「ゼロ成長」幸福論
堀切 和雄
「ゼロ成長」幸福論堀切 和雄帯に「僕たちは『経済化』されすぎた」とある。
著者は言う。
「もうみんな、疲れてきたのかも知れない。『大競争』とか、『グローバル化への対応』とかいった、結局誰のためなのかわからない題目に」
「そうは言っても稼がねばならないのが現実なのだから、低空飛行でもいいから、仕事はしよう。あるいは、真剣に仕事をしよう」
NPO で働く人の話も出てくるが、要は経済のみに支配された「薄い人生」ではない人生を生きようと言う。
そしてこう締めくくる。
「そうやって各自がそれぞれの場所で工夫すること。『経済化』される以前の、自分自身の人生の物語を思い出し、紡いでいくこと。それがこの、長く続く革命の原動力の、すべてなのだ」と。
バブル期は「お金! お金! お金!」で、今のデフレ期は「お金…、お金…、お金…」。
「お金より楽しく野球をしたい」とアメリカに行った“並”の野手、新庄選手の人気が急上昇している。
直接スポーツやスポーツ医学に関係のない本なのだが、実は結構関係あると思い紹介した。
堀切和雄著 B6判 214頁 2001年4月10日刊 571円+税
(月刊スポーツメディスン編集部)
出版元:角川書店
(掲載日:2001-11-25)
タグ:経済 成長
カテゴリ 人生
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「ゼロ成長」幸福論
堀切 和雅
この本は筆者が家を35年ローンで購入したところからスタートする。少し前によく言われていた「勝ち組」「負け組」。筆者の考える負け組とは年収がいくらであろうと、「金の問題で、動ける自由を失った人」だそうだ。何十年ものローンを組んでしまえば仕事も辞めるに辞められない。家のローンを払うために生きることは果たして幸せだろうか。
お金があれば確かに生活は潤うかもしれない。テレビ、ゲーム機、DVDプレイヤー、エアコン、今では我々の生活に欠かせないこれらのモノはなくても私たちは生活できていたのである。しかし私たちはお金を稼いでも新しいモノに変えてしまうのだ。周りの人たちが持っているものを持っていないことに対して、私たちは劣等感を感じてしまう。
お金があって自分の納得のいく仕事ができている人もいるだろう。だがそれはほんの一握りなのである。人よりよい家に住むこと、人よりよい車を買うこと、人よりたくさんお金を稼ぐことだけが成功ではない。もちろんお金があるに越したことはないだろう。だが、低賃金でも自分が納得し、関わった人たちを幸せにできることも1つの成功の形である。本書はそういった脱競争主義をテーマにした作品である。
本書ではさまざまな環境に身を置いている人物の話が描かれており、改めて仕事の意味、価値観や自分にとっての成功は何かを考えさせられる。私たちは何のために働いて賃金を得ているのだろうか。人によってその答えは違うだろう。サラリーマンだけが生きる道ではないことを教えてくれるだろう。こんな不景気な時代だからこそ、自分のあり方を改めて考えてみてはいかがだろうか。
(三嶽 大輔)
出版元:角川書店
(掲載日:2011-10-31)
タグ:経済 成長
カテゴリ 人生
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養生の実技
五木 寛之
作家として言わずと知れた五木寛之氏が50年間行ってきた身体養生の方法を綴った本である。
病気はなおらない、そして自らの感覚が大事であると考える五木氏。自分が身体によいと思うことを行い、よくないと思えば一般的な治療法であっても行わない。身体にメスを入れるなんてとんでもない話なのである。
身体の症状は何らかのサインなのだ。身体に症状がでるのには生理的、物理的な原因と同時に心理的な原因が影響していると考えられている。身体はサインを出して変調を知らせてくれているのである。何らかのサインを感じたら、それを叩きのめす(治療)のではなく、身体と向き合い生活習慣やストレスなどを考え直したり、うまく対応する(養生)ことが必要なのではないかということである。
現代の生活でストレスを避けることは難しい。自らの身体とそして身体がさらされている環境とうまくつきあいながら生き方を見つけて実践していくことが大切なのだという印象が強く残った一冊であった。
(大槻 清馨)
出版元:角川書店
(掲載日:2012-01-18)
タグ:身体養生
カテゴリ 人生
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武士道とともに生きる
奥田 碩 山下 泰裕
武士道の精神とは何か。負けた者の気持ちを思いやる、強がらない、弱きものを助ける、公平にことを行う、礼節を重んじる…本書では、今こそその武士道の精神から学ぶべきことがあると、グローバリゼーション、死生観、教育問題まで、多岐にわたり問題提起を行っている。
先ほど、元プロ野球選手、桑田真澄さんの講演を聞く機会があった。桑田さんは、道具を大切にすること、礼儀を重んじることは武士道精神から由来した、日本野球界にとって素晴らしい取り組みだと話される一方で、非効率な練習(オーバーワーク)、目上の人への絶対服従、理不尽な体罰などは、野球界にいまだ残る悪しき慣習として挙げていた。
過去の良き文化は大事にし、悪しき文化は是正していくべきだ。しかし、このプロセスからは正解を求めてはいけないような気がする。その時代その時代にマッチするものが必ずあるはずで、それは時代の流れとともにすぐに変遷していく。今必要なことは何なのか。この時代に合う考えは何なのか。それを「見極める」力を持つことこそが、今の日本人には求められているのではないかと思う。
(水田 陽)
出版元:角川書店
(掲載日:2012-02-15)
タグ:柔道 武士道
カテゴリ 人生
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上昇思考 幸せを感じるために大切なこと
長友 佑都
前著『日本男児』から1年、著者は活躍の場をますます広げている。その土台となるのは、変わらず「感謝」や「ポジティブシンキング」だ。
所属チーム主将のサネッティ、家族、はたまたチェゼーナ在籍時に交流したイタリア人男児の名などが出てくるが、彼らとの出会いをよいものと捉える考え方には、見習うべき点が多い。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:角川書店
(掲載日:2012-10-10)
タグ:サッカー エッセー
カテゴリ 人生
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ミトコンドリアと生きる
瀬名 秀明 太田 成男
昔、生物で習った「ミトコンドリア」について知っている人は多い。本書にも記されているが、若い人に対して行ったアンケートでもなんと80%は「知っている」と回答。
ところで、ミトコンドリアの色は? となると、多くの人が「緑」と答える。理由は、ミトコンドリアに「ミ・ド・リ」の文字があるからだそうで、また話題になった映画『パラサイト・イヴ』でもミトコンドリアは緑のイメージで統一されていたそうだ。
実際に生きている細胞のミトコンドリアは赤茶色で、これは鉄分を含んでいるから。
その映画『パラサイト・イヴ』のもとになったホラー小説を書いたのが瀬名氏で、一方の太田氏は、日本医科大学教授で『ミトコンドリア病』などの著書もあるミトコンドリア研究者である。ミトコンドリアはエネルギーの生産工場として知られているが、実はそれだけではない。また、DNAというと細胞核内のものを考えるが、ミトコンドリア内にもあり、ミトコンドリアDNAと呼ばれる。
これらが生体に対して大変な仕事をしている事実がどんどん発見されている。長距離ランナーのミトコンドリアDNAの塩基配列を調べると、ランナーに比較的多くみられるミトコンドリアDNA配列は、なんと鳥類のそれと同じだった(鳥類は活性酸素がつくられにくく酸素消費量が多いわりに寿命が長い)というような話もあり、生命科学の面白さを満喫することができる。
B6判 221頁 2000年12月1日刊
(月刊スポーツメディスン編集部)
出版元:角川書店
(掲載日:2001-03-15)
タグ:ミトコンドリア
カテゴリ 生命科学
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呼吸入門
齋藤 孝
息を1つの身体文化と捉え、様々な活動を呼吸の面から考察しているのが本書である。20年にわたり呼吸の研究をしてきた齋藤氏の集大成ともいえる一冊。
齋藤氏が奨励するのは、自ら考案した「齋藤メソッド」という呼吸法である。3秒吸って、2秒止めて、15秒で吐くというもので、誰もが安全にかつ効果的に行える方法と説明する。時に「気」という言葉を用いて神秘的に捉えられ、カルト的な宗教団体に悪用されることもあるが、本書では「気というのは、あくまで呼吸の結果として生じるもの」と定義、意図的に語ることを避けている。呼吸を知ることは、気分のコントロールや集中力の持続、リラックスする方法を得る一方で、危険が伴う誤った認識を回避することにもなる。
呼吸を知り、呼吸を活かす。本書を通して、無意識に行われている呼吸を意識的に考えてみるのはいかがだろうか。
(長谷川 智憲)
出版元:角川書店
(掲載日:2004-07-15)
タグ:呼吸
カテゴリ 身体
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日本人大リーガーに学ぶメンタル強化術
高畑 好秀
「選手の指導」に効く薬
今この書評を目にしている方々は、なんらかの形でスポーツの指導に携わっていらっしゃる方々だと思うので、選手の指導に関しては、一方ならず苦労があることは重々承知のことと思う。私事ながら苦節20年この世界に身を置いて、何度“選手指導の特効薬”はないものか思い悩んだことか……。
なんだか新年早々しみじみした話になってしまったが、特効薬はないにしても、スポーツ指導で成功するための黄金律は存在するのではないかということは薄々感じるのである。そして、その存在を知るには“我々は人間を指導している”という、ごく当たり前の事実に気づくことが重要なのではないだろうか。
人間を社会的動物とみた場合、「マズローの欲求段階説」によれば、人間には5段階の欲求があると言う。この5段階とは下位から生理的欲求、安全・保障の欲求、社会的欲求、自我の欲求そして最高位の自己実現の欲求のことである。
こうしてみると、スポーツ指導の場面においても一選手の持つ欲求はこの段階に沿っているようにみえる。例えば、そのスポーツを始めるにあたっては、今まで自らが満たされないと感じていた部分を満たしてくれそうだという生理的欲求が動機として強く働いたと考えられるし、次にそのスポーツを継続するには未来への安定つまり生活の安全や保障欲求が満たされることが重要である。
そして、次第に欲求は高位へと高まり、そのスポーツに携わっていることへの社会的認知が得られ、人々から尊敬されることで自我の欲求を満たし、理想的な自己の確立を成し得ることで、果たしてそのスポーツに携わった喜びを得ることになるのである。
選手には、選手という以前に、一人間としてこうした欲求があることを先ず指導者が理解することこそが指導の“特効薬”ではないだろうか。
メンタル強化術
さて、今回ご紹介する本書では、選手指導の特効薬的方法論として“人間の心理”を理解することをテーマとしている。
内容は、場面設定の多くが会社の上司と部下の関係における心理、つまり部下に如何に余計なストレスを感じさせずに仕事に集中させるかとか、部下のやる気を育てるには上司はどのような発言や行動をとるべきかというような形で書き進められているが、これはこのまま指導者または監督と選手の関係においてもありえることであるので、本書の内容は十分スポーツ指導現場において応用可能である。
これについては著者も意識したのであろう、各章の最後には日本人大リーガーを含めた大リーガーたちのメンタル強化術について触れられており、大リーグの指導者やトップ選手が本書に述べられているような心理作用をどのように指導や自らのメンタルコントロールに用いているかについて興味深い話を載せている。
著者が現在まで、イチローら多くの一流プロ野球選手のメンタルトレーニングを指導した経験がここに生かされているようだ。
スポーツにおけるメンタルコントロールについては、日本はまだ欧米からみるとようやく端緒についたばかりに思える。
しかし、今後日本の一流選手がTV画面を通して、メンタルな面を強調したコメントをより多くすれば、必ずやそれを見ている次世代の子どもたちは、新鮮なスポーツ感覚を磨くことであろうし、これは結果的に日本におけるスポーツという文化の深遠を深め、発展に繋がることになるであろう。
今年はこれを期待しながら、スポーツ関係者の皆さん、一年頑張ろうではないか。
(久米 秀作)
出版元:角川書店
(掲載日:2004-02-10)
タグ:メンタル
カテゴリ その他
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養生の実技
五木 寛之
「角川oneテーマ21」の1冊。副題は「つよいカラダではなく」。五木寛之と言えば『青春の門』や『風に吹かれて』また最近では『大河の一滴』や『他力』などでよく知られているが、二度休筆宣言し、龍谷大学で仏教を学び、現在は『百寺巡礼』という大きな仕事に取り組んでいる。
その五木氏が、新書でみずからの「養生観」を語ったのがこの本。文章の平明さの一方で、思索と経験の深さをみることができる。
弱いことや不安などを「悪いこと」として捉えない著者の言うことは世間とは逆のことも多いが、よく考えられた裏づけがある。
「歩くときは、あまり颯爽と歩かない。反動をつけずに重心の移動で進む」「中心は辺境に支えられる。心臓や脳を気遣うなら、手足の末端を大切に」「入浴は半身浴にする。体をあまり洗わないことが大事」「一日に何回か大きなため息をつく。深く、たっぷりと、『あーあ』と声をだしながら。深いため息をつく回数が多いほどよい」「あまり清潔にこだわっていると、免疫力が落ちる」「病院は病気の巣である。できるだけ近づかないほうがよい」
これらは巻末に収められた「わたし自身の体験と偏見による養生の実技100」からの引用。仕事に追われ、未処理のものが多い人には「やったほうがよい、と思いつつどうしてもできないときは、いまは縁がないのだ、と考える。そのときがくれば、やらずにいられなくなるのだから」というものもある。
気持ちが楽になる。からだを慈しもうと思うようになる。そういう本だ。最後に著者はこう言っている。「あす死ぬとわかっていてもするのが養生である」。
(清家 輝文)
出版元:角川書店
(掲載日:2012-10-09)
タグ:健康 養生
カテゴリ 身体
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決断力
羽生 善治
将棋界にも情報化の波が押し寄せたことで棋譜や戦術の研究が進み、情報力で差をつけることは困難になった現代は、数ある情報の中から最適な情報を取捨選択し、何が必要かを決断する力が求められる時代である。本書では棋士・羽生善治氏が将棋で培った「決断力」について語っている。
中でもどのように深い集中に達するのか、その比喩が非常に興味深かった。著者は集中する過程を潜水にたとえ、水圧に徐々に身体を慣らすように、少しずつ深い集中へと自らを導いていくのだという。あまりに深く潜り過ぎると元に戻れないような恐怖感に襲われ、潜ることを焦ってしまうと集中の浅瀬でジタバタしてしまうのだそうだ。
本書では幼少期から名人戦に至るまでの試行錯誤も語られているが、将棋への尽きない愛が著者を盤面に向かわせ、根拠を重ね続けたことが直感的な決断を支えたのだろう。天才棋士は将棋への愛に満ちた探求者であった。
(酒井 崇宏)
出版元:角川書店
(掲載日:2012-10-09)
タグ:将棋 決断
カテゴリ 人生
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コレステロールに薬はいらない!
浜 六郎
書名はいささか極論だが、本書で問題としているのは、「コレステロール基準値」とその基準値をもとに処方される「コレステロール低下剤の副作用の害」である。
そしてコレステロール値が低すぎて危険な領域にあると思われる人が、330万人いると言う。
著者が問題にする現在の基準値、つまり高脂血症のコレステロール値「220mg/dl」は低すぎる。さまざまな疫学的データから「220~240」がもっとも長生きしている事実を出し、そもそも「220」という数値に科学的根拠がないことを指摘する。アメリカの基準は240であるし、諸外国の例も220という低値ではない。
また、細胞の働きに欠かせないコレステロールが少なくなると、がん、感染症、うつなどにつながる。コレステロール低下剤使用により、寿命を短くしている患者さんが多い。著者の主張はだいたいこういうことになる。
一方的主張ではなく、細かいデータを掲載し、説得力ある論理になっている。この基準値を決めたのは日本動脈硬化学会であるが、日本人間ドック学会は2009年9月、この基準は実質的でないとし、「高脂血症のガイドラインは、疾患別の学会が独自に作るのではなく、多くの学会が力を合わせ、国レベルで作成していくべきではないか」とし、「女性は260までは治療は不要」としているとのこと。
この本を読んでどう判断すべきか。専門家同士の議論に委ねるべきところが多いにせよ、患者あるいは患者予備軍として、読んでおくべき本であろう。(S)
2006年9月10日刊
(清家 輝文)
出版元:角川書店
(掲載日:2012-10-11)
タグ:コレステロール
カテゴリ 医学
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交渉力
団 野村
著者は、あまり知られていないがヤクルトスワローズに在籍していたことがある。その後渡米し、マック鈴木選手と最初の代理人契約を結んだ。しかしその名を一躍広めたのは、なんと言っても、95年野茂英雄投手を近鉄からドジャーズ入団を支援したこと。その後も伊良部秀輝、吉井理人投手などの日本人メジャーリーガー誕生に貢献した。
著者は、自分では交渉は下手だという。しかし、好きだという。交渉とは何か。著者は「納得」だと考えている。一方の要求がすべて通るというケースはまれ、しかし双方が納得できることは十分にあり得る。これが著者の言う「交渉」の要諦。「妥協」では、「しかたがない」という印象になる。そうではなく、互いがハッピーになるよう、納得できるようもっていく。そこにはクリエイティビティと駆け引きをゲームのように楽しむ感覚が必要だとも言う。
著者が挙げる交渉でのポイントは、ほかに、「最悪の状況を想定し、複数のプランを用意しておくこと」「市場を知ること」そして「ルールを熟知し、相手の弱いところを突く」など。 交渉は、ビジネス全般はもとより、何かをしようとしたとき、必ず生じることである。プロの代理人の世界は参考になる。
2007年1月10日刊
(清家 輝文)
出版元:角川書店
(掲載日:2012-10-11)
タグ:代理人 交渉
カテゴリ その他
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集中力
谷川 浩司
日本人は「考える力」がないと言ったのはサッカー前日本代表監督のオシムである。確かに、大学生にトレーニングを指導していても、言われたことはできるが、それ以上やる選手は少ない。ではその「考える力」を植えつけるにはどうしたらよいのだろうか?
トップ棋士である著者の谷川さんはこう語る。
「物事を推し進めていくうえで、その土台となるのは創造力でも企画力でもない。いくら創造力や企画力を働かせようとしても、道具となる知識や材料となる情報がなければ何も始まらないのだ。知識は、頭の中に貯えられた記憶の体験が土台になるのだ。つまり、創造力やアイデアの源は、頭の中の記憶の組み合わせから生まれるもので、その土台がしっかりしていなければ、良いアイデアが閃めくわけがないのだ」。
つまり、天才と呼ばれる閃きの一手は、それまでの努力や経験があるから生まれるのであって、それはゼロから生まれるものでは決してないと。谷川さんは5歳で将棋を始めて中学2年でプロになるまでに、一万時間は将棋の勉強に費やしたそうである。毎日必ず3時間、それを10年間も続けたのである。
そう言えば、オシムさんも暇さえあったらサッカーの試合を部屋で見て勉強していると聞く。どうやら「考える力」をつける特効薬などない、あるとしたら「継続すること」かもしれない。
(森下 茂)
出版元:角川書店
(掲載日:2012-10-13)
タグ:将棋
カテゴリ 人生
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生涯現役 いつまでも動ける体と心の作り方
杉原 輝雄
杉原輝雄、73歳。現役最年長プロゴルファー。このような肩書きをもつ杉原氏が、心身の健康を保つ秘訣を余すところなく著した一冊。
「人生には、そのときそのときでやらなアカンことがある。思っているだけでは何も始まらん。やりたいと思ったことは明日ではなく今やる。それをやらないでいて後になって後悔するということは、人生において、それほどもったいないことはない」という言葉は杉原氏の生き方をよく表している。
(村田 祐樹)
出版元:角川書店
(掲載日:2012-10-16)
タグ:ゴルフ
カテゴリ 人生
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命をかけた最終ピリオド ガンとアイスバックスと高橋健次
国府 秀紀 石黒 謙吾
職業のことを、とくに天職とか使命とかの意味合いでの職業を英語で「コーリング」と言うようだ。
私はずっと勘違いしていた。「自分がしたいこと」を基準に仕事を探し、「自分の好きなことを職業としている」ことが「天職」なんだと。しかし、そうではないことに最近やっと気がついた。「自分」が先にあって、職業があるのではなく誰かから「呼ばれること」が、その人にとっての使命なんだと。
まさに「他人の求め」に応えるかたち、そう使命を果たそうとするのが、この本の主人公である、高橋健次だ。1999年7月、創部73年の古豪古河電工アイスホッケー部が不況のあおりをうけ廃部の危機を迎える。そこで、選手が救いを求めたのが地元日光市でレンタカー業やゴルフ練習場、居酒屋などを営む実業家の高橋健次だ。自他ともに認める“アイスホッケー狂”だ。
「どうにかならないものか」という、選手からの相談を受けた日から、部存続のための資金集めが始まる。選手が相談に来てから、15日目、ついに日本初となるアイスホッケー界の市民クラブが誕生した。しかし、市民クラブとしてなんとか2年目を迎えようとした時、高橋が余命1年のガンであることが宣告される。続けざまに訪れる不運にもかかわらず、高橋は「夢は力なり」と言い、「人を喜ばすことが俺の夢なのかもしれない」と語る。
著書の構成を担当している石黒謙吾は(あとがきにかえて)の中で、「相手の気持ちになったらぁ」という栃木訛りの高橋の言葉を取材中に何度聞いたかわからないと言う。
「相手の気持ちを考えなさい」小学生の頃、先生や親によく言われた。「自分」の目線ではなく、「相手」の目線で物事を考えられること。しかし、この当たり前のことができる「大人」はそう多くはない。いや、それができる人を「大人」というのだ。自分ひとりでは、何もできないことを理解し、だから家族や仲間を人一倍大切にした高橋健次という男。そんな、「大人」の魅力ある物語、「自分がしたいこと」を基準に就活している若者に読んでもらいたい。
(森下 茂)
出版元:角川書店
(掲載日:2013-01-17)
タグ:アイスホッケー チーム
カテゴリ 人生
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覚悟のすすめ
金本 知憲
今年、阪神タイガースを引退した金本知憲選手が、阪神タイガース現役時代に連続フルイニング出場記録を更新中の2008年に出版された書籍である。
人生の転機にはいつも覚悟があったという金本選手の、覚悟というものの大切さ、覚悟があれば何でもできるということを教えてくれる内容である。本書の中で金本選手は自分自身を弱い、ぐうたら、いい加減、ビビリ…など卑下した表現をすることが多々あるが、常に考えて覚悟をもって行動することですべて克服している。また弱さを克服することで責任感やリーダーシップが生まれ、大きな成果につなげている。努力の人と思っていたが、努力も考え方だと感じさせられた。
最初から最後まで一貫して覚悟についての内容だが、コーチやトレーナーなどの話も出てきて、いろんな人とのつながりも面白く、また球団の裏事情などもストレートに伝えているところがアニキらしい感じがする。野球に生きた金本選手の覚悟についての書籍だが、野球以外での仕事や人生においてもとても共感できる内容で、改めて覚悟について考えさせられる一冊である。
(安本 啓剛)
出版元:角川書店
(掲載日:2013-05-02)
タグ:プロ野球
カテゴリ 人生
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信頼する力 ジャパン躍進の真実と課題
遠藤 保仁
南アフリカW杯からザックJAPANへ移り行くまでの、サッカー日本代表チーム、遠藤保仁選手の状況が記されている。どんな監督が信頼できるのか、個人がどう行動すればチームがまとまるのか、どうすれば日本のサッカーが進化するのかといったことがテーマとなっている。
多くのサッカー評論家が語る話だが、現在も日本代表の中心として試合で活躍する遠藤選手が書いたとなるとリアリティが増す。そう感じるのがサッカーファンとして本書を読んだ私の感想だ。今後の日本サッカー界を選手として、また引退後でも、どう引っ張っていくのか期待が膨らむ。
一方、トレーナーという立場から読んだ私は、本書から選手の気持ちを学ばせていただくことができた。どれについても選手の本音が書かれているのが見どころだ。試合に挑むメンタルマネジメント。真実と報道のギャップ、それに躍らされるサポーター。高地トレーニング。ウォーミングアップ。向上心を持つ選手の考え方。スポーツに携わる者として気になるキーワードが満載で、それを選手の主観的な感想で聞くことができるのは貴重である。トレーナーとしてチームの一員となったときをイメージしながら読むことができた。もちろん、他の競技に通ずるものがあるということは言うまでもない。
サッカーファンのみならず、競技者含め、スポーツに関わる者にはぜひ手にとっていただきたい一冊である。
(橋本 紘希)
出版元:角川書店
(掲載日:2013-05-14)
タグ:サッカー
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復活 all for victory 全日本男子バレ-ボ-ルチ-ムの挑戦
市川 忍
全日本男子バレーボールチームを、綿密かつ膨大なインタビューによって、エース、セッター、リベロ、監督など、個々が浮き彫りにされる全16章。選手自身の言葉も綴られ、苦悩や試行錯誤の様子がよくわかる。チームの一人一人にスポットが当たることによって、個性が際立ってくる。試合会場へ足を運び、あるいはテレビ観戦で目にするプレーは、こうした積み重ねがあってこそのもの。ひたむきな努力、個と個のぶつかり合いなど、すべてのエピソードが北京オリンピックへの挑戦の道程となるのだろう。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:角川書店
(掲載日:2008-05-10)
タグ:バレーボール
カテゴリ その他
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勝負勘
岡部 幸雄
私は筆者の岡部幸雄元騎手とは競馬を通した接点(馬券)を持ってきました。私の知っている筆者はレースで1着になることをいとも簡単にやり遂げている姿を数々目にしてきましたが、そこへの出発点や大きな出会い、転機そして確固たる地位を掴むまでの過程や考え方を本書から知ることでき、自然と引き込まれていきました。
本書は、筆者が騎手人生38年間の勝負勘を磨き続ける場としての「レース」を通した取り組みについて書き綴られています。レースは短いときには1分程度、長くても3分を超えるぐらいという時間の中で、馬の能力を最大限に引き出すことを要求されます。すなわち直感が多くを占める「勝負勘」を繰り出して最終的な目標である「レースで1着になる」ことを常に考えているわけであります。それは緻密な作業、すなわち感覚の修得やレースへの準備作業などを介して、「馬」の力を引き出すことであります。
私は、筆者が述べた勝つための最善策の考えの中で「何もしないこと」というフレーズが印象に残りました。「何もしないこと」はコミュニケーション能力として一見したところ消極的な働きかけもしれませんが、思い当たることがあります。それは意のままにしようとあれこれと働きかけて、うまくいかないことは頻繁にあると感じます。意のままにしようとすることが間違っているわけではないですが、相手にとって意外と気持ちよく感じられない、もしくは自らの意思でないことが多いので響かない、頭に残らないというようなことが私自身よく経験したことでもあります。これはよく起こりうる「自分の腕で結果を変えたい」というエゴイズムなところかもしれません。仮に繰り返すことで獲得できるものだとするならば、あえて働きかけず相手の気持ちに耳を傾け、見守ることで繰り返させる行為につなげることも方法論としていいチョイスだと私は思います。
私は筆者の超一流の騎手としての毎日のトライ&エラーの修正作業の繰り返しに大きな気付きを得ました。なぜなら自分のような業界駆け出しの者と類似した作業を繰り返しているからであります。長期的、詳細まで深く突き詰めていることが、より強く伝わってきました。つまり自分の将来へのヒントなのではないかと感じています。
ひとつひとつの積み重ねは普通に感じられることも多いですが、「時間軸」や「こだわり」を組み合わせると、引き出されるものはとても大きなものに変化することを痛感しました。この時間軸やこだわりの保持の継続性こそが「勝負勘」を生み出し、この自然体の努力こそが一流に至る必須条件ではないかとふと感じさせてくれた気がします。
(鳥居 義史)
出版元:角川書店
(掲載日:2014-01-17)
タグ:競馬 騎手 勝負
カテゴリ 人生
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幸せな挑戦 今日の一歩、明日の「世界」
中村 憲剛
「挑戦を続けていくこと。挑戦を続けられること。それだけでも幸せなんだと、僕は思う」
この本の書き出しの言葉、彼の人となりが現れている。あっという間に彼の話に引き込まれた。
高校までクラスで一番小さな子で、足も遅く、相手チームの選手とぶつかればはじき飛ばされていたようなか弱い選手だったという。身体的なハンディを持っていながら、彼は常に選ばれた。そして、25歳のときに日本代表に選ばれるまでになった。
なぜ、彼は選ばれる存在になることができたのか。小学校から今までの彼の生い立ちとその時々の教訓を述べたこの本には、革新的な方法が書いているわけではない。本気で好きなことは何か、それを極めようとする覚悟があるかどうかを、まず自分で考えることが第一歩だという。そしてそれを見つけたら、どこまで本気になれるか。人が彼を選んだ理由はここにあると思う。サッカーが好きで好きで、諦めずに続けた。その思いが行動につながり、選ばれる存在になったのだ。
さまざまな壁を乗り越えてきた彼がこの本を通して伝えたいことは、「サッカーが好きだからボールを蹴っている」、そんな純粋な気持ちを大切にして欲しいということ。本気で好きなことを愚直なまでにやりつづけた先に明るい日が昇る。
サッカー好き、中村憲剛ファンはもちろん、今後を考える人にぜひ読んでもらいたい一冊だ。
(服部 紗都子)
出版元:角川書店
(掲載日:2014-09-05)
タグ:サッカー
カテゴリ 人生
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観察眼
遠藤 保仁 今野 泰幸
スポーツに携わる人にとっては身につけたいであろう「観察眼」。言葉そのものは本書終盤まで登場しないが、示唆に富み引き込まれる内容だ。
第一部は、センターバックとして評価の高い今野泰幸のサッカー半生。自分の武器に気付くことも、サッカーを知ることも「人より遅かった」と言うが、自身や所属チーム、日本代表にも及ぶ分析は鋭い。第二部では今野と遠藤保仁との対談を挟み、2011年のアジアカップでの一戦を振り返る中で、ようやく遠藤が「観察眼」について触れる。それをふまえて、第三部で遠藤が何を考えてプレーし、プレーを通して何を感じているかが書かれている。
遠藤は「観察眼」を、「試合を読む力」と言い換えた。そこから第一部を見返すと、今野が「試合の流れを読むために重要な要素は嗅覚」と言っている部分がある。この感覚は、試合経験を積むことで培われていくという。現在の日本代表を支える2人のサッカー観が凝縮された一冊となっている。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:角川書店
(掲載日:2012-04-10)
タグ:サッカー
カテゴリ 人生
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一投に賭ける 溝口和洋、最後の無頼派アスリート
上原 善広
「溝口和洋? そういえば、そういう選手いたな。」というのがこの本を手にしたときの率直な感想だった。現役時代の写真を見て思い出した。あの時代にして、やけにマッチョなガタイをしていたのが印象に残っていたからだ。
溝口氏はカール・ルイスが活躍していた時代、日本を代表するやり投げ選手だった。1984年ロスアンゼルスと88年ソウル五輪に連続出場。翌89年の国際陸上競技連盟主催のワールドグランプリに日本人選手として初出場し、やり投げで総合2位になった実績を持つ。彼の持つ87m60cmという日本記録は未だ破られていない。
溝口氏は陸上界で無頼と呼ばれていたらしい。アスリートでありながらヘビースモーカーである。連日、夜の街に繰り出しては酒と女を嗜む。そして大のマスコミ嫌い。現在であれば、アスリートの倫理観からして到底受け入れられるはずはなく、相当なバッシングを受けているに違いない。そういう意味では、時代が彼に対してまだ寛容だったのだろう。
数多くの破天荒な伝説を残してはいるが、一つ評価できるところを挙げるならば、ウェイトトレーニングにいち早く着目していたことである。彼の身長は180cmであるが、それでも外国人選手と比べて小柄だったことやパワーの差を痛感していたようだ。ウェイトトレーニングは現在では当たり前に行われているだけに、彼には先見の明があったといえる。ただ、彼の感性に基づく独自のトレーニング理論には、我々トレーニング指導者からして、首をかしげるところが多々あるのも事実である。なにしろ1回のトレーニング時間が12時間、ベンチプレスだけを8時間ぶっ通してやったこともあるそうだ。ここまでくれば、もはや体力的限界を越えて「根性」らしい。煙草に関しても「煙草は体を酸欠状態にするので、体にはトレーニングしているのと同じ負荷がかかる」と言っている。
その後、ケガが原因で34歳で現役を引退。一時期、なぜかパチプロで生計を立てた後、実家に帰って結婚、農業を継いでいる。彼の人生を振り返ると、キャラクターはもちろん、物事に対する考え方や行動に至るまで規格外であるといえよう。溝口和洋という人間に興味を持つ人物伝として面白い本だった。
(水浜 雅浩)
出版元:KADOKAWA/角川書店
(掲載日:2017-09-22)
タグ:人物伝 陸上競技 やり投げ トレーニング
カテゴリ 人生
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命を賭けた最終ピリオド ガンとアイスバックスと高橋健次
国府 秀紀 石黒 謙吾
二度廃部に追い込まれながらも、蘇生し続ける「日光アイスバックス」。それを語るとき、同チームに自らの命を賭けた高橋健次ゼネラルマネジャーの情熱は欠かすことはできない。スポーツをやることってそんなに困難なことなのか? と考えさせられるも、その素晴らしさを再認識させてくれるノンフィクション。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:角川書店
(掲載日:2002-02-10)
タグ:アイスホッケー
カテゴリ スポーツライティング
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