中高年のためのフィットネス・サイエンス
宮下 充正
健康のために始めたはずの運動、フィットネスクラブへの入会。しばらくは続けてみたものの、体調がいまいち良くない、膝が痛くなってしまって…、あるいは腰が痛くなってしまって…。
フィットネスクラブが増え、健康に対する意識が社会的にも高くなっていくにつれて、健康のために始めた運動で逆に身体を痛めてしまったという方も以前に比べ増えたのではないでしょうか。
身体は1回の運動で大きく変化するものではありません。長く、楽しく、そして効果的に身体を動かしていかないといけません。本書は、「運動生理学の基礎知識」「ストレッチエクササイズ」「ウォーキング、ランニング」「肥満予防」「高齢者のフィットネス」などの項目で、わかりにくい用語に対する解説もついています。
これから、さらに中高年が増加し、健康に対する意識もより一層高まっていきます。中高年に関わる指導者はもちろん、自分で身体を動かしているという一般の方にもわかりやすく、実践しやすい一冊です。
(大洞 裕和)
出版元:大月書店
(掲載日:2012-06-04)
タグ:フィットネス 入門
カテゴリ トレーニング
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女性アスリート・コーチングブック
宮下 充正 山田 ゆかり
出産する身体
今年はオリンピック・イヤー。日本選手団における女子選手数は男子の数を上回り、いざオリンピックが始まればこぞって国民は女子の活躍を祈り、勝利に歓喜したことは未だ記憶に新しい。
そんな時代だからこそなのか、ここに「女性アスリート」に対するコーチングブックが登場した。著者の一人が“あとがき”にこんなことを書いている。「ところがまわりを見回しても、女性ならではの『からだとこころ』を解説するコーチングブックはこれまで存在していません。(中略)だからこそ、女性アスリートたちのよりよいスポーツ環境を目指すための本が、どうしても必要だと思ったのです。」そうだったのか。そう言われれば少ないのかなぁーと思いつつ筆者の拙い記憶を辿るに、女性とスポーツというテーマ自体はそれほど新しくもないことに気づく。とすれば、本書は何が“新しい”のか?
今回特に興味深く読ませていただいたのは「第2章こころ」の部分だ。というのは、従来の女性とスポーツのテーマは“からだ”の部分に主に焦点が絞られていて、その結果月経や妊娠といった女性の生殖機能とスポーツの関係はかなり一般的理解が得られるようになってきた。が、女性のこころ、特に社会的存在としての女性のこころの部分へのアプローチは十分とは思えないからである。実は、ここのところの問題解決が、女性アスリートをコーチングする際の鍵となることを本書は教えてくれている。「女性とスポーツの歴史をひも解いてみると、そこにはいつも『女性としての』あり方を問う声が充満していました。(中略)いずれにせよ、女性がスポーツをする際には常に生殖機能や外見・容姿に対する美醜の観点から捉えられてきたことがわかります。つまり、女性の身体はいつも『妊娠―出産する身体』としてみられ、スポーツは将来『母体』となる身体にダメージが及ばぬように禁止され」た歴史が長かったというわけだ。その一方で「『母体』となるからこそ身体を鍛えよと奨励もされてきた」のも事実であると本書は指摘する。ということは、この社会的呪縛から女性が真に解き放たれるときに新しい女性とスポーツとの関係が構築されると言えるが、ここのキーワードは実は“男性”なのだということにも強く気づかされるのである。性としての男女と社会的存在としての男女。それぞれにおける男女の役割分担は必ずしも一致しない。ことスポーツに関してはあくまでも社会的存在としての男女を基本として成り立つ文化であることを改めて理解する必要を読後に強く感じた。
弱者としての身体
もうひとつ女性とスポーツを考えるうえで大切な問題が存在する。それは「セクシャルハラスメント」である。本書は、サブタイトルに「コーチのモラルとマナー」と題して、この今日的問題に対して「男性コーチの女子アスリートに対するわいせつ行為やレイプ、セクシャルハラスメント行為は、『身体の接触をともなう』『精神性を重んずる』などの線引きがあいまいなうえ、絶対的な主従関係が被害の表面化を阻んでいます」と厳しく指摘する。これもいわば社会的存在としての男女という考え方への“男性側”の認識不足と人権に対する意識の希薄さを露呈している格好である。
オリンピックの余熱がまだ残る今こそ、スポーツが持つ社会的、文化的役割を社会全体で再認識するチャンスである。是非ともこのチャンスに多くの問題への取り組みがなされることを切に期待したい。本書の女性アスリート問題への取り組みは、スポーツ社会に限らず、一般社会の枠組みへの挑戦という意味でも斬新な切り口であると思う。
(久米 秀作)
出版元:大月書店
(掲載日:2004-11-10)
タグ:女性
カテゴリ 指導
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中高年のためのフィットネス・サイエンス
宮下 充正
放送大学教養学部教授で、(社)日本エアロビクスフィットネス協会会長、(社)日本ウォーキング協会副会長などを務める宮下氏が上梓した本。身体運動と健康とを結びつける『フィットネス』という概念を中心に、中高齢者に適した平均的な運動プログラムを科学的根拠に基づいて紹介している。
第1章「フィットネスの運動生理学的基礎知識」に始まり、「まずは、ストレッチング・エクササイズ」(第2章)、「手軽にできるウォーキング」(第3章)、「ランニングはほどほどに」(第4章)、「だれでもできる水中運動」(第5章)、「力強さの向上 レジスタンス・トレーニング」(第6章)、「肥満を予防し、減量を目指す」(第7章)と続き、第8章の「高齢者のフィットネス」で締めくくられている。
これから運動を始める、あるいは運動をしているが正しい方法がわからないという中高齢者には特に役立つ内容になっている。巻末にある用語解説がより知識を深めさせてくれる。
(長谷川 智憲)
出版元:大月書店
(掲載日:2012-10-09)
タグ:中高年 フィットネス
カテゴリ スポーツ医科学
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そろそろ、部活のこれからを話しませんか 未来のための部活講義
中澤 篤史
運動部活動究に取り組む中澤氏の、『運動部活動の戦後の現在―なぜスポーツは学校教育に結び付けられるのか』(青弓社)に続く著作。部活はよいと讃えるのでも、部活は悪いと断罪するのでもない。当たり前にあるようでいて実は日本独特のものである部活を疑い、歴史を再確認し、「今」の部活に関するさまざまな情報を見比べた上で、「これから」を一緒に考えていこうと巻き込んでいく。スポーツは身近なものであるが、身近過ぎるゆえに、改めて考えたり、多くの人の力を集めるきっかけがつくりにくいとも言える。そういった場合のアプローチの仕方としても参考になるのではないだろうか。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:大月書店
(掲載日:2017-05-10)
タグ:部活動
カテゴリ スポーツ社会学
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そろそろ部活のこれからを話しませんか 未来のための部活講義
中澤 篤史
「部活」は、日本固有の文化なんだ。知らなかった。
部活には「自主性」の名の下に、教員、学生、保護者が動員されている。自主的な活動なのだから、お金も保障も充分でない。
中学運動部顧問の時間外労働平均時間は過労死ライン80時間を超えている(平成18年度の文科省報告書による)。
平均が過労死ラインを超えてるって、異常事態だ(令和2年4月から時間外勤務が月45時間以内に改善が図られていなければ、校長が職務責任を問われるという「働き方改革」が行われているが)。
さらに体罰の問題がある。桜宮高校バスケットボール部の事件は、大いに世間を賑わせた。キャプテンの子が顧問の先生に宛てた手紙には、批判や不満とともに、自分が顧問の先生の要求に、必死に応えようとしている想いが吐露されている。しかし、彼はこの手紙を先生に渡すことなく、部活に行き続け、最後は死を選んだ。このような事件も「部活」の暗黒面としてある。
だが、多くの人にとって「部活」は、キラキラした青春の代名詞ではないだろうか。少なくとも自分自身にとってはそうだし、たびたび漫画やドラマの舞台になるのを考えれば、一般的なイメージはそんな感じだろう。
だが(だからこそ?)、その裏側には献身を、あるいは参加を、強制されるような実態があり、スポーツの語源(デポルターレ=遊び)からは程遠い現実がある。
「部活」が、さまざまな犠牲を払わなければ成り立たない慣習上の制度であるとするならば、今後も制度疲労としての軋みが、生じ続けることになるだろう。
(塩﨑 由規)
出版元:大月書店
(掲載日:2022-05-02)
タグ:部活動
カテゴリ スポーツ社会学
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