスを入れるなんてとんでもない話なのである。
 身体の症状は何らかのサインなのだ。身体に症状がでるのには生理的、物理的な原因と同時に心理的な原因が影響していると考えられている。身体はサインを出して変調を知らせてくれているのである。何らかのサインを感じたら、それを叩きのめす(治療)のではなく、身体と向き合い生活習慣やストレスなどを考え直したり、うまく対応する(養生)ことが必要なのではないかということである。
 現代の生活でストレスを避けることは難しい。自らの身体とそして身体がさらされている環境とうまくつきあいながら生き方を見つけて実践していくことが大切なのだという印象が強く残った一冊であった。
(大槻清馨)




五木 寛之 著

アスリート留学 in USA

アメリカの大学生がスポーツ選手として、どのように考え、どのように生活を送っているかが、詳しく書いてある。また、全く留学について知らなくても、アメリカの大学について、どのように入学し、生活を送り、卒業するかという過程がわかりやすく解説してあり、イメージしやすくなるだろう。
 本文は大きく基礎編と実践編に分かれている。
 基礎編では、アメリカ人の大学に対する価値観からアメリカの大学がスポーツのレベルでどのように分類されているか、アメリカで学生アスリートとなるために何が必要かを大学名や実際の金額を出して分かりやすく示している。
 実践編では、スポーツ部入部のためのノウハウ(野球、ソフトボール、バレーボール、ゴルフ、サッカー、水泳について、自己紹介文、トライアウトの方法など)、各競技レベル(division)の大学におけるスポーツ設備やアスリートへの対応、入部した後のアスリート留学生のスケジュールが具体的に書かれている。また、最後に留学体験記や資料として、アメフトや野球等で毎年米ランキングの上位に上がってくる大学の資料もついている。
 アメリカの大学は入るよりも出るのが大変ということは耳にしたことがあったが、この本にもそのことについて随所に示されている。成績や単位数によってスポーツ活動の制限だけでなく退学も余儀なくなされてしまう。アメリカの大学がアスリートも一学生として育てるという意識の高さが感じられた。アスリート・留学を目指す人のみならず、日本の大学・高校の関係者にもぜひお勧めしたい1冊である。
(服部紗都子)




栄 陽子 著

スポーツ計時 1000分の1秒物語

著者はフリージャーナリスト。スポーツ計時一つに、ここまでの物語があるとは正直驚いた。本書は「陸上競技と計時機器の歴史」「ストップウォッチの開発」「アルペンスキーの時間との戦い」「現代の計時システムをサポートする裏方」などについて書かれているが、アスリートの記録とともに計時機器が進化してきたというよりも、計時システムの進化がアスリートの記録に影響し、進化させてきたという視点でそれらを紹介している。
 また、計時システム以外のシューズや水着、スキー板といったアイテムがアスリートの記録を支えている事実や、競泳を変えた最先端のスポーツ科学についても書かれている。
 もちろん記録を樹立するアスリート自身の努力が最も賞賛されるべきであるが、それらに裏方が存在しサポートしていることも忘れてはいけないと思う。とくにコーチやトレーナーは計時システムをしっかりと理解することで、よりアスリートのパフォーマンス(記録)に反映される指導ができるだろうし、医療関係者はアイテムがどのように記録に影響を与えるかを知ることで、アスリートを記録的にも医療的にもサポートすることができるはずである。
(宮崎喬平)




森 彰英 著

骨格筋ハンドブック

サブタイトルに「機能解剖からエクササイズまで一目でわかる」とあるように、見開いた左右の両ページにその筋の図、起始停止、作用、支配神経、主要な機能運動、またその筋のストレッチや筋力増強エクササイズなどがわかりやすく記載されている。
 訳者も述べているように、トレーナーやPT、柔道整復師などを目指す方にとっては非常に理解しやすいだろう。とくに記載されているストレッチを実践するとその場でその筋の感覚を体感しやすいため、頭だけの理解にならないですむことが非常に有益だろう。私自身、解剖学を学ぶために最初に購入した本はかなり専門的で、理解する手間が結構かかっていた。
 また入門書としてだけではなく、エクササイズやストレッチの部分では読者自身のレベルアップにつながる箇所も多い。それは探究心がより強ければ強いほど記載されている部分以外に気づくことが多々あるだろう。そういった箇所が多いほど、購入初期以降も見返すことによって自身次第で応用編にもなりうる本である。
(河田大輔)



南江堂 著

なぜ人は砂漠で溺死するのか? 死体の行動分析学

砂漠で人が溺死する? 砂漠では、脱水で死ぬより溺水で死ぬ人のほうが多いらしい。年間降水量30~40㎜、年間降雨日数7日程度しかない町に年間降水量の2倍近い雨が短時間で急に降ったら、道路はたちまち冠水し、市街地を鉄砲水が流れていく、砂漠という土地柄では泳ぎに習熟している人が少なく、多くの人が濁流に呑み込まれ命を落とす結果となった。
 本書は上記の内容を詳しく書いているわけではない。杏林大学医学部法医学教室准教授、東京都監察医務院非常勤監察医、東京都多摩地区警察医会顧問であり、不審遺体解剖数日本一の法医学者高木徹也氏による「不慮の死」をめぐる医学ルポである。
 タイトルは人は死にやすいということを示しているのだろう。日本の死亡者の約20%は異状死であり、意外な場所、意外な原因で多くの人が死んでいる。本書を読んでいくと、こんなことで死んでしまうのかと気づき、状況だけで判断して一方的に決めつけられない死の分析がドラマのようで引き込まれていく(著者は『ガリレオ』『コード・ブルー』などのドラマ監修者でもあるようだ)。
 我が国日本では、交通事故で死ぬより風呂場で死ぬ確率のほうが2倍も高く、風呂溺大国なんていう皮肉で書いているが日常での意外な場所での死亡内容が印象に残る。他にも多様な自殺、性行為での死など、死について改めて考えされられる。現場などで活躍する人が本書を読んでいるとこのサインはこの症状の表れなんじゃないか? と考え死を未然に防げる内容になっているところもあり、お勧めの一冊である。
 現在の日本では犯罪や事件性がなければ解剖が行われない地域がほとんどとあるが、解剖もしないで犯罪や事件性がないとするのは危険な判断。死を身近に感じられる教育や死因から目をそらさない環境づくりができれば、日本人はもっと生を大事にできると著者はいう。
(安本啓剛)




高木 徹也 著

慢性腰痛は3日で治る

「“触れる筋肉”と“触れない筋肉”」「治らないのは、触ってないから」
本書は始めから終わりまで一貫して、このテーマにつきる。

 この一冊には、生理学・解剖学的な内容から「“触れる筋肉”と“触れない筋肉”」「なぜ痛みが出て、なぜ治らないのか」が説明され、さまざまな治療法・手技方法や著者が“触れない筋肉”へのアプローチとして推奨している電気療法の紹介から「“触れない筋肉”にアプローチするにはどうしたらいいか」が明確に示され、最後には“いい筋肉”をつくるためのストレッチ法(セルフケア)などがイラストを使ってわかりやすく紹介されている。
 全体的に読みやすく、著者が、著者自身の経験や実績に裏づけされた独自の哲学・理論を用い、どのように患者と向き合ってきたかなどが記されている非常に内容の濃い一冊になっている。
(藤井 歩)



高林 孝光 著

夢を見ない男 松坂大輔

野球をあまり知らない人でも、松坂大輔という名前は一度は耳にしたことがあると思います。甲子園春夏連覇、決勝戦でのノーヒットノーラン、日本球界での数々の記録、60億円というプロ野球史上最高額でのメジャー移籍、WBCでのMVP獲得、「松坂世代」という言葉まででき、平成の怪物、世界のエースとまで言われた選手です。
 しかし、18歳でプロ入りし、常に注目される中での苦労、移籍の際の自分の力ではどうにもならない苦しみ、もどかしさ…。本書は天才アスリートと言われる松坂大輔投手の強さ、考え方、また一緒に歩んできた人、支えてきた人、影響を与えた人、そして野球選手としてだけでなく「人間:松坂大輔」の魅力についても書かれています。
 横浜高校時代から松坂投手に注目し、松坂投手の真似をしていた私にとって今までと違った「松坂投手」に出会えた一冊です。
(大洞裕和)



吉井 妙子 著

フットサル教本

本書はフットサルのすべてを丁寧に解説している。日本フットサル連盟監修の初のフットサル教本で充実した内容である。本書で期待されている日本でのフットサルのプロリーグ化は現在達成されており、今後の発展も楽しみである。
 フットサルの歴史から練習法、戦術、ルール、審判法などを細かく章立てで紹介しており、フットサルをまだやったことがない、やってみたがいまいちよくわからないという方にはお勧めである。私はフットサルの近年の練習法などはまだ見たことがないが、本書ではバリエーション豊富に掲載され、これだけでもいい練習はできると思える。初心者はサッカーの縮小版と考えがちであるが、本書を読むことでサッカーとはまた違うテクニック、戦術を駆使してのスポーツということがわかり、そのときにフットサルの面白さがわかるのではないだろうか。読み終えた後、フットサルをやりたくなる1冊である。
(安本啓剛



松崎 康弘 著

スポーツアロママッサージ

スポーツ“アロマ”マッサージ。その名の通り、スポーツマッサージにアロマセラピーの要素を加えた手技である。
 マッサージによる身体的効果と、アロマセラピー特有の精油成分による身体的・精神的効果の相乗作用を狙っている。
 本書では、精油(直接身体に吸収されるもの)を使用するという特徴からドーピングとの関連についても詳しく記されており、しっかりと区別化されている。
 基本から応用のテクニックが多数の写真で説明されており、DVDもついて初心者にもわかりやすく示されている。後半には著者のシドニーオリンピックの活動記録やFAQ、精油成分の説明なども載っていて、非常に盛りだくさんな内容になっている。
(藤井 歩)



神崎 貴子 著

手の日本人、足の西欧人

「足」という字を「あし」と読むのには「悪し(あし)」との関連があるという説があるそうです。ふだんあれだけお世話になっている「足」なのにイメージ的によくない印象があり、それは西欧とは違う日本の文化に由来する。そんな内容が多くの事例とともに解説された一冊です。
「手」を重んじる日本と「足」を重んじる西欧人という対立した機軸での展開は、ややもすれば結論ありきという強引さも伺えますが、おおむね納得できる内容です。「手の文化」と「足の文化」の違いは、私たちのあまりなじみのなかった欧米文化の謎を解いてくれるようです。大統領がマスコミを相手に話をするときデスクに足を乗せて話せば、おそらくほとんどの日本人は眉をひそめ人格を疑うに違いありません。ところがあちらでは、それが「親近感」をアピールするための手段として用いられるというのですから驚きです。グローバル化が進み世界中の垣根が低くなりつつある中で、現存する文化価値観の違いによる行き違い。欧米化が進んだと言われる日本においてさえ、まだまだ理解し合わないといけない事柄はたくさんあるようです。
 農耕民族と狩猟民族の違いという結論が、21世紀という時代に入ってなおしっかりと現代に受け継がれていることに興味深いものがあります。西欧人との違いを比べるというよりも日本人の文化のルーツをここに見つけることができそうです。植物を食料として確保しえた生活環境だからこそ、動物を殺してはいけないという「殺生戒」という思想が生まれたのではないかというくだりは宗教観にも及びます。
 エピローグで筆者が面白いことを述べておられます。「『西洋と日本との間には手足に対する見方があるに違いない』という考えに取り付かれて、冷静な目を失ってしまったかもしれない」と断った上で、文化の違いを明らかにするということは、自分が常識だと思っていることを疑うことであるといわれます。要するに自分との違いを非難することではなく、相手の歩んできた歴史を知ることによりさらに深く相手を理解するという目的が優先すべきなんだろうと思います。
(辻田浩志)



大築 立志 著

コアパフォーマンス・トレーニング

本書は近年日本のフィットネス業界にも普及してきたコアトレーニングについて詳しく書かれた一冊である。筆者は米国のアスリート・パフォーマンスというトレーニング施設を設立したマーク・バーステーゲン氏で、彼の提唱するトレーニングの哲学はアメリカのみならず世界のトレーニング界に大きな影響を与えている。トレーニングをしている者なら一度は耳にしたことであろうコア。本書はコアというキーワードを中心に以下の7つのユニットから成り立っている。

・ムーブメントプレパレーション:従来のトレーニング前のストレッチに変わるウォームアップ
・プレリハビリテーション:ケガや傷害を起こさないための予防的アプローチ
・バランスボールエクササイズ:肩、胴体、股関節、コアの強さと安定性を向上させるエクササイズ
・弾性(プライオメトリクス):弾力的な力を生み出すエクササイズ
・ストレングス:パワー、安定性、可動性を向上させるためのエクササイズ
・エネルギー供給システムの開発:爆発的なエネルギー発揮を可能にするカーディオトレーニング
・リジェネレーション:回復力を高めるための低い強度での身体運動

 さらには食事に対してのアドバイスも記載されていて、専門用語についても詳しい説明があり、トレーニング従事者でなくとも理解しやすい内容となっている。本書のプログラムはアスリート・パフォーマンスで実際に行っている多くのエクササイズの中から短時間で最大の効果を得ることができるものから形成されている。トレーニングの時間をとることができない多忙な方にも配慮している非常に魅力的な内容となっている。
 本書を読み終えた後、コアについての知識がよりいっそう深まっているはずである。そして今までの当たり前のように行っていたマシンやフリーウェイトなどのトレーニング方法に多少なりとも変化が必要なことにも気づくだろう。付属のCD-ROMで実際のエクササイズの動きを見ることができるのも非常によい。
 トレーニング従事者にはもちろんのこと、さらに上のレベルを目指すアスリートや一般のトレーニーにもぜひお勧めしたい一冊である。
(三嶽大輔)



マーク・バーステーゲン 著

トップ > フォーラム > ブックレビュー > バックナンバー