フェルデンクライス・メソッド入門 力みを手放す、体の学習法
伊賀 英樹
フェルデンクライス氏が体系化し、日本に入ってきてから約30年になるフェルデンクライスメソッド。自身の身体を知り、よりよい動きに近づけていくこのメソッドは、言い換えれば個人の数だけ適した方法がある。また、不調のある人は不必要な力みがある場合が多いため、身体の各部分をゆるめるワークが中心になる。となると、なかなか一律に解説しにくいものだ。それを筆者は要点を整理し、平易な言葉でまとめた。
本書の前半は望ましい心構えについて述べられ、後半はペアワークおよびATMレッスン(グループレッスン)の体験に割かれている。豊富なイラストは、ゆっくり実践していく助けとなるだろう。本当に効果があるのか? と半信半疑の人に紹介するのにちょうどよい入門書だ。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:BABジャパン
(掲載日:2012-08-03)
タグ:フェルデンクライスメソッド 入門
カテゴリ ボディーワーク
CiNii Booksで検索:フェルデンクライス・メソッド入門 力みを手放す、体の学習法
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:フェルデンクライス・メソッド入門 力みを手放す、体の学習法
e-hon
フェルデンクライス・メソッド WALKING
ジェームズ・アマディオ
フェルデンクライス・メソッドの療法士として14年の経験を持ち、日本、ヨーロッパ、アメリカで療法士育成にあたるとともにプロスポーツ選手のトレーナーとしても活動するアマディオ氏が、寝た状態、立位・歩行、トレッドミルでのレッスンを紹介している。
副題は「簡単な動きをとおした神経回路(ニューロ・ネット)のチューニング」。著者が開発したトレッドミルのレッスンは陸上競技選手を始めとするプロスポーツ選手を対象とした内容で、寝た状態、立位・歩行のレッスンはトレッドミルがなく、手技療法を受けられない人のためのプログラムである。本書写真のモデルであり、実際にフェルデンクライス・メソッドを取り入れているJリーガーの丸山良明選手は「ちょっとした運動で、眠っている神経や筋肉を刺激してやることで、楽に当たり前のことができるようになる。だから、必然的にケガも少なくなるということだと思います」とその効果を語る。DVDつき。(H)
2006年7月30日刊
(長谷川 智憲)
出版元:スキージャーナル
(掲載日:2012-10-11)
タグ:フェルデンクライス
カテゴリ ボディーワーク
CiNii Booksで検索:フェルデンクライス・メソッド WALKING
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:フェルデンクライス・メソッド WALKING
e-hon
Fromシアトル アスリート新化論
山本 邦子
身体と心に目覚めを問いかける
ヨガの教本? いえ、著者はアスレティックトレーナー。ポーズを説明するだけの教本ではありません。トレーナーがヨガという手法を中心にアスリートに自分の身体と心に目覚めてもらうよう問いかけているのです。もちろんアスリートといっても競技選手だけを意味するのではありません。身体を動かすことを愛するすべてのヒトにその思いは向けられています。
スポーツ界ではずいぶん浸透してきたアスレティックトレーナーという専門職ですが、基本的な業務は以下のとおり。アスリートの健康管理、傷害予防、傷害の応急処置、アスレティックリハビリテーション、そしてトレーニングにコンディショニング。つまりはケガをしているかどうかにかかわらず、アスリートとタッグを組んで、強くそして高いパフォーマンスを実現できる心と身体をつくっていくことがその役割となるのです。
そのためには強さを求めるトレーニング、巧みさを求めるトレーニング、強い精神力を求めるトレーニングなど、さまざまな形の鍛練が必要になります。ただしトレーニングだけがすべてではありません。何を食べ、どう休み、強い心と身体を得るためにどのような心構えでいるべきかを考え、そして行動する力も必要です。突きつめれば、日常生活、いや生き方そのものを問いかける必要があるのです。そのような「気づき」を得たアスリートは、トレーナーの思惑をはるかに超えて成長することがあります。そんなときは、やられたあ、というなぜだか少し悔しいような気持ちとともに、その何倍もの誇らしい喜びを感じることができるものです。逆にトレーナーがいくら力んで自説を押しつけても、アスリート本人がやるべきことに気づき、理解し、それを実行に移せなければ、トレーナーの自己満足に終わってしまいます。そしてそんなことも往々にして起こるのです。
きっかけをつかんでほしいの気持ち
この本の著者は、そんな落とし穴に、ともすれば落ちてしまうことの危うさに数々の経験を通じて気づいているのでしょう。だからこそ、きっかけをつかんでほしい、気づいてほしい、という気持ちが文中に溢れているのです。ここに気づけばもっと身体をうまく使えるよ。こんな風に考えればもっと楽に身体が動かせるよ。ここを少しうまく動かせば頭の中で描いているイメージと実際の身体の動きが近づくよ。そして身体を動かすことがもっと楽しくなるよ。そんな声が聞こえてきそうです。
すべてのレベルの、すべての競技の、すべてのポジションの、すべてのアスリートに、たったひとつの理論が当てはまるわけではありません。アスレティックトレーナーは自分のスタイルを持っていながら、一人一人のアスリートにどれだけ効果的な方法があるのか悩みに悩んで対応していたりします。この本ではヨガという手法を選んでいて、それは正しい選択のように思います。ヨガを通じて、身体の、そして心のありように気付き、それを高めていくこと、これはとても楽しいことのように思います。
(山根 太治)
出版元:扶桑社
(掲載日:2007-01-10)
タグ:ヨガ トレーニング
カテゴリ ボディーワーク
CiNii Booksで検索:Fromシアトル アスリート新化論
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:Fromシアトル アスリート新化論
e-hon
PILATES Mastery 習熟したい人のピラティス・テキスト マットワーク編
Terease, Amanda Digby, Marena 新関 真人
ピラティス・エクササイズはジョセフ・H・ピラティス氏によって考案され、そのエクササイズの基本は体幹部(コア)と呼吸(ブリージング)にあるという。著者の二人はそのピラティス氏に習って現在では職業団体フィットネス・オーストラリアから、オーストラリアで初めてフィットネス・ピラティス・インストラクター養成コースの認定を受ける。そんな二人が本書ではピラティスの概要やエクササイズの方法等のコンテンツを担当している。またカーネギー・カイロプラクティック&リハビリテーションをオープンしていることで知られている新関真人氏が解剖や生理、姿勢検査、臨床的な観点から見たエクササイズの注意点をまとめている。
現在ピラティスの有効性が、フィットネス、スポーツ、舞踏、医療の分野にまで注目を集めているが、本書では「動く」を考える“骨・筋肉・神経の強調の仕組み”を、ピラティスの基礎知識に沿ってわかりやすく解説し、またエクササイズ効果を高める“ボディプレースメント(準備、動作時の姿勢)”にも理解を深めることができる。
2006年11月9日刊
(三橋 智広)
出版元:スキージャーナル
(掲載日:2012-10-11)
タグ:ピラティス
カテゴリ ボディーワーク
CiNii Booksで検索:PILATES Mastery 習熟したい人のピラティス・テキスト マットワーク編
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:PILATES Mastery 習熟したい人のピラティス・テキスト マットワーク編
e-hon
ボディポテンシャルトレーニング
橋本 維知子 日本ボディポテンシャル協会
本書はボディポテンシャル協会が監修として、人間本来の機能を回復し、スポーツ動作、日常的な動作においても、そのボディポテンシャルを高めるべくまとめられた一冊である。
パート1の「骨格をイメージしながら動く」ではボディエクササイズの意義と実践にふれ、効果的なアドバイスを充実させている。パート2の「目的別トレーニング」では身体の基礎的な知識と、日常生活における動作と腰、肩、首、膝、股関節、また便秘やO脚、猫背など、その動きと障害の関わりについて絵や写真、図を用い項目別に詳しくアプローチしている。最後の「スポーツ動作への意識を高めるトレーニング」では野球、バスケット、バレーボール、水泳、ランニング、マラソン、ゴルフ、エアロビクス、テニスなど、各種目におけるボディポテンシャルに効果的なエクササイズを写真でわかりやすく解説している。
橋本維知子著、日本ボディポテンシャル協会監修
2006年6月10日刊
(三橋 智広)
出版元:山海堂
(掲載日:2012-10-11)
タグ:ボディポテンシャル
カテゴリ ボディーワーク
CiNii Booksで検索:ボディポテンシャルトレーニング
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:ボディポテンシャルトレーニング
e-hon
フェルデンクライス・メソッドWALKING 簡単な動きをとおした神経回路のチューニング
ジェームズ アマディオ 橋本 辰幸
本書のタイトル、フェルデンクライスメソッドとは物理学者モーシェ・フェルデンクライス博士によって開発されたメソッドで、「動き」を通して人間の持つ潜在能力を引き出す学習システムである。私は体験したことがないが、聞くところによるとこのメソッドは、レッスンでのさまざまな動きを体験することで、これまでに身に染みついた動きから離れ、より自然な動きや姿勢を獲得し自分の身体への気づきを高めることができ「心地よい体の動きが“脳”を刺激し活性化させる」ボディーワークだそうである。
本書では、レッスンの具体的な方法が豊富な写真と付属のDVDで解説されており、寝て行うレッスン、立位・歩行によるレッスン、トレッドミルでのレッスンと段階的に進みそれぞれの実践者にあったプログラムを選べるよう構成されている。ただ、理論的背景などにはあまり触れられておらず、なぜそのような姿勢や動作なのかの説明がないのが残念だが、姿勢や動作を改善することでパフォーマンスを向上させようとする選手・指導者やリハビリテーションに関わるセラピストには、新たなアイデアを引き出してくれる一冊となるだろう。
(打谷 昌紀)
出版元:スキージャーナル
(掲載日:2012-10-15)
タグ:身体
カテゴリ ボディーワーク
CiNii Booksで検索:フェルデンクライス・メソッドWALKING 簡単な動きをとおした神経回路のチューニング
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:フェルデンクライス・メソッドWALKING 簡単な動きをとおした神経回路のチューニング
e-hon
ティーチングピラティス 姿勢改善を目的とした実践ガイド
ジェ-ン・パタ-ソン 新田 收 小山 貴之 中村 尚人
ピラティスにおいて姿勢をどのようにしてつくるのか、たとえば「チョコレートのかけらが落ちないように」などのユニークな口頭指導の例が紹介されている。
主にピラティスを指導する方々を対象として、その目的や方法、押さえておくべきポイントを伝えている。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ナップ
(掲載日:2010-11-10)
タグ:ピラティス
カテゴリ ボディーワーク
CiNii Booksで検索:ティーチングピラティス 姿勢改善を目的とした実践ガイド
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:ティーチングピラティス 姿勢改善を目的とした実践ガイド
e-hon
ティーチングピラティス 姿勢改善を目的とした実践ガイド
ジェ-ン・パタ-ソン 新田 收 小山 貴之 中村 尚人
この本は解剖から疾病、エクササイズまで写真や図などで示しながらわかりやすく解説されています。具体的なエクササイズに入る前に、そのエクササイズを選択するのに必要である姿勢評価や機能評価について、安静時の姿勢だけではなく、立ち座り、前屈などの動作時の運動順序の要点がまとめられているところも非常にわかりやすい。
1つひとつのエクササイズに関しても、開始肢位から呼吸をともなった動き方、そしてその時の注意点や指示にまで細かく説明がされています。さらにエクササイズの変法やプログレッションも加えられていて実践的でもあります。
何のためにこのエクササイズを使うのかという目的を理解し、クライアントに対してより効果的にエクササイズを提供するために、非常に勉強になる本です。解剖学、運動学、リハビリテーションの教科書であり、もちろんピラティスの教科書として、医療従事者からボディワークのインストラクターまで幅広い方におすすめできる本です。
(大槻 清馨)
出版元:ナップ
(掲載日:2012-10-16)
タグ:ピラティス
カテゴリ ボディーワーク
CiNii Booksで検索:ティーチングピラティス 姿勢改善を目的とした実践ガイド
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:ティーチングピラティス 姿勢改善を目的とした実践ガイド
e-hon
体感して学ぶ ヨガの解剖学
中村 尚人
理学療法士としてリハビリテーションに関わってきた中村氏。ヨガに出会い、アーサナ(ヨガの姿勢のこと。ポーズ)がその運動指導であり、心身一如の健康法であったということに気づく。ヨガと解剖学の両方を深く知ることで多面的な見方ができるようになり、探求が深まるだろうという。
「太陽礼拝」の動作をチェックとして活用し、さまざまなアーサナを解説するとともに、関連した解剖学的な知識をわかりやすく伝えている。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:BABジャパン
(掲載日:2011-03-10)
タグ:ヨガ 解剖学
カテゴリ ボディーワーク
CiNii Booksで検索:体感して学ぶ ヨガの解剖学
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:体感して学ぶ ヨガの解剖学
e-hon
体感して学ぶ ヨガの解剖学
中村 尚人
タイトルの通りヨガというボディワークを通して解剖学が学べる本です。ただ解剖学を学ぶだけでは頭に入りにくいものが、ヨガという動きを通すことで実用的に、ただヨガを行なうだけより解剖的な解説が加わることで、さらに動きを深めることができます。
そこでポイントとなるのが、自ら体感すること。この本では動きを実際に体感、とくに「よい動き」「よくない動き」の両方を体感することによって、なぜよいのかが自らの身体をもって理解することができるのです。実体験は見るよりも聞くよりもわかりやすいのです。
まずは、この本を読みながら身体を動かしてみていただきたい。
(大槻 清馨)
出版元:BABジャパン
(掲載日:2012-10-16)
タグ:ヨガ 解剖
カテゴリ ボディーワーク
CiNii Booksで検索:体感して学ぶ ヨガの解剖学
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:体感して学ぶ ヨガの解剖学
e-hon
アレクサンダー・テクニーク完全読本
リチャード ブレナン 青木 紀和
アレクサンダー・テクニークというものを初めて知ったのは10年ほど前。当時何冊か読んだのですが、アレクサンダー・テクニークについて音楽家や舞踏家のためのボディーワークであると認識していました。それを人に言ったらお叱りを受け、アレクサンダー・テクニークはもっと哲学的で精神的でいろんな要素を含んでいるといわれました。
そのころ読んでいた本は、確かにアレクサンダー・テクニークの部分的な要素を取り上げたものであったとは思いましたが、哲学的とか精神的なと言われても想像もつかず、つかみどころのないイメージが私の頭の中に残りました。
タイトルの通り本書は「完全読本」。つかみどころのないものがつかめるかもしれないという期待で読んでみました。
期待通りに私の中でのアレクサンダー・テクニークで欠落していた要素がしっかりと書かれていました。逆に見えてきた分だけアレクサンダー・テクニークが目的とすることの難しさや奥行きの深さを感じました。
身体面・感情面・心理面・精神面と、まさに心と身体における様々な要素に作用するワークだと認識を新たにしました。
だから方法論も正しい身体の使い方という面に対するアプローチではなく、メンタルとフィジカルを不可分一体と捉えた上のワークになっているようです。どちらかといえば瞑想に近い感じもしました。近年、マインドフルネスやヴィパサナなどの心理や精神世界のワークも多く見かけるようになりましたが、そこに解剖学や運動学の要素がミックスされたような印象を持ちました。
多くの人が自分の思う通りに身体を使えていると信じて疑わないでしょう。ところがその中に不必要であったり不適切な要素があることには気づいておられないでしょう。そして習慣の中に組み入れられることで心身の不調を引き起こしたり、理想とする動きを阻害したりします。
よく「気づき」という言葉が使われますが、アレクサンダー・テクニークにおいて気づくべきは不適切な身体活動と精神活動であり、そこからの修正を試みることだと思います。正直なところ、従来のボディーワークのイメージでとらえてしまうと違和感を覚えてしまうでしょう。まずはアレクサンダー・テクニークの目的をきちんと理解することから始めるべきだと感じました。
(辻田 浩志)
出版元:医道の日本社
(掲載日:2018-06-07)
タグ:アレクサンダー・テクニーク ボディーワーク
カテゴリ ボディーワーク
CiNii Booksで検索:アレクサンダー・テクニーク完全読本
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:アレクサンダー・テクニーク完全読本
e-hon
自分ですぐできる! 筋膜筋肉ストレッチ療法
マーティー 松本
筋肉が原因となる痛みや不快感に対しては、身体を動かすことが有効だと思います。もちろん外傷性の場合や重篤な場合は禁忌事項となりますが、軽微な機能障害の場合は運動することで治まることがあります。血行が促進されるだけでも好転するでしょうが、さらに身体の仕組みを理解したうえで身体を動かせば、身体の様々な機能が働き、2倍3倍の効果も期待できます。
また何らかの痛みがある場合、自分でやるといっても不適切な方法で動かして悪化させるリスクもありますので、適切な方法があればそれに従うべきでしょう。
本書は徒手療法でも定評のある筋膜リリースやマッスルエナジーテクニックなどを用いた自己治療を紹介したものです。
近年注目されるようになった筋膜リリース。筋膜のひずみや癒着を解消することで筋肉に対するストレスを軽減するという概念です。業界では筋膜の連続性に着目し、筋膜のつながり(ライン)に対しアプローチする手法が広がっていますが、本書では症状が出ているところに対して直接アプローチする方法が紹介されています。
マッスルエナジーテクニックに関しても等尺性収縮後リラクセーションと相反抑制を利用した異なる2つの作用機序の手法がありますが、本書では基本ともいえる等尺性収縮後リラクセーションに関してのみ紹介されています。
できるだけ難しい要素を排除して誰でも簡単にできる方法を紹介されている点で評価できます。そしてどんな技法にもリスクはありますが、最後に「注意点」として医師の判断を仰ぐべき場合も書かれていますので、良心的だと感じました。
(辻田 浩志)
出版元:BABジャパン
(掲載日:2018-06-20)
タグ:マッスルエナジーテクニック 筋膜リリース
カテゴリ ボディーワーク
CiNii Booksで検索:自分ですぐできる! 筋膜筋肉ストレッチ療法
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:自分ですぐできる! 筋膜筋肉ストレッチ療法
e-hon
身体のデザインに合わせた自然な呼吸法 アレクサンダー・テクニークで息を調律する
リチャード・ブレナン 稲葉 俊郎
人は呼吸することなしで生きていくことはできません。それにもかかわらず仕事や食事など生活上の行為に比べると深く考える人はいません。なぜならばなんの努力も苦労もなしにできるのが呼吸だからです。
誰もがあまり意識することのない呼吸のメカニズムは複雑で繊細です。人は困難なことには注意を払いますが、当たり前のことにはさほど思考を働かせません。それゆえに知らず知らずのうちに適切な呼吸ができなくなっていても気づく人はいません。好ましくない呼吸法がいつしか身体の能力を低下せしめたり、何らかの身体的な不具合が現れたときに気づくのかもしれません。場合によっては病的な状況に陥っても、その原因が呼吸にあることに気づかないケースもあるようです。
本書はアレクサンダーテクニークの考えから、その中核を担う呼吸法に言及したものです。知っているようで意外と知らない呼吸のメカニズム。前半は呼吸と発生についての基礎知識。改めて解説されると複雑であることがわかります。それを知ったうえで呼吸の問題点を探れば具体的な矯正ポイントが明確になります。
本書の中心的な問題は、あまり呼吸について意識しないのは、各々が自らの呼吸に対し漠然とした感覚による評価だけだからであるという指摘があります。さらにその感覚的評価というものがあまり正確ではなく誤りの多いものだと主張します。考えてみれば病気のときでも初期の段階では身体の異変にあまり気づくことがなく、痛みや発熱などの具体的な症状があらわれて初めて異変に気付くものです。そう考えれば筆者の考えは納得がいきます。
実際に本書が推奨する呼吸法自体はまさしく「身体のデザインに合わせた自然な呼吸法」であり特殊なものではありません。しかしながら身体の誤った使い方が習慣化することで自然な呼吸法ができなくなっているという点が主旨であるといえそうです。そして身体の使い方の誤りをなくせば、勝手に自然な呼吸法になるということのようです。
この本は同じ筆者の『アレクサンダー・テクニーク完全読本』をお読みになった後に読んでいただいたほうが筆者の言いたいことがよくわかるだろうと思います。私は以前に「完全読本」を読んでいたので下地がありわかりやすかったのですが、もし読んでいなければ、大事な根底部分がボケてしまっていたかもしれません。
(辻田 浩志)
出版元:医道の日本社
(掲載日:2019-08-30)
タグ:アレクサンダーテクニーク
カテゴリ ボディーワーク
CiNii Booksで検索:身体のデザインに合わせた自然な呼吸法 アレクサンダー・テクニークで息を調律する
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:身体のデザインに合わせた自然な呼吸法 アレクサンダー・テクニークで息を調律する
e-hon
アレクサンダー・テクニーク やりたいことを実現できる〈自分〉になる10のレッスン
小野 ひとみ
心身を整える方法、アレクサンダー・テクニークの入門書である。
フレデリック・マサイアス・アレクサンダーは、オーストラリアの舞台役者で、舞台上で自分の声がかすれたり、出なくなったりしたことをきっかけに、自己観察をはじめた。すると、舞台上ではいつも不自然な姿勢で声を出している(頭を後ろに引いて、首に力が入り、ノドを押し下げている)ことに気づいた。よかれと思ってしていた姿勢によって、苦しんでいたのだ。そのことから、からだの誤用(ミスユース)に至るまでの過程(プロセス)に着目し、いくつかの概念(キーワード)によって「自分自身の使い方」を整理していく。
・プライマリー・コントロール
動き出しにはまず頭が動く。これは意識(マインド)・からだ(ボディ)、双方の意味において。これをヘッド・リードという。動きで言えば、幼児の対称性・非対称性緊張性頸反射を思い浮かべるとわかりやすい。はじめに頭が動く・働くことが、からだ全体の動きの「スイッチ」のような役割を果たして、より自然な動きにつながる。
個人的な経験だが、友達とスキーに行ったときに、「行きたい方向に目を向ける」というアドバイスをもらって、より自分の思い通りに滑れるようになったことを、思い出した。
・インヒビジョン
日本語では「抑制」という意味になるが、ネガティブなイメージもあるため、筆者はあえてカタカナで表現している。すぐ反応してパッとからだを動かすのではなくて、グッとこらえて内省・観察する。こういった手順(ミーンズ・ウェアバイ)を意識せずに、結果・目的にすぐ飛びつく(動く)さまをエンド・ゲイニングと表現し、戒めている。
まるで、太極拳のように動作を噛みしめながら、体重をゆっくり移していくようなイメージだろうか。先を予測するのではなく「いま、ここ」に意識を向けるという意味で、マインドフルネスに通じるかと思う。
・ダイレクション
意識・マインドにおける用語である「インヒビジョン」に対して、からだ・ボディにおける用語である。4つの方向性の原則を示す。
①首は楽に
②頭は前に、上に(脊椎との関係において)
③脊椎は長く、背中を広く
④膝は前に、お互いに離れている
ケンダルの分類でいう「軍人姿勢」の場合の、頭は後ろで、胸は前、腰は前弯が強く、骨盤前傾により背中が短くなり、膝は後ろで、かつニーイン、というイメージに対する警告のようにも見えたので、全員に当てはまる原則かなぁ、と正直言ってよくわからない。筆者は、あくまで方向性を意識するということであって、姿勢そのものを指すわけではない、と釘を刺す(この4つの原則を意識しすぎて変な姿勢になるヒトのことを、「アレクサンドロイド」と揶揄するらしい)。
また、アレクサンダーは「正しい動き」にとらわれると余分な力が入り、不自然な動きになってしまうともいう。あくまで、過程の感覚を、心身の気づきを、大切にするのだ。なんだか、わかるような、わからないような。
筆者は、「知っている:I know」と「理解している:I understand 」と「できる:I can do it」との間に、それぞれ大きな隔たりがあるという。知っていることで、わかった気になってしまうことが、よくある。わかっているのにできないことは、やってみて初めてわかる。
さっそくやってみよう。
(塩﨑 由規)
出版元:春秋社
(掲載日:2022-03-07)
タグ:アレクサンダー・テクニーク
カテゴリ ボディーワーク
CiNii Booksで検索:アレクサンダー・テクニーク やりたいことを実現できる〈自分〉になる10のレッスン
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:アレクサンダー・テクニーク やりたいことを実現できる〈自分〉になる10のレッスン
e-hon
オステオパシー医学入門
S・パリッシュ
オステオパシーの入門書として、歴史・原理・方法などを、わかりやすく解説している。ときおり誤植と思われる点や、現代医学にはそぐわない点があるものの、オステオパシーの概説に興味がある方におすすめしたい。
この本で「オステオパシー療法の四大原則」といわれているものを以下に示す。
第一の原則:構造が機能を支配する
第二の原則:身体における動脈法則は至上のものである
第三の原則:原因を発見し、治し、放置せよ
第四の原則:細胞に正しい栄養素を与えよう
これら以外に「身体は自らの薬をつくりだす」という治療原則も存在する。
オステオパシーを創始したアンドリュー・テイラー・スティルは、3人の息子を亡くした。自身が医者であり、当時最先端の医学を持ってしても救えなかった命だった(英雄医学と呼ばれる、瀉血をしたり、水銀を飲ませたりしていた時代だった)。その経験からスティルは「薬品は毒だ」と言い放ち、比較的安全な徒手による刺激によって、身体を治癒に導く方途を探るようになったと思われる。
この150年ほど前から現在に至るまで、さまざまなテクニックが生まれ進化しているオステオパシーだが、きっかけは息子を想う気持ちだったのかと憶測を立てると、胸が熱くなる。
(塩﨑 由規)
出版元:たにぐち書店
(掲載日:2022-04-11)
タグ:オステオパシー
カテゴリ ボディーワーク
CiNii Booksで検索:オステオパシー医学入門
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:オステオパシー医学入門
e-hon