「動き」のトリガーポイント
マーティー 松本
筋肉や関節の痛みといった、日常生活や運動に支障をきたす症状に悩まされている人々がいます。その症状を改善するため、もしくは症状はないがこれからも健康でいるために、中高年の方々が運動やスポーツを始めることも増えてきました。運動が健康に効果的な一番の理由は、運動することによって筋の機能が維持・改善されるためです。つまり、筋の機能を高く保つことで長く健康でいられるということです。しかし、一般の人より筋の機能が高いはずのプロスポーツ選手であっても、筋肉や関節の痛みに悩まされることがあります。そういった症状に悩まされるのはなぜなのでしょうか? 筋の機能のレベルが関係ないのであれば、症状を引き起こす原因は何なのでしょうか?
本書ではアメリカの研究文献をもとに、筋肉や関節の痛みなどの症状を引き起こす原因は、様々な動きの中で筋肉を酷使することによって筋肉内に形成された硬結(特定の部位に負担がかかり続けたことで形成される、短縮した筋節が集まったコブのような状態)にあるとし、それが引き金となって痛みを発生させるため「トリガーポイント」と呼称し、これを解消することが必要だとしています。また、「トリガーポイント」を解消しない限り、何度も同じ症状が再発する可能性が高く、身体に動きの制限がかかり続け、いずれは日常生活や運動だけでなく仕事にも影響が出てくるともしています。そして、「トリガーポイント」を解消するために必要なことを解剖学や生理学、圧迫や施術・マッサージの基本から説明しつつ、実際に解消するための方法について、図や写真を交えて詳細に述べています。
本書は同じ著者による『すぐわかる! すぐ使える! トリガーポイント療法』の続編的な存在として刊行されており、上記書籍ではカバーしきれなかった内容・症状を扱っているようです。上記の書籍を併せて読むことで、より理解が進むでしょう。
(濱野 光太)
出版元:BABジャパン
(掲載日:2019-08-16)
タグ:トリガーポイント
カテゴリ 身体
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スポーツが得意な子に育つたのしいお話365
日本体育学会
スポーツが大好きな子、どちらでもない子、嫌いで苦手意識を持っている子。いろいろな子どもがいると思います。大好きな子どもは進んでスポーツや運動をすると思いますが、最近はテレビゲームやスマートフォンの普及などによって、スポーツに触れる・スポーツを楽しむ機会というものが減ってきている印象です。確かにそれらは楽しい・面白いものかもしれませんが、スポーツの本質も楽しさ・面白さにあります。
スポーツは気晴らしという意味を持つ中世英語の「deport」が語源となっていて、楽しさや面白さを表すことも理解できると思います。スポーツが世界中に広まっていることからもわかるとおり、楽しさや面白さというものは万国共通です。
ゲームやインターネットを通じて世界の人と交流することが悪いとは言えませんが、さらに楽しめるものの幅を広げると、人生はより豊かなものになるでしょう。とくにスポーツに苦手意識を持っていて嫌いだという子どもには、スポーツの楽しさや魅力といったものを知ってもらえるいい機会になる一冊ではないかと思います。無論、大好きな子どもにも、それほど好きではないけど興味のある子どもにもお勧めです。
本書では、はじめにスポーツとはどのような意味を持っているかについて触れたのち、スポーツの歴史や競技のこと、オリンピックやパラリンピックのこと、運動のコツ・ポイント、スポーツや運動に関する豆知識や純粋だけどなかなか答えられない疑問、スポーツ選手の活躍を支える人たちのこと、ケガやトレーニングのこと、人間の身体のこと、果ては日本においてマイナーなスポーツについての知識など、さまざまな情報が掲載されています。
好奇心旺盛で多感な子どもにとっては、全てでなくとも何かひとつくらいは興味を惹く内容があると思います。
また、本書は子どもを持つご両親や、学校の先生にも非常に役立つものだと思います。子どもにスポーツを好きになってほしい、子どもが自分の将来を選択する幅を広げる役に立ててほしいという想いがあれば、購入してお子さんに与えたり読み聞かせたりするのもよいと思いますし、学校の先生ならば子どもたちの興味を惹く授業にするためにいろいろな情報を仕入れる本として活用したり、教室の本棚や図書室に置くことも子どもたちの教育によいかもしれません。
(濱野 光太)
出版元:誠文堂新光社
(掲載日:2019-08-19)
タグ:子ども スポーツ全般
カテゴリ 運動実践
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早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした
小林 拓矢
「ブラック企業」。主に法の枠を超えた過酷なサービス残業を行わせたり、理不尽なパワハラや正当な理由のない解雇によって従業員を追い詰める企業のことを指す。こういった形態の企業は昔から存在していたと思うが、「ブラック企業」という言葉が盛んに用いられるようになったのはここ十年ほどのことです。
本書でははじめに「ブラック企業」とは何かを軽く述べたのち、著者が大学を卒業して現在のフリーライターとなるまでに勤務した3社の「ブラック企業」について、それらの企業で受けてきた扱いや勤務する中で感じていたこと、そして自身はどう反応し行動したのかが記されている。想像していたよりひどい扱いだなと感じる人もいそうな内容で、読んでいて暗く重い気分になる。しかし、これは実際に起こったことであり、特殊な出来事というわけでもない。世間には普通に存在していることである。もし自分の勤める会社がそうだったら、もしくは実際にそうならばどうすべきか、考えるきっかけになる本だろう。
ブラック企業とは世の中に一定数存在するもので、中には世に言うブラック企業にあたるとは微塵も思っていない企業や、認識していながらそのことを隠す企業もあることだろう。新しく社会に出る新卒者がそういったブラック企業を見破り避けることは難しいと思う。しかし、インターネットが普及した今なら、実際に起きてニュースにまでなった事件や就職関連サイトおよび匿名掲示板での評判からブラック企業を見破ることができるかもしれない。ただし、ニュースになっているほどならともかく、インターネットにある情報がすべて事実とも限らない。あくまでそれらの情報は参考程度にし、就職説明会等でその企業の空気をつかむことが必要になるだろう。
また、実際に社内で圧力に悩まされている人にとっても、この本の著者の経験と行動した結果から、今この状況ならばどうするのが最善なのかを考える助けになると思う。親・頼りになる先輩・弁護士・労基など相談できる先は多い。企業自体がブラックなのか、それとも特定の人物がブラックなのかによって、起こすべき行動も変わるだろう。
よほど好転しない限り最終的には退職へとつながると思うが、追い詰められて自ら命を絶つよりは遥かにマシである。同僚に迷惑をかけるからだとかそんなことを考えるより、まずは自分の身を第一に考えるほうがよっぽどいい。男女・世代関係なく、また社長や上司という立場の人たちにも、できれば読んでいただきたい一冊である。
(濱野 光太)
出版元:講談社
(掲載日:2019-08-20)
タグ:仕事 ブラック企業
カテゴリ 人生
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レジリエンス 復活力 あらゆるシステムの破綻と回復を分けるものは何か
アンドリュー・ゾッリ アン・マリー・ヒーリー 須川 綾子
「レジリエンス」という言葉はあまり聞き馴染みがないかもしれない。直訳すると「回復力」「反発力」。辞書的には「外部から力を加えられた物質が元に戻る力」「人が困難から立ち直る力」を意味するとされている。外から力を加えられてへこんだボールが反発で元に戻る様子を想像してもらえるとわかりやすいかもしれない。
本書では、はじめにレジリエンスとは何かについて例を挙げて説明し、本書内におけるレジリエンスの定義づけを行ったのち、レジリエンスの法則や原則、事態に対するアプローチの方法やもたらす効果について述べ、レジリエンスにおけるこれらの概念を多くの事例から考察し、特性について問い直して理解することを目的としている。
実際に読んでいただかなければ、この本の本質は伝わらないと思う。非常に密度の濃い一冊となっており、一度で読み切ってすべてを理解することはまず不可能だろう。多くの時間をかけるだけの価値はある一冊だと思うので、章ごとや事例ごとに読み終えたら内容を自分なりにまとめて理解することを繰り返し、時間をかけてじっくり読み進めることをおすすめする。世界では困難や望ましくない状況がいくらでも発生し、時には予想だにしなかった困難がふりかかってくることもある。レジリエンスについて理解し必要な知識を積み重ねることができれば、所属する組織や集団、または自分自身が困難に立ち向かう際に役立つことだろう。
(濱野 光太)
出版元:ダイヤモンド社
(掲載日:2019-08-23)
タグ:レジリエンス
カテゴリ その他
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Q&Aでわかるアンチ・ドーピングの基本
第一東京弁護士会 総合法律研究所 スポーツ法研究部会
オリンピックなどの国際的なスポーツの大会を見ていると、ドーピングという言葉を聞くことがあるでしょう。「自分が有利になるために薬を飲んだり注射したりする」という認識の方が大半だと思いますが、ドーピングの定義や規制は思っている以上に複雑なものです。日本においては、カヌー競技の選手が日本代表を争うライバルのドリンクに禁止されている物質を混入させたという事件が記憶に新しいと思います。この一件では、混入された側の選手は資格停止の処分が下らずに済みましたが、知らずのうちに摂取してしまった形であっても、場合によっては資格停止などの処分が下されることがあります。知っているようで知らないドーピングのこと。その世界はいったいどれほど細かいのか。どのような対策がなされているのか。
本書ではドーピングとは何かについてや検査の方法、疑われないためにアスリートが気をつけるべきこと、また日本や世界ではドーピングという行為に対する対策がどのように進められているのか、選手はどうすべきなのかというアンチ・ドーピングについて、実際に起きた事例も交えて述べています。
アンチ・ドーピングについて知ることでスポーツに対する理解も深まるかと思いますが、実はアンチ・ドーピングは世界や国内トップレベル選手だけの話というわけでもありません。本書の中にも事例がありますが、一般レベルの競技力であっても、競技会によってはドーピング検査の対象となることがあります。選手としてそれなりの大会に出る機会がある人は、ぜひ本書でアンチ・ドーピングについての知識を手にしていただきたいです。
(濱野 光太)
出版元:同文舘出版
(掲載日:2019-08-24)
タグ:ドーピング
カテゴリ スポーツ医科学
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