スポーツ医師が教えるヒザ寿命の延ばし方
小山 郁
著者は、アテネオリンピック柔道チームドクター、PRIDE、日本空手道佐藤塾、大道塾、極真空手などのリングドクター、プロボクシングのセコンドも務める整形外科医で、柔道三段、空手二段。
自らも武道家であるスポーツドクターとして、膝の障害についてまとめたのがこの本だが、読んでみると、膝についてスポーツ医学の基礎から学ぶ優れた入門書にもなっている。
第1章から7章まで順に、「ヒザには寿命があります」「意外と知らない大事な身体の仕組み」「ウォーキングの前に知っておきたいこと」「歩くだけでは、運動として足りない」「中高年の身体の痛みを軽減するために」「自分の健康を人まかせにしない」「ヒザ痛対策のための超簡単トレーニング」と続くが、整形外科、内科、運動科学など、その範囲は広い。
わかりやすく上手に書く先生だなと思ったら、学生にも教えているとか。その教え方が本になっているような語り口である。
この本で膝について学びながら、スポーツ医学という分野の視野の広さやそのあり方も学ぶことができる。
2007年8月27日刊
(清家 輝文)
出版元:アスキー
(掲載日:2012-10-12)
タグ:膝 トレーニング ウォーキング
カテゴリ スポーツ医学
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日本人はなぜシュートを打たないのか
湯浅 健二
どれだけcommitできるか
以前私がトレーナーとして帯同していた高校ラグビー部には2人のニュージーランド人留学生がいた。その年、彼らは地区新人戦から選抜大会優勝、そして全国高校ラグビー大会準決勝で同点抽選の末、決勝進出権を逃がすまで、公式戦無敗でシーズンを終えた。留学生がいることで批判もあった。確かにゲームプランを考えるうえで彼らは核となることができたが、2人の存在だけで強いチームがつくれるかと言うと、それほど単純な話ではない。逆にスター選手がチームをつぶしてしまうことも往々にしてある。
この2人は自分の力を誇示することなく、チームのために自分の役割を果たすことを理解していた。周りの選手も彼らを中心に、各々の持ち味を活かした攻撃や防御を展開することができた。何より多くの選手が、何故そうするのか、いつ何をすべきだということを、高校生としてはよく理解していた。このような状況をつくり出すことができれば、チームは指導者の思惑を超える力を発揮するようになる。このチームの理念の1つにCommitmentという言葉があった。「覚悟」と訳していたが、己を賭けた物事にどれだけcommitできるのか、これは自分自身の生き方を問われることでもある。
有機的な連鎖
さて、本書「日本人はなぜシュートを打たないのか?」では題名にある問いに狭義で答えるものではない。「さまざまな意味で何が起こるかわからないサッカー。だからこそ選手個々の判断力、決断力、そして勇気と責任感にあふれ、誠実でクレバーな実行力が問われ」、そしてそれらのプレーがオフェンス、ディフェンスにかかわらず「有機的に連鎖」したときに、シュートを放ち得点するという目的に向かってチームがハイレベルで機能する、ということを、自身のドイツ留学体験を中心に説いている。年来のサッカーファン、サッカー関係者にとってはとくに目新しいことはないかもしれない。しかし、当たり前のことを当たり前にできるようになるということは、競技レベルが高くなるほど、そして実力がある個性の強い選手が集まるほど困難になる。そしてこの理念はサッカーだけではなく、ほかのあらゆるチームスポーツに共通する。そのことを再認識するにはいい本かもしれない。
伝統的な精神論を語るつもりは毛頭ないが、体力、スキル、戦術といった試合でのパフォーマンスを左右するどの要素も、突き詰めれば総合的なメンタルマネージメントがその原動力になる。つらいフィットネストレーニングにどれだけの目的意識を持って「誠実に」取り組めるのか、ゲームで最大活用するための創造力をどれだけ持ってスキルアップに努められるのか、どれだけの「責任感」を自覚して「勇気」を持って戦術を「クレバーに」遂行し、またその戦術に囚われることなく臨機応変の「判断力、決断力」を発揮できるのか。優秀な選手、そして優秀な指導者はこの土台が安定しているのだろう。この点、メンタルトレーニングなどでその一部を鍛えることもできるだろうが、結局は個々の生き方、人生哲学が色濃く反映されるように思われる。そしてそれがフィットする仲間に巡り会ったとき、「有機的な連鎖」は生まれるのだろう。
生き方を問い続ける
これは試合に出場する選手だけの問題ではない。ゲームに出場できない大多数の選手たちが、それでもチームの一員としての自覚と責任感、そしてモチベーションを保つことができるのか。指導者にとってもチャレンジすべき難しい問題だろう。試合中や練習中に、そして普段の生活の中でも、チームにおいて果たすべき責任を自覚せずに「汗かきプレー」や身体を張ったプレーなどできるべくもない。よくも悪くも己の行動が周りにどのような影響を及ぼすのかを自覚し、自分のやるべきことにいかにcommitするのか。これは自分の生き方を問い続けることと同義である。
人生の中で、真にcommitできることに出会い、仲間やライバルの存在も含めてお互いを刺激しあい、生き方のレベルで「有機的に連鎖する」巡り合わせは、そう度々お目にかかるものではない。スポーツが人々に感動を与えるのは、実社会では忘れがちなそんな姿をストレートに見ることができるからなのかもしれない。
(山根 太治)
出版元:アスキー
(掲載日:2012-10-12)
タグ:サッカー 日本人
カテゴリ その他
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野球場で観客はなぜ「野球に連れてって」を歌うのか
佐山 和夫
2010年夏、明治神宮球場を中心に行われた世界大学野球選手権大会では、7回表終了時のグラウンド整備の間にこの曲が流されました。もっとも、普段、この曲を歌うことに慣れていない神宮親父たちはキョトンとしてしまったのですが。
タイトルにもある、「私を野球に連れてって」を野球場でなぜ歌うのかや、野球のベースがなぜ左回りか、なぜ他の球技と違ってボールを持っているチームが守備であるかといった筆者が抱く疑問は、普段野球に近い距離にいる人ほど、疑問に思わない点であるように思います。私自身はそんなことを考えたことさえありませんでした。
しかし、野球のルールのルーツを知ることにより、アメリカ人の価値観や野球というものの本質をアメリカ人がどう考えているのかということに触れることができました。ルールや習慣は、今の形に至るまでに形ややり方が変化していき、なるべくしてなっています。あとがきで筆者自身が「私個人の勝手な思い込み」と述べているように、ところどころに疑問を持ってしまう見解もありますが、こういったことに着目し、考えることは、野球を、ひいてはスポーツをより楽しんで観たりプレーしたりすることができるのではないでしょうか。
(松本 圭祐)
出版元:アスキー・メディアワークス
(掲載日:2012-10-16)
タグ:野球
カテゴリ スポーツ社会学
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運動会で一番になる方法
深代 千之
著者である深代氏は、日本のスポーツ・バイオメカニクス研究者の第一人者です。トップアスリートの動作分析から子どもの発達段階にあった運動能力開発法まで幅広く研究しています。最近では、テレビ番組の「世界一受けたい授業」に出演し、テレビで目にした人も多くいると思います。
身体に障害がない限り、誰でも走ることはできます。歩いたり、走ったりといった体験は、みんな山ほどもっています。風を切って疾走したいという願望は、誰もが一度は持ったことがあると思います。しかし、走り方を正しく教えられた覚えのある人は、陸上競技出身者でない限りほとんどいないのではないでしょうか。ましてや、最新のスプリント理論となると、現役のトップアスリートに絞られてくるに違いないことでしょう。
本書は、世界でもっとも進んでいる日本のスポーツ・バイオメカニクス研究から生まれた、速く走るための“秘訣”(コツ)を、誰でも身につけられるようにまとめたものです。最新のスプリント理論を、小学生向けに応用した実践書です。ちょっとしたコツをつかめば、誰もが見違えるように速く、美しく走れるようになると著者は言います。走りは、大腿の「振り上げ」と「振り戻し」という単純動作です。速く走るためには、エンジンである腸腰筋とハムストリングス、大殿筋といった筋肉を活性化し、それ以外の足の筋肉は重りにならないように太くしないことです。筋力をつけて早く走るのではなく、走り方を身につける。「股関節活性化ドリル」がキーワードです。そんな“秘訣”について、考え方から実践ドリルまで書かれています。
題名は、『運動会で一番になる方法』ですが、大人になった今から始めてもよさそうな内容です。ランニング愛好家や走ることを含むさまざまなスポーツ愛好家などにもお勧めです。「股関節活性化ドリル」は親子で一緒に始めてもよい内容です。
(服部 哲也)
出版元:アスキー
(掲載日:2012-10-16)
タグ:子ども スポーツ
カテゴリ 運動実践
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ダイエットと体の痛みに“本当に”効く60の言葉
筒井 廣明 本多 奈美
2004年に開設した「りとるジム」にて、一般のスポーツ愛好者はもちろん普段運動の習慣のない人にも指導を行ってきた本多氏。肥満や腰痛といった不調や痛みを改善していくには、まず流行に流されてはならないと説く。同様に間違ったフォームや分量でエクササイズを頑張ることもやめ、姿勢の改善からスタート。最終章でようやく、身体を柔らかくするストレッチや運動の方法を紹介しているが、それもシンプルなものだ。
日ごろからトレーニングや運動指導に関わっている人からすれば当たり前の記述ばかりかもしれないが、指導を受ける側はそれすら知らないことも多い。それをどのように納得してもらうか、いかに正しいフォームで運動に取り組んでもらうかがとてもわかりやすくまとめられている。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:アスキー・メディアワークス
(掲載日:2014-01-10)
タグ:運動指導 ダイエット
カテゴリ 運動実践
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運動会で一番になる方法
深代 千之
1カ月で速くなる
“運動会”という時期にはまだ少々早いので、タイトルを見ただけでは正直読もうという気にはなりにくいのですが、本書の「はじめに」のところに「この本は、タイトルとおりの内容の本です。少し補足すれば、『小学校の子どもを運動会で一等賞にするための方法について解説した本』」ということで、推奨される読み手は、1. 小学校の子どもをお持ちのご両親、2. スポーツを自分でもやったり観たりするのが好きな方、3. 人間の身体やその動きについて興味のある方、等だそうです。つまり、指導的立場にいる方々に読んでいただきたいということなのだと思います。ですから、当の小学生は本書に紹介されているドリルをやれば、運動会本番の一カ月ぐらい前からの練習で十分成果が期待できそうですが、それを指導する親や先生たちはドリルの本来の意味やら道理やらを理解する必要があるわけですから、もう少し時間を要するということで、この時期からそろそろ読んでおいては如何かということなのです。
ところで、本書の第一章にも掲げられていることなのですが、最近の子どもは本当に“自然の運動”をしなくなったのでしょうか。自然の運動とは、多分日常の環境を利用して運動することだと思うのです。例えば、空き地に行って草野球をやる。ところがいつの時代も空き地には“立ち入り禁止”と看板が掲げてある。もちろん、そんなことはおかまいなしにやる。と、そこへ土地の管理者が突然やってきて“こらー! おまえら誰の許可とってここへ入ったんだー!”と叫びながらこちらへ向かってくる。そこで、子どもは急遽試合を無期限延期にしてダッシュでトンヅラする。その際、忘れ物はないか素早く視覚で確認し、全員同じ方向に逃げないように各自逃走路を確保する。まさに、全身全霊を傾けての逃走劇。これこそが、理にかなった運動というもので、自然のトレーニングなのだが。やっぱり、少なくなったかな?
股関節活性化ドリル
日本人は長い間、長距離種目は強いが短距離種目はダメと信じられてきました。その理由は筋の組成が生まれつき長距離型になっているとか、骨格の長さが短いからとかいろいろ言われてきました。しかし、近年“ナンバ走り”で有名になった末續慎吾選手のように短距離種目でメダルの可能性を持つ選手も出てきたことは確かです。現役時代トップ選手として活躍し、現在彼のコーチである高野進氏は「脚を股関節で引っ張るように前から後ろへ運ぶ“競歩”のような動きが、短距離走の正しい脚の振り戻しに近いことに着目」したそうです。本書には「トップアスリートは、さらに上を目指して、様々な手法を取り入れて走りの中で応用できないか試しています。その一つが『ナンバ走り』なのです。それぞれの選手は、いろいろな走りを試しながら、自分にあった新しい“気づき”を体得しようと努力しています」と述べられています。つまり、経験知としてのコーチの何らかの確信があり、それを選手が自分なりに消化・吸収したとき初めて成果として記録がついてくるというわけです。ということは、今回本書に紹介されている「股関節活性化ドリル」は、まず指導者が体感し、確固たる経験知としなければなりません。ただ単に“股関節を使え”、“動かせ”と言っても選手には理解しにくいでしょう。まして相手が小学生ともなれば、股関節ドリルをベースしたオリジナルなドリルの作成が必要になると思います。是非とも今年の運動会に間に合うように、指導者の皆さんには早目に本書を手に取ることをお勧めいたします。
(久米 秀作)
出版元:アスキー
(掲載日:2005-04-10)
タグ:短距離走
カテゴリ 運動実践
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ダイエットと体の痛みに“本当に”効く60の言葉 低負荷の運動でクマ・むくみも肩こり・腰痛も解消
本多 奈美 筒井 廣明
NATA公認ATCの著者による正しい食事の摂り方と運動の仕方を解説した本。
この手の本はあふれるほど本屋に並び、次から次へと出版されています。それほど人々がダイエットや体の痛みに興味を持っているということでしょう。
こちらではトレーナーの著者ならではの様々な運動法が紹介されています。自身の不調になった経験をもとに取り上げられたそれらのメソッドは、難しいものではなく、ごくごく当たり前のことばかりですが、それでもなかなかできないのだということを思い知らされます。
そして、一般の方々には、ここで紹介されている運動からまず案内していこうと改めて考えるきっかけとなりました。
(山口 玲奈)
出版元:アスキー・メディアワークス
(掲載日:2022-05-06)
タグ:運動
カテゴリ 運動指導
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