信頼する力 ジャパン躍進の真実と課題
遠藤 保仁
南アフリカW杯からザックJAPANへ移り行くまでの、サッカー日本代表チーム、遠藤保仁選手の状況が記されている。どんな監督が信頼できるのか、個人がどう行動すればチームがまとまるのか、どうすれば日本のサッカーが進化するのかといったことがテーマとなっている。
多くのサッカー評論家が語る話だが、現在も日本代表の中心として試合で活躍する遠藤選手が書いたとなるとリアリティが増す。そう感じるのがサッカーファンとして本書を読んだ私の感想だ。今後の日本サッカー界を選手として、また引退後でも、どう引っ張っていくのか期待が膨らむ。
一方、トレーナーという立場から読んだ私は、本書から選手の気持ちを学ばせていただくことができた。どれについても選手の本音が書かれているのが見どころだ。試合に挑むメンタルマネジメント。真実と報道のギャップ、それに躍らされるサポーター。高地トレーニング。ウォーミングアップ。向上心を持つ選手の考え方。スポーツに携わる者として気になるキーワードが満載で、それを選手の主観的な感想で聞くことができるのは貴重である。トレーナーとしてチームの一員となったときをイメージしながら読むことができた。もちろん、他の競技に通ずるものがあるということは言うまでもない。
サッカーファンのみならず、競技者含め、スポーツに関わる者にはぜひ手にとっていただきたい一冊である。
(橋本 紘希)
出版元:角川書店
(掲載日:2013-05-14)
タグ:サッカー
カテゴリ その他
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サッカー ファンタジスタの科学
浅井 武
昨今のサッカー界で、ファンタジスタと呼ばれる選手が減っていると感じるのは私だけだろうか。
本書では、ファンタジスタと呼ばれる選手に必要な、技術や体力を物理学や生理学の言葉を用いながらも、サッカーの場面と結びつけて解説をしている。私も含め、頭を使うより身体を動かすことが好きな人にとっては、苦手と思われるような科学的な言葉が、自然と理解できる一冊である。
ファンタジスタのことを「創造性豊かなイマジネーションあふれるプレーで、味方や観衆はもちろん、相手選手さえも魅了してしまうプレーヤー」と表現している。この文章を元にさまざまな現役選手を想像したが、結局私の中でファンタジスタを見つけることはできなかった。
ファンタジスタのプレーを科学的に分析はできる。しかし、科学の力を持ってしても、ファンタジスタを生み出すことはできないであろう。ファンタジスタがファンタジスタと呼ばれる所以はそこにあるのではないだろうか。「ヒト」がプレーするサッカーというスポーツの面白さを、改めて伝えてくれる一冊である。
(橋本 紘希)
出版元:光文社
(掲載日:2013-10-23)
タグ:サッカー スポーツ科学 技術
カテゴリ スポーツ医科学
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トレーニングを学ぶ 体育授業における理論と実践
関口 脩 下嶽 進一郎
即実践、即活用できる内容。それが本書を読んだ率直な感想である。
本書の序文にもあるが、スポーツ指導者養成校の授業カリキュラムは理論的教育が多く、トレーニング実技を伴う実践的教育の量は少ないと感じる。もちろん筆者達の働きかけにより、以前よりは実践的教育が増えたのだろうが、私が関わる学生や新卒者はトレーニング経験が乏しい。恥ずかしい話だが、学生時代の私も同様であった。
筆者はこのことが、多くの人が適切なトレーニングを実施できない要因の1つと述べているが、まさにその通りである。適切な指導ができる者がいなければトレーニングは効果のないモノ、危険なモノになってしまうからだ。
本書はトレーニング方法や、指導法が数多く載っているのではなく、筆者の実践している内容を、資料を豊富に掲載している。基礎的な原理原則といった理論から、トレーニングに慣れるための実技、パワークリーンの習得に向けて段階的な方法が記されている。
まさに授業カリキュラムのように纏められた一冊で、学生にはもちろんであるが、トレーナーが一般の方へ指導する際も参考となる内容だ。私も、この本を軸に自身の指導方法を改めてみようと考えさせられた。
(橋本 紘希)
出版元:ブックハウス・エイチディ
(掲載日:2014-04-12)
タグ:クイックリフト 授業資料
カテゴリ トレーニング
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運動しても自己流が一番危ない 正しい「抗ロコモ」習慣のすすめ
曽我 武史
ロコモティブシンドロームの予防ということで運動指導をしているトレーナーは数多くいる。しかし、それ以上にロコモティブシンドロームや、その予備軍となる方は多いであろう。そうなると運動指導者と巡り会えずに自己流でのトレーニングとなる方は少なくない。自分1人で運動をすることが悪いのではなく、やみくもに身体を動かしているだけで筋肉を機能的に使えておらず、筋力が低下していく「運動をしている“つもり”」が危険だということだ。
本書ではその“つもり”がないように、運動のコツをわかりやすく3つ紹介してくれる。また、ロコモ予備軍のチェック法からトレーニングまで簡潔に書き記されている。運動を推奨する書籍であれば、筋トレのバリエーションを豊富に取り上げそうだが、本書は違う。シンプルなトレーニングを効果的に取り組むことを伝えようとしていることがわかる。同時に日常生活にも目を向け、何に注意するかも理解できる。
一方、トレーナーとして拝読した私にとっては、初心を思い出させて頂いた一冊となった。本書に書かれている内容はトレーナーがクライアントに伝える基礎の部分であった。
トレーナーが一読してクライアントに伝えてもよし。運動をしよう、している人が読んでもよし。本書が読まれ、日本の健康寿命が伸びる1つのきっかけとなってほしい。
(橋本 紘希)
出版元:講談社
(掲載日:2014-10-15)
タグ:トレーニング 生活習慣 運動指導 ロコモティブシンドローム
カテゴリ 運動実践
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プールウォーク超入門
高橋 雄介
「プールで歩き始めた」「始めようと思う」そういう話をよく耳にする。それは私が鍼灸接骨院に勤める傍ら、プールがあるスポーツクラブにもトレーナーとして行っているからだろう。
本書は、そんなときに簡単なアドバイスができるようになる一冊だ。私が会う「プールで歩く」と仰る方々の話を聞くと共通点がある。膝が痛くて医者に行ったら運動を勧められた。陸上で歩くと負担が大きいからプールへ。大半がこれだ。
また、その多くの方が運動初心者と言っても過言ではない。ならばプールでの歩き方、つまりプールウォークを運動として知っているのかというと、これについても理解が深いわけではない。
本書は超入門とあるように、内容は至ってシンプルである。正直に言ってしまうと、トレーナー目線で読み始めた私にはあっさりしていて、拍子抜けするくらいだ。ただ、運動初心者の方にはそれがちょうどいい。読みやすく実践しやすい内容の本書は、プールウォークのコツを知り、運動に慣れていただくためのきっかけになってくれるはずだ。
ちょうど本書を読み進めている間に、膝痛を持つ患者様で、なおかつプールウォークを長年実践されている方を治療する機会があった。その方に、本書に目を通していただくと「いろいろメニューがある中で、この本でいうウォーミングアップと書かれた歩き方をしている。姿勢なども写真付きでわかりやすい。地上で行うストレッチもあるのがよい」そう仰っていた。
そのとき、これが本書を必要としている人の生の感想だということがわかった。実施しているメニューを写真で見直すことができ、新しいメニューを知ることができた。この方にとっては目から鱗の本なのである。
ここでは膝痛の話ばかりしてしまったが、美脚やメタボ解消などプールウォークの効果は多岐に渡る。それらの願いを叶えようとする方の、運動や身体の知識を得るきっかけとなるのが本書になるであろう。
ただ1つ、プールウォークさえやっていればよいという勘違いはしてほしくない。プールウォークの延長で、地上での運動に興味を持っていただけたらというのが、スポーツクラブのプール利用者と関わって感じる、トレーナーとしての私の意見だ。
(橋本 紘希)
出版元:東邦出版
(掲載日:2014-11-27)
タグ:ウォーキング 水中運動
カテゴリ 運動実践
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フィットネスクラブエイムの思考軸
古屋 武範
石川県にある「フィットネスクラブエイム」が、この本の舞台となっている。
創業者である吉田正弘氏を中心に、エイムがベンチャー企業として成長していく軌跡をたどる内容となっている。フィットネスクラブにとどまらず、成功者としての思考軸を読み取ることができる一冊である。こう説明すると本書は吉田氏が書き綴ったように感じてしまうが、そうではない。この本をつくり上げたのは、吉田氏を含む10名以上のプロフェッショナルたちであり、エイムに対する思いや考え、エピソードを纏めたものである。
それらのエピソードを読んでみると、共通した吉田氏の印象を伺うことができると同時に、エイムをつくり上げる上で何に力を注ごうとしているのかを感じ取れる。また、それぞれの分野のプロフェッショナルな方々が吉田氏をリーダーの資質があると語っている。そんな吉田氏の行動や思いに触れることにより、フィットネス業界にとどまらず、経営者や野心があるものにとって、指南書になり得るだろうと思える一冊であった。
(橋本 紘希)
出版元:クラブビジネスジャパン
(掲載日:2015-04-21)
タグ:経営 フィットネスクラブ
カテゴリ 人生
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今いる仲間で「最強のチーム」をつくる 自ら成長する組織に変わる「チームシップ」の高め方
池本 克之
著者がつくった言葉「チームシップ」、それは「チーム内の地位や役割に関係なく、メンバー1人ひとりがお互いを理解しながら、チームとしての成果のために成長すること」だと定義している。タイトルにもある「最強のチーム」には、そのチームシップをメンバーが発揮して常に一丸になっていることが、唯一の条件だと言っている。
では、その重要なチームシップを発揮するにはどうすればよいのか。その方法が本書で説明されている「TDC(Teamship Discovery Camp)」である。TDCとは、著者がつくり上げた話し合いの方法で、皆が自由に発言しつつも、チームの課題を見つけ、解決策まで決めていくメソッドとなっている。経営者やリーダーがチームづくりをする際にミーティングをしようとしているのであれば、打ってつけの内容だ。
役割分担から、ルール設定、コミュニケーション方法までこと細かく説明されているので、本書で紹介されているTDCを実践してみる価値はある。
しかしながら、私はそういったミーティングを企画、提案できる立場ではない。仕事としてチームには所属しているが、非常勤として肩身の狭い身分である。そんな私だが、ありがたいことに、常勤のスタッフから相談を受けることも少なくない。非常勤というのが、日頃の状況を客観視できる者として新鮮なようだ。
そこで機会があるのであれば、私が所属するリーダーにはこの書籍から学んだことを伝えたいと感じた。それと共に、本書の内容は、チームでのミーティング以外の、1対1のコミュニケーション技術としても活かせるのではないかと感じている。
本書の最初には、著者の失敗談が記されている。能力がある人が陥りがちな失敗例だと感じた。その失敗例からつくり上げられたTDC。説明もわかりやすくまとめられている。このメソッドで多くのチームを成功に導いているのでいるのだから、試してみて損はないだろう
(橋本 紘希)
出版元:日本実業出版社
(掲載日:2015-05-27)
タグ:チームビルディング
カテゴリ 指導
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がんを告知されたら読む本 専門医が、がん患者にこれだけは言っておきたい“がん”の話
谷川 啓司
がんを患っていない私が本書を読んでも、本当にがんを告知されて本書を手に取る方とは同じ感情では読めていないだろうと思う。
私は鍼灸師として勤め、がん患者の心身のケアを行っている。だからこそ本書が訴えるがんの心構えも理解できる。それだけでなく、私がまだ小学生のとき、家族ががんを宣告され、その闘病生活を目の当たりにした。そして数年後には死別を経験している。だからこそ、がんを宣告された人の家族の気持ちも分かる。
だがしかし、まだ分からないのはがん患者本人の気持ちだ。何人ものがん患者を見てきており、気持ちも分かってあげたい。もちろん共感の気持ちを持って接しているが、私が理解したはずの患者の気持ちと、患者本人の気持ちには方向性の違いはないにしても、そこには雲泥の差があるように感じる。むしろ私が出会っているがん患者達は、すでにがんに対する心構えができている方がほとんどである。だからコミュニケーションも取りやすいのだ。
この著者のように、がんに詳しい医療従事者が、がん宣告を受けたら、すぐにでもがんとの向き合い方が分かるかも知れない。だが、全く知識のない一般の方ががん宣告を受けたときには冷静に本書も読めず、苦しむ期間が長いのではないだろうか。しかし、本書から言わせたら、その苦しんでいる期間が免疫を低下させ、がんを進行させる一助になってしまうと言うことだ。
私の家族の状況を見て、私もがんになる確率は低くない。将来の不安もある。けれども、がんの告知をされていない私は本書を冷静な状態で読むことができた。本書のタイトルには告知されたら読むとあるが、がん宣告を受ける前に本書を読むのが最善だ。もし興味がない内容でも簡単に書かれた本書は読みやすい。そして、日本人の一番の死因であるがんについて早々に興味を持ってもらいたい。つまり早いうちに多勢の方に本書を読んで頂きたい。事前に読んでおく事でがんがそこまで苦しいものではないと理解できる。そして、がん治療にはその理解が不可欠と知らされる。
同時に、本書を読んだことで伝えることの重要性も理解した。トレーナーとして幅広い世代に指導することがあるので、そういった場面で健康について、ケガについて、病気について
(橋本 紘希)
出版元:プレジデント社
(掲載日:2015-11-09)
タグ:ガン
カテゴリ 医学
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ジェフ・マリーのオーストラリアン徒手療法 腰痛治療編DVD
ジェフ・マリー
オーストラリアのセラピストであるジェフ・マリー氏が行う治療のDVDである。
160分ということもあり、内容はシンプルなものである。治療体系にまだ不安がある1、2年目のセラピスト向けである。また、最近はとくに言われているが、このDVDでも評価あっての治療を主張している。患者をすぐさま横にして慰安的手技のみに走りがちなセラピストにはぜひ、参考に見て頂きたい。
治療技術、腰痛患者に対する評価法、ケーススタディーという内容になっていて、流れがうまく頭に入りやすい伝え方であった。冒頭でも説明されているが、ジェフ・マリー氏が学んだテクニックを彼の使いやすい形でアレンジをしているようである。だからこそ、現場で即実践が可能である。時折、チェコのリハビリテーションの父と言われる医師のヤンダ氏の名前をあげテクニックを説明しているので、その方のアプローチも合わせて学ぶと、さらに応用が効かせられると感じた。
途中、手技の中にドライニードリングが入る。日本では鍼灸師でない方は、できない手技になるので注意して頂きたい。その他には筋膜リリース、筋肉リリース、キネシオテーピング、スラッキング療法、フリクションマッサージというテクニックを紹介している。スラッキング療法についてはリンパの排出と血流促進させる手技でキネシオテープと併用して行うことが興味深かった。
個人的には、英語で進められていく内容に日本語字幕が入るので、解剖学的な英語のリスニング練習になると思いながら見ることができた。技術、知識の礎ができている方は、英語で聞き取るというチャレンジをしてみてはどうだろうか。
(橋本 紘希)
出版元:医道の日本社
(掲載日:2016-03-28)
タグ:徒手療法
カテゴリ スポーツ医学
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痛くない体のつくり方 姿勢、運動、食事、休養
若林 理砂
本書は、痛みに不安を抱えている方が何をすればよいか、東洋医学を中心にわかりやすく教えてくれる一冊である。治療家の方なら経験があると思うが、患者はもちろん、友人からも身体や痛みに関わる相談事を受ける。相談の内容により簡単に答えられるが、今後のためにも身体に対する考え方など伝えたいことは山ほどある。そのときに、本書の存在を知ってしまった私は、この一冊をまず読んでほしいと言ってしまいそうだ。
身体についてわかりやすく人に伝えるのが私の仕事なのだが、活字に慣れている方なら本当に読んで貰うかも知れない。そのくらい綺麗にまとまった内容なのだ。本書に「痛みリテラシー」という言葉が出てくる。これは、痛みを冷静に受け止め、適切に対処できるようになることをいう。この痛みリテラシーには、学習と訓練が必要で、それを教えてくれるのが本書ということだ。
痛みのメカニズムから、ペットボトルや爪楊枝を使った家庭で簡単にできる東洋医学的治療。ニュートラルな姿勢づくり、生活習慣の改善。治療をする上で患者にも理解しておいていただきたい部分が網羅してある。患者へは自身の身体の取り扱い説明書として、治療家へはアドバイスの参考書として、本書をお勧めしたい。筆者が出会った患者の話や、古武術の考え方にも触れられるのもまた興味深いところである。
(橋本 紘希)
出版元:光文社
(掲載日:2016-04-18)
タグ:東洋医学 養生
カテゴリ 身体
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画像診断 病気を目で見る
舘野 之男
画像診断はどのような原理で身体を診ることができるのか。使い分けは、そして、どういった経緯で開発されたのか。それらを研究者の立場から紹介したのが本書である。
私はトレーナーという立場から、画像診断をしてきたクライアントに出会うことがある。だからこそ、本書を読めば、画像診断について理解でき、クライアントへのアドバイスとして活用できそうだと思い、興味津々に読み始めた。しかし、この本を読み終えた後の私の感想は「難しかった」、この一言に尽きてしまう。画像診断の原理についても詳しく書いてはあるのだが、知識の足りない私にはそれらを理解するに至らなかった。
鍼灸の学校に通っていた私は、臨床医学の授業もあり、本書に出てくる単語は見たことがあったが、理解が足りていない。そんな私でも、数多くある画像診断が、それぞれの開発者たちの切磋琢磨、時には連携して開発、改良してきたことを知ることはできた。
読み進めている途中で、医学部に行った方々は、この本をどこまで理解するのだろうか、ドクターは画像診断の成り立ちを純粋に楽しんで読むのだろうか、そんな疑問を抱く自分がいた。それはトレーナーを目指している学生時代、ドクターとコミュニケーションが取れるようになれと言われることが何度かあったという理由からだ。
研究を現場に落とし込む役割もするトレーナー。多くの人とコミュニケーションを取れるように、専門と一般の橋渡しができるように、幅広い知識は身に付けておきたい。私にとって本書の難しさが、また更に学びを深めようというモチベーションになった。今の私はドクターとの共通言語を身に付けているだろうか、そう考えさせられた。
画像診断に関わることがある人は読んでみてはどうだろうか。その診断技術について何を理解して、何を理解していないのか、今の自分を推し量る一冊になるだろう。
(橋本 紘希)
出版元:中央公論新社
(掲載日:2016-05-18)
タグ:画像診断
カテゴリ 医学
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エグゼクティブを見せられる体にするトレーナーは密室で何を教えているのか
角谷 リョウ
パーソナルトレーナーとして働く者はトレーニングの知識と技術を持っているはずだ。しかし、結果を出せるパーソナルトレーナーになるにはそれだけでは足りない。どんなに素晴らしいトレーニングメニューを作成しても、それを実行できなければ意味がない。そこで私はモチベーションとタイムマネジメントが重要だと感じている。やる気を起こさないとトレーニングをさぼってしまうし、時間がなければトレーニングができない。いかにクライアントに目標に向かった行動をとってもらうのか、その提案がうまい者が最終的に結果の出せるパーソナルトレーナーになれると考えている。そういったアイデアが豊富に盛り込まれたのが本書であり、トレーニングを始める方への心構えを伝えている。
現状の自分の身体計測や満足度を数値化して、経過をみて、変化を感じモチベーションを維持してもらうという方法や、時間がないなら10分のトレーニングを推奨している上に、とりあえず10秒だけという作戦も面白かった。
このように、いかにトレーニングを生活に取り入れるのか、食生活をどう変えていくのかが記されており、トレーニングの仕方や食事の内容については細かくは書かれていない。
実際、パーソナルトレーナーとして活躍する筆者がクライアントに提案してきた内容を教えてくれる本書はトレーナーが読むとしたらモチベーションテクニックを学ぶ最初の一冊としてお勧めできる。ただ、ところどころに科学的根拠があるのか疑問に思う点もあるので、そこはまた別の書籍で穴埋めし、本書の受け売りになり過ぎないように注意したい。
(橋本 紘希)
出版元:ダイヤモンド社
(掲載日:2016-05-20)
タグ:パーソナルトレーニング
カテゴリ 指導
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マンガ分子生物学 ダイナミックな細胞内劇場
萩原 清文 谷口 維紹 多田 富雄
生命の本質が分子であるということを本書を読んで初めて知った。その事実を知るということを、私は避けてきたのかも知れない。なぜなら分子というものが、筋肉や骨、内臓のように見て触れることができないもので、存在感を感じないからだ。しかし、本書を読むことで私たちの身体の成り立ちは分子の集まりだということを改めて理解することができた。
治療やトレーニング、リハビリなどのトレーナー活動をするに当たり、なぜそれが効果的なのかを理解するには、解剖学以前に目に見えない部分で何が起こっているのかが大切になってくる。そもそも、理由もわからないのにトレーナーとしてクライアントの身体に対する行為を漫然と行うのはよくない。しかし、見えない部分を学ぼうと思っていても、取っ付きにくいのが正直な思いだ。
本書は、分子生物学という分野を取り上げている。細胞、DNA、タンパク、病気の仕組みから治療方法などをマンガを使って説明しているので、物語として頭に入ってきやすい。あっという間に読めてしまう一冊である。正直言うと物足りなさもある。マンガのまま、身体について学びたい思いが強くなる。もっと続きが読みたいぐらいだ。
文章だけで学ぶ教科書、参考書はどうしても想像がうまくできない。そんなとき本書が、分子生物学や身体にまつわる知識について、わかりやすく解釈するヒントとなる。この本を参考にして、自らの知識を、マンガや物語にしてみるのも面白そうだ。理解力と表現力が試されそうである。
本書をお勧めするには、医療関係の方では簡単すぎて物足りないかもしれない。なので、そもそも遺伝子に興味があって学びはじめの方、あるいは分野を掛け離れて学び方、伝え方を変えたい方。そんな方々が読むことで、何かきっかけをつくれるのではないかと思える一冊である。
(橋本 紘希)
出版元:哲学書房
(掲載日:2016-06-04)
タグ:分子生物学
カテゴリ 生命科学
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なぜ皇居ランナーの大半は年収700万以上なのか
山口 拓朗
この本を読み進めている途中、私は皇居でランニングがしたいと思い、実際に走ってきている。本書の中で『本書を閉じた直後に、「ランニングって面白そう」「ちょっと走ってみようかな」と思ったなら、本書の目的は達成したといえるだろう』と述べている。筆者のこの言葉を読む前から、私はまんまとランニングに行っている。目的は達成されたのだ。
私がランニングに駆り出された理由は、皇居ランナーならご存知、花の輪プレートを見るためだ。皇居外周の歩道には「花の輪プレート」と言われる47都道府県の花、千代田区の花、花の輪記念のマークがプレートになり100mごとに50枚、皇居外周の全長5kmにわたり埋め込まれている。私も皇居を何度か走ったことがあったが、実はこのプレートの存在を知らなかった。だったら走って確認だと思い、行動に移したのだ。
筆者の本当の思惑とは違うかもしれないが、この本をきっかけにランニングに行ったことは間違いない。私にとってはそれがランニングのモチベーションになったのであって、他の方が読んだときには他にきっかけが見つかるかもしれない。なぜならば、本書には他にも走りに行きたくなるような情報が詰まっているからだ。
まずタイトルにもあるようになぜ皇居ランナーになぜ高収入者が多いかを検証している。皇居で走ることの魅力がよく分かるので、皇居近くに住んでいる方にはそそられる情報だ。そして、皇居ランナーでなくてもランニングをすることで得られるビジネス能力や、脳・健康への効果、やりがいを丁寧に分かりやすい言葉で説明している。中でも印象に残っているのはランニングで養われるビジネス能力で「逆境を克服する力」が身につくと説明されている部分だ。
ランナーの力発揮の場としてマラソン大会がある。もちろん自分のペースで走るのだが、フルマラソンであれば42.195kmをより短い時間で完走したいと思うのが出場者の本音だ。身体が重く、足も痛む、苦しさや辛さが何度訪れても、なんとかしてそれを乗り越えようとする。マラソン中に自分に都合のいいことなんてほぼほぼない。それでも諦めずにゴールに向かう。折れない心が身につくのだ。
誰もが想像できるようにマラソンは苦しいものでもある。それでもランナーは走りたがる。ランニングを友人に勧める。それはランナーがランニングのよさを知っているからだ。苦しさの先の楽しさを味わったことがあるからだ。ランニングに挑戦しなければ、それを知ることはできないのであろう。ランニングの価値とは一体どんなものなのか。この一冊で頭で理解する。そしてランニングをして身体で感じていただきたい。
最後に、運動指導者として読んだ私としては、ランニングも含め運動をより多くの方に楽しんで実践していただくために、どう伝えたら分かりやすいのか本書で学ばせていただいた。本書との出会いで、ランニングや運動を始める方が増えることを、私も願う。
(橋本 紘希)
出版元:メディアファクトリー
(掲載日:2016-06-11)
タグ:ランニング マラソン
カテゴリ 運動実践
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一流の逆境力 ACミラン・トレーナーが教える「考える」習慣
遠藤 友則
サッカー好きなら読みやすい。ACミラン全盛期のあの選手達がこんなことを考えて、練習、試合、大会に挑んでいたのかと思いを馳せながら読むことができてお勧めだ。
本書の著者はACミランでメディカルトレーナーを16年も務めていた遠藤友則氏。ACミランというサッカーの名門チームはプロの中でも群を抜くプロ集団である。そこでトレーナーとして関わることができるのも限られた者だけなのは言わずもがなである。そこで、一流のトレーナーが一流の選手を見て、何が一流なのかと考察され生まれたのが本書なのである。
「目の前の小さな仕事を疎かにせずに、人が嫌がる仕事をただ一生懸命にやっていた」
「自分自身がよい評価をしていないのに、他人から評価される場合は、最終的に崩れる」
「自分の頭で考える時間を大切にすること。誰かから教わると、教えられたことは上手にできるけれども、それ以外のことに対応できなくなる」
本書に書かれた一文であるが、サッカーやトレーナーに限らず、どんなことにも共通する。努力すれば成功するとは限らない。しかし、成功する者は努力していた。こんな言葉を聞いたことがある方もいるのではないだろうか。この言葉は努力の必要性をうまく表現している。だが、その努力にも成功者の努力の仕方と、そうでない者の努力の仕方に分かれてしまうのではないだろうか。少なくとも本書では成功者と言える方々の考え方に触れることができる。最初にもお勧めしたが、サッカー好きなのであれば、もしくは運動指導や健康管理に興味があり、難しそうな成功哲学書や自己啓発本を読もうと考えているのであれば、本書を入門書として読んでみてほしい。
(橋本 紘希)
出版元:SBクリエイティブ
(掲載日:2016-06-18)
タグ:サッカー トレーナー
カテゴリ 人生
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コンディショニングTips スポーツ選手の可能性を引き出すヒント集[前編]
大塚 潔 中村 千秋
本書は月刊トレーニング・ジャーナルの2013年8月号〜2015年7月号にて連載されていたものを加筆・修正し、再編集して単行本化したものである。著者と中村千秋氏による本書、トレーナー、スポーツについての対談も収録されている。その対談で著者が述べているように、本書では「次の日から挑戦しよう、頑張れば始められるぞ」という即実践できるコンディショニング方法が記載されている。
脱水、リカバリー、筋のセルフコンディショニング、長距離移動、風邪やインフルエンザ、Prehab、睡眠、栄養、サプリメント、体組成という項目で本書は構成されているが、これでまだ前編という膨大な情報量である。膨大な情報量といってしまうと、読むのに時間がいると勘違いしてしまいそうだが、そうではない。各項目でのコンディショニング方法は簡潔に説明され、資料も豊富に掲載され、ほぼこのまま選手に提供・説明できる内容になっている。正直、本書を読んでみると、聞いたことがある、知っているといった内容かもしれないが、その情報を的確に選手・チームに伝えることはできているだろうか。そして、その伝え方は選手のためになっているだろうか。もし自信があるという方は、対談の部分だけでもまず始めに読んでみることをお勧めする。トレーナーとして私たちがどんなプライドを持ったらよいのか、そのヒントが2人のベテラントレーナーから得られる内容となっている。
(橋本 紘希)
出版元:ブックハウス・エイチディ
(掲載日:2016-08-24)
タグ:コンディショニング
カテゴリ スポーツ医科学
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ビジネスマンのためのB3ダイエットで あなたも必ずやせられる!
寺平 義和
タイトルからして、また新しい方法のダイエット本だと思ってしまった。しかし、B3とは、スクワット、デッドリフト、ベンチプレスの筋トレのBIG3をメインにトレーニングすることから名付けられたようだ。ただ、そのBIG3についての方法はそこまで多く説明されているわけではなく、自宅でもできる簡単なトレーニングが紹介されていた。
序盤から関心を持ったのは、筋トレだけでは痩せることができないという説明や、巷で流行っているダイエットのリバウンドする可能性が高いことの説明など、わかりやすく説明している点である。ダイエットをサポートするトレーナーとして読むと物足りなさはあるものの、クライアントに知っておいて欲しい知識が網羅されている。
筋トレ、食事、継続するためのコツを学べる本書で、個人的に読み応えがあった部分は、食事の具体例である。情報量は多すぎず、外食のアドバイスも的確。自分でつくる場合も簡単な料理法が記載されているので、試しにつくってみようと感じた。
タイトルにはビジネスマンのためと書かれているが、誰が読んでも間違いない内容である。偏った考えがない本書は、真新しいダイエット本に手を伸ばすより、基本を学ぶのにお勧めである。
(橋本 紘希)
出版元:同文館出版
(掲載日:2017-10-16)
タグ:トレーニング ダイエット
カテゴリ 運動実践
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<坂バカ>式 知識ゼロからのロードバイク入門
日向 涼子
私は以前、神奈川県と東京都の境にある多摩川の近くに住んでいた。当時、趣味が欲しいと考え手にしたのはスポーツバイクで、それにまたがり多摩川の河川敷を走ったり、数十㎞離れた横浜駅や東京駅、終いには丸一日かけて長野までツーリングを楽しむほどだった。本書を手にした時は、すでに自転車を手放した後だったが、また乗りたい気持ちになったのが率直な感想だ。
著者の初めてスポーツバイクを手にした話から、ロードバイクのレースに出るようになった経緯など、面白おかしく書いてあり、堅苦しく読むものでなく、ロードバイクを楽しんでいる女性のブログを読んでいるようだった。
女性目線から男性サイクリストに向けた意見、アドバイスがあり、女性が男性に期待する事が学べ、トレーナーとして読んだ私は、女性のお客様に接する時に気を付けようと勉強になった。
オススメのトレーニング場所が記載されているが著者の住んでいる東京都周辺の情報だけなので、他の地域の方は参考にならないだろう。また、オススメのレースは参加しての感想もあり、出場を検討している人には良いアドバイスなりそうだ。
運動にあまり興味のなかった著者が、ゼロからのスタートでロードバイクを楽しみ、レースでも活躍するレベルになっている。この結果を、他の運動をしていない方々にも経験してもらうにはどうすればよいのか、本書からヒントを得ることができそうだ。
(橋本 紘希)
出版元:SBクリエイティブ
(掲載日:2017-11-04)
タグ:自転車 ヒルクライム
カテゴリ 運動実践
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ひと目でわかる バスケットボールの筋力トレーニング パフォーマンス向上とケガ予防の解剖学
ブライアン コール ロブ パナリエッロ 有賀 誠司 ウイリアム ウェザリー
本書は大きく分けて88のエクササイズと、それらがバスケットボールの動きとどう関わっているのかが記載されている。
形式としては、エクササイズの「実施方法」と「動員される筋肉」が解説され、「バスケットボールの視点から」という項目で、そのエクササイズで得られた能力が、バスケットボールのプレー中どのように発揮されるのか表現されている。
トレーナーとして拝読すると、選手にエクササイズを処方する際に、競技動作とかけ離れたエクササイズが、いかに競技につながってくるかを説明するときの情報として有効活用ができる。エクササイズの中にはバーベルやメディシンボールなどを使用するものが多く、自宅でできそうなものは20種類ほどであったので、トレーニングルームやフィットネスクラブなどを利用しているプレイヤーを対象とした内容であろう。実施方法については、至ってシンプルな記載であり、トレーニング初心者向けのものとなる。これから筋力トレーニングを実施しようとする方、または筋力トレーニングがいかにバスケットボールのプレーの向上に役立つかを感覚だけでなく、言葉として理解したいプレイヤー向けである。
冒頭にもお伝えした通り、指導者やトレーナーの方が読む際は、選手に筋力トレーニングをしてもらう際の言葉選びの参考にする事ができる。筋力トレーニングの指導にあたり「脚の筋トレをしよう」よりも「ドリブル時のカッティングを素早くできてケガの予防にもなるエクササイズをしよう」と伝えたほうが選手はモチベートされる。そういった「何のために」という目的意識を持った言葉がけに難渋しているバスケットボール関係者にはオススメの一冊だ。
(橋本 紘希)
出版元:大修館書店
(掲載日:2021-02-05)
タグ:バスケットボール
カテゴリ トレーニング
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投球障害からの復帰と再受傷予防のために
牛島 詳力
まず始めに、本書の対象は野球に関わるトレーナーやセラピスト、指導者、学生、そしてその保護者となる。学生については自分自身でも読めることがよいが、どうしても難しい言葉、専門用語も並ぶので高校生や大学生以上の方が対象となりそうだ。
しかし、内容に関しては小学生年代からも知っておいて欲しい内容で、そのためには保護者や指導者には必読であると考えられる。もちろんそこに関わるトレーナー、セラピストも読んで欲しいが、自分が知る限り若年層のチームに帯同するトレーナーは少なく、ケガをしてしまった後に関わることが多いセラピストよりも、未然に防げる立場の方々が率先して読むことをお勧めする。
本書の「はじめに」でも書かれているが、チームにトレーナーがいても全選手のケアを全て行うことは難しく、病院や接骨院との連携が不可欠となる。それには、野球に関わるトレーナーと、スポーツの専門職とは言えないその他のセラピストとの知識のギャップを埋めることが必要となる。さらに、選手、選手に近しい存在の保護者、練習と試合の参加へ強い権限を持ってしまっている指導者らが、本書の情報を理解し実践できることが投球障害を減らすために必要であり、著者が筆をとった理由だと感じた。
筆者は11年間にも及ぶ野球チームでのアスレティックトレーナー経験で、地域の各種セラピストに「お任せできる方が非常に少ない」と感じている。
本書を読んだ私も、正直任せてもらえる立場にないことを感じてしまった。
「一球投げることによる肩、肘への負荷」「外傷・障害発生時の保存療法か手術を選択する時の判断材料」「投球できない選手のリハビリと関わり方」「ブラックバーン6」「Proprioceptive Neuromuscular Facilitation」「投球制限」など、本書に載っている言葉や説明、単語までわからないものが散見され、筆者との共通言語が少なくなってしまっていると気付かされた。もちろん、それを埋めるための本書であり、学習の始まりの機会を得ることができる。
ここでは専門用語の話をしてしまったが、選手が読んで実際のエクササイズができるように解説付きの写真も付いている。
選手、保護者が読むのであれば、「7.『野球人生』に悔いを残さないために」から読むことをおすすめする。この本の意義が分かる。
コラムにはトレーナーとしての失敗談などもあり、最初から最後まで一冊まるまる読み漏らすことなく、度重ねて読み込みたい内容となっている。
野球人口は多く、私の勤める鍼灸院にも草野球をする患者様は何人も来院する。そんな方へのアドバイスに本書から頂いた情報をすぐにアウトプットできる内容となっており、投球障害の入門書として多くのセラピストに役立つ内容になっている。また、先に選手や保護者が本書を手に取った時に、トレーナー、セラピストが本書の内容を知らないと信頼の損失は免れることはできない。
ぜひ、多くの野球関係者、医療関係者の手元に本書が届き、より選手を大切にする野球界になっていくことを期待したい。
(橋本 紘希)
出版元:ブックハウス・エイチディ
(掲載日:2021-02-26)
タグ:野球 投球
カテゴリ スポーツ医科学
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極めに・究める・スポーツリハ
相澤 純也 塩田 琴美
充実の一冊。
表紙からして一般向けの情報量かなと読み進めると、私の勘違い。
序文でも書いてある通り“手に取りやすい読みもの”として実現されつつも、理学療法士やトレーナーとして活動する人にとっては、選手や患者と接する際の一連の流れが網羅されている内容である。
それは、クライアントと接する際の心構えの話だけではなく、症例を交えた解説では評価から運動処方まで記載されており、現場での参考になるものがいくつか載っていた。また、SOAPカルテの記載例があり、直後から既に書き方を参考にしているくらい、すぐ実践できる内容もある。
障害者スポーツに関わるリハビリテーションも内容にあり、まったく関わったことがない部分で新鮮な気持ちで読ませて頂いた。
うつ病を患っている方への「一時的な気分転換を目的とした運動は勧めるべきではありません」という一文を読んだときには、運動が健康の一助となると言われている世の中では、知らずに運動を頑張ってしまい、症状を悪化させてしまう可能性が大いにあると感じた。うつ病はスポーツの現場だけでなく、私が日頃勤める鍼灸院でも患っている方もいるので、その点に関する専門知識はさらに学びを深めないといけないなと気づいた。
クライアントとの出会いは、巡り合わせで、どんな方を担当するかは分からない。本書は、スポーツリハに関わる上での総合書となるもので、これからスポーツリハに関わる理学療法士、トレーナー活動をしたいアスレティックトレーナー、鍼灸師、あマ指師、柔整師が事前に読んでおくのに相応しい一冊である。専門書なのに読みやすいことから、学生のうちから読むこともおすすめできる。
「極めに・究める・リハビリテーション」シリーズということで、ほかに運動器疾患編なども気になるところである。
(橋本 紘希)
出版元:丸善出版
(掲載日:2021-03-22)
タグ:リハビリテーション
カテゴリ スポーツ医科学
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ウイニング・アローン 自己理解のパフォーマンス論
為末 大
世界陸上で銀メダリストとなった本書籍の著者である為末大氏。なぜ銀メダルを取れたのか、なぜ金メダルが取れなかったのか、自身で競技人生や生い立ちを振り返り、考察し、具体的に記している。
本書は競技能力を高めるためのアドバイス書というだけではない。もちろん、何かしらの競技の選手が本書を読んだときに学ぶことができると思うのだが、競技者ではない私が読んだときには、スポーツでなくとも為末氏の考え方を取り入れることで、さらに人間として成長ができるのではとワクワクしながら読むことができた。
本書では為末氏の失敗と成功の経験談、またそのときの思いを言葉にする力と、そう感じたのはなぜかという思考の深さを読み取ることができる。為末氏の意見に共感しながら読み進めていると、自分はある程度で納得し、それ以上考えていなかったことを、為末氏は言語化し、こういう理由で、そのときの解決策はこうだという答えも出している。書籍から引用させていただくと「嫉妬とその対処」(p.124)では「嫉妬とは何か。私は自分自身が欲しいものを持っている相手に感じるネガティブな感情だと整理している。ずるいという感情も含むかもしれない。ほしいものに対して人は嫉妬するのだから、嫉妬している相手をよく観察すると自分がほしがっているものや足りないものがわかる。」この後には対処の仕方が書かれているが、是非本書を手に取り読んでいただきたい。
このように為末氏の考えを覗き見ることができ、自分自身の言動に当てはめ、悩みごとの解消に一役買っている。書籍の構成としては「人脈について」「言葉について」「筋力トレーニングについて」といった46個ものテーマがあり、順番に読み進めず、気になるテーマから読むこともできる。困ったときの辞書のような意味合いで本書を開いてもよい。
鍼灸師、トレーナーとして読んだ私は、コーチなどつけず世界で闘っていた為末氏が「経験のあるトレーナーの助言などを踏まえながらバランスよく鍛えること」をお勧めしており、嬉しく思った。そして、アスリートが全員、為末氏のような考え方を持っているとは限らないが、トレーナーとして活動する上で世界のトップアスリートの思考に触れるよい書籍だと感じた。トレーナーの方、トップを目指す競技者、思考力をレベルアップしたい方にお勧めの書籍である。
(橋本 紘希)
出版元:プレジデント社
(掲載日:2021-05-10)
タグ:陸上競技 トレーニング
カテゴリ 人生
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「練習しない」アスリート 成長し続ける50の思考
藤光 謙司
著者のことはまさしく「練習しないアスリート」というイメージがあった。
あるテレビ番組で藤光選手が練習を終えた後に、自身の足でなくセグウェイ(編注:立位で乗り、体重移動によって操作する電動二輪車)に乗り競技場を後にしていく姿が特集されていた。当時は足を休めるためなのか、バランスのトレーニングになるのかなど考えたものの、不思議な選手が現れたなというのが第一印象であった。よくよく考えると、この印象を持った私はすでに、競技場は自分の足で歩くものという固定観念にとらわれていたのである。
本書にはセグウェイのことは記されていないが、なぜ著者である藤光選手がそういった行動に出たのかが伺える。あの行動や練習をしていないように見えているのは、あくまで結果を出すための手段であり、彼の考えが表れているのだなと分かった。
本書でも紹介されているように、成長し続ける思考法の1つに「固定観念にとらわれない」という内容があったが、著者自身がとんでもない考え方を持っているというわけではなく、多くの方に会う機会があれば、そのお会いした方の考えを純粋に受け取り、深く考え、自分の成長するアイデアとして昇華させているように感じた。
そんな著者の思考法に触れることで、私自身も、新しいアイデアと出会い、成長する人のマインド、結果を出した藤光選手のやり方を学ぶことができた。
タイトルにもある通り陸上競技者への専門書というわけではなく、成長したい方向けで幅広い業界に通じる書籍であり、新社会人や働き方にマンネリ化が生じている方に新しい思考のエッセンスとしておすすめの一冊である。
(橋本 紘希)
出版元:竹書房
(掲載日:2021-05-24)
タグ:陸上競技 練習
カテゴリ 人生
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毎日5分! 親子スキンタッチ健康法
大上 勝行
子育てのアイデアの1つとして「スキンタッチ」をご存じだろうか? 私は鍼灸師として治療法の情報を得ている際に、技術名として見かける程度であった。
世のお母さん、お父さんは育児についての情報を集める際に、スキンタッチを見聞きする機会はあるのだろうか。もし、ないのであれば、本書はスキンタッチが子どもの健康の一助に、親子のコミュニケーションの1つとして役立つと知ることができる参考書となる。
スキンタッチは、江戸時代からある小児はりという技術をアレンジしたもので、もともと鍼を刺さずに刺激を加える技術の小児はりを、さらに簡略化した治療法だ。自宅にあるスプーン、歯ブラシ、ヘアドライヤーを使用して、赤ちゃんから10歳までの健康管理をすることができる。
詳しいやり方は本書にて学んでいただきたいが、赤ちゃん特有の寝つきの悪さ、夜泣き、成長とともに現れるおねしょ、おもらし、風邪をひきやすい子など、子どもに多い35症状に対するスキンタッチの実践方法を知ることができる。35のやり方を全て覚えることは困難であるが、基本の型は多くなく、自身のお子さんが該当しそうな症状のページを開けば、見開きのイラストを見て即実践できる内容である。
この親子スキンタッチをすれば、全ての症状がすぐ解消というわけではないが、定期的にお子さんの身体に触れることで、日々変化する子どもの体調や成長を感じとるコミュニケーションにもなり得る。
育児に終わりは見えないが、子どもが健やかに育ってくれることは親の願いであり、健康的だからこそ、親御さんが一息つける時間もあるのではないかと考える。
全ての子どものいる家庭に一冊、本書をお勧めしたい。
(橋本 紘希)
出版元:亜紀書房
(掲載日:2021-06-14)
タグ:小児はり コンディショニング
カテゴリ 東洋医学
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