骨格筋と運動
跡見 順子 大野 秀樹 伏木 亨
これも本誌連載中の一人、跡見氏が編者に加わっている「身体運動・栄養・健康の生命科学Q&A」シリーズの最新刊。既刊では『活性酸素と運動』『栄養と運動』がある。
さて、本書。月刊スポーツメディスンの連載を愛読されている人なら、『骨格筋と運動』がこれまでの力の発揮という視点で書かれてはないことは容易に理解されであろう。
跡見氏は、「骨格筋が発揮する大きな力の向上に目を向けるよりも、動物の本質を発現する意味での運動と骨格筋に、そしてその大きな適応能力の機構に目をむけようではないか」(P.8)と記しているが、「パフォーマンスの向上」を第一とする競技スポーツの世界では、この声はなかなか届きにくい。
だが、身体運動、身体活動について、「世界記録」という高みにではなく、細胞レベルでの生命の営みそのもの、またそれが意味する「生きていること」、ひいては「動いているから生きている私」というほっとするような核心、誰もが必ず持つ「身体」という広がりへの関心のほうが高まってきた。
両者は喧嘩し合うものではないが、とっつきにくい「生命科学」も「生命」を扱っているのであるから、生きとし生きるものすべてに関係することなのだと思えば、親近感がわいてくるのではないか。
跡見氏の連載の「副読本」にもなる1冊。ただし、やや専門的。それゆえか、価格もちょっと高いかも。
(月刊スポーツメディスン編集部)
出版元:杏林書院
(掲載日:2001-11-25)
タグ:筋 運動 生命科学
カテゴリ 生命科学
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生命の文法
中村 桂子 養老 孟司
叢書「生命の哲学」の1巻。
『ゲノムを読む』などの著書で知られる中村氏と解剖学者であり、『唯脳論』で知られ多方面で発言している養老氏の対談をまとめたもの。
DNAの二重らせんを発見したワトソンが、「あなたの生涯で最大の業績はなんですか」と聞かれて、『二重らせん』という本を書いたことだと言ったとか(中村)、「私は、生物物理学というのはあったらおもしろいな、と思っているんです。
人間の身体を本当に古典力学的に調べようと思ったら、けっこうたいへんなんです。
関節にどれだけの力がかかっている、とか、あるいは筋肉が分子の関わり合いで発生した力学的力を、どういう形で最終的にマクロな運動までもっていくかとか、実は誰もまじめに調べていないんです」(養老)など、楽しく、重要な話が続く。
副題通り、生命と情報がメインテーマだが、読み進むうちにとんでもなく面白い時代になってきたとワクワクさせられる。
対談なので気軽に読め、編集部による注も随所にあり、2回の対談ではあるが中身は濃い。
中村桂子、養老孟司著 B6判 162 頁 2001年3月1日刊 1900円+税
(月刊スポーツメディスン編集部)
出版元:哲学書房
(掲載日:2001-11-25)
タグ:対談 生命科学
カテゴリ 生命科学
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免疫・「自己」と「非自己」の科学
多田 富雄
『免疫の意味論』『生命の意味論』で知られる著者のNHKブックスの1冊。
能にも通じる著者は最近『脳の中の能舞台」(新潮社)という本も出しているが、本書は『免疫の意味論』をかみくだいた書とも言える。
1998年春に放映されたNHK教育テレビ「人間大学」での12回の講義がべ一スになり、大幅な加筆改訂に3年を費やして完成。
「『人間大学』は、一般の市民の方に学問や文化の現在をわかりすくお話しするというのが目的である。お引き受けしたとき私は、長年研究してきた免疫学なのだから、高校卒業ていどの若者や、文科系の人たちにも充分わからせることができるという自信を持っていたが、放送が始まってみたら、そうはいかなかった」(あとがきより)と記し、著者はこの反省から、学生やパラメディカル、生命科学に興味を持つ文科系の学生に必要で充分な免疫学の基礎知識を伝えることができる本になったと言う。
とは言え、免疫はそう簡単ではない。細かなところはわからなくても、いかに複雑で多様な系であるかがわかるだけでも見方が変わる。インフルエンザにかかって、治るまでを免疫学的に解説したところなどは、今度かかったらじっくり観察し、ヘタなことはしないでおこうと思わせる。生命のすごさ、それを発見してきた人間のすごさを知ることができる。
(月刊スポーツメディスン編集部)
出版元:日本放送出版協会
(掲載日:2001-11-25)
タグ:免疫
カテゴリ 生命科学
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ヒトゲノム 解読から応用・人間理解へ
榊 佳之
副題は「解読から応用・人間理解へ」。
ヒトゲノムについては、2000年6月26日、日米英仏独中の6カ国からなる国際ヒトゲノム計画プロジェクトチームとアメリカのバイオベンチャー企業セレラ・ジェノミクス社が、それぞれヒトゲノムの全貌を明らかにしたことを宣言した。
だが、これで何もかも終わりではない。DNAの配列(シークエンス)がほぼわかっただけで、これからの課題のほうが大きい。だから「ポストゲノム」ではなく「ポストシークエンス」と言うべきなのだと著者は言う。
ITの次はバイオだと言われ、大型書店では「生命科学」あるいは「遺伝子」というコーナーが設けられている。しかし、その割にはまだ一般的にはあまり理解されていない。
もちろん、その内容が複雑であり、やさしく書かれた本でも実はある程度知識がないと理解できないという事情もあるが、この本はその中でも比較的わかりやすい。副題の通り、ヒトゲノムの解明が何につながるのかが、これまでの歴史(その中での日本人研究者の業績も含め)とともに語られる。
著者は、東京大学医科学研究所教授、理化学研究所ゲノム科学総合研究センタープロジェクトディレクター。生物学と情報科学の両方の知識のある人、あるいは両者の共同作業が必要だがその人材が不足しているという指摘もある。
とても身近な問題として、生命科学あるいはヒトゲノムを捉えておくのは、何もスポーツ医学関係者に限ったことではなく、生命である「私」なら当然と思うのだが・・・。
榊佳之著 新書判 198頁 2001年5月1日刊 700円+税
岩波書店
(月刊スポーツメディスン編集部)
出版元:岩波書店
(掲載日:2001-11-29)
タグ:ゲノム 遺伝子 DNA
カテゴリ 生命科学
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運動分子生物学
大日方 昴 山田 茂 後藤 勝正
細胞膜やミトコンドリアの外膜を物質はどのように通過しているのか。そこに仕組みは必ずあるはずであるが、一般の生化学や生理学の書籍ではなかなかそこまで記載していない。その疑問を解決する一つの手段になりうる書籍である。遺伝子をはじめ筋細胞内外の構造変化やエネルギー代謝、シグナル伝達機構などを筋の構造や機能を細胞単位ではなく、さらに細かい分子単位を基準として記載されている。
とくに一般の生化学や生理学の書籍と異なる点は、運動前後でそれらがどのように変化しているのかが記載されており、トレーニング原理を考えるうえでは非常に役に立つ。
しかしこれらを理解するためには、まずは生化学や生理学の基本的な流れを理解していることが前提となる。
細胞を分子レベルで考えるとどうしても単一の細胞に目が向きがちになるが、筋細胞1つでは何もできない。筋細胞だけではなく、その周りの構造も筋収縮を行うためには必要なものである。
トレーニングもそうだが、全体像を意識して詳細を考えてゆかなければ、方向性を見失ってしまう。
(澤野 博)
出版元:ナップ
(掲載日:2012-02-07)
タグ:分子生物学 生化学
カテゴリ 生命科学
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人はどうして疲れるのか
渡辺 俊男
「若いころと違って年を取ると疲れる」なんて言葉を耳にします。私だって何度となくそんなことを言ったことがあります。若いころのほうが運動量も多いのに、どうして年を取ったほうが疲れるのか? 若いころとは違い、責任の重い立場にあるから疲れるのか? そうなると疲れは身体の問題ではないのか? 日曜日にゆっくり休んだのにどうして月曜日の朝は疲れているのか?──「疲れ」というものを改めて考えてみると不思議なことがたくさんあります。「疲れ」とはいったい何なのか? 本書は日常当たり前に起きる現象をさまざまな角度から分析しています。
「疲れ」にはマイナスのイメージがあります。誰だって疲れるのは嫌だし、疲れ知らずで動けたら素晴らしいかもしれません。しかし疲れなければ休息をとることもないでしょう。そこに待っているのは「破たん」であることは容易に想像がつきます。その流れにブレーキをかけるために「疲れ」が存在するのであればそこに積極的な価値を見出すことができると筆者は説きます。動くことこそが動物のアイデンティティであり、動くことにより食物を獲得し、エネルギーを得て活動ができるのですが、「動く」「疲れる」「休む」という要素こそが生命活動のシステムであり、これらの要素のバランスが効率をもたらすということを知らされました。
現代社会における我々を取り巻く環境は大きく変化し、疲労というものの質も、筋肉を中心としたものから感覚器官の疲労や精神的な疲労などに変わりつつあり、ますます「疲労」というものの正体がつかみづらくなってきたとあります。時代の推移により「疲労」も変化するというのは興味深いところです。
こんな引用があります。「C・ベルナールは『生きていること』を定義して、『下界の環境の変化に対して、生体の内部環境の生理的平衡状態(ホメオスタシス)を保つ努力である』と言いました」。動くものが動物であるかと言えばそうではありません。機械は動きますが自ら下界の環境変化に対して恒常性を持ちません。これこそが動物と無生物との分水嶺。ここで筆者は、安定した変化のない環境に馴らされて生体の内部環境を変化する力を失うことは、生物としての活力を失うことと言い切り、そのことが「死」に向かうことであると指摘します。安定した楽な生活を求めようとする私たちに対して警鐘を鳴らすと同時に、活力に満ち溢れた生活を営むためのヒントを与えてくれているように思えるのです。
最後の疲労回復法の章も必見です。疲労を軽く見て病的な状態に陥ることもありがちです。よりよく生きることは上手に「疲れる」ことである。そういった発想で日々を暮らしてみると、自分の心や身体との新しいつきあい方が見つかるような気がするのです。
(辻田 浩志)
出版元:筑摩書房
(掲載日:2012-02-07)
タグ:生化学 疲労
カテゴリ 生命科学
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ミトコンドリアと生きる
瀬名 秀明 太田 成男
昔、生物で習った「ミトコンドリア」について知っている人は多い。本書にも記されているが、若い人に対して行ったアンケートでもなんと80%は「知っている」と回答。
ところで、ミトコンドリアの色は? となると、多くの人が「緑」と答える。理由は、ミトコンドリアに「ミ・ド・リ」の文字があるからだそうで、また話題になった映画『パラサイト・イヴ』でもミトコンドリアは緑のイメージで統一されていたそうだ。
実際に生きている細胞のミトコンドリアは赤茶色で、これは鉄分を含んでいるから。
その映画『パラサイト・イヴ』のもとになったホラー小説を書いたのが瀬名氏で、一方の太田氏は、日本医科大学教授で『ミトコンドリア病』などの著書もあるミトコンドリア研究者である。ミトコンドリアはエネルギーの生産工場として知られているが、実はそれだけではない。また、DNAというと細胞核内のものを考えるが、ミトコンドリア内にもあり、ミトコンドリアDNAと呼ばれる。
これらが生体に対して大変な仕事をしている事実がどんどん発見されている。長距離ランナーのミトコンドリアDNAの塩基配列を調べると、ランナーに比較的多くみられるミトコンドリアDNA配列は、なんと鳥類のそれと同じだった(鳥類は活性酸素がつくられにくく酸素消費量が多いわりに寿命が長い)というような話もあり、生命科学の面白さを満喫することができる。
B6判 221頁 2000年12月1日刊
(月刊スポーツメディスン編集部)
出版元:角川書店
(掲載日:2001-03-15)
タグ:ミトコンドリア
カテゴリ 生命科学
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遺伝子 vs ミーム
佐倉 統
著者は理学博士で、もともとの専門は進化生物学だが、科学史や科学論の領域に焦点を移し、生物学の理論受容史や科学技術と社会のあるべき関係を探索中とのこと。
「ミーム(meme)とは、文化的情報の伝達単位である。生命情報の単位が遺伝子であることからのアナロジーとして連想されたもので、言い換えると、文化システムを生命システムからのアナロジーで記述するための基本的な概念である」(P.13)
この概念は「利己的遺伝子」で知られるR・ドーキンスが考えたもので、批判もある。だが、ここでは著者のこの言葉を引用しておきたい。
「ぼくはミームという概念の有効性は、定量的な記述や予測などではなく、比喩やアナロジーにもとづく問題発見能力にあると思う」(P.214)
物を考える視点(あるいは技術)はいくつも持っているほうがよい。学問もスポーツもミームに満ち溢れている。簡単に読めるようで、考えるところが多く残される本である。
新書判 230頁 2001年9月1日刊 1000円+税
(月刊スポーツメディスン編集部)
出版元:廣済堂出版
(掲載日:2001-11-15)
タグ:遺伝子
カテゴリ 生命科学
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タンパク質の生命科学
池内 敏彦
脚光を浴び、ほとんど毎日のように報じられる生命科学だが、専門的で複雑なため、一般には理解しにくいことが多い。だから、勉強したくない、関連書も読んだけれどわかりにくいからもう読まないという人も少なくないだろう。
この本は、書名通りタンパク質を生命科学の視点で述べているのだが、「はじめに」のむすびで著者は「これから、タンパク質の構造と機能を中心にタンパク質のすべてを解説していきたいと思う」と記している。この自信のすごさ。
だが、それは期待を裏切らない。全3章で構成、1章では「タンパク質とはどのようなものか」で、まさにもつれた糸をほどくかのように語っていく(2章は「タンパク質と遺伝子」、3章は「タンパク質と生命」)。文化系の人でも、こう説明されれば容易に理解できるだろう。酸とは何か、酸化とは何か、という昔習ったかもしれないことをちゃんと整理しつつ、解説を進めている。驚く腕前である。
「ある程度知識のある人が読むのだろうから、基礎知識までは触れません」と言わず、難しいことを「これならわかるでしょ」とわかるように説明している。それでいて内容は極めて高度である。
著者は、京都大学ウイルス研究所、大阪大学蛋白質研究所を経て、現在関西大学工学部教授。「説明する」ということのお手本のような1冊である。
新書判 210頁 2001年12月29日刊 800円+税
(月刊スポーツメディスン編集部)
出版元:中央公論新社
(掲載日:2002-03-15)
タグ:タンパク質
カテゴリ 生命科学
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愛づるの話。
中村 桂子
『季刊 生命誌』をカードとWebで発行し、最後にまとめる。これはその2冊目。編集の中村さんは、大阪府高槻市にあるJT生命誌研究館(10年前に創設)の館長である。東京大学理学部化学科の出身で、生命科学が専門だが、生き物の歴史とでもいうかBiohistory(生命誌)という概念を打ち出し、言論活動も盛んに行っておられる。
さて、この号のテーマは2つ。「愛づる」と「時」である。前者は中村さんとの対談が4つ。哲学者の今道友信氏との「讃美と涙が創造の源泉」、生物学者で前JT生命誌研究館館長の岡田節人氏との「生物学のロマンとこころ」、美学・美術史が専門で京都大学大学院教授、同大学附属図書館館長の佐々木丞平氏との「生を写す視点」、生命基礎論(複雑系)の金子邦彦氏との「生命──多様化するという普遍性」である。
「時」のほうは、「時を刻むバクテリア」(岩崎秀雄)を始め9つの論文で構成されている。最後にScientist Libraryというタイトルで、本庶佑氏ほか4人の科学者の生い立ちや研究内容が興味深く紹介されている。
柔らかい知性というべきか、「蟲愛づる姫君」から「愛づる」をキーワードに選んだ中村さんの感性に気分よくひたれる。いつまでも読んでいたくなる。
(清家 輝文)
出版元:JT生命誌研究館 新曜社
(掲載日:2004-07-15)
タグ:対談 生物学 生命 時間
カテゴリ 生命科学
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やわらかな遺伝子
マット リドレー 中村 桂子 斉藤 隆央
原題は「nature via nurture」、つまり「生まれは育ちを通して」と訳される。原題には副題もあり、こちらは「Genes, Experience and What Makes Us Human」(遺伝子、経験、そしてわたしたちをヒトたらしめるもの)である。
遺伝子について加速度的に解明が進むことにより、遺伝子決定論的言説も出てくる。一方で、育ち(環境)の影響も大であり、「生まれか育ちか(遺伝か環境か)(nature vs nurture)」、いずれが決定的なのかという論戦が繰り広げられることになる。
それでも著者は、「生まれか育ちか」ではなく、「生まれは育ちを通して」現れるという説を採る。「遺伝子の活動が最初から決まっているとは言えない。むしろ、遺伝子は環境から情報を引き出す装置なのだ」「美は『生まれ』なのである。だが同時に『育ち』でもある。食事や運動、清潔さや事故なども身体的な魅力に影響を及ぼしうるし…」「『育ち』は出生後で『生まれ』は出生前のものという誤信にある」。この引用で輪郭は理解していただけるであろう。
だが、興味深いことに訳者は『やわらかな遺伝子』という書名をつけた。訳者はこう言う。その理由のひとつは、英語のnature via nurtureという語呂のよさが訳出できないこと、もうひとつは「生まれという言葉には、すでに遺伝子決定論の匂いがついており、本書で扱っている“環境に対応して柔軟にはたらく遺伝子”というイメージはこの言葉からは生まれそうにないこと」である。
遺伝子のことがわかればわかるほど、環境や運動がいかに大事かもわかるのである。
マット・リドレー著、中村桂子・斉藤隆央訳
(清家 輝文)
出版元:紀伊國屋書店
(掲載日:2012-10-09)
タグ:遺伝子
カテゴリ 生命科学
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ストレスに負けない脳
ブルース マキューアン エリザベス ノートン ラズリー 星 恵子 桜内 篤子
副題は「心と体を癒すしくみを探る」。そもそもストレス反応は「闘争か逃走か」反応とも呼ばれ、緊急事態など状況の変化に対応することができる防御機構の1つである。しかし、ストレスが溜まる、あるいはストレス状態が慢性的に続くと有害になり、病気を悪化させてしまう。本書では、緊急に反応する防御の作用に「アロスタシス」、悪影響を及ぼす作用に「アロスタティック負荷」という言葉を当て、ストレスについて脳科学の視点から解説している。
第8章「ストレスに負けない生活」では、アロスタティック負荷を経験する必然性はないと語ったうえで、からだに危害を加えるものではなく保護的に働かせる方法として、運動、ヘルシーな食事、快眠、適度のアルコール、禁煙などを挙げている。不規則な生活や人間関係などが負の影響を与えるストレスの原因になることは間違いないが、その結果陥りがちな暴飲・暴食、睡眠不足は、さらにアロスタティック負荷を招くことになる。
序文を書いたスタンフォード大学のサポルスキー博士が「いい本は健康にいいという非還元主義的な事実があるが、本書はまさにそれに当たる」と評しているが、本書を通して健康になった気分になるから不思議である。
ブルース・マキューアン エリザベス・ノートン・ラズリー著、星恵子監修、桜内篤子訳
2004年9月15日刊、2310円
(長谷川 智憲)
出版元:早川書房
(掲載日:2012-10-09)
タグ:脳 ストレス
カテゴリ 生命科学
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人間は遺伝か環境か? 遺伝的プログラム論
日高 敏隆
遺伝子の研究が急速に進み、遺伝子でだいたいのことは決まっていると思いがちだが、もちろん環境要素も大きい。だから、「遺伝か環境か」と問われる。だが、著者はこう言う。「そもそも遺伝子とか遺伝とか言うけれど、何のことを言っているのだろう?(中略)遺伝と環境の両方といったらどういうことなのだ?」
これについて、生物学、とくに現代動物行動学の認識に立って、根本的に考えてみたのが本書である。「遺伝子と『持って生まれた性質』としての遺伝との関係がどうなっているのかは、じつはまだほとんどわかっていない。『遺伝』とは、そういう漠然とした状況の中で使われている言葉なのである」そこで出てくるキーワードが「遺伝的プログラム」である。これについて著者はわかりやすくこうたとえている。
「遺伝的プログラムとは、入学式などの式次第とよく似たものである」。つまり開会の辞だの、校長あいさつだの、「順番」は決まっているが、どんなふうに行われるかは書かれていない。しかし、こうして順番どおり具体化されることがプログラムにとって大切なことである。遺伝的プログラムも同じで、種にとって共通で一般的なのだが、具体化していくのは、ひとつひとつの個体である。個体(個人)が覚えたこと、経験したこと、癖、気分、それらを含めて発育が進んでいく。つまり「人生とは遺伝的プログラムの具体化だ」ということになる。「遺伝か環境か」、この問いに対する考え方が変わる本である。
2006年1月20日刊
(清家 輝文)
出版元:文藝春秋
(掲載日:2012-10-10)
タグ:遺伝子 環境要因
カテゴリ 生命科学
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iPS細胞ができた!
山中 伸弥 畑中 正一
1996年クローン羊「ドリー」の誕生のニュースは全世界を震撼させ、次いでES細胞(胚性幹細胞)が発表された。再生医療への研究はさらに進み、2007年11月20日、山中伸弥教授のチームがヒトの皮膚からのiPS細胞(人工多能性幹細胞)作製成功を発表した。 ES細胞もiPS細胞もどちらも、期待されている再生医療であるが、ES細胞は受精卵を壊して使うもので、受精卵を使用することから倫理面と他人の細胞を使うため拒絶反応の問題があった。一方、iPS細胞は皮膚細胞など自分自身の体細胞を使用するため拒絶反応がない。したがって、自分の悪くなった臓器の細胞をiPS細胞から再生することで、将来的に自分の細胞で病気を治すことができるようになるのではないかと注目されているものだ。
本書は、このiPS細胞を研究し作製に成功した山中伸弥氏と京大ウイルス研究所所長などを経て現京大名誉教授の畑中正一氏との対談で構成されている。一見難解な話も読み進めていくうちに、決して楽ではなかった研究の過程やiPS細胞を発見したときの喜び、これからの再生医療に対する思いなど、山中氏の人柄が聞き手の畑中氏によって引き出され、読者もワクワクした気持ちで引き込まれていく。また、文字が大きく読みやすい装丁で最後まで飽きずに読むことができる。最先端医療の未来を感じる一冊である。
2008年5月31日刊
(田口 久美子)
出版元:集英社
(掲載日:2008-10-15)
タグ:iPS細胞
カテゴリ 生命科学
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雌と雄のある世界
三井 恵津子
生物学の本である。著者は、お茶の水女子大理学部科学科から東京大学大学院生物化学専攻の理学博士。ドイツ、アメリカでの研究生活後、サイエンス系出版社で編集記者、編集長を務めた。現在はサイエンスライターである。
ご存じのように、生物学の世界は日進月歩。正確には、分子細胞生物学、分子遺伝学、発生生物学など、どんどん細かくなっていて、一般には新しい発見についていけそうにない。本書は、そういう世界でどこまで研究が進んでいるのか、何がわかってきたのかを、わかりやすく教えてくれる。iPS細胞やクローン技術などトピックも満載。
発展著しい分野だが、わかってくるほどわからないのが生物とのこと。わかっていないことのほうが多い。著者は、この本を書いたとたんに書き直さなければいけないのではないかと記しているが、それくらい新たな発見が続いている。
書名にある「雌と雄」の話も面白いが、こうした発見の概要を知るだけでも楽しい。しかし、つくづく思うのだが、細胞の話はなんと人間の社会全体にあてはまることが多いのか。細胞について考えると、自然と宇宙や命、つまり人生全体へ思いが及ぶ。
2008年10月22日
(清家 輝文)
出版元:集英社
(掲載日:2012-10-13)
タグ:生物学 生命科学 細胞
カテゴリ 生命科学
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タンパク質の一生 生命活動の舞台裏
永田 和宏
遺伝子情報をもとに、アミノ酸を順序どおりに並べる。そして、それを立体的に組み立てていくことで機能を持ったタンパク質をつくっていく。その様子をわかりやすく解説したのが本書である。タンパク質ができあがるまでには、シャペロンと呼ばれる脇役の分子が重要な役割をもっていること、輸送のためのさまざまな工夫、そして分解するための仕組みなどが順を追って紹介されていく。本当に生命の働きはうまくできていることを実感できる。
われわれは、ともすれば筋量を増やすことを目的としてしまいがちだが、身体内部でどのようなことが起こっているか、想像してみるのも面白い。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:岩波書店
(掲載日:2009-06-10)
タグ:タンパク質
カテゴリ 生命科学
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動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか
福岡 伸一
体力があるのはよいこと?
私の大学では、新入生を対象に体力測定を行うことを毎年の恒例としている。全国平均と比較した結果表を渡した後に感想を聞くと、判で押したような内容ばかりで笑ってしまうことがある。たとえば“浪人したけど体力あんまり落ちていなくてホッとしました(笑)”、“受験勉強で体力が落ちて悲しい。もうトシです(泣)”といった具合だ。
体力があるのは“よいこと”、ないのは“劣っている”こと“悪い”ことだというように、小さい頃から刷り込まれてきた結果このような感想を漏らすのではないか。極端な言い方をすると、体育の授業はただ単に身体が丈夫になるためにあるとか、自分はスポーツが得意だから優れているのだという解釈をしている部分もあるように思う。
“体育”とは、“体を育む”でもよいが、“体で育む”と読みたいものだと私は考えている。確かに体力があったり、運動能力に優れていることは日常生活を送る上で便利かもしれない。しかし、運動することに限らず、何かに触れたり、互いに触れ合ったりという身体感覚や体性感覚でもって感動し、身体を通して命を見つめ育む、そういう行為こそが“体育”であってほしいと願っている。 いずれ医師となったとき彼らが向かい合うのは、何らかの理由により心身に不具合を感じている患者や老人である。そういう人たちを相手に、正義の味方(=強者)の理論に陥って高飛車な診療態度をとったりすることなく、同じ目線で、共感できる姿勢を今のうちに身につけておいてほしいのだ。
生命とは動的な平衡状態
さて、本書の著者・福岡伸一は、分子生物学を専門とする生物学者で、かのベストセラー『生物と無生物のあいだ』の著者でもある。一貫するテーマは、さまざまな角度から「生命現象」つまり「生きていること」を見つめ、命について考察を深めているところにある。
表題の「動的平衡」とは「生命、自然、環境―そこで生起する、すべての現象の核心を解くキーワード」である。「生きている」ことすなわち「生命とは」「動的な平衡状態に」あり、そして「それは可変的でサスティナブルを特徴とする」システムなのである。「サスティナブル」なものは「一輪車に乗ってバランスを保つときのように、むしろ小刻みに動いているからこそ、平衡を維持できる」のであって「動きながら常に分解と再生を繰り返し、自分を作り替えている」からこそ「環境の変化に対応でき、また自分の傷を癒すことができる」。決して「何かを物質的・制度的に保存したり、死守したりすることではない」のである。そこには身体の大小、あるいは強者と弱者などといった区別は一切ないのである。
粘土に触れた感動
閑話休題。1年生を対象に“芸術と医療”という講義を担当してくださっている林香君先生(はやしかく:陶芸家、文星芸術大学教授)にうかがった話。
10年ほど前、重度の知的障害を持った子どもたちの施設で陶芸体験をしたところ、一人の少女がロクロに乗った粘土に手を触れたとたん、グッと手と粘土を見つめ幸せそうな顔になり嬉々として粘土をこねていたという場面を経験したことがあるのだそうだ。視覚と触覚が一致して動作に現れるということは、この少女のような場合には稀なことらしく、粘土に手を触れることで彼女の体に大きな感動が走ったからだろうと施設の先生が大変喜んでくれたという。林先生も驚きを隠せず、この経験がもととなって粘土が持つ未知の力を医療の場に展開する試みを続けているとのことである。
ひるがえって、私たち体育を生業とする者はどうだろう。歩けなくなったらオレはもう終わりだ、なんて思っていないだろうか。“Sports for All”ということを頭ではわかっていても、“この人たちにはあてはまらない”と、どこかに線を引いてはいないだろうか。飛んだり跳ねたり走ったり、汗をかくような激しさはなくとも、そこに“生きている”事実があれば、十分に“体育”は成立する。このようなことを原点に据えたほうが“体育”の可能性がさらに広がるように思えるのだがいかがだろう?
(板井 美浩)
出版元:木楽舎
(掲載日:2010-08-10)
タグ:研究
カテゴリ 生命科学
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「退化」の進化学
犬塚 則久
「人類は万物の霊長である」誰がそんなことを言い出したのか知りませんが、人類が他の動物よりも優れているのは人間の生活環境の中においてのみ通用すること。すべての動物は生活する環境に適合すべく、進化と退化を繰り返してきました。それぞれの動物が自らのおかれた環境で有利に過ごし、子孫を残していくという点では、今生きている動物は皆優れていると言わざるをえません。
本書は人類が今の姿に至るまでのプロセスを4億年前に遡り、どういう部位がどのように変化していったかを細かく説明します。「人類の履歴書」とでもいうべき変遷には現在においての謎が隠されているようです。現代において機能を喪失してもなお残る痕跡器官(男性の乳首など)や、作用が残り大きさが縮小した退化器官(親知らずや足の小指など)を変化した理由とともに数多く紹介されています。「人は元々二枚舌だった」とか興味深い「過去」があったり、数十年前まで退化したものと思われていた盲腸や虫垂もしっかりと働いていたという事実も近年明らかになったそうです。
「退化」という言葉のイメージは後退するというネガティブなものでしたが、環境の変化に対応した「進化」の一形態であることが納得できました。無駄なものを捨てコンパクトな姿で過ごすことが将来を生き延びるための自然の摂理に適合した知恵であり、「退化」もまた重要な選択肢であると思うのです。「得る」ということと「捨てる」ということが同価値であると教わりました。
過去の変化の理由を知ることにより、未来の人類の変化に対しても予測を立てることができたり、不都合な変化に対する警鐘を鳴らすことも可能なんじゃないかと思うのです。われわれ自身の身体に対する「温故知新」を見たような気がします。
学問的な難しい本というよりも、知ると面白い豆知識がいっぱい詰まった一冊です。
(辻田 浩志)
出版元:講談社
(掲載日:2012-10-16)
タグ:進化 退化
カテゴリ 生命科学
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逆システム学 市場と生命のしくみを解き明かす
金子 勝 児玉 龍彦
“フィットネス”という概念が日本にも紹介されてずいぶん経つと思うのだが、その意味がしっかりと浸透していないなぁと思うことがある。フィットネスとは、何だかわからないけどおしゃれなトレーニングのことなのだろう、という程度にしかとらえられていないと感じるのだ。
僕の職場は公共の体育館である。“フィットネスルーム”もある。やれ空調がどうだとかBGMがどうだとか、色々な要望が寄せられる。どうやら、夏涼しく冬温かい快適な空間で体を動かしたいらしい。
エアロビクスのプロのインストラクターでさえ「暑いから空調をもっと強くしろ」と言ってくる始末である。それは“フィットネス”ではないだろうと個人的には思っている。
“フィットネス”とはすなわち環境に適応する力のことであり、トレーニングはそれを高めるために行うものなのだと思う。では、空調のきいた快適な空間でトレーニングすることが果たして“適応する力”を高めることになるのだろうか。 本書は生命科学や経済学の知識に乏しい僕にとってはかなり難しい本であり、正直、理解できない部分も多かった。だが、キーワードである「多重フィードバック」という考え方は大いに参考になると思った。適応するしくみを多様で複雑なものに進化させることで生存できる可能性を増すのだ。
あるコーチが言っていたトップアスリートの条件を思い出した。「なんでも食えて、いつでもどこでも寝られること」。これも「適応する力」ということなのだろうか。ちょっと違うかな?
(尾原 陽介)
出版元:岩波書店
(掲載日:2012-10-16)
タグ:経済 生命
カテゴリ 生命科学
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分子レベルで見た体のはたらき
平山令明
人の身体は何からできているか考えたことはありますか?
人間の身体の細胞はどれだけあり、どんな働きがあるか考えたことはありますか?
「分子」というと難しさが出てくるかもしれませんが、本書は文章だけでなく図やCD-ROMを使い、よりわかりやすく解説されています。身体についていろんな情報が出ていますが、より深めていくと面白いことがわかってきます。本書は自分の身体についてそんな面白さを深めていける一冊です。
(大洞 裕和)
出版元:講談社
(掲載日:2015-07-06)
タグ:分子 身体
カテゴリ 生命科学
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マンガ分子生物学 ダイナミックな細胞内劇場
萩原 清文 谷口 維紹 多田 富雄
生命の本質が分子であるということを本書を読んで初めて知った。その事実を知るということを、私は避けてきたのかも知れない。なぜなら分子というものが、筋肉や骨、内臓のように見て触れることができないもので、存在感を感じないからだ。しかし、本書を読むことで私たちの身体の成り立ちは分子の集まりだということを改めて理解することができた。
治療やトレーニング、リハビリなどのトレーナー活動をするに当たり、なぜそれが効果的なのかを理解するには、解剖学以前に目に見えない部分で何が起こっているのかが大切になってくる。そもそも、理由もわからないのにトレーナーとしてクライアントの身体に対する行為を漫然と行うのはよくない。しかし、見えない部分を学ぼうと思っていても、取っ付きにくいのが正直な思いだ。
本書は、分子生物学という分野を取り上げている。細胞、DNA、タンパク、病気の仕組みから治療方法などをマンガを使って説明しているので、物語として頭に入ってきやすい。あっという間に読めてしまう一冊である。正直言うと物足りなさもある。マンガのまま、身体について学びたい思いが強くなる。もっと続きが読みたいぐらいだ。
文章だけで学ぶ教科書、参考書はどうしても想像がうまくできない。そんなとき本書が、分子生物学や身体にまつわる知識について、わかりやすく解釈するヒントとなる。この本を参考にして、自らの知識を、マンガや物語にしてみるのも面白そうだ。理解力と表現力が試されそうである。
本書をお勧めするには、医療関係の方では簡単すぎて物足りないかもしれない。なので、そもそも遺伝子に興味があって学びはじめの方、あるいは分野を掛け離れて学び方、伝え方を変えたい方。そんな方々が読むことで、何かきっかけをつくれるのではないかと思える一冊である。
(橋本 紘希)
出版元:哲学書房
(掲載日:2016-06-04)
タグ:分子生物学
カテゴリ 生命科学
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Q&Aですらすらわかる 体内時計健康法 時間栄養学・時間運動学・時間睡眠学から解く健康
田原 優 柴田 重信
以前ヨーロッパに行ったとき、滞在中はもちろん帰国してからも時差ぼけに悩まされ、ひと月ほど身体のリズムがおかしくなりました。「体内時計」という言葉は何となく知っていても実際に体験してみて初めてその存在感に気づかされました。多くの人が「体内時計」というものをご存じでしょうが、具体的なことについてはあまり知られていないのではないかと思います。「時計」と名付けられても体内に機械があるわけではなく、身体の様々な機能にリズムが刻まれているくらいの認識できちんと説明できるほど体内時計のことを知っているわけではありません。
体内時計のことをあまり知らない私でも「Q&A方式」でいろいろなポイントから解説されているのでとても読みやすい構成になっていました。まず「わからない」ことが前提としてクエスチョンがあり、次に短い結論が述べられています。そこからさらに踏み込んだ難しい解説があります。実に親切な書き方です。興味を持ちそうなクエスチョンがあっても専門的な難しい答えをぶつけられて消化不良になってしまい、逆に興味が損なわれてしまう懸念もありますが、アンサーが実に簡潔で質問と答えがスッポリと頭の中に納まってしまう感じが本書の一番いいところだと思います。そこからさらに興味を持てば詳しい解説を読むことができるので読者の興味や知識によって読み分けることが可能です。様々な研究データに基づく解説は正直難解ではありますが、あらかじめ結論がわかっているのでなんとなくわかったような気になるのがありがたかったです。
「腹時計」「健康・寿命との関係」「メラトニン」「食事との関係」「カフェイン」「肥満」「脂肪燃焼」「ストレス」「セロトニン」「睡眠薬」「アルコール」「機能性食品」など、しっかり勉強したいというよりちょっと読んでみたいと思わせるトピックスの数々。腰を据えてしっかりと学びたいという方がお読みになってもいいですが、気軽に興味があるところだけお読みになっても面白い本だと思います。
本書のタイトルの通り、体内時計の知識を活かして自分の生活を省みれば変えてみないといけないこともたくさんありました。試してみる価値は十分ありそうです。
(辻田 浩志)
出版元:杏林書院
(掲載日:2024-03-12)
タグ:健康 体内時計
カテゴリ 生命科学
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