免疫・「自己」と「非自己」の科学
多田 富雄
『免疫の意味論』『生命の意味論』で知られる著者のNHKブックスの1冊。
能にも通じる著者は最近『脳の中の能舞台」(新潮社)という本も出しているが、本書は『免疫の意味論』をかみくだいた書とも言える。
1998年春に放映されたNHK教育テレビ「人間大学」での12回の講義がべ一スになり、大幅な加筆改訂に3年を費やして完成。
「『人間大学』は、一般の市民の方に学問や文化の現在をわかりすくお話しするというのが目的である。お引き受けしたとき私は、長年研究してきた免疫学なのだから、高校卒業ていどの若者や、文科系の人たちにも充分わからせることができるという自信を持っていたが、放送が始まってみたら、そうはいかなかった」(あとがきより)と記し、著者はこの反省から、学生やパラメディカル、生命科学に興味を持つ文科系の学生に必要で充分な免疫学の基礎知識を伝えることができる本になったと言う。
とは言え、免疫はそう簡単ではない。細かなところはわからなくても、いかに複雑で多様な系であるかがわかるだけでも見方が変わる。インフルエンザにかかって、治るまでを免疫学的に解説したところなどは、今度かかったらじっくり観察し、ヘタなことはしないでおこうと思わせる。生命のすごさ、それを発見してきた人間のすごさを知ることができる。
(月刊スポーツメディスン編集部)
出版元:日本放送出版協会
(掲載日:2001-11-25)
タグ:免疫
カテゴリ 生命科学
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フットサル 攻略マニュアル 100
須田 芳正
最近のランニングブームが示すように、身体を動かしたいという願望が多くの人にあることは間違いない。ランニングブームは、場所を問わずに、ひとりで手軽に始められることがその要因である。ランニングのように手軽に始めることができる集団スポーツがフットサルだ。
1チーム5人という少人数で、バスケットボールコート程度の広さがあれば、あとはゴールとボールを準備すればプレーできる。フィジカルコンタクトも厳しく制限されているスポーツなので、大人から子どもまで、男女関係なく気軽に楽しむことができる。一方で、Fリーグというプロ・フットサルリーグのチームが国内に10チーム存在する。1989年からはワールドカップも開催されている。開催回数もすでに6回を数え、2008年の前回大会では予選を勝ち抜いた本戦に20カ国が参加している。参加国がこれからますます増えていく世界的なスポーツだ。
この本を読めばわかるが、フットサルは単純なサッカーのミニ版ではない。フットサルは、バスケットボール、ハンドボール、水球を応用してルール化したスポーツである。戦術的にもバスケットボールにとても近い。ディフェンスの考え方などはバスケットボールそのものだと言ってもよい。またアイスホッケーのように、交替は試合中に自由に何度でもできるので、登録メンバー全員が試合に出場できるチャンスがある。実際の試合では、選手の組み合わせでチームカラーをつくり、戦術を立て試合を行っていく。プレーも切り返しが早く消耗が激しいので、交替なしの試合は考えにくい。戦術が勝敗を分ける知的スポーツでもある。
フットサルは足でボールを扱うという特異性はあるが、他のスポーツをしている人でも始めやすいスポーツである。最近は、各地に人工芝の専用フットサル場も増えてきた。また、フットサルをプレーできる体育館も増えてきた。そのような場所で行えば、よりいっそう雰囲気も楽しむことができ、天候に左右されることも少ない。
低予算でできるフットサルは、地域を活性化するためのスポーツになりやすい。「多種目」「多年代」を掲げている総合型地域スポーツクラブの種目としても導入しやすい。世界的には、サッカーチームをつくるほどの予算はないが、フットサルチームなら運営することができる、といった町が多く存在する。フットサルが盛んで小さな町の小さなクラブのほうが、ビッグクラブのフットサルチームよりも強いことも珍しくない。
この本はフットサルをこれから始めたい、すでにプレイをしていて一層のスキルアップを目指す人の技術書としてうってつけである。また、フットサルがどんなスポーツか知りたい人や世界のフットサル事情を知ることもできる。技術書としてだけでなく、スポーツを楽しむ人を増やすツールとしてのフットサルを知ることができる本だ。
(服部 哲也)
出版元:日本放送出版協会
(掲載日:2011-12-13)
タグ:フットサル 技術 入門 地域スポーツ
カテゴリ トレーニング
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いじらない育て方
元川 悦子
スポーツライターである著者が、遠藤保仁がどのように育てられたのかについて、彼を育てた両親、チームのコーチたちへのインタビューをまとめている。
「国際経験は子どもを大きく変える」や「希望の進路は最大限サポートする」といった、コーチが選手を、親が子を育てるときの29のヒントが書かれている。
その中には「子供の成長だけが(親の)自己実現になっていないか?」といった保護者への問いかけもなされている。必ずしも親やコーチだけが育てる側ではない。我々指導者側も育ててもらっているということが感じ取れる一冊となっている。
(大塚 健吾)
出版元:日本放送出版協会
(掲載日:2012-02-07)
タグ:サッカー 教育
カテゴリ 指導
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ファイブ
平山 譲
本作はミスターバスケットボールと呼ばれた佐古賢一選手を中心に物語が展開される。所属していたバスケ部が親会社の業績不振により廃部に。バスケができないと悲しみに暮れていたが、一人のコーチの誘いによりあるチームでもう一度バスケができることになった。鈴木貴美一HC率いるアイシンという優勝経験がないチームに。
そこに集まった後藤正規、外山英明、佐藤信長、エリック・マッカーサーといった個性的な選手たち。彼らもまた佐古と同じように一度はバスケを続ける道を絶たれた選手たちだった。だが彼らは諦めなかった、バスケットが大好きだから。まだ終われなかった。
人生の酸いも甘いも経験した30代の5人。一度や二度リストラされたって何度でもやり直せる。オジサン軍団と呼ばれたアイシンの初優勝に向けてチーム全員で挑むノンフィクションストーリー。
選手一人ずつチームに集まった経緯などにスポットが当てられており、感情移入がしやすく読んでいて非常に胸が熱くなる。まだまだ自分も頑張れる、そんな気持ちにさせてくれる作品である。
(三嶽 大輔)
出版元:日本放送出版協会
(掲載日:2012-02-07)
タグ:バスケットボール ノンフィクション
カテゴリ 人生
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サッカーという名の神様
近藤 篤
2011年7月18日。日本中が未明から熱狂と感動に包まれた日であり女子サッカーの歴史が動いた日でもある。サッカー女子ワールドカップでの日本代表の世界制覇。私自身も早朝からテレビの前で熱くなった1人だ。
準々決勝で強豪ドイツを破ってから、日本中がなでしこジャパンフィーバーに包まれた。テレビ局は急遽、準決勝と決勝を中継し、情報番組も日本代表や対戦相手のデータなどの話題でもちきり。優勝して凱旋帰国をした彼女たちを待っていたのは、出発時とは全く異なる待遇だったはずだ。ワールドカップという大会を経て、日本中の注目が選手たちに向けられている。しかし、この注目は、一時的なものであってはならない。
本書は、サッカーの写真家である近藤氏が、過去に50カ国以上で撮影してきた経験の中から、それぞれの国でのサッカーにまつわるエピソードを綴った短編エッセイ集である。
町中の至るところでサッカーが行われ、プロサッカー選手になることが貧困を脱する一番の方法となっている国。サポーターが大きな賞賛も激しい罵声も選手に向ける国。民族の壁に阻まれながらも、誇りの為にサッカーをする国。どんなに負けが続いても、地元チームを愛して応援しつづける文化の根付いた国。仕事前にサッカーをして履いたスパイクが、運転席下に置いてあるタクシードライバーのいる国。
世界にはさまざまなサッカーがあり、人々の生活の一部となっている。著者が触れた世界のサッカーが、文章を通して伝わってくるので、私はすぐに引き込まれてしまった。
あるサッカー選手の言葉で、「サッカーは世界の共通言語だ」というのは本当だなと、本書を読んでいて強く感じた。著者が出会った人々にとって、サッカーは生きがいであり、生活の中になくてはならない存在となっている。サッカー強豪国だけでない。ワールドカップに出場したことのない国でも、サッカーを中心とした生活がある。
著者が見てきた世界の国々のように、日本人の生活の中に、サッカーはどれだけ根づいてきているのだろう。サッカーだけでなくても、スポーツが常に生活の重要な一部になり、町中の至る所で老若男女がスポーツを楽しむ光景が見られる世の中になればいいなと、私は強く思う。
(山村 聡)
出版元:日本放送出版協会
(掲載日:2012-02-07)
タグ:サッカー エッセー
カテゴリ 人生
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身体感覚を取り戻す
斎藤 孝
1960年代、アメリカのカウンターカルチャーは日本にも大きな影響を与えた。
「大人がつくった社会の抑圧や管理から自分の肉体を解放していくというのが、カウンターカルチャーの軸であった。文字通りそれは、すでにある権威に対してカウンター(対抗)としての性格をもつものであった」(序章より)。
この世代が親の世代になって、「親が親らしくなくなった」。その結果、生きていくうえでの基本をしっかりと躾けるという親の役割が軽視され、身体文化も伝統の継承が行われなくなったと言う。その日本の伝統的な身体文化が「腰肚文化」なのだと言う。
著者は「身体感覚の技化」という表現もとっている。歩く、立つ、坐る、そして息の文化。自ら、身体を用いて、様々な技法を経験したうえで語っていく。明治や昭和の人々の写真も巧みに引用しつつ、21世紀の身体をみる。
現在の日本人のからだには「中心(芯)感覚が喪失」しているという言葉は、身体のみならず社会全般にも言える。からだから考える。その意味がよくわかる本。おすすめ。
B6判 248頁 2000年8月20日刊 970円+税
(月刊スポーツメディスン編集部)
出版元:日本放送出版協会
(掲載日:2001-03-15)
タグ:身体感覚 伝統
カテゴリ 身体
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スポーツ解体新書
玉木 正之
スポーツを“解体”する
私は“解体新書”というとまず日本最初の西洋解剖学書の訳本を思わずにはいられない。“解体”には物事をバラバラにするとの意味もあるが、この場合は“解剖”を意味する。従ってこの「解体新書」というタイトルは、素直に読めば「新しい解剖書」という真にシンプルなタイトルになるところだ。
しかし“新書”という言葉に込められた意味を私なりにこだわれば、この言葉には新しい分野や秩序を築こうとするときの緊張感がこめられていると思う。
誰も到達したことのない領域に達し、それを世に現すことを許された者だけが使える“新書”という言葉。
この言葉がタイトルに踊る本を読み開くとき、私は期待感にワクワクし、緊張感で胸をドキドキさせながら頁をめくる。
さて、今回ご紹介するのは“スポーツ”の解体新書である。本書は、今まで既成事実として君臨(?)してきたスポーツに対する概念規定をことごとく“解体”して新しい概念を構築しようとする意欲作である。私の“新書”への期待感も裏切らない。
筆者の新たなスポーツ秩序の道すじをつけようとする情熱が、熱波となって頁をめくるごとに襲ってくる。
「体育」と「読売巨人軍」
筆者はこの2つが日本のスポーツを、本来のスポーツの意味から遠ざけたと言っている。明治において欧米文化を取り入れることに躍起だった日本にスポーツが輸入されたとき、残念ながら日本には 受け皿となるスポーツの社会基盤(インフラストラクチャー)がなく、結局大学が主な受け皿となる。しかし、世間の学生に対する目は厳しく、学生の本分は学問(精神活動)であるとして身体活動であるスポーツを“遊び”として認めずしょうがなくスポーツを「精神修養の道具」として世間へ認知を図るのである。
その後「“下級学校”に配られた結果日本では、スポーツが体育へと変貌しスポーツと体育が同種のものとして考えられるようになった」と言うのである。それ以降スポーツは学校体育の専売特許となり、学校教育だけのものとなる。その結果、スポーツ本来の年齢に関係なく誰もが楽しめ、どこででも行えるというスポーツ観は、日本で育つことがなくなってしまったわけである。
読売巨人軍は、もちろんプロ野球のジャイアンツのことである。数々のスーパースターを生み出し、日本のスポーツ界の頂点に立つこのチームも、筆者に言わせれば日本のスポーツをダメにしているという。
一民間企業が、その企業の宣伝効果のみを優先させて運営しているところに、形こそ違うがメジャーリーグやヨーロッパのクラブチームの運営形態と決定的に違うことを指摘する。さらに、特定のメディアが特定のチームと結びついていることに、筆者は大きな疑問を寄せている。
筆者は、最後に次のような言葉で本書を締めくくっている。
「日本のスポーツ界が(とりわけ、日本人に絶大な人気のある野球界が)過去のしがらみを断ち切つて変革に手をつけ、たとえ小さな一歩でも未来にむけて新たな出発を始めるとき(中略)日本の社会が、真の豊かさの獲得に向かって歩み始めるとき、といえるのではないでしょうか」
そういえば、どこかのワンマンオーナーがようやく引退というような記事が最近あったように思うが、これで少しでも日本のスポーツ界が変わるといいですね、玉木さん。
(久米 秀作)
出版元:日本放送出版協会
(掲載日:2012-10-08)
タグ:スポーツの意味
カテゴリ その他
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危ない!「慢性疲労」
倉恒 弘彦 井上 正康 渡辺 恭良
書名は「慢性疲労」だが、「慢性疲労症候群」についても詳しく述べられている。「慢性疲労」は自覚的症状が半年以上続いていても、日常生活には特に支障をきたさないもの。一方の「慢性疲労症候群」は疲労を併発する他の疾患がなく、日常生活を送るのが極めて困難な疲労感が6カ月以上続いているもので、1984年にアメリカ・ネバダ州で集団発生した原因不明の病態に対して命名された比較的新しい概念だそうだ。
これといった病気がないので、さぼっているとか、怠けていると思われることもあるが、元気で働いていた人が風邪を引いたあとにかかることもある。専門家でないと診断も難しいようで、「特に異常なし」と言われるものの極度の疲労感は続く。
日本では、1991年に厚生省の慢性疲労症候群研究班が発足、世界をリードする研究が行われてきた。特に、1999年から始まった本書の著者である渡辺、倉恒氏らの「疲労の分子・神経メカニズムとその防御に関する研究」はパイオニア的研究として国内外から注目され、2005年2月には日本で第1回の国際疲労学会が開催される予定である。厚生省疲労研究班が1999年に調査した結果では、疲れやだるさを感じている人は59.1%、そのうち疲労感が6カ月以上続いている人が35.8%だった。この本で基本的知識を持っておきたいものだ。
2004年10月10日刊、714円
(清家 輝文)
出版元:日本放送出版協会
(掲載日:2012-10-09)
タグ:疲労 慢性疲労症候群
カテゴリ 医学
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楽しく踊れるズンドコ体操
太藻 ゆみこ
まず表紙からおもしろい。写真からコンセプトがにじみ出ている。健康運動指導士、健康運動実践指導者、医学体操専任指導士、日本エアロビクスフィットネス協会公認インストラクターでもある太藻ゆみこ氏が書いた『楽しく踊れるズンドコ体操』はDVD付きで、誌面、DVDも読者が踊りやすいように左右逆に踊っているので、画面に合わせて踊れる親切さもある。しかも「ダンス体操」というダンスと体操をひとつにしたもので、体操の号令のようなものではなく、音楽で動きの楽しさを獲得できるものになっている。
また踊るときの選曲もいい。「きよしのズンドコ節」から始まり、「元気を出して」、「さくら(独唱)」と続き、それぞれの曲の雰囲気に合わせた体操ダンスのポイントもあげている。
聴きなれている音楽のリズムで自分の体を動かし汗をかくことも、実際はかなり難しいことである。だが本書を通して楽しく取りむことで、ダンスや体操がより身近で親しみやすいものになるだろう。
2006年10月20日刊
(三橋 智広)
出版元:日本放送出版協会
(掲載日:2012-10-11)
タグ:体操
カテゴリ 運動実践
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迷惑な進化 病気の遺伝子はどこから来たのか
Sharon Moalem Jonathan Prince 矢野 真千子
「この本に書かれているのは、謎と奇跡の話である。医学と伝説の話である」と意味深に始まる本書は、アルツハイマー病の遺伝的関係の新発見で知られるシャロン・モアレム氏と、クリントン元大統領のホワイトハウス上級顧問・スピーチライターのジョナサン・プリンス氏の著。とくに遺伝子学的な知見に富んでいるので、世界中で知られる疫病の問題やアルコールの問題についても、遺伝子とどう関連をもっているのかについてなど大変興味深い内容である。
シャロン氏は祖父がアルツハイマー病と診断されたとき、アルツハイマーとヘモクロマトーシスの2つの病気には関連があるのではないかと考えた。まだ彼が15歳のときである。
そんな彼の小さなときからの取り組みがさまざまな問題意識を高め、大学院に進みアルツハイマー病を解明するに至った。だがその仮説を証明した後、祖父はアルツハイマー病と診断されてから5年後に亡くなる。
人のために科学があるのであって、それに尽力した科学者の“謎と奇跡”の本。ぜひ読んでいただきたい。
シャロン・モアレム、ジョナサン・プリンス著、訳・矢野真千子
2007年8月25日刊
(三橋 智広)
出版元:日本放送出版協会
(掲載日:2012-10-12)
タグ:進化 病気 遺伝子
カテゴリ 身体
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1日5分だけ! らく楽エクササイズ
梅田 陽子
本書はNHK教育テレビまる得マガジンにて、高齢者・低体力者向け運動プログラム「ココから体操」の理論と動きを取り入れた“らく楽エクササイズ”の番組テキストになっている。放送日時は以下の通り、2007年11月5日~11月23日(月~木の午後9:55~10:00)、12月17日~1月11日(火~金の午後2:55~3:00)。講師には梅田陽子氏・健康運動指導士・トータルフィット主宰。
タイトルにあるように、1日5分だけでよい簡単なエクササイズが網羅されている。その内容もからだの各部位に着目したアプローチ方法や、左右・重心移動、前後・重心移動などのバランス感覚を磨く方法、また家事や、着替え、外出時、入浴時など日常生活動作のなかで行える筋トレを、計80ページにわたりカラーで紹介している。
らく楽エクササイズの5つのポイントは、1. 呼吸には気をつける、2. 自分ができる範囲で筋肉を動かす、3. 動かす部位を必ず意識すること、4. 正しい動作で行い、姿勢を崩さない、5. 運動回数は自分のペースで行うこと、としている。からだを動かす時間がないのではなく、正しい方法を知っていればどこでもエクササイズはできるのだと実感できる内容だ。
2007年11月1日刊
(三橋 智広)
出版元:日本放送出版協会
(掲載日:2012-10-12)
タグ:エクササイズ 高齢者
カテゴリ 運動実践
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スポーツニュースは恐い
森田 浩之
著者の森田氏は“スポーツマンニュース”にたびたび見られる日本人のイメージ作りが、ときに不自然に感じるという。たとえばシーズンオフに日本からMLBに移籍する選手に対して、「日本食が食べられるか」という食事の心配や、「言葉は大丈夫なのか」と、日本人だからこその心配をする。それをメディアは毎回のように取り上げ、情報を受け取る側の人間に対して私たちが日本人であることを確認させる。だが実際、MLBに移籍をすれば日本食に困るということはあまりないし、英語を話せない他外国の選手はいくらでもいるし、それはもう特別なことではない。だがそうした小さな心配をきっかけに、メディアは物語をつくり過剰に日本人を意識させ、イメージさせる。
著者が何を言いたいのかというと、スポーツに関するニュースをきっかけにメディアリテラシーを養っていくことが大事ということだそうで、楽しいスポーツニュースだけに限らず多くの情報の中には、ステレオタイプに、またサブリミナル的に「日本人」が供給されているという。だからこそ情報をうのみにせず、批判的に見ていく姿勢も必要となる。メディアリテラシーはもはや、学校教育に限定されたものではない。
2007年9月10日刊
(三橋 智広)
出版元:日本放送出版協会
(掲載日:2012-10-12)
タグ:メディア リテラシー 日本人
カテゴリ その他
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泳ぐことの科学
吉村 豊 小菅 達男
コーチやトレーナーは科学の目で物事を捉え、科学の頭で考えるべきである。しかし実際に対象となる選手に、この方法は科学的だからという理由だけで納得させ、実際のパフォーマンスに結びつけることは容易ではない。科学的に「わかっている」ことをいかに咀嚼(ルビ:そしゃく)し、個々人にあった方法に消化し、効果的に伝え、落とし込むことができるか、これはコーチ、トレーナーという人間の力に大きく左右される。科学的な基礎の上に経験に裏打ちされたさまざまな工夫を重ねるうち、壁を越えて成長し、それを改めて科学的に解析した結果、今までよりもさらに効果的な方法が一般化されることも少なくない。そこにバランスの妙がある。
本書『泳ぐことの科学』では、「普通の選手でも天才のレベルまで感覚を高めることができる」方法として「ビルド・トレーニング」が紹介されている。科学の目を持ったうえでの体験を通し、試行錯誤のうえで完成したというこのトレーニングは、「考えている動作と実際に行う動作を近づけていく練習方法」である。科学的にみて効率のよい泳ぎに近づけるための秘訣が紹介されているわけである。しかし「ビルド・トレーニング」をただ知っているだけではその100%の効用は期待できないだろう。設定したゴールを分節化し、段階的に達成すべく指導することはコーチングやアスレティックリハビリテーションなどにおける基礎であるが、個々人の問題点を正確に分析し、効率的に改善するには科学的知識として「わかっている」部分と、経験などから「納得できる」部分との適切な融合が必要になる。ここがまさにコーチとして面目躍如たるところであり、この存在が介在することでそのトレーニングの効果は最大限に引き上げられるはずだ。
トレーナー業務でも、たとえば膝の前十字靭帯損傷再建術後のリハビリテーションでは、今までの臨床例の積み重ねから大まかなプロトコルはできあがっている。しかし1分1秒でも早く復帰したいアスリートとの半年以上にわたって続く綱引きは、そんな定められた流れでは抑えきれない。変化に富んだプログラムを、いかにアスリートが納得しながら取り組めるか。アスリートの覚悟が問われるところでもあり、トレーナーの人間性や信頼度、腕の見せどころである。
さて、科学的といっても、昨年からメジャーリーグを震撼させている薬学は、その使用方法を大きく誤った例である。日本のJリーグでも話題になったケースがあったが、ドーピングコントロール規定の認識不足といった議論はされても、試合前に高熱や脱水症状を呈する体調になったという本人やメディカルスタッフの問題、またそのような体調の選手を試合に出場させないという決断ができなかったことに対する議論はあったのだろうか。サッカーではごくまれにではあるが試合中に心不全と思われる死亡事故が報告されている。ドーピングという明らかな違反行為に至らなくとも、高地トレーニング中の事故や、サプリメントの濫用など、科学という名の下にひずみが起こっていないわけでもない。科学とは最大限利用すべきであるが、絶対的な正解ではないことを理解する必要もあるだろう。
いずれにせよスポーツの世界ではヒトが積み重ねた経験と弛(ルビ:たゆ)まざる努力を科学が追い越し、追い越され、少しずつ進化していく。そこがおもしろいところである。
(山根 太治)
出版元:日本放送出版協会
(掲載日:2012-10-12)
タグ:水泳 コーチング
カテゴリ 指導
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未来志向のこころとからだ(NHKラジオテキスト)
山内 潤一郎
10月から12月にかけてラジオで放送される内容のテキスト。「夢を持って豊かに生きるための身体づくり」のために、「自由気ままに話を進めて」いる。調和、挑戦、確認、運動、休息、行動、環境、未来というように全13回の各タイトルが漢字2文字と、サブタイトルで示されている。内容は、スポーツ医科学に関わる最新の研究トピックを幅広く取り上げており、一般のリスナーにもわかりやすい表現になっている。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:日本放送出版協会
(掲載日:2010-12-10)
タグ:ラジオテキスト
カテゴリ スポーツ医科学
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「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁
元川 悦子
鹿児島県の桜島にあるスポーツ少年団で小さい頃からサッカーをしていた遠藤保仁選手。彼が育った環境について、ご両親や地域のコーチへの丁寧な取材で明らかになっている。何か特別なことをしてきたわけではないというものの、地域ぐるみで子どもたちを育てている様子がよくわかる。練習内容は厳しいものであったというが、自分の子どもであれ、よその子どもであれ、しっかりと向き合う姿勢がのびのびした選手をつくるのかもしれない。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:日本放送出版協会
(掲載日:2011-01-10)
タグ:育て方 サッカー
カテゴリ 指導
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免疫・「自己」と「非自己」の科学
多田 富雄
「免疫」という言葉は、誰でも一度は耳にしたことがあるだろう。本書は、免疫の持つ“自己か非自己かを判断し、非自己(自分以外)を排除する”という特徴を、全体のテーマとして掲げている。
一言で「免疫」といってもその実態は実に複雑で難解である。ついつい敬遠しがちな分野であることは確かだ。だが、本書では一般の読者でもわかりやすいよう専門用語を極力減らし、細かくテーマ分けすることで少しずつ無理なく読み進めていけるような工夫がされている。生理学の教科書に書いてあるような少々お堅い内容だけではなく、「インフルエンザ」や「アレルギー」といった比較的身近な話題や、「臓器移植」・「クローン」など非常に興味深い内容も盛り込まれており、文系人間の私でも割り合いとっつきやすい一冊であった。
(藤井 歩)
出版元:日本放送出版協会
(掲載日:2012-10-16)
タグ:免疫
カテゴリ 医学
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泳ぐことの科学
吉村 豊 小菅 達男
本書は“泳ぐとは何なのか”をメインテーマとし、“泳ぎ”を科学的に説明するところから始まっている。
各泳法の説明や歴史、その泳法の動作(ストロークやキックなど)が“分節化”して解説してあり、また各泳法を専門とするトップスイマーたちの特徴的な泳ぎ方についても細かく記されている。
ある動作を言葉だけで説明されると、読み手としてはイメージが湧きにくく難しいが、本書は動作の微妙な違いがわかるよう何枚もイラストを並べたり、矢印や線を多用し、イラストとの相乗効果により出来る限り読者がイメージしやすいように配慮されて書かれているのが感じられる。
しかし、これらは筆者が提示したい“ビルド”を解説するうえでの布石に過ぎない。筆者は、今までほぼ“根性論”で成り立っていた泳ぎのトレーニングを、まずは科学的知見を踏まえ分析・分節化し、次に“パズルのピース”状になった1つひとつの動作を組み立て再構築し、できあがったその“一連の動作=泳ぎ方”を繰り返し練習することで個人に合った泳ぎを獲得できると確信しており、この過程を“ビルド”と称し、今後はそれを目指す方向へ指導方法を切り替えていかなければならないと提示している。
そして、筆者はあくまでこの考え方は若者や競技者だけのものではなく、中高年の水泳愛好家たちにも適用できると考えており、本書の後半は中高年のための水泳プログラムなども記載されていて、どの世代が読んでも納得できる内容となっている。
(藤井 歩)
出版元:日本放送出版協会
(掲載日:2012-10-16)
タグ:水泳
カテゴリ 指導
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初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅
元川 悦子
それぞれの国で特徴を持ち、ヨーロッパ人であれば、自国のサッカー、それも地元のチームが一番と必ずいう。本書はその魅力にとりつかれた著者が書いた、自分の経験からそのヨーロッパでサッカーを楽しむための参考書だ。
スタジアムへの道のりや試合情報や現地でのチケット入手方法、ファンや街の雰囲気などテレビやインターネットでは収集しきれないことも掲載されている。情報としては少し古いが、いずれ現地を訪れてみたいと考えているファンにとっては、想像の手助けになるであろう。
もし言葉の問題で現地観戦をすることに躊躇しているのであれば、思い切って行動してみることをおすすめする。
言葉の問題だけで現地観戦をする機会を逃すことは、非常にもったいない。現地で何かしら困ったことがあっても、サポーター同士という共通事項で、以外とうまく解決できるかもしれない。
残念ながらここに掲載されている国はヨーロッパ全土ではなく、贔屓の国やチームのことが掲載されていないかもしれない。またサッカーはヨーロッパだけが盛んなわけではなく、南米や中近東にも非常に個性的なチームが多い。自分の贔屓のチームを探して応援するのもサッカーの楽しみの1つであろう。
(澤野 博)
出版元:日本放送出版協会
(掲載日:2012-10-16)
タグ:サッカー
カテゴリ スポーツライティング
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