「ゼロ成長」幸福論
堀切 和雅
この本は筆者が家を35年ローンで購入したところからスタートする。少し前によく言われていた「勝ち組」「負け組」。筆者の考える負け組とは年収がいくらであろうと、「金の問題で、動ける自由を失った人」だそうだ。何十年ものローンを組んでしまえば仕事も辞めるに辞められない。家のローンを払うために生きることは果たして幸せだろうか。
お金があれば確かに生活は潤うかもしれない。テレビ、ゲーム機、DVDプレイヤー、エアコン、今では我々の生活に欠かせないこれらのモノはなくても私たちは生活できていたのである。しかし私たちはお金を稼いでも新しいモノに変えてしまうのだ。周りの人たちが持っているものを持っていないことに対して、私たちは劣等感を感じてしまう。
お金があって自分の納得のいく仕事ができている人もいるだろう。だがそれはほんの一握りなのである。人よりよい家に住むこと、人よりよい車を買うこと、人よりたくさんお金を稼ぐことだけが成功ではない。もちろんお金があるに越したことはないだろう。だが、低賃金でも自分が納得し、関わった人たちを幸せにできることも1つの成功の形である。本書はそういった脱競争主義をテーマにした作品である。
本書ではさまざまな環境に身を置いている人物の話が描かれており、改めて仕事の意味、価値観や自分にとっての成功は何かを考えさせられる。私たちは何のために働いて賃金を得ているのだろうか。人によってその答えは違うだろう。サラリーマンだけが生きる道ではないことを教えてくれるだろう。こんな不景気な時代だからこそ、自分のあり方を改めて考えてみてはいかがだろうか。
(三嶽 大輔)
出版元:角川書店
(掲載日:2011-10-31)
タグ:経済 成長
カテゴリ 人生
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スポーツ傷害のリハビリテーション
山下 敏彦 武藤 芳照
本書はアスレティックリハビリテーションについて書かれている。アスレティックリハビリテーションの定義やアスレティックトレーナーについての説明から始まり、基本となるストレッチ、トレーニング、有酸素運動、水中運動、物理療法、アイシング、テーピングなどの基礎知識が事細かに書かれている。
とくにスポーツで傷害が起きやすい腰部、膝、下腿・足部、肩、肘・手といった部位について安静期や回復期などの時期にどういったことを行えばよいのかが書かれている。さらに各部位に関しても非常に多くの写真が掲載されており、どういったエクササイズやストレッチを行えばいいのかが一目でわかる。
全体的な印象としてアスレティックトレーナー専門科目テキストの第七巻「アスレティックリハビリテーション」をより詳しく説明している内容である。途中で挟むコラムも「運動中に水を飲むな!の誤り」や「スポーツ傷害とドーピング」などがあり、非常に面白い内容となっている。
(三嶽 大輔)
出版元:金原出版
(掲載日:2011-12-13)
タグ:アスレティックリハビリテーション 傷害
カテゴリ スポーツ医学
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筋肉メカニクスとトレーニング技術
エバレット アーバーグ 加藤 清忠 岡田 純一 長谷川 伸 渡辺 英次 寺田 佳代
本書はタイトルの通り、普通のトレーニングのみが書かれている本ではなく、解剖学的構造と関節の動き、効果的なエクササイズ選択法、適切なトレーニング技術、プログラムデザインなどが記載されており、トレーニングを始める前にできれば知っておきたい知識が書かれている。
今までのトレーニング本とは一味違い、コアについての解剖や説明があり、メインのトレーニングに関してもすべての種目でスタビライゼーションと呼吸法についての表記がある。トレーニング時の図に関しても筋肉が透けて見えるような図でリアリティがあり、どの部分を使っているのかが非常にイメージがしやすい。
全体を通して専門的な言葉が多いが、トレーニング従事者には問題なく理解できるであろう。トレーニーにとっては少し難しいが、読めば身体についての理解が深まり、より効果的なトレーニングができること間違いなしである。
(三嶽 大輔)
出版元:西村書店
(掲載日:2012-01-18)
タグ:アスレティックトレーニング 筋 運動生理学
カテゴリ アスレティックトレーニング
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コアパフォーマンス・トレーニング
Mark Verstegen Pete Williams 咲花 正弥 栢野 由紀子 澤田 勝
本書は近年日本のフィットネス業界にも普及してきたコアトレーニングについて詳しく書かれた一冊である。筆者は米国のアスリート・パフォーマンスというトレーニング施設を設立したマーク・バーステーゲン氏で、彼の提唱するトレーニングの哲学はアメリカのみならず世界のトレーニング界に大きな影響を与えている。トレーニングをしている者なら一度は耳にしたことであろうコア。本書はコアというキーワードを中心に以下の7つのユニットから成り立っている。
・ムーブメントプレパレーション:従来のトレーニング前のストレッチに変わるウォームアップ
・プレリハビリテーション:ケガや傷害を起こさないための予防的アプローチ
・バランスボールエクササイズ:肩、胴体、股関節、コアの強さと安定性を向上させるエクササイズ
・弾性(プライオメトリクス):弾力的な力を生み出すエクササイズ
・ストレングス:パワー、安定性、可動性を向上させるためのエクササイズ
・エネルギー供給システムの開発:爆発的なエネルギー発揮を可能にするカーディオトレーニング
・リジェネレーション:回復力を高めるための低い強度での身体運動
さらには食事に対してのアドバイスも記載されていて、専門用語についても詳しい説明があり、トレーニング従事者でなくとも理解しやすい内容となっている。本書のプログラムはアスリート・パフォーマンスで実際に行っている多くのエクササイズの中から短時間で最大の効果を得ることができるものから形成されている。トレーニングの時間をとることができない多忙な方にも配慮している非常に魅力的な内容となっている。
本書を読み終えた後、コアについての知識がよりいっそう深まっているはずである。そして今までの当たり前のように行っていたマシンやフリーウェイトなどのトレーニング方法に多少なりとも変化が必要なことにも気づくだろう。付属のCD-ROMで実際のエクササイズの動きを見ることができるのも非常によい。
トレーニング従事者にはもちろんのこと、さらに上のレベルを目指すアスリートや一般のトレーニーにもぜひお勧めしたい一冊である。
(三嶽 大輔)
出版元:大修館書店
(掲載日:2012-01-19)
タグ:コアトレーニング
カテゴリ トレーニング
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ファイブ
平山 譲
本作はミスターバスケットボールと呼ばれた佐古賢一選手を中心に物語が展開される。所属していたバスケ部が親会社の業績不振により廃部に。バスケができないと悲しみに暮れていたが、一人のコーチの誘いによりあるチームでもう一度バスケができることになった。鈴木貴美一HC率いるアイシンという優勝経験がないチームに。
そこに集まった後藤正規、外山英明、佐藤信長、エリック・マッカーサーといった個性的な選手たち。彼らもまた佐古と同じように一度はバスケを続ける道を絶たれた選手たちだった。だが彼らは諦めなかった、バスケットが大好きだから。まだ終われなかった。
人生の酸いも甘いも経験した30代の5人。一度や二度リストラされたって何度でもやり直せる。オジサン軍団と呼ばれたアイシンの初優勝に向けてチーム全員で挑むノンフィクションストーリー。
選手一人ずつチームに集まった経緯などにスポットが当てられており、感情移入がしやすく読んでいて非常に胸が熱くなる。まだまだ自分も頑張れる、そんな気持ちにさせてくれる作品である。
(三嶽 大輔)
出版元:日本放送出版協会
(掲載日:2012-02-07)
タグ:バスケットボール ノンフィクション
カテゴリ 人生
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高岡英夫の歩き革命
高岡 英夫 小松 美冬
本書では歩きをテーマにしてコリをほぐすメソッドを紹介している。
興味深いのが高岡英夫氏が展開する身体意識理論についても書かれていること。本書では「センター」と呼ばれる身体意識について書かれている。センターとは、よく言われる正中線や体軸と言われる身体の中心を通る線のことである。この身体意識を生み出すことにより姿勢や歩行の改善、身体のゆるみを得るというものである。詳細については本書または高岡英夫氏が身体意識理論について述べている書籍がいくつかあるのでご参照いただきたい。
一般的なスポーツなどのレッスン書との違いは、自身の身体の内面に働きかけるといったところではないだろうか。この身体の内面が非常に重要だと私も思う。人はどこかが痛いなど、自分の身体に今起きている結果的な不具合には敏感だが、その過程にある痛みの原因に目を向けないことが多い。自分の中にある不具合の原因や状態の変化に気づくことにより、身体を健康に導けるのではないだろうか。このメソッドの前後では自分の身体に対する意識の感覚が変化していることに気づくと思われる。
自分の身体の内面に気づきを与え、身体を改善するためのメソッドが豊富に書かれているのでぜひご一読いただきたい。
(三嶽 大輔)
出版元:学習研究社
(掲載日:2012-10-16)
タグ:歩行
カテゴリ 身体
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身体のホームポジション
藤本 靖
本書はタイトルの通り身体のホームポジションがテーマとなっている。
筆者によるとホームポジションとは「身体の外側にある情報を体の内側で柔軟に受け取り、自然な動きとして反応できる身体の状態」と述べている。その身体の中でも普段当たり前のように使っている耳・目・鼻・口などが身体のホームポジションの鍵となっているのだ。
耳・目・鼻・口が身体と関係していることを知っている人は少ないのではないだろうか。本書を読むとそういった部位が、身体と深くつながっていることに気づくであろう。 日常生活でも使えるエクササイズがいくつか紹介されているのだが、そのエクササイズ内容が面白い。従来の“身体を動かす”といったものではなく自分の意識を使って気付きを与えるようなものが多く、身体のさまざまな発見があり非常に楽しいのである。私の説明だけでは本書の内容を伝えるのは非常に困難である。だが一読すれば自分の身体の中の気付きが高まること間違いなしである。
(三嶽 大輔)
出版元:BABジャパン
(掲載日:2012-10-16)
タグ:エクササイズ
カテゴリ 身体
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バスケットボールのメンタルトレーニング
ジェイ マイクス
バスケットボールのメンタルトレーニングという非常に興味深い内容である。
バスケットボールを行ったことがある者なら、誰もが体験しているであろう場面や動作が登場する。それらの場面でのプレーをよりよいものにしていくメンタルトレーニング法もあり、痒いところに手が届く内容となっている。それ以外にもさまざまな局面で役立つ心理的なテクニックなどや、ドリルもたくさん紹介されている。さらに本書は自身の内面の気づきを高めることについても重きを置いている。その内容は視野、音、触感、心の映像、内面の声、身体の気づきといったものである。内部感覚が高まることによりプレーもよくなっていく。
各章ごとの論じた内容を題材にした問題が章末に登場するので、すぐに復習できるところもよい。読み進めていくのに非常に時間がかかるが、そのぶん理解も深くなることであろう。プレーヤーはもちろん、指導者にもぜひとも目を通していただきたい。この気づきというのはバスケットボールだけではなく、他のスポーツ、日常生活などのさまざまな場面でよい結果をもたらしてくれるであろう。
(三嶽 大輔)
出版元:大修館書店
(掲載日:2012-10-30)
タグ:メンタルトレーニング バスケットボール
カテゴリ メンタル
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スラムダンク勝利学
辻 秀一
本書はいくつか出ている勝利学シリーズの中の一冊であり、バスケットボール漫画のスラムダンクの名シーンや選手の心情などにフォーカスし、スポーツ心理学に関連づけている。一章ごとの区切りが非常に簡潔であり、テーマが明確である。通常のスポーツ心理学だと少し難しいと感じてしまうところも漫画のワンカットを入れることにより、シチュエーションを理解しやすく非常にわかりやすい。なので年代を問わず誰もが楽しく読むことができるであろう。実際のスポーツシーンでもありがちなことが題材になっているので、ふと練習をしているときに思い出せるのもよい。
だが、本書はスラムダンクのあらすじなど読者が知っている前提で進められる。もちろん読まなくともわかるのだが、スラムダンクを読んでいたほうがキャラクターに自身を投影しやすく理解がしやすいであろう。
こういった漫画をベースにした勝利学シリーズはその漫画が好きな人にはもちろんのこと、スポーツ選手(とくに小中高生)にはスポーツ心理学の入り口としても入りやすく、非常に楽しめる内容となっている。
(三嶽 大輔)
出版元:集英社インターナショナル
(掲載日:2013-01-18)
タグ:心理 チーム
カテゴリ メンタル
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