インベストメントハードラー
為末 大
為末 大。
言わずと知れた、400mハードルの選手。世界大会において、トラック種目で日本で初めて2つのメダルを獲得した、プロの陸上選手である。
今まで読んできたスポーツ選手の著書は、その選手がスポーツを行う上で特化している能力についてスポットを当てて書かれたものが多かった。しかし、この本の帯には大きく「為末大」と書かれた横に、「初期投資30万円が現在2000万円に増えた話」と書かれていた。そしてインベストメントの意味は、「投資」である。
本の題名と帯のコメントから推測すると、プロの陸上選手である為末大が投資で儲けた話について書かれたと予想されるが、読み進めていくと全く違う内容であった。
なぜ、投資を始めたのか。投資とはどういうものなのか。為末選手が陸上競技を通して経験してきたことや、確固たる人生哲学に基づいた投資の話は、お金の話だけにとどまらずとても興味深い。多角的で広い視野を持つこと、興味や疑問を紐解いていくこと、プロだからこそのお金の捉え方など、世界を舞台に戦うアスリートのみならず意識していきたいこと多々である。
(石郷岡 真巳)
出版元:講談社
(掲載日:2012-10-16)
タグ:陸上競技 投資
カテゴリ 人生
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日本人の足を速くする
為末 大
本書の第一章にある「何万回、何十万回と着地する中で、地面に着いた足の上に骨盤が乗り込み、股関節のあたりに地面を踏んだ感触が直接に伝わってきて、体がスムーズに前に進んでいく感覚をつかんだのです」という一文に、著者である為末氏の探求が始まった瞬間の感覚がよく表れています。
日本人がフィールド競技では勝てないと言われている中、日本人の体型や精神的な特徴を考慮した上で、「どうやったらうまくいくのか、自分の頭で考え、工夫を凝らし、イメージして、体をコントロールする。その過程で能力が開発され、さまざまな状況に対応する力が伸びていくのだと思うのです。」と本書の中にも書いているように、勝つための戦略をつくり上げ、そして自身がメダルを獲得することができたレースへの攻略法を書き記した一冊です。
(大槻 清馨)
出版元:新潮社
(掲載日:2013-05-21)
タグ:陸上競技
カテゴリ 身体
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走りながら考える 人生のハードルを越える64の方法
為末 大
本書は侍ハードラーという異名を持つ為末大氏が25年の競技人生の中で考え、悩み、実践してきたことが赤裸々に書かれている。
陸上の世界選手権のトラック競技(400mハードル)で、2度のメダルに輝いた同氏だが、競技人生の中では数々の挫折も経験している。彼の「挫折」の捉え方は非常に面白く、「挫折があるからこそ感じる本当の喜びと優しさもある」と本書で語っている。人生は思い通りにいかないことがほとんどであり、努力は報われないことが多い。頑張った人が成功するわけでもなく、それでも人は懸命に生きるしかない、と。エリート・アスリートである著者が放つ、これらの言葉は、私たちに元気を与えてくれる。
考えすぎて動けない人が多い中で、「走りながら考える」というタイトルは、陸上競技選手、為末大をうまく言い表しているなと思う。その一方で、競技をしながらも陸上競技の先に何をしたいのかを常に考えていた著者には、1歩先、2歩先を「考える力」があったのであろう。
今まさに競技人生の中で戦っている人はもちろん、ビジネスパーソンにも一読の価値がある。
(浦中 宏典)
出版元:ダイヤモンド社
(掲載日:2014-03-12)
タグ:陸上競技 人生
カテゴリ 人生
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諦める力
為末 大
なぜ反発という反応か
ネガティブなイメージの「諦める」と、ポジティブなイメージの「力」が合わさったタイトル。数ある「力」関係の本の中で、これほど身も蓋もないタイトルも珍しいと思う。だから、しばしばウェブなどで本書について「炎上」したりするのだろうと思う。
その炎上騒ぎを眺めていると、この「諦める」に対してしばしば引き合いに出されていたのが、人気バスケ漫画『スラムダンク』の「諦めたらそこで試合終了ですよ」という安西監督の名セリフ。だがこの漫画でも、実は諦めている場面もある。主人公たちが諦めないのは「試合に勝つ」ことであって、「手段」は諦めている。とくに、クライマックスの試合。主人公チームのエースが、相手チームのエースに対して1 on 1で挑むが、どうしてもかなわない。そこで味方を生かすパスを出すよう戦法を切り替えることで劣勢を打開していく。漫画ではそれを「プレーヤーとしての成長」という描き方をしていた。
著者が言っているのはそういうことなのだと思う。ただ、著者である為末氏は、世界陸上銅メダリストという、我々から見たら「成功者」であるので、その成功者から「見込みのなさそうなことは諦めた方がいい」と言われると反発も大きいのだと思う。だが、為末氏としては、世界で勝つために100mから400mHに転向したのに、それでも世界一にはなれなかったのだから成功できなかった、という思いが強い。そういう経験から導き出されたのが「諦める」ということなのだと思う。「スポーツはまず才能を持って生まれないとステージにすら乗れない。僕よりも努力した選手も一生懸命だった選手もいただろう。でも、そういう選手が才能を持ち合わせているとはかぎらない」、これなど、多くの人から反発を買うこと必至である。しかしこれは、誰もが薄々、あるいははっきりと感じていることなのではないか。「それを言ったらおしまい」とばかりに、「やればできる」のだと安易に撤退の決断を先延ばしにしているだけなのではないか。「そのときの率直な感想は、『自分の延長線上にルイスがいる気がまったくしない』というものだった。僕がいくらがんばっても、ルイスにはなれない。僕の努力の延長線上とルイスの存在する世界は、まったく異なるところにあると感じた」というのは、為末氏がカール・ルイスの走りを生で見たときの述懐である。
さすがだと思う。身体的才能に加え、こういうドライなセンスが、氏を世界的トップアスリートに押し上げたのだと思う。
「諦める力」とは
「やればできる」に対する「それじゃあ、できていない人はみんな、やっていないということなんですね?」という著者の問い。私なら何と答えるだろう。
仮に「できる」を「目的が達成されること」、「やる」を「目的を達成しようとする意志を持って行動すること」と定義する。この場合、「やる」は「できる」の必要条件、「できる」は「やる」の十分条件、ただし「やる」は「できる」の必要十分条件ではない。
問題は何をもって「できる」とするのか、だ。それをもっと突き詰めて考え、そのために何を「やる(あるいはやらない)」べきかを戦略的に捉えようよ、というのが本書の趣旨だと思う。
自分が思い描いている自分と、本当の自分とのギャップ。それを見極め、できそうなこととそうでないことを冷徹に切り分けていく。「諦める」とは「明らめる」である。「力」とは「能力」であり「エネルギー」でもある。自分が本当にやりたいことは何なのかを明らかにし、どんな手段をとれば達成可能なのか見極めるには、相当に高い分析能力と膨大なエネルギーを必要とする。
その一方で、目的を達成しようと創意工夫する過程こそが面白い、という魔力も存在するので、理屈で簡単に切り分けられないところが、なかなかやっかいだ。その魔力が手段を目的にすり替えてしまう。私などはその典型だと思う。
やればできる、への答え
さて、件の問いに対する私なりの答えはこうだ。「やればできるとは限らないが、やらなきゃできない」
だいたい、目的なんて変わるものだし、そんなにはっきり手段と目的を区別できるものでもない。そもそも、成功しなきゃいけないなんて決まりもない。だから、行為に意味を求めるより行為そのものを楽しみたい。
それもまた成功の1つだと思うのだ。
(尾原 陽介)
出版元:プレジデント社
(掲載日:2014-08-10)
タグ:陸上競技 努力 才能
カテゴリ 人生
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限界の正体
為末 大
人間生きていれば、誰しも壁にぶつかることはある。かくいう私もしかり。そんな時にはつい他人と自分を比較したりして、己の未熟さを痛感して強烈な敗北感にどっぷりと浸かる。「ここまでか。これが自分の限界か」と、フウーッと溜息を漏らすこともあったりして。
限界の正体とは何だろうか。私はそんなこと考えるような哲学的な男ではないが、著者は現役時代より長年スポーツに関わってきた中で、ある一つの仮説にたどり着いたと言う。
「限界とは、人間のつくり出した思い込みである」
「人は、自分でつくり出した思い込みの檻に、自ら入ってしまっている」
と、いうことらしい。
限界といえばイメージ的に壁とかハードルにたとえられることが多いが、著者は限界が壁やハードルのように眼前のみに立ちはだかるものではなく、あらゆる側面から立体的に立ちはだかるものとして「檻」と表現している。それから、私達が限界だと感じていることは、自らが作った‘思い込み’に縛られているだけかもしれないと言っている。例を挙げれば、日本人はメジャーリーグでは通用しないというかつての野球界の常識も、野茂英雄選手の活躍によって今じゃ完全に過去のものとなっている。結局、自分で限界を決めてしまっているのではないだろうか。
では限界の檻から抜け出すにはどうしたらいいのか。それについて、この本に書かれている。本書はいわゆる自己啓発本かも知れない。他の同類の本に見られるようなお馴染みのフレーズも見られるが、「なるほどね」と思わせる箇所もある。著者自身の性格が文章に反映されていて興味深い。選手のみならず、ごく普通の社会人にとっても、目標を達成するヒントとして参考になるだろう。
(水浜 雅浩)
出版元:SBクリエイティブ
(掲載日:2017-03-27)
タグ:限界
カテゴリ 人生
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ウイニング・アローン 自己理解のパフォーマンス論
為末 大
世界陸上で銀メダリストとなった本書籍の著者である為末大氏。なぜ銀メダルを取れたのか、なぜ金メダルが取れなかったのか、自身で競技人生や生い立ちを振り返り、考察し、具体的に記している。
本書は競技能力を高めるためのアドバイス書というだけではない。もちろん、何かしらの競技の選手が本書を読んだときに学ぶことができると思うのだが、競技者ではない私が読んだときには、スポーツでなくとも為末氏の考え方を取り入れることで、さらに人間として成長ができるのではとワクワクしながら読むことができた。
本書では為末氏の失敗と成功の経験談、またそのときの思いを言葉にする力と、そう感じたのはなぜかという思考の深さを読み取ることができる。為末氏の意見に共感しながら読み進めていると、自分はある程度で納得し、それ以上考えていなかったことを、為末氏は言語化し、こういう理由で、そのときの解決策はこうだという答えも出している。書籍から引用させていただくと「嫉妬とその対処」(p.124)では「嫉妬とは何か。私は自分自身が欲しいものを持っている相手に感じるネガティブな感情だと整理している。ずるいという感情も含むかもしれない。ほしいものに対して人は嫉妬するのだから、嫉妬している相手をよく観察すると自分がほしがっているものや足りないものがわかる。」この後には対処の仕方が書かれているが、是非本書を手に取り読んでいただきたい。
このように為末氏の考えを覗き見ることができ、自分自身の言動に当てはめ、悩みごとの解消に一役買っている。書籍の構成としては「人脈について」「言葉について」「筋力トレーニングについて」といった46個ものテーマがあり、順番に読み進めず、気になるテーマから読むこともできる。困ったときの辞書のような意味合いで本書を開いてもよい。
鍼灸師、トレーナーとして読んだ私は、コーチなどつけず世界で闘っていた為末氏が「経験のあるトレーナーの助言などを踏まえながらバランスよく鍛えること」をお勧めしており、嬉しく思った。そして、アスリートが全員、為末氏のような考え方を持っているとは限らないが、トレーナーとして活動する上で世界のトップアスリートの思考に触れるよい書籍だと感じた。トレーナーの方、トップを目指す競技者、思考力をレベルアップしたい方にお勧めの書籍である。
(橋本 紘希)
出版元:プレジデント社
(掲載日:2021-05-10)
タグ:陸上競技 トレーニング
カテゴリ 人生
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限界の正体 自分の見えない檻から抜け出す法
為末 大
限界の檻を抜け出すには全力を尽くすこと、と著者は説く。だが、がむしゃらに頑張れということではない。自分でつくってしまっている心のブレーキを外すと、結果的に全力が出せるようになる。よって、「限界を超える」ではなく「限界の檻から抜け出す」という言い方をしている。失敗したら恥ずかしいという気持ちを捨て、自分に何ができて何ができないかを知り、自分の認識を書き換えるべく変化を取り入れる。著者はそういった手法で、「陸上短距離で日本人は通用しない」という思い込みを抜け出し、世界選手権で表彰台に上がってみせた。では自分が全力を出したらどこまでできるのか、を試してみたくなる。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:SBクリエイティブ
(掲載日:2016-10-10)
タグ:限界
カテゴリ 人生
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