知っておきたいスポーツ傷害の医学
シルヴィア ラックマン 石河 利寛
本書はイギリスのスポーツ障害研究所で9年間、6000人もの患者を診てきた筆者の経験を持って執筆されたものである。
第1部では、骨や筋、靱帯や神経の機能解剖や創傷治癒の過程に始まり、そのような過程に対する理学療法や薬物の適応方法について説明してある。さらに、各組織(皮膚・筋・骨など)に対する一般的な処置方法が載っている。ところどころにボールペンで書いたような図が出てきて分かりやすい。
第2部では、診断や検査の方法から始まり、足から頭までの障害について部位別に皮膚・筋・腱・靱帯・滑液包・関節・骨・神経の順で述べてある。これを読んでいたとき、目の前で応援していた選手が鼻を骨折した。本書では「患者に腫脹が起こる前に耳鼻咽喉科医を訪れると鼻骨折を直ちに処置することができます。…遅れて骨が定着し始めると、処置が困難になったり、処置不能となります」とある。おかげで何科に行くべきなのか、どのような救急対応が必要で選手にどう説明するべきなのか判断することができた。
スポーツを行っていると、どうしても避けられない外傷・障害はあるだろう。しかし、ある程度減らすことはできると思う。そのためには選手、そしてコーチ・医師・トレーナー・理学療法士を含めたスポーツに関わる我々が、根拠に基づいた医療(Evidence-based medicine、EBM)を理解し、適応できるかが、ことを大事に至らせないために大切である。本書はそのような外傷や障害を予防し、また適切な治療を行うための根拠がわかりやすく解説してある。自分の身体を理解し、スポーツをより多くの人に長く楽しんでほしいという筆者の思い、この本とともに広めたい。
(服部 紗都子)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2012-01-18)
タグ:スポーツ医学 傷害予防 理学療法
カテゴリ スポーツ医学
CiNii Booksで検索:知っておきたいスポーツ傷害の医学
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:知っておきたいスポーツ傷害の医学
e-hon
アスリート留学 in USA
栄 陽子 滝沢 丈
アメリカの大学生がスポーツ選手として、どのように考え、どのように生活を送っているかが、詳しく書いてある。また、全く留学について知らなくても、アメリカの大学について、どのように入学し、生活を送り、卒業するかという過程がわかりやすく解説してあり、イメージしやすくなるだろう。
本文は大きく基礎編と実践編に分かれている。
基礎編では、アメリカ人の大学に対する価値観からアメリカの大学がスポーツのレベルでどのように分類されているか、アメリカで学生アスリートとなるために何が必要かを大学名や実際の金額を出して分かりやすく示している。
実践編では、スポーツ部入部のためのノウハウ(野球、ソフトボール、バレーボール、ゴルフ、サッカー、水泳について、自己紹介文、トライアウトの方法など)、各競技レベル(division)の大学におけるスポーツ設備やアスリートへの対応、入部した後のアスリート留学生のスケジュールが具体的に書かれている。また、最後に留学体験記や資料として、アメフトや野球等で毎年米ランキングの上位に上がってくる大学の資料もついている。
アメリカの大学は入るよりも出るのが大変ということは耳にしたことがあったが、この本にもそのことについて随所に示されている。成績や単位数によってスポーツ活動の制限だけでなく退学も余儀なくなされてしまう。アメリカの大学がアスリートも一学生として育てるという意識の高さが感じられた。アスリート・留学を目指す人のみならず、日本の大学・高校の関係者にもぜひお勧めしたい1冊である。
(服部 紗都子)
出版元:三修社
(掲載日:2012-01-18)
タグ:留学 教育 ノウハウ
カテゴリ 人生
CiNii Booksで検索:アスリート留学 in USA
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:アスリート留学 in USA
e-hon
スポーツドクター
松樹 剛史
この本は、主人公夏樹を中心にいろいろなアスリートの心情が描かれている。スポーツに関わる人のバイブルといってもいいと思う。各章、各章に非常に心に残るセリフが多い。
第一章はACLを損傷してしまった夏樹が高校最後の大会をやり遂げる、熱いストーリーから始まる。最後の試合を間近に控え、自らの膝への不安を抱えながらもキャプテンとしてチームを支えていこうとする。「一年も休んだら、もうわたしたちの部活は終わってしまっている。そのことに比べたら、一人で膝の不安と闘うことなんて、なんにも怖くなかった」。ドクターから告知をされた直後の夏樹の言葉の多くが重く、共感を覚えた。
第二章は、野球肘の少年とその両親のストーリー。自分の夢を子どもに叶えさせたいと強く願うがため、子どもをみることを二の次に、自分の考えを押しつける。子どもを大人の小型にしたものとして扱ってしまう。
第三章は、摂食障害の女性水泳選手のストーリー。大切な人の期待に応えたい。そのためにはトレーニングで身体を鍛えていかなければならないが、女性としてみてほしいから筋骨隆々にはなりたくない。女性ならではの葛藤、切ない恋のストーリーである。この2つの章ではとくに、選手を取り巻く家族やコーチとの関わり方が、ドクターの会話方法から勉強になった。
第四章は、女性水泳選手のドーピングのストーリー。ドーピングを禁止すべきとする立場と、相対する承認すべきとする立場の意見が述べられている。また、ドーピングの病態・生理学的な内容から、検査法まで載っている。体験談も含んでおり非常にリアルである。「ルールを定めているからとか、練習をしているからとか、そういうことではありません。ドーピングをしたことで泣いている人がいる。だから私はそれを悪と断ずることができます」と言い切った看護師のセリフは簡潔かつ壮快。とくにこの章は熱く響いた。
人を動かすには人の立場に身を置くことが大切である。スポーツに関係する職業の方は、過去に選手であったが多く、その経験をもって選手、スポーツ、広くは社会に貢献しようとする方が多いと思う。しかし、月日を重ねると共に選手時代の気持ちが薄れ、指導者や評論家としての立場からの視点のみで働いてしまっていないだろうか。この本は自分の選手時代を思い出し、初心に帰るきっかけとなると思う。
(服部 紗都子)
出版元:集英社
(掲載日:2012-02-15)
タグ:傷害 摂食障害 バスケットボール 水泳 野球 ドーピング
カテゴリ フィクション
CiNii Booksで検索:スポーツドクター
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:スポーツドクター
e-hon
あの実況がすごかった
伊藤 滋之
スポーツは現場で観戦するのが1番とよく言われている。その通りではある。ただ、実況中継でしか味わえない感動「ドラマ」がある。この本を読んだ直後、スポーツを中継で見たいと思った。
この本の筆者は放送作家という立場で、多くのスポーツドキュメントやバラエティ、中継に携っている。大会の見どころを伝える事前番組の企画、注目選手のキャッチコピーを考えるような仕事をしているそうだ。この本では、そのような経験をもとに、スポーツ中継の舞台裏を徹底的にわかりやすく語っている。
「ついに夢の舞台へ。日本人初のNBAプレイヤーとなった田臥勇太、24歳」というように、第1章は英雄たちのデビュー戦から始まる。第3章の冒頭30秒の名文句では、こんなにもメッセージが綺麗に、時に静かに、時に強く語られているのかと惹かれた。松木さんの解説は、面白くて共感していたが、実に鋭い洞察力と勘からなっているのが理解できた(第5章 予言する解説者)。懐かしいものも多々ある。アトランタ五輪初戦のブラジル戦(マイアミの奇跡)、アテネ五輪の体操王国の復活。その中でも、長野五輪のジャンプ団体での大ジャンプ。「まだ距離が出ない、もうビデオでは測れない、別の世界に飛んでいった原田!」解説を読むだけでも、あのときの感動が蘇る。
カメラの先には全力でメッセージを発信しようとするアスリートたちの姿があり、彼らと心を一つにし、熱い思いを伝えようとするテレビの存在がある。プレーであれ、態度であれ、表情であれ、アスリートが抱く真摯な気持ちを一人でも多くの人に伝えること、それこそがテレビが担うべき役割。筆者の職を超えた熱い思いの一冊である。
(服部 紗都子)
出版元:メディアファクトリー
(掲載日:2012-10-16)
タグ:実況 報道
カテゴリ スポーツライティング
CiNii Booksで検索:あの実況がすごかった
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:あの実況がすごかった
e-hon
うおつか流 台所リハビリ術
魚柄 仁之助
毎日の台所仕事を脳の活性化および老化予防という視点から改めて見直し、長い人生を無理なくボケずに楽しみながら食生活習慣の知恵を、笑いという味付けとともに紹介したのが、この“うおつか流台所リハビリ術”。
料理をする上で必要とされる能力は脳を活性化させる。台所リハビリ術で紹介するその能力とは、思い出し力、想像力、準備力、段取り力、決断力、調理力、もてなし力。日常ごく当たり前にする炊事は、お年寄りが今の機能を失わないようにしながら、この先何があってもひとりでまかなえる力をつける。私たちにとってもメンタルトレーニングとして、料理は手軽な手段だと思った。
これらの力の中で、私が魅力に感じたのが「もてなし力」。人に見られる仕事、人をもてなす仕事をしている人は、心に張りがある。その張りがその人を前向きにさせる。そして、人をもてなすことで自分も癒されると作者は考える。そう思うと、料理は本当に幸せなリハビリだ。 リハビリというと、病院でセラピストやトレーナーの下、目的とする機能回復のために機器を使い、個別で特別なプログラムを行うことと、多くの人は認識しているだろう。落語調で軽く書かれたこの本を読むと、そんなに難しいものではないなと再認できた。病気で倒れてからリハビリではなく、倒れる前の日常でリハビリすることで倒れずに済む。この本で提案されている台所リハビリは、まさにそれである。
(服部 紗都子)
出版元:飛鳥新社
(掲載日:2012-10-16)
タグ:リハビリテーション 料理
カテゴリ 食
CiNii Booksで検索:うおつか流 台所リハビリ術
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:うおつか流 台所リハビリ術
e-hon
名波 浩 泥まみれのナンバー10
平山 譲
名波浩、静岡県藤枝市出身のサッカー選手、ポジションはミッドフィールダー。Jリーグのジュビロ磐田、セレッソ大阪、東京ヴェルディ、イタリア・セリエAのACヴェネツィアでプレーし、Jリーグベストイレブンを4度受賞している。日本代表としても、背番号10を背負い、1998年のフランスW杯に出場した経験を持つ。
この本は、彼の幼少期からフランスW杯までの歩みを、本人だけでなく両親や少年団、中学校、高校の恩師をはじめ、多くの人のインタビューをもとに描いている。小さい頃から本当にサッカーが好きで、サッカーにかける思い、努力は人一倍だった。そんな彼がチーム全体を見渡し、自分の能力を考えて解釈した自分の役割はアシスタント。「僕自身が目立たなくてもいいんです。自分のことを人を輝かせるためにプレーヤーだと思っていますから」その役割を果たすための徹底ぶりは、筆者が書いた各試合のレビューを読んでもわかる。
本の後半に出てくるW杯予選は、彼にとって非常に大きな試練だった。強行スケジュール、10番というプレッシャー、マスコミからのストレスが重なり、疲弊してサッカーを楽しむことができなくなっていた。そのとき、学生時代の恩師が名波選手に送ったファックスには、「人生の最高の時、苦しい時、厳しい時。力を発揮できるのが日本男児。正面から戦え。自分を信じて、仲間を信じて」と力強く書いてあったという。見てくれる人は見てくれている。そのような存在が、彼が人生を進む上でかけがえのない支えとなったに違いない。
仲間を支えることに楽しみを感じた彼のサッカー人生。与えることに全力を尽くしたからこそ、自然と周りからも与えられる。プロフェッショナルとはそういう存在なのだろうと、この本を読んで感じた。
(服部 紗都子)
出版元:TOKYO FM出版
(掲載日:2012-11-28)
タグ:サッカー
カテゴリ 人生
CiNii Booksで検索:名波 浩 泥まみれのナンバー10
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:名波 浩 泥まみれのナンバー10
e-hon
箱根駅伝
生島 淳
東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)は、例年1月2日と翌3日に行われる、大学駅伝の関東チャンピオンを決める大会である。テレビ中継により知名度が急上昇し、長距離走の甲子園大会のような国民的大イベントとなり、毎年楽しみにしている方も多いだろう。この本はそんな人に格好の本だ。
箱根駅伝の歴史、有力校の監督インタビューや箱根を支えている全国の取り組みまでさまざまな視点で書かれている。中でもレースの背後にある区間配置の戦術が各大学・監督だけでなく、時代の流れに沿って変化しているという話は興味深い。“山の神、柏原選手”に続く長距離界の未来を担うエースが、今年はどこに現れるだろうか。この本を片手に今から予習しておけば、数倍箱根を楽しめるようになるだろう。
(服部 紗都子)
出版元:幻冬舎
(掲載日:2013-04-26)
タグ:駅伝
カテゴリ スポーツライティング
CiNii Booksで検索:箱根駅伝
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:箱根駅伝
e-hon
察知力
中村 俊輔
中村選手がサッカーを始めたのは、幼稚園の頃。以後25年以上、サッカー一筋に追い続けてきた。日本だけでなく海外に出て行き、数々の壁にぶち当たる中で、彼がとくに重点をおいてトレーニングしたのが「察知力」。少し前の女子高校生の言葉“KY(空気読めない)”、それを改善する力だという。
具体的な社会でいえば、思うようにいかないことにぶち当たったとき、原因を解明する力。上司から自分が求められていることを考える力。目標へ到達するためにやるべきことを追求する力。
彼にとっては、自分より能力が高い選手と戦うとき、相手よりも先に動き出すため、瞬時に状況判断をして正解を導く力。それを「察知力」と呼んでいる。彼はその能力を、情報収集とさまざまな経験を通し、自分の中に引き出しを増やすことで高め、ノートに書いて整理することで磨いてきた。
ケガ、代表離脱、海外進出、多くの挫折と挑戦の中で“一生サッカーを追いかける”ために常に100%で生きる強い精神力、闘争心、統率心。この本は、彼のノートに書かれた心身鍛錬術の要点をまとめたものかもしれない。
(服部 紗都子)
出版元:幻冬舎
(掲載日:2013-09-25)
タグ:サッカー
カテゴリ 人生
CiNii Booksで検索:察知力
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:察知力
e-hon
日本女子サッカーが世界と互角に戦える本当の理由
松原 渓
2011年7月、震災から約4カ月後、“絆”という言葉を胸に日本中が見守る中、なでしこジャパンは世界最強の女子サッカーチームとなった。そして、澤選手や大野選手、ヤングなでしこの田中選手というようにスター選手が増え、様々な年代に支持されるようになった日本女子サッカー。W杯を境に女子サッカーを取り巻く環境が180度変化したと、筆者は言う。
筆者は、小学校3年生からサッカーを始め、日テレベレーザの下部組織であるメニーナのセクションを受けたほどの選手で、現在もフットサルチームに所属している。また、サッカー番組のアシスタントやキャスター、スポーツライターとして活躍し、様々な現場で取材を行ってきた。この本の前半ではそんな彼女の経験を生かし、日本女子サッカーの歴史と現状、なでしこメンバーの素顔が語られている。
後半では、“未来のなでしこたちへ”と題して、育成年代の指揮者へのインタビューがまとめられている。彼らの様々な意見の中に共通して、プレーレベルの向上と同じくらい“人間性・自主性を育てること”が重要視されていると感じた。このことこそが、なでしこジャパンがW杯と同時に、フェアプレー賞も受賞したことにつながったのだろう。
読み終えて、10年前に比べれば日本における女子サッカーの知名度は上がったが、プレー環境や財政的な面で、まだまだ課題が多いことも痛感した。育成時代の環境設備や、才能ある原石がしっかりと輝ける育成システムの一助になりたい。そんな筆者の思いに共感し、今回レビューを書かせて頂いた。日本女子サッカー界のさらなる発展を心から願う。
(服部 紗都子)
出版元:東邦出版
(掲載日:2014-04-08)
タグ:サッカー
カテゴリ スポーツライティング
CiNii Booksで検索:日本女子サッカーが世界と互角に戦える本当の理由
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:日本女子サッカーが世界と互角に戦える本当の理由
e-hon
回復力 失敗からの回復
畑村 洋太郎
筆者は東大の工学部の名誉教授である。工学という、失敗学とは一見全く違う分野の専門家として日本最高峰の領域で学生を教えた中で、失敗学を専門とした理由は深い。生死を分ける様々な失敗を身近で体験した筆者が、失敗した当事者がどのように失敗と付き合い、どのようにすれば復活できるかを伝授しているのがこの本だ。
彼が失敗談を聞いていく中で強く思ったのは「人は弱い」ということだった。人は失敗によってダメージを受けると、穴が開いたような状態になってエネルギーが漏れていってしまう。つまり、ガス欠状態だ。そんな時は自分の弱さを受け入れることがはじめの一歩となるというのだ。
また、失敗に立ち向かえないときの応急処置も載っている。面白いことに一番は「逃げる」、そして「他人のせいにする」「美味しいものを食べる」「お酒を飲む」「眠る」「気晴らしをする」「愚痴を言う」と続く。
今の日本では、頑張って正当性を主張したところで報われるほうが少なく、大抵はいびつな議論に負けて挫折してしまうことも多い。自分に非があると自覚しているときに、それを素直に認めることのほうが態度としては正しいだろう。しかし、この社会では失敗した人が非を認めると、そのときからそれが絶対的な真実として扱われる。そして、弱いものは徹底的に叩かれるのである。それに対して筆者は、周りからの責任追及に決して潰されないこと、必要に応じて逃げるなどの一時避難をして、何をおいても生き続けることが大切だと訴える。
人は誰でも失敗する。そして、誰もがそこから回復するための力を持っている。乗り越えるために必要なのは、そのものと正対して生きていくためのエネルギーをつくり出すための考え方。それを筆者は失敗学を通して導く。失敗も成長のために積極的に取り扱おう、とポジティブになれる一冊だ。
(服部 紗都子)
出版元:講談社
(掲載日:2014-08-08)
タグ:リハビリテーション 失敗学
カテゴリ 人生
CiNii Booksで検索:回復力 失敗からの回復
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:回復力 失敗からの回復
e-hon
幸せな挑戦 今日の一歩、明日の「世界」
中村 憲剛
「挑戦を続けていくこと。挑戦を続けられること。それだけでも幸せなんだと、僕は思う」
この本の書き出しの言葉、彼の人となりが現れている。あっという間に彼の話に引き込まれた。
高校までクラスで一番小さな子で、足も遅く、相手チームの選手とぶつかればはじき飛ばされていたようなか弱い選手だったという。身体的なハンディを持っていながら、彼は常に選ばれた。そして、25歳のときに日本代表に選ばれるまでになった。
なぜ、彼は選ばれる存在になることができたのか。小学校から今までの彼の生い立ちとその時々の教訓を述べたこの本には、革新的な方法が書いているわけではない。本気で好きなことは何か、それを極めようとする覚悟があるかどうかを、まず自分で考えることが第一歩だという。そしてそれを見つけたら、どこまで本気になれるか。人が彼を選んだ理由はここにあると思う。サッカーが好きで好きで、諦めずに続けた。その思いが行動につながり、選ばれる存在になったのだ。
さまざまな壁を乗り越えてきた彼がこの本を通して伝えたいことは、「サッカーが好きだからボールを蹴っている」、そんな純粋な気持ちを大切にして欲しいということ。本気で好きなことを愚直なまでにやりつづけた先に明るい日が昇る。
サッカー好き、中村憲剛ファンはもちろん、今後を考える人にぜひ読んでもらいたい一冊だ。
(服部 紗都子)
出版元:角川書店
(掲載日:2014-09-05)
タグ:サッカー
カテゴリ 人生
CiNii Booksで検索:幸せな挑戦 今日の一歩、明日の「世界」
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:幸せな挑戦 今日の一歩、明日の「世界」
e-hon