武道的思考
内田 樹
武道の本旨は「人間の生きる知恵と力を高めること」であり、「他人と比べるものではない」と述べる筆者。そして「比べていいのは『昨日の自分』とだけだ」とも述べている。
本書の中で何度も出てくる「武道が想定しているのは危機的状況で、自分の生きる知恵と力のすべてを投じないと生き延びることができない状況」というフレーズに象徴されるように、現在の日本にとって非常にタイムリーな内容になっている。
(磯谷 貴之)
出版元:筑摩書房
(掲載日:2012-01-18)
タグ:武道 哲学
カテゴリ 人生
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年齢に応じた運動のすすめ
宮下 充正
「生活習慣病、骨折・転倒予防に運動が必要不可欠であることは多くの人が周知している事実である。問題はいかに運動実践を促すかということ」と主張する筆者。医療費、介護費負担の対策があらゆる場で議論されているが、根本的な解決は「自立した生活が営める健康な体を有す人の割合を増やすこと」であり、それが長期的に見たときに医療費等の削減につながるのではないか。
その有効な手段として運動の実践が挙げられるが、筆者が一番の問題と感じているのは「『本人の自覚』がなければ運動を実践することもなければ、成果を得られることもできない」ということだ。逆に言えば自覚が芽生えることが、健康への第一歩である。
本書では「なぜ運動を行うのか?」「どういった成果を得ることができるか?」という根本的なテーマに沿った内容であるため、今までより運動への意欲がわいてくるはずである。
また「プログラムの紹介が仕事ではない、いかに相手の意識を変え前向きなイメージを与え、運動を実践してもらうか」という指導者の役割・意義を再確認させてくれる一冊である。
(磯谷 貴之)
出版元:杏林書院
(掲載日:2012-06-04)
タグ:高齢者 運動指導
カテゴリ 運動実践
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これなら続く!考える筋トレ
有賀 誠司
人間なら誰しも「今よりももっとよくなりたい、成長したい」という気持ちが心の奥底に必ずあると思う。だからこそ、そう感じられるものには時間も労力も惜しまず、自発的に行動し、継続することにも抵抗がなくなる。そしてそういう体験をすることで「新たな自分」に出会い「生きる活力」が生まれると思う。
筋トレとはまさにその代表格であると、本書を読むことで改めて感じることができると思う。
「見た目をよくするもの」や「競技選手のパフォーマンスアップ」などのイメージがある筋トレも、メンタル面や健康に対する影響もかなりの割合を占める。だからこそ性別・年代問わず実践してほしいものであるし、誰でもその効果を実感できるものである。
「体つきにはあなたの生き様が投影されている」(本文より)。身体を変えることで心も変わる。具体的なトレーニング方法はもちろん、筋トレがもたらす可能性と奥深さを感じることができる一冊である。
筋トレに30年以上も徹底的に向き合い、実践し、追求した筆者だからこそ伝えることができる内容である。アスリートはもちろんだが、忙しい毎日に追われている会社員の方、これから筋トレをやろうと考えているトレーニング初心者の方にはぜひ読んでもらいたい一冊である。
(磯谷 貴之)
出版元:岩波書店
(掲載日:2012-10-13)
タグ:トレーニング
カテゴリ トレーニング
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意地を通せば夢は叶う bjリーグの奇跡
河内 敏光
何かを始めようとしたとき、必ず応援してくれる人がいる。同時にその試みを快く思わない人たちも必ずいる。体制が長年変化のないところではなおさらである。
本書ではbjリーグコミッショナー河内氏のリーグ開幕を迎えるまでの舞台裏が惜しみなく書かれている。スポーツのプロリーグ化という枠を超え、地域の活性化、そして新たな市場開拓を目標にした壮大なプロジェクトであるがゆえに、いくつもの壁が立ちはだかる。挫折してしまいそうな状況が次々と現れる中、それでも1つずつ問題を解決していく。
その根底には「どうしたらできるのか?」という考えがあり、それを愚直に追及している河内氏。どんな問題が表れようと妥協しない姿勢に強さを感じ、そして勇気をもらえる。
夢に向かっているもの、これからチャレンジしようと思っているものは間違いなく元気をもらえる一冊である。「出る杭は打たれる」という言葉があるが、出すぎてしまえば打つほうもあきらめるのかもしれない。
(磯谷 貴之)
出版元:東洋経済新報社
(掲載日:2012-10-13)
タグ:バスケットボール マネジメント
カテゴリ 人生
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失敗学事件簿 あの失敗から何を学ぶか
畑村 洋太郎
「失敗学」という少し聞きなれない言葉がある。
人は失敗に対しネガティブなイメージを持ち、そしてできる限り失敗を回避しようとする。それがゆえに失敗を「悪」とし、目を背け、時間と共にその失敗を忘れる。そしてまた失敗を繰り返すという悪循環に陥る。
それに対し、失敗を直視し、積極的に学ぶことで新たな知識が得られ、不必要な失敗を減らし、創造につなげられるというものが「失敗学」である。要は「失敗は成功のもと」を証明する分野である。
本書では実際に起こった事故や事件の失敗例をまとめ、その原因を検証している。事故や事件を「負の遺産」として風化させるのではなく、未来に向けて活かしていかなくてはならないと筆者は述べている。
・許される失敗と許されない失敗
・失敗は誰にでも起こる、失敗しない人間はいない
・失敗に対し「責任追及」する組織と「原因究明」する組織の明暗
・大きな失敗の裏には必ず小さな失敗が30近くはあり、さらにその裏にはより小さな失敗が300はある。(ハインリッヒの法則 1:29:300)
・20~30年周期に大きな失敗が起こる
・優れたリーダーは失敗の元となる脈路を探り(=逆演算)、これから起こりうるリスクをイメージできる(=仮想演習)人物である。
・慣れが失敗を招く
・マニュアル通りのことだけ、自分のことだけ、目の前のことだけしか見えてない人間が大きな失敗を招く
など、本書では失敗という事実からさまざまな教訓を提示してくれている。また、筆者自身が現場に出向き、現物をその目で確認し、対象となる人(=現人)に直接話を聞くという「三現主義」をモットーとしているため、非常にリアルな内容を感じることができる。
「失敗しないように行動することが一番の失敗だ」「失敗なんてない。この方法ではうまくいかないという発見だ」失敗に対しての捉え方が変わるだけでなく、人生の考え方も変えてくれる、元気を与えてくれる作品である。
(磯谷 貴之)
出版元:小学館
(掲載日:2012-10-14)
タグ:失敗
カテゴリ 人生
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フィーメールアスリートバイブル
鳥居 俊
現在日本ではプロ、アマ問わず女性アスリートが数多く活躍している。その反面、女性だからこそ抱える問題も数多く存在していることにあまり焦点は当てられていない。また女性の身体をきちんと理解した指導者も未だ多くない。
本書は女性アスリートの健全な競技活動をサポートしたいという筆者の願いから、医学・体力科学面はもちろん、心理面・社会的側面からも焦点を当て作成されている。筆者自身が数多くの女性アスリートと現場で接してきたからこそ、もっとよい環境で女性アスリートに競技をしてほしいという想いがこもった一冊である。
男性が読んでも、これからの競技活動に活かせるような違った視点からの考え方が得られるはずである。
(磯谷 貴之)
出版元:ナップ
(掲載日:2012-10-16)
タグ:女性アスリート
カテゴリ スポーツ医科学
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運動処方の指針 運動負荷試験と運動プログラム
アメリカスポーツ医学会 日本体力医学会体力科学編集委員会
アメリカスポーツ医学会(ACSM)ガイドラインの第5版。1975年に第1版が発刊されて以来、臨床医学者と体育科学者の専門職の両者にとって有益な情報が提供されてきた。
従来より「運動負荷試験」と「運動処方」に焦点をしぼり、体育科学側に重きを置いた内容となっている。専門家達による調査、レポート、出版物から引用されたデータも今まで以上に記載されており、運動の指導的立場にある方々にとって現場で活かせる一冊となっている。また、わが国が力を入れている高齢期のQOL改善にも本書に含まれた運動処方などがますます重視されるようになっている。そして著者たちの願いは机上で使うことより、現場・実地のポケットブックとして用いられることであり、大きさ、内容ともコンパクトにされている。
現在では情報が氾濫し、ネットや書物などで情報が容易に入手できる。だからこそ大切なことはその情報を自分の中で整理し、アウトプットできるかどうかだと思う。とくに現場で働く人間にとって「知ってる」より「できる」ことの方が大きな意味を持つ。本書は現場で日々試行錯誤している指導者たちにとって、現場に持っていきたい一冊となっている。
アメリカスポーツ医学会 編、日本体力医学会体力科学編集委員会 監訳
(磯谷 貴之)
出版元:南江堂
(掲載日:2012-10-16)
タグ:運動処方 運動負荷試験
カテゴリ 指導
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医療の限界
小松 秀樹
日本の医療は崩壊の危機に瀕しているという筆者。筆者が主張する問題とは「医療をめぐる事故や紛争の大小」ではなく、「医療自体に対する国民の態度の変化」だという。
医療行為を行う医師に責任があるのは間違いなく事実であるが、社会の側にも問題があることを問いかけている。日本人を律してきた考え方の土台が崩れている。
「死生観の喪失」
「生きるための覚悟がなくなり、不安が心を支配している」
「不確実なことを受け入れない姿勢」
安心・安全神話が社会を覆っているからこそ、患者も医師もリスクを負うことを恐れる。その結果双方の間に軋轢が生まれるだけなく、本当に医療を必要としている人にさえ被害が及ぶ。医療だけでなく、教育問題、社会問題の原因にもつながる内容がリアルに載せられている一冊である。
そもそも「絶対」など存在しないのだ。今生きていることさえ、明日は絶対ではないのである。それを頭でわかっても心で受け止めきれないことが、医療崩壊にもつながっていると言える。医療だけでなく、現代社会に対してのメッセージが込められた一冊に感じた。
(磯谷 貴之)
出版元:新潮社
(掲載日:2012-10-16)
タグ:医療
カテゴリ その他
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基礎から学ぶストレッチング
谷本 道哉 岡田 隆 荒川 裕志 石井 直方
ストレッチは多くの方が実践していながら、形だけ真似たり、なんとなく行ってしまうことが多いのも事実である。
本書ではストレッチングの有効性を理論的に説明しているだけでなく、実践する際の意識するポイントもわかりやすく解説されている。コツを押さえておくことで同じ動作を行っても、今までとは別の感覚を得られるはずである。新しいことをはじめることの喜びも捨てがたいが、今までやってきたことで違った感覚を得られる喜びもまた素晴らしいと思う。
本書は気になる身体の部位だけチェックすることもできる「辞書」のような一冊に仕上がっている。自分でチェックし実践することで日常のセルフケアにつながる。そしてストレッチを通してセルフケアできることで、自分の身体にいままで以上に関心を持つことにつながり、楽しさも増すかもしれない。そんな可能性を感じさせてくれる一冊である。
(磯谷 貴之)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2012-10-16)
タグ:ストレッチング
カテゴリ ストレッチング
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高齢者の機能アップ運動マニュアル
Elizabeth Best-Martini Kim A. Botenhagen-DiGenova 小室 史恵
本書は高齢者への運動指導や身体活動に対して関わりのあるすべての方に対してのトレーニングマニュアルである。
本書は2部構成に大きく分けられており、第1部では参加者のニーズ、プログラム作成の指針、指導者に対しての心構え、などが取り上げられており、第2部では具体的なプログラムが写真つきでわかりやすく取り上げられている。
そして本書の最大の特徴は「特別なニーズを必要とする高齢者」に対しての対応、エクササイズプログラムが本当に細かく書かれていることである。
特別なニーズとは、アルツハイマー病、認知症、うつなどから、脳梗塞、COPD、糖尿病などの病気、骨粗しょう症、頭部外傷、股関節骨折といったものまで幅広い。
すでにこのようなニーズを持つ方々と関わっている方はもちろん、今後高齢者指導、介護事業などに関わろうと考えている方は本書から大きなヒントを与えてもらえると思う。 本書の中で「機能を失うことは自立を失うこと」というフレーズがある。
我々の仕事が身体の機能を改善するだけでなく、その人の人生にさえ少なからず影響をもたらすことができるということが、長年現場でやってきた筆者だからこそ感じたことであり、この言葉に非常に考えさせられた。どんな厳しい状況になっても必ずやれることはある。そしてその小さな積み重ねがクライアントが前向きで活動的な生活ができることにつながっていく。本書はそんなことを感じさせてくれる一冊である。
(磯谷 貴之)
出版元:ナップ
(掲載日:2012-10-16)
タグ:高齢者 運動処方
カテゴリ 運動実践
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高齢者の転倒とその対策
真野 行生
高齢者の転倒防止が重要視される要因として、さまざまな臨床的課題に発展する可能性が高いことが挙げられる。転倒それ自体で大きな障害を起こさなかったとしても、リスクが大きく広がってしまう。
本書では転倒が起こる原因、対策、復帰までの運動訓練などさまざまな角度から高齢者の転倒について記述されている。
筆者は「活発な生活をしていると転倒する確率は高く、逆に不活発な生活をしていると転倒する確率は少ない。しかし目標は活発にしていても転倒する確率の少ない生活である」と唱える。
転倒が起こらないように環境設備を整えるバリアフリーも1つの手段だが、自分自身を転倒から守るセルフコンディショニングを普段からしておくこともバリアフリーと言えると思う。
高齢者の指導に関わる方だけでなく、若い世代の方に読んでもらえたら「今自分がやれること」のヒントが見つかるかもしれない。
(磯谷 貴之)
出版元:医歯薬出版
(掲載日:2012-10-16)
タグ:転倒予防 高齢者
カテゴリ スポーツ医科学
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運動とスポーツの生理学
北川 薫
「人の動きを科学的に解明するのは極めて難しい」と述べる筆者。
筆者は人の動きを「代謝系」と「脳・神経系」と大きく2つに分けているが、「脳・神経系」に対して目に見えない・具体的に数値化できない難しさを述べており、スポーツ指導者が科学に物足りなさを感じる1つの要因だと指摘する。
そのためこの分野をよりよく理解するために、解剖学、生物学、物理学など、多くの科学分野の基礎を学ぶ必要性を説いており、本書でもさまざまな視点からアプローチし科学的根拠を導き出している。そうすることがスポーツ科学の更なる発展につながると述べている。
研究者だけじゃなく現場で指導している者にとっても、今までと違った視点で運動・スポーツ生理学を見ることができ、現場での想像力を膨らませてくれるヒントが必ず見つかるであろう一冊である。
(磯谷 貴之)
出版元:市村出版
(掲載日:2012-10-16)
タグ:生理学
カテゴリ スポーツ医科学
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