基礎から学ぶ!スポーツ救急医学
輿水 健治
強烈な原体験
高校時代に所属していたラグビー部は弱小の割に練習は厳しく、毎日早朝練習も行っていた。その日もあくびをこらえながら最寄り駅から電車に乗り込もうとしていたら、近くに住むチームメイトの母親がそんな時間に電車から降りてきて、私の姿を見るなり泣き崩れた。そしてそのチームメイトが明け方に泡を吹いて全身痙攣を起こし、病院に救急搬送されたと聞かされた。
彼はその1週間ほど前に練習で頭を打ち脳震盪を起こしていたが、その後も頭痛をこらえて練習に参加させられていた。慢性硬膜下血腫、と今ならわかる。この仲間としての罪悪感を伴う強烈な事件が、アスレティックトレーナーを目指した私にとっての原体験と言っていい。
重篤な障害への処置
さて、埼玉医科大学総合医療センター救急科の輿水健治氏による本書は、基礎から学ぶスポーツシリーズの一冊で、RICE処置を中心にした応急手当の本とは一線を画し、選手の命に関わる重篤な傷害に対する救急処置に多くのページが割かれている。「基礎から学ぶ」シリーズとはいえ、CPRの方法やAEDの使用法、突然死や心臓振盪などその内容は、少なくとも日本赤十字社や消防署が主催する救急救命講習会に参加したうえで読むほうが、なるほどとうなずくことは多いはずだ。あるいは本書に出会うことでそのような講習会に参加しようと考える人が増えればなおいい。また、事故防止についての一説も必読である。
確かに、スポーツ現場で起こる傷害のほとんどが、簡単な創傷の手当やRICE処置でまかなえるものである。しかしスポーツ現場に関わるものは、本書に書かれた内容は熟知しておくべきである。冒頭の話は今から30年近く前の話であり、真夏の炎天下でも水分補給がほとんどないまま練習していたあの頃に比べれば、選手の健康や運動に伴うリスクに留意する指導者が圧倒的に多いと言えるだろう。しかし時折報道されるように不幸な事故はいまだに起こり、指導者にもっと知識と自覚があれば、あるいは準備されるべきものがあれば、もしかしたら防ぎ得たのではないかと感じることもあるのだ。
アスレティックトレーナーの役割
アスレティックトレーナーはそのようなアクシデントを未然に防ぐことがその重要な役割であり、何か起こったときには最善の対応ができなければならない。そのためには知識と技術を身につけることは言うまでもないが、さらに重要なことはそのような状況において最善の判断をし、よどみなく動けるかということだ。
1989年、NHLのあるゲーム中にゴールキーパーであるClint Malarchukの喉元を対戦チームの一選手のブレードが襲い、頚動脈が損傷されるという事故が発生した。
噴出した血液が氷上にみるみる血溜まりをつくる中、彼のチームのアスレティックトレーナーは一瞬の迷いもなく、出血部に手を入れ止血を試みた。そして他の幸運も重なり、奇跡的に同選手は命を取り留めた。
この事故について学んだとき、果たしてこの動きが自分にできるかどうか、戦慄を持って覚悟させられた。そして現場にいるときには、先の原体験も併せて、良くも悪くも常にある種の怖さを感じていた。一生このような状況に出会わない指導者やトレーナーのほうが多いだろう。しかし選手の命を預かっているという自覚の元に最善の対策を講じておくことが必要だ。
蛇足ながら、緊急開頭手術をうけた冒頭のチームメイトだが、結婚を2回もし、子どもを3人ももうけているくらい元気に過ごしていることは幸いである。
(山根 太治)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2010-03-10)
タグ:スポーツ医学 救急処置
カテゴリ スポーツ医科学
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知っておきたいスポーツ傷害の医学
シルヴィア ラックマン 石河 利寛
本書はイギリスのスポーツ障害研究所で9年間、6000人もの患者を診てきた筆者の経験を持って執筆されたものである。
第1部では、骨や筋、靱帯や神経の機能解剖や創傷治癒の過程に始まり、そのような過程に対する理学療法や薬物の適応方法について説明してある。さらに、各組織(皮膚・筋・骨など)に対する一般的な処置方法が載っている。ところどころにボールペンで書いたような図が出てきて分かりやすい。
第2部では、診断や検査の方法から始まり、足から頭までの障害について部位別に皮膚・筋・腱・靱帯・滑液包・関節・骨・神経の順で述べてある。これを読んでいたとき、目の前で応援していた選手が鼻を骨折した。本書では「患者に腫脹が起こる前に耳鼻咽喉科医を訪れると鼻骨折を直ちに処置することができます。…遅れて骨が定着し始めると、処置が困難になったり、処置不能となります」とある。おかげで何科に行くべきなのか、どのような救急対応が必要で選手にどう説明するべきなのか判断することができた。
スポーツを行っていると、どうしても避けられない外傷・障害はあるだろう。しかし、ある程度減らすことはできると思う。そのためには選手、そしてコーチ・医師・トレーナー・理学療法士を含めたスポーツに関わる我々が、根拠に基づいた医療(Evidence-based medicine、EBM)を理解し、適応できるかが、ことを大事に至らせないために大切である。本書はそのような外傷や障害を予防し、また適切な治療を行うための根拠がわかりやすく解説してある。自分の身体を理解し、スポーツをより多くの人に長く楽しんでほしいという筆者の思い、この本とともに広めたい。
(服部 紗都子)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2012-01-18)
タグ:スポーツ医学 傷害予防 理学療法
カテゴリ スポーツ医学
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野球力再生 名将のベースボール思考術
森 祗晶
本書は、日米両国の野球を比較しながら、日本野球界への提言をしていく内容になっている。フロントと現場の温度差、コミッショナーの権限の弱さ、ドラフトやFA問題。悪しき慣習が蔓延する野球界を、現役時代に巨人でV9を経験し、監督時代に西武ライオンズで黄金時代を築いた著者、森祗晶氏が冷静かつ論理的に両断していく。
同氏の言葉からは、現場から滲み出る重みを感じるし、メジャーリーグを始め、各界のいい部分をどんどん取り上げていくべきだとの主張は納得できるものが多い。しかし…正論であっても実現するのは難しいのだろうなと思ってしまう。どうせ一番の敵である「変わることを好まない」集団に跳ね返されてしまうのだろうなという気持ちになってしまう。
それではいけない。「勇気」が求められる時代背景の中で、野球界にかかる期待は大きいはずだ。プロ野球界の関係者全員が人任せにするのでなく、自分のこととして考え、できる限りの行動をしていく必要がある。本書はプロ野球ファンの方はもちろん、球団関係者、メディア関係者にもぜひ読んでいただき、これからの野球界発展に向けて一考いただければと思う内容であった。
(水田 陽)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2012-02-15)
タグ:野球 組織
カテゴリ 人生
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スポーツマンシップを考える
広瀬 一郎
ちょっとお耳を拝借
さて、冒頭から恐縮ですが、ただいまより「すべてのスポーツ・コーチに捧げる、――コーチ必読!知ってるようで知らないスポーツ用語解説集――これを読めば貴方も明日から一流コーチの仲間入りだ!編」を始めたいと思います。(ずいぶん大袈裟なタイトルだなぁ……)
(1)「スポーツとは何か」
遊びであり、競争です。
(2)「スポーツマンシップとは何か?」
スポーツを通じて身につける人格的な総合力のことです。
(3)「フェアプレーという考え方はどうしてでてきたのか?」
スポーツが単なる遊びから、勝利を求めるものに変化していったからです。
(4)「なぜスポーツマンシップを教えなければならないのか?」
スポーツマンシップなしにはスポーツは成り立たないからです。
(5)「なぜ戦う相手を尊重するのか?」
素晴らしい勝利を得るためには、素晴らしい対戦相手が必要だからです。
(6)「なぜ審判を尊重するのか?」
審判がいなければゲームが成り立たないからです。
(7)「なぜゲームを尊重するのか?」
スポーツの素晴らしさが、そこに集約されているからです。
(8)「ルールを守ればスポーツマンか?」
必ずしもそうではない。伝統や慣習を尊重することも重要です。
(9)「勝負に徹するなら“スポーツマンシップ”はきれいごとか?」
きれいごとではなく、それこそが本質です。
(10)「“スポーツマンシップ”を教えると強くなるか?」
はい、その通りです。
さぁ、いかがでしたか。あんなに長年指導しているのに、なぜうちのチームはちっとも強くならんのだと、やたらこの頃酒量が増えている古株コーチも、ともかくスポーツは若さと情熱で教えていますという、どちらが選手かわからない新米コーチも、ちょっとこの辺で「スポーツの本質」について、上の「用語解説集」を参考にして改めて考えて見ませんか。きっと、絡んだ糸がほどけるように、一味違うコーチングが見えてくるはずです。えっ、まだよくわからない? そういうコーチは、本書をお読みください。因みに、ここに掲げた用語とその解説は、本書の目次とそのサブタイトルそのままなのです。
本書にはこの他に、元サッカー日本代表監督岡田武史氏と元ラグビー日本代表監督平尾誠二氏による対談「世界と戦うために」が収録されており、選手に望まれるメンタリティや判断力等について興味ある意見が交換されています。ただいまコーチ真っ只中の人にはたまらない内容ではないでしょうか。
きっと、本書を読み終えた後の貴方の顔は、一流コーチの顔になっていますよ。
(久米 秀作)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2003-01-10)
タグ:スポーツマンシップ
カテゴリ 指導
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勝利をつかむコンディショニングBOOK
坂詰 真二
本書の英語タイトルは「SPORTS CONDITIONING BOOK」だが、どうもこの“スポーツ・コンディショニング”という言葉を聞くにつけ本来の“コンディショニング”の意味を忘れてしまいそうで不安になる。本書にも「コンディショニングの解釈として、文字通り疲労や痛みを取るなど『心身の調子を整える』という『調整』としての意味でのみ使われることもあります」と一応断り書きはあるのだが、ここでは、積極的な体調管理方法、あるいは競技力向上を意図した一種のトレーニング用語として“コンディショニング”を定めているようだ。
しかし、もともと“コンディション”という言葉は我々の日常生活と密着したところで生まれたわけで、したがって本来は、「今ある快適な状態(コンディション)をそのまま維持する」とか、「自分の生命維持にとって最良と思われる環境を整える」といった比較的穏やかな印象を与える意味の説明が適当であると思う。つまり、もともとの“コンディショニング”という言葉には、マズローによる欲求段階説にもあるように、人間には、群れるといった集団欲求や理想を実現しようとするような高級あるいは積極的な欲求以前に、生命を守るために必要な衣食住環境を整えたり、これらを未来に向けて維持していこうとする安全保障欲求といった、いわば自らの“種”を保存するために最適な環境を整えるという意味合いが濃厚に含まれると考えてよい。ということは、最良のコンディショニングとは人間の生命力、簡単に言えば寿命を延ばすことであると言えるのではないだろうか。
今私の手元に『人間の強度と老化―人間強弱学による測定結果』(山田博 著 NHK放送出版協会)という本がある。この中で著者の山田博士は、身体の個々の器官や組織の強さを研究することによってその総合体である人間の寿命を予測できるとした。その結果、理想的なコンディショニングが維持されれば110歳までは誰でも生きられると予測したのである。
スポーツとコンディショニング
スポーツ活動は必ずしも種の保存を約束するものではない。また、必ずしも寿命を延ばすわけでもない、とも言える。たとえば、人間にはなぜ老化や寿命があるのかについては諸説あるようだが、その中に「エラー説」というのがある。このエラー説とは、細胞が分裂を繰り返していく間にその細胞内にエラーがたくさん積み重なって、それが結果的に老化を招いて死んでしまうというものらしい。実はこのエラーを増大させる原因は我々の周囲にたくさんあって、その中のひとつに酸素がある。酸素はご存知のように我々にとってエネルギーを得るのに必要不可欠なものだが、最終的には還元されて水となる。ところが、このとき還元されない酸素もあるようで、還元されないと過酸化水素等の活性酵素として体内に残存するのである。そして、この活性酵素がDNAや細胞膜を傷つけ細胞が死んでいき、延いては「死」に繋がるというわけである。とすれば、スポーツ活動時の大量の酸素摂取は果たして「コンディショニング」と言えるかどうか疑問が残る。
こう考えてみると、スポーツという行為とコンディショニングを整えるという行為は必ずしも同じ方向を向いた行為と捉えるのは難しい。むしろ、寿命を短くするかもしれないスポーツに対してコンディショニングという本来の寿命を確保する目的を持った手法を使って初めてスポーツの持つマイナス要因が補完されるというのが、スポーツ・コンディショニングの正しい解釈なのではないかと思う。こういった視点をもって本書を読み解いていくと、後半に筆者が「スポーツ疾患の予防と対応」や「リコンディショニング」の章を立てた理由がより一層理解しやすいと考えた。
本書には、休養期、体力期、技術期、戦術期、調整期等の各期におけるコンディショニングの方法が図表や豊富な写真を使って懇切丁寧に説明されている。この頃は喜ばしいことに、こういった専門的知識を取り入れて正しいトレーニングを身に付けようとする人々が増えてきたように思う。本書にも、そこのところを意識して本づくりに励んだ努力の跡が随所に見られる。本当に、スポーツを愛してやまない人間が書いた、まじめな一冊である。
(久米 秀作)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2005-08-10)
タグ:コンディショニング
カテゴリ スポーツ医科学
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戦術眼
梨田 昌孝
私が以前トレーナーとして関わっていたチームが昨シーズン日本一に輝いた。登り詰める階段が目の前にあるのにそこに至る扉を蹴破れず、伸び悩む苦しみにあがいていたあの頃。今では中堅だった選手たちがベテランの域になり、若手だった選手たちが中核選手になっている。代表のチームリーダーともなっているある選手と会う機会があった。再会を喜んでくれた彼は、選手自ら考え、取り組み、覚悟を決めるということが紆余曲折を経てやっとできるようになったと話してくれた。スタッフによる環境づくりがなければできないことだし、数ある要因の1つだが、これが最も重要な部分であることに間違いないだろう。
さて、本書「戦術眼」の著書は言わずと知れた北海道日本ハムファイターズの梨田昌孝監督である。そこにも「究極の育成法は、自分の努力で自身を成長させることなのだ」とある。そして「選手たちに自己成長の大切さを伝え、自ら伸びていこうとする選手にきっかけを与え、成長過程でのサポートをしてやること」が指導者の役割だと明言している。そして同時に選手にも求めている。たとえうまくいっているときでも、「試行錯誤と変化を恐れず」自分を進化させていくことが一流への道であり、それを目指せと。
言葉にすると当たり前のことで、強いチームはこのあたりがよくできている。冒頭にあげたチームもそうだろう。内容では負けていても、勝利をもぎ取るような展開を見せた試合などは、その強みの面目躍如といったところだった。しかし、これを現場で実現させることは生やさしいことではない。本書でも、そのためには指導者と選手との間で「普段からさまざまな方法のコミュニケーションをとり、組織が目指す方向性を理解できる感性が必要」だと述べている。
コミュニケーション。これはただよく話をするということだけがその方法ではない。さまざまなツールを利用し、ありとあらゆる方法を用いて行うべきものである。
シーズン開始時にこのような本が出ることはどういう意図があるのだろう。チームを2年連続リーグ優勝、そして日本一にも導き勇退したトレイ・ヒルマン監督の後を受け、著者はチームをさらに進化させることを約束している。
俺は近鉄バッファローズという他チームで選手として、監督として成長してきたが、このように野球を愛し、取り組み、考え抜いてきた。そして覚悟を決めて北海道にやってきた。さあ一緒に戦おう、とファイターズの選手やスタッフ、ファンに向けたコミュニケーションツールの1つとして、本書は強烈な存在意義を持つように感じる。
(山根 太治)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2008-07-10)
タグ:野球 戦術
カテゴリ 指導
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骨盤力 アスリートボディの取扱い説明書
手塚 一志
臍下丹田という言葉はトレーニング専門家の中でも馴染みがあるだろう。私も「肥田式強健術」についての書物の中で出会った。もう20年ほど前の話だ。創始者である肥田春充氏の、にわかには信じがたい超人伝説に鼻白み、深く追求する気にはなれなかったことを覚えている。しかし氏の唱える「腰腹同量正中心の鍛錬」には、身体の中心を意識し、全身をつなげるトレーニングのヒントが隠されていた。科学的な方法かといわれれば答えに窮するが、それ以降トレーニングの際には腹のあり方を意識するようになった。これは自分のトレーニングのみならず、トレーナーとして指導を行うときにも根幹にあり、工夫を重ねた要素である。
そもそも腹を練るということは武術の世界のみならず、日本人の所作の中に古くから存在していたのだろう。体幹トレーニング、コアトレーニング、スタビライゼーションなどアプローチ法は変わっても、同じところを求めているようにも思える。
さて、本書は野球界で有名な手塚一志氏の著書である。アスリート技能調整技師(パフォーマンスコーディネーター)という肩書きを持つそうだ。著者はアスリートの身体を操作するレバーは骨盤の弓状線だということを説いている。それにしても、「W-スピン」「フローティング・アクシス・スピニング」「クオ・メソッド」など独創的な言葉が飛び交い、面食らってしまった。著者は創造力とユーモアのセンスにあふれているようだ。
ただ気をつけなければならないのは、本書で述べられる解剖学や運動生理学的表現をそのまま理解しないこと。専門的な基礎をつくるためには、他書が必要だ。本書は、あくまでも身体を動かすイメージを、アスリートが理解しやすくするために解剖学的、生理学的表現で伝えていると考えたほうがいい。
うまくいっているアスリートは著者の理論に当てはまり、そうでない者はそこから外れていると捉えられる用例が多い。動作解析やボールの流体解析など共同研究者との科学的研究も行われているようだが、これが万人に共通するとの強引な断定はその結果から飛躍している。読者としては賛否両論がはっきり分かれるだろう。ただ、プロ野球選手から少年野球選手、そして他競技と、数多くのアスリートを指導する中で培われた指導法をアスリートがイメージしやすいように体系化し、指導実績を挙げていることは素晴らしいことである。アスリートが高いコンディションをケガのない状態で獲得し、自らの持てる力を最大限発揮することがコーチやトレーナーの役割なのだから、多くのアスリートがその恩恵を受けているのであれば言うことはないのだ。
それにしても、少し前はうねらない、ためない、ひねらない動きの古武術身体操法がもてはやされ、またこちらではためてうねる動きを説いている。幼いアスリートたちは氾濫する情報に混乱するかもしれない。
あえてアドバイスを送るなら、1つの理論を盲信せず、さまざまな理論から「いいとこ取り」をするくらいのつもりで学ぶこと。多様な考え方を仕入れた後に最も大切なことは、自分自身と向き合い、自分で感じ、考え、追求する姿勢だ。たとえば巷で騒がれているジャイロボールを投げることが名投手の条件ではないように、骨盤の使い方は重要な要素ではあるけれど、全てではない。ほかにもやるべきことはたくさんあるのだ。本書で著者も述べている。「選ぶのは君である」。
(山根 太治)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2009-03-10)
タグ:骨盤
カテゴリ 身体
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強くなる近道 力学でひもとく格闘技
谷本 道哉 荒川 裕志
著者の1人、谷本氏は空手の選手として稽古に取り組んでいた。現在ではスポーツバイオメカニクスや筋生理学の研究者である。また、もう1人の荒川氏はプロの格闘技の現役選手であり、研究者でもある。この2人が『格闘技通信』で連載した内容に加筆・修正を加えたものが本書である。
より効果的な突きや蹴りが、どのようなメカニズムで生まれているか、また現場で使われるさまざまな表現を力学的な観点から解説していく。
著名な選手、伝説的な格闘家の動きについても多くの記述があるが、著者らの「強くなるためにどうすればよいか」という執念に基づくものではないかと感じられた。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2009-06-10)
タグ:力学 トレーニング スポーツバイオメカニクス
カテゴリ スポーツ医科学
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ジュニアサッカーコーチングメソッド
平野 淳 Soccer clinic
ジュニアサッカーにおける指導について、コンセプトとともに、具体的な方法を紹介している。総論を述べた後、U-6、U-9、U-12という3つのカテゴリごとに、それぞれの特徴が示されており、各々に合致したトレーニング方法が25ずつ、合計75もの図解がある。
各年代が、発達段階において精神的・身体的にどのような状態であるのか、何を楽しいと思うのか、現場での指導経験を踏まえた実践的なメソッドである。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2009-08-10)
タグ:サッカー コーチング
カテゴリ 指導
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バレーボールコーチングの科学
カール・マクガウン 杤堀 申二 遠藤 俊郎 福永 茂 河合 学 篠村 朋樹
バレーボール発祥の地アメリカ。過去には素晴らしい成績を残していた。しかし、近年、国際大会で思うような成績を残すことができなくなっていたが、昨年の北京五輪では男子が金メダルを獲得し回復しつつあるといえる。著者は過去の黄金時代を支え、現在の日本バレーの礎を築いたといっていっても過言ではない理論を構築した方である。
本書を読み進めていくと、著者がかなりの量の学習をしていることが読み取れる。それは浅くもなく、深すぎることもなく現場で指導する際にちょうどよい内容で書かれている。ポイントはすべて運動学習に基づいて指導している点であり、押しつけではなく、気づき、提案によってスキルアップや、人間としての成長をしてもらいたいということが読み取れる。日本の指導者の多くがこれを学び実践しているが、成績としてなかなか残せていない。運動学習のポイントとなる、正しくフィードバックをするということができていないのではないかと考えられる。
技術や戦術が進歩し、1年前に間違いだったことが半年後には正しいとされることは珍しくない。そんな中でも、この本は変わらない基本を押さえているものであり、困ったときにはもう一度や見返していただきたい本である。写真や図説は少ないが、読めば読むほど共感することが増え、自分の中の創造力を刺激してくれる。
カール・マクガウン編
杤堀 申二(監修)、遠藤俊郎(翻訳代表)、福永茂・河合学・篠村朋樹(訳)
(金子 大)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2012-10-13)
タグ:バレーボール
カテゴリ 指導
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瀬古利彦 マラソンの真髄
瀬古 利彦
トップレベルの競技者だった著者が、現役時代に何を考え、練習に取り組んでいたのか。
「練習は、レースで勝つために行うもの」
なぜその練習をしているのか、あるいはなぜする必要があるのか。試行錯誤をしながら、自分で考えられるようになれば、世界に近づけるかもしれない。
世界を目指している競技者は、種目を超えてぜひ読むべき一冊である。
(澤野 博)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2012-10-13)
タグ:マラソン
カテゴリ 指導
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シコふんじゃおう 日本伝統のコアトレがすごい!
元・一ノ矢 白木 仁
日本伝統のトレーニングとして、今改めて見直されている「四股」について、相撲界で長く活動した著者がわかりやすく解説している。
最初は股割から。これが基本となる動作で、股関節を開いて膝を曲げる動きである。立った状態から、脚を伸ばす、そして床に両脚を開いて骨盤を立てるところまでできれば、股割の第一ステップが終了である。これから四股に挑戦していく。意外なのは四股は「腰を浮かさず、腹で上げる」と言っていること。膝の向き、視線に関しても、写真に細かくアドバイスがつけられており、間違えないような心配りがある。肩のこらないコラムも読み応えがあり、なぜ四股にこだわるのか、よくわかる。自分の身体と向かい合い、インナーマッスルのトレーニングをしていくのに最適なのだそうだ。
白木氏との対談、肩甲骨や股関節のトレーニングも収録されている。
元・一ノ矢 著、白木 仁 協力
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2009-07-10)
タグ:四股
カテゴリ 運動実践
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加藤健志コーチのプールサイドで速くなろう!!
加藤 健志
水泳選手のためのトレーニングやコンディショニングを集め、豊富な写真を用いて解説している。身体づくりに重点を置いており、足首や肩甲帯の柔軟性を高めるための方法や、ストリームラインをつくるための安定性を高めるエクササイズが示されている。インデックスが両端にあり、章ごと、部位ごとの2種類で目的とするトレーニング方法にたどりつける工夫がなされている。
泳法そのものにはとくに触れていないが、より速く泳ぐために必要な身体的特徴が、本書を通して浮かび上がってくる。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2009-12-10)
タグ:水泳 指導 トレーニング
カテゴリ トレーニング
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基礎から学ぶ! 筋力トレーニング
有賀 誠司
パーソナルトレーナー資格取得のために、理解を深める参考書としてもってこいではないだろうか。
まず、冒頭では筋力トレーニングの効果が述べられ、筋肉の基礎知識へと入っていく。現代はこんなところまで一般の人が知り得るのか…、と指導する側の質(知識)の向上の必要性を感じさせられる。
次のプログラム作成方法は、基礎事項、一般向け、選手向けと、対象や目的に応じた例が多種紹介されている。
そして、実技編では基本事項と実技に分かれ、豊富な写真はスタート、フィニッシュ、NG、そしてバリエーションや補助の仕方も載っている。一部位のトレーニングでも、マシーンやダンベル、チューブ、自体重など、ツールもさまざまに紹介されていて、多様なシーンでの指導にすぐ役立ちそうだ。もちろん自分のトレーニングのバイブルとしてもグッドだ。これで1600円は安い。
(平山 美由紀)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2012-10-13)
タグ:トレーニング プログラム作成
カテゴリ トレーニング
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基礎から学ぶ!ストレッチング
谷本 道哉 岡田 隆 荒川 裕志 石井 直方
本書では、ストレッチングについて6つのカテゴリに分けて紹介されている。30の部位別ストレッチング(静的)、ダイナミックストレッチング、PNFストレッチング、体幹モビライゼーション、コアコンディショニングがNG例などポイントを絞って解説している。
研究・文献に基づいた、専門的でありながらわかりやすい理論的背景により、仕組みを理解したうえでコツも示されているので、実際に行いやすくなるような工夫がなされている。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2010-05-10)
タグ:ストレッチング
カテゴリ 運動実践
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金メダルレストラン
花原 勉
著者のレスリングとの関わりや、食事に関することを中心に、理論ではなく、著者の視点に立った感覚で記載されている。
競技者はこのような感覚を重視するが、指導者はそれだけではなく、根拠に基づいたものが必要になる。それを忘れて感覚だけに頼ってしまっては、継続的に競技者を育成することは難しい。
スポーツ科学が現在ほど発達していない時期に、競技者が勝利を手にするために競技外でどのようなことに取り組んでいたのかがわかる、ある意味貴重な文献である。
(澤野 博)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2012-10-14)
タグ:食事 レスリング
カテゴリ 食
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筋トレまるわかり大事典
谷本 道哉
『トレーニングマガジン』誌で連載された内容を集約したもの。前半はトレーニング検定編として三択問題とその解説である。基礎的な問題から、考えさせる問題まで、さまざまな話題が取り上げらている。
後半はトレーニング・クリニック編としてQ&A方式で質問に答えている。トレーニングをしている中で生まれる疑問について、経験と研究成果に基づいて回答している。コラムの内容も、硬いものから柔らかいものまで多岐にわたっており、興味深い。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2012-10-14)
タグ:トレーニング
カテゴリ トレーニング
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スポーツ救急医学
輿水 健治
この本では競技スポーツの現場で、さらには海や山のレジャーで発生が予想される傷害に対する応急処置が網羅されている。
とくに、野球などでボールが胸に当たった際に発生する心臓震盪に関して一般の読者にもわかりやすく書かれている。
心臓震盪の発生メカニズムから現場での応急処置や予防に至るまで豊富なデータと著者自身の経験が紹介されている。
運動・スポーツを実際に指導する教師やコーチのみならず、子どもの安全なスポーツ環境をつくるため保護者にもぜひ一読していただきたい。
(村田 祐樹)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2012-10-15)
タグ:心臓振盪 応急処置
カテゴリ 医学
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裸足ランニング
吉野 剛
私も裸足好きの一人である。しかし、残念ながら今のところ、私の暮らしている社会では裸足のまま出歩くわけにはいかない。いくら裸足が身体によいことが立証されたとしても、家の周りを裸足で歩いたり走ったりしていては、ご近所の人にどう思われるだろうか。家族からも、恥ずかしいからやめてと言われるだろう。しかし、本書のような本が出ることで、裸足が1つのスタイルとして認知されれば、私も大手を振って裸足で出歩けるというものだ。
本書の中で、裸足ランニングの火付け役として「BORN TO RUN」(クリストファー・マクドゥーガル著・NHK出版)が紹介されている。しかし、その舞台は山岳トレイルのウルトラマラソン。一部の特殊な人たちのことのようで遠い存在だが、本書の舞台は近所の公園。これはいい。ぐっと身近だ。その気になったらすぐにでも実行できる。もしあなたの家族に小さな子どもがいるのなら、子どもと一緒に芝生のある公園で裸足になって遊んだらいい。それなら他人の目も気にせずに裸足の心地よさを堪能できるだろう。
私が裸足についていろいろと調べたのは大学の卒業論文を書いているときだ。そのタイトルは『各種履物からみた歩行における踵の動き』という。さまざまな靴を履いて歩き、下腿と踵の角度変化のパターンを比較し、履物が歩行に及ぼす影響を考えるという内容である。その際に基準としたのが、裸足歩行での角度変化パターン。つまり、裸足歩行のパターンと似ているか違っているか、という観点で履物の比較をした。つまり、「裸足歩行は最も自然で身体を傷めない理想的な歩行である」という前提であった。裸足や履物についてのさまざまな文献を読んだ影響だろうか。それ以来、自分なりに生活の中でできるだけ裸足になったり、シューズを選ぶ際にも裸足の感覚に近いかどうかということを重視するようになった。そんな縁もあってか、偶然、本書『裸足ランニング』が目に飛び込んできて即、購入。私が本書を画期的だと思うのは、屋外を裸足で走るためのハウツー本だということだ。裸足で走るためのトレーニング方法というのが面白い。しかし、正直に言って、少々残念な点があることも否めない。なぜ裸足ランニングなのかという強いメッセージが感じられない。たとえば「裸足ランナーへの10のメッセージ」。「自然に帰ろう」という言葉で始まっているが、最終的に「気持ちよい思いをして、なおかつ走力がアップするなんて、最高でしょう?」と締めくくられている。また別の箇所では、裸足ランニングを取り入れたらレースで大幅に自己ベストを更新した、というようなことが書かれている。これでは走力アップのためのトレーニング手法の1つでしかないという印象を受けてしまう。裸足になることで足が本来持っている機能が最大限に発揮され、それによってタイムが大幅に向上する可能性があることを示し、裸足のよさをアピールしたいのだということはよくわかるのだが。
ランニングシューズは走るための道具として発達してきたはずだ。仮にそれが、かえって足の故障を誘発しているとしても、たまたまその設計思想が間違っていただけで、「ランニングシューズは要らない」という結論に直結するとは思えない。もしかして、今後さらに研究が進み、より優れたシューズが開発され、本当に必要な道具として発展してゆくかもしれないのだ。
裸足について調べたり考えたりすればするほど、疑問がわいてくる。「裸足ならば自然で理想的な状態なのか」「そもそも自然な状態が理想的なのか」「ランニングシューズという道具は本当に不要なのか」といった問いを、私は卒論以来、未だに抱えたままである。先行研究や著者自身が行った実験の結果、さらに裸足ランナーの実例を紹介し、「『裸足=ケガが多い』は科学的根拠がない」と述べているが、「裸足=ケガをせずに速く走れる」ことや「全てのランニングシューズがケガを誘発する」こともまだまだ科学的根拠が乏しいと言えるのではないか。
私は裸足ランニングにも興味がある。しかし、どんなにそれに心酔しているとしても、こういうことを一人一人が問い続け、議論を深めなければ、一過性の流行で終わってしまうと思う。本書がランナーたちにどんな波紋を広げるのか。果たして裸足ランニングは普及するのか。これからが楽しみだ。
(尾原 陽介)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2011-02-10)
タグ:ランニング
カテゴリ 運動実践
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基礎から学ぶストレッチング
谷本 道哉 岡田 隆 荒川 裕志 石井 直方
ストレッチは多くの方が実践していながら、形だけ真似たり、なんとなく行ってしまうことが多いのも事実である。
本書ではストレッチングの有効性を理論的に説明しているだけでなく、実践する際の意識するポイントもわかりやすく解説されている。コツを押さえておくことで同じ動作を行っても、今までとは別の感覚を得られるはずである。新しいことをはじめることの喜びも捨てがたいが、今までやってきたことで違った感覚を得られる喜びもまた素晴らしいと思う。
本書は気になる身体の部位だけチェックすることもできる「辞書」のような一冊に仕上がっている。自分でチェックし実践することで日常のセルフケアにつながる。そしてストレッチを通してセルフケアできることで、自分の身体にいままで以上に関心を持つことにつながり、楽しさも増すかもしれない。そんな可能性を感じさせてくれる一冊である。
(磯谷 貴之)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2012-10-16)
タグ:ストレッチング
カテゴリ ストレッチング
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シコふんじゃおう
元・一ノ矢
「シコは羽目板の前でふめ」。昔の力士のシコは、上体がほぼ垂直に立っていたそうだ。取組の姿勢もそうで、戦前までは、あまり頭を下げずに上体はわりと起き上がっている力士が多かった。したがって、お互いの腰と腰の距離が近い。腰で相撲をとるから、うっちゃりや吊り出しが今よりも多かったそうだ。確かに、曙は引き落としに弱かったが、貴乃花は腰の位置が相手に近かったように思う。
「腰を割る」、これがシコの基本である。しかし、新弟子の多くは股関節が硬く、「腰を割る」シコができないと言う。「腰を割る」というのは、膝を開いて踏ん張り、腰を低くして強い外力に堪えられる構えをとることである。
もちろん尻は自然と締まった姿勢になる。正しい腰割りは、股関節まわりの筋肉を強化してくれる。昨今流行りのコアトレーニングが、日本伝統のスポーツでは、とっくの昔に実践されていた。そのことが、なんだか妙に嬉しい。
(森下 茂)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2012-10-16)
タグ:四股 相撲 トレーニング
カテゴリ 運動実践
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知っておきたいひざのケガ
玉置 悟 ジェームス・M・フォックス リック・マクガイア
一通り読むと、単なる専門書ではないことがはっきりわかる。箇条書きのように症状や原因だけを述べているわけではなく、痛みや動作などの表現が上手にたとえられていたりして小中学生でもわかりやすい表現になっていることが読みやすくしている。
ただ初版から時間が経っているので、手術の詳細や表現の一部が時代を感じる部分があるのは否めない。
それを含めても、わかりやすさという点で整骨院や整形外科、あるいはクラブの部室にでも1冊あると重宝する本だと感じる。
(河田 大輔)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2012-10-16)
タグ:膝 スポーツ医学
カテゴリ スポーツ医科学
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運動処方 健康と体力つくりのために
M・ポラック J・ウィルモア S・フォックス 広田 公一 飯塚 鉄雄 中西 光雄 石川 旦
いずれも著名な3人の専門家が、最新の運動・スポーツ科学の成果を、一般の人々に理解しやすいようにとの目的で著した書である。
運動処方については、ケネス・H・クーパーのエアロビック理論以来飛躍的な発展を遂げてきたが、本書は、そうした理論を基礎として個人の運動プログラムをつくるための総合的な知識を得る上で格好のテキストといえるだろう。
第1章では、まず現代人の生活様式からくるいわゆる「運動不足病」について平易に解説。さらにその対抗策として個人別運動プログラムの必要性を説いている。第2章では、「運動、健康の保持及び運動能力に関する研究成果」についてこれまでの多くの研究結果をまとめている。続く第3章では、医学的適性検査及び体力測定についての説明と実際的な方法を解説し、第4章で具体的な運動処方について述べている。また、第5章の「心臓疾患患者のリハビリテーション」は病院や学校などにおいても十分役立つものだし、第6章「運動と栄養」、第7章「特別留意事項」は、日常出くわすさまざまな問題についてのきめ細かな指針となっている。
一般の人々だけでなく、体育・スポーツの指導者にもぜひ読んでいただきたい書である。
M・ポラック、J・ウィルモア、S・フォックス共著
広田公一、飯塚鉄雄、中西光雄、石川旦共訳
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:1982-03-10)
タグ:運動処方
カテゴリ 指導
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聴き上手が人を動かす
清水 隆一
多くの人は上司や指導者といった立場の人から、経験や価値観を考慮しない「押しつけ」をされたことがあるだろう。私自身もそうした経験談をよく耳にする。
本書では「観る」「聴く」「行動を促す」を「人を動かすための三つの法則」と位置づけて、部下や選手、子どもたちに「押しつけ」の指示を与えて管理するのではなく、「意欲を引き出して、能動的にし、創造的でチャレンジ精神旺盛な人を育てること」へとつながるコミュニケーション法を具体例とともに紹介している。
私自身も、後輩・部下として上司や先輩の指導を受けた経験があり、最近はトレーナー・上司として選手や後輩の指導に当たることもある。それぞれの立場で相手に対して「なんでこの人は?」と疑問や不満を感じることも少なくない。
本書の内容を実践し、上下関係に限らず周囲とのコミュニケーションを改善するための手引きとしたい。
(西澤 隆)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2012-11-02)
タグ:コミュニケーション
カテゴリ 指導
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巨人軍のストレッチング
阿野 鉱二
以前、本誌(月刊トレーニング・ジャーナル)にて巨人軍の阿野コーチがストレッチングの本を近く出版するとお知らせしたが、よくまとめられてこの1月に出た。
プロ野球という世界はスポーツ界にあって最も進んでいると思われがちだが、ことトレーニングになると、そうともいえない。長い伝統を有する競技だが、逆にその伝統がある種のブレーキをかけていることもある。
巨人軍の阿野コーチは、プロ野球界にあって、積極的にトレーニング科学を採り入れ、個人的にも勉強熱心なコーチのひとりである。先に本誌で巨人軍のトレーニングを何度か紹介してきたが、それを考え実行しているのも阿野コーチである。デンマーク体操やブラジル体操にストレッチングやエアロビック・ダンス、最新マシーンを用いての筋力トレーニングなどを始め、日常生活における健康管理上のアドバイスも行っている。
その阿野コーチがまとめたこの本は、野球先取のためのものだが、他競技の人がここから方法を学び取ることはたやすく、また価値あることである。全体は「立って行うストレッチング」「座って行うストレッチング」「立ってパートナーと行うストレッチング」「フェンス(壁)利用のストレッチング」「座ってパートナーと行うストレッチング」「日常生活のためのストレッチング」「障害防止とリハビリテーションのためのストレッチング」「巨人の強筋運動」「打撃、投球前に行うストレッチング」の9章から成り、各ストレッチング・ポジションにつき解説、キーポイント、効果の3点が付され、適宜「ワンポイント・メモ」と「巨人軍選手の一言」がカコミで入っている。全頁2色刷で読みやすく、写真のモデルを定岡、篠塚、松本、島貫の各選手と筆者自身が担当しているのも親しみやすい。
ストレッチングは最近になって広く一般にも採り入れられるようになってきたが、こうしてプロの世界で実践されていることが、一冊の本になって、世に広められることはとても望ましいことである。野球は日本人にとって馴染み深いスポーツだけに期待される。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:1983-04-10)
タグ:野球
カテゴリ ストレッチング
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エアロビクス・ウェイ
ケネス・H・クーパー 原 礼之助
クーパー博士が『エアロビクス』を出したのが1968年。そして1970年には、『ニュー・エアロビクス』、1972年には妻ミリーとの共著『女性のためのエアロビクス』を刊行した。この過程で、エアロビクスという言葉は徐々に一般的なものとなり、今や体力づくりとしてエアロビクスの存在は確固たるものになっている。エアロビクスがダンスの一種という誤解もまだ多いが、それはやがて時が解決する問題であろう。
エアロビクスがこのように言葉としても、実践としても普及したその背景には、現代人の運動不足、成人病の増加、医療費の高騰、社会の高齢化などさまざまなものが挙げられるが、その過程で、人々が身体や健康に対する考え方を変え始めたことも見落とせない。
クーパー博士はその時代の移り変わりのなかで、1977年に著したのがこの『エアロビクス・ウェイ』である。ここには第6章「食事の重要性」という章があり、健康・体力づくりに関し、より広い視野に立った著者の姿勢がうかがえる。また第8章では「エアロビクスの精神的効果」も論じられ、次の9章ではQ&Aが扱われている。この本のあとクーパー博士は“Total Well-being”という言葉を用い始めたが、単に心肺機能の向上にとどまらず、生活、人生全般の改善・向上を目指す方向に変わりつつあるのである。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:1983-12-10)
タグ:エアロビクス
カテゴリ スポーツ医科学
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力士100年の診断書(カルテ)
林 盈六
日本の国技、相撲。日本の少年は必ずと言ってよいほど遊びや競技で相撲を経験している。大相撲の人気は多少の波はあっても、決して衰えるものではない。しかし、他の競技に比べ、包帯姿の故障者が目立ったり、力士生命も、また人生そのものも短かったりする。そして、それを「そりゃあそうだろう」と思い込んでしまう。だが明治時代、力士は一般人よりはるかに丈夫で長寿だった。
相撲ドクターとしてあまりにも著名な著者が一般の人によくわかり、しかもどんどん引きつけられるような文章で書き記した本書は、そのままスポーツ医学入門の書ともなっている。力士たちへの警鐘であり、力士の健康から真の健康を考える内容は、したがって日本人すべてに通じるものといえよう。とにかく面白く、またよくわかる。極めて医学的、科学的記述であるのに、学問的困難を感じることなく読み進める。相撲は関係ないと簡単に決めつけず、ぜひ手に取ってみていただきたい。
胸を患い5年間の養生経験を持つ著者の文章からは相撲や力士への愛情のみならず、深い人間への愛情が自ずと読み取れることも記しておきたい。
そもそもスポーツ医学あるいは科学とはあくまで人間を対象とするものであるから、必ず人間への愛情や人生への洞察が根底になくてはならない。単に勝利や記録のためのものであるべきではない。だからこそ、スポーツ医科学は人間性のすべてに関わってくるのだといえないだろうか。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:1984-05-10)
タグ:相撲
カテゴリ スポーツ医科学
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リラックス プレッシャーへの挑戦
バド・ウィンター 荒井 貞光 織田 幹雄
リラックスという言葉から、どちらかというと、消極的な感じを持つ人が多いかもしれないが、本書が解き明かすリラックスとは、積極的な姿勢、方法論としてのリラックスである。
最近は、試合での緊張状態から実力が出せなかったときに、プレッシャーという言葉がよく使われる。それとともにリラックスすることの重要性は、前よりも一層認識されてきている。だが、それにもかかわらず、プレッシャーやリラックスということに対し明確な指針を持って対処している人は少ない。たとえば、緊張している人、プレッシャーを受けている人に、ただ単にリラックスしろといっても、それはほとんど効果を持たないということはおわかりいただけるだろう。つまり、リラックスという状態をつくるにも、精神的技術、方法が必要なのである。
本書はその方法を、多くの競技の実例を入れながら、コーチが選手に説明するように、わかりやすく解説したものである。
本書の成立の背景には、第二次世界大戦中、アメリカ海軍飛行兵に試み、成功したリラックスの方法がある。戦闘という大きなプレッシャーのもとで心身ともに消耗してしまう飛行兵をリラックスさせる方法をみつけることは、当時火急の要請であったという。多額な予算がかけられ、本書の著者であるバド・ウィンター氏を中心に、心理学者なども参加して意欲的な試みが行われたのである。
バド・ウィンター氏は、戦後、このリラックスの方法を陸上競技に応用し、多大の成功を得るとともに、多くの世界チャンピオンを育てた。そして、陸上競技だけでなく、ほかのすべての競技で、この方法が有効なことを説いている。
本書のリラックスの方法は、最近注目されているメンタル・トレーニングの1つだと考えてよいだろう。リラックスというメンタル・トレーニングである。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:1984-12-10)
タグ:メンタル
カテゴリ 指導
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筋肉まるわかりバイブル
石井 直方
筋肉の基礎知識、トレーニング(初級と中・上級)、栄養、食事、雑学の分野で網羅し、100のQ&A方式、1ページに1項目で解説。筋肉について、それをどのようにトレーニングするかについて、また何が必要なのかについてわかりやすい言葉で説明されている。内容を踏まえて描かれたイラストが、ユーモアにあふれている。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2007-10-10)
タグ:筋肉 トレーニング 栄養 食事
カテゴリ スポーツ医科学
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スポーツトレーニングの常識を疑え
日本トレーニング指導者協会
タイトルでは「常識を疑え」、また目次をみても、「“ベンチプレス&スクワット信仰”を疑え」などと刺激的な言葉が並んでいる。しかし、内容的には理にかなったことを行おうというものであって、決して従来のトレーニング方法を単純に否定するものではない。前書きににあるように、新しいアイデアや仮説が生み出され、検証されていくプロセスは「教条主義とは無縁の、素朴な疑問や眼前の事実を大切にする、ある意味で『勇気ある』コーチによってのみ進められていく」(長谷川裕氏)という立場から、誤解されやすいトレーニング方法や理論に対して、正しい理解を促し、最新の考え方に触れてほしいというメッセージが込められている。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2007-12-10)
タグ:指導 トレーニング
カテゴリ トレーニング
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スーパーラガーメンはこうしてつくられた
小野寺 孝
スーパーラガーメンはこうしてつくられた小野寺 孝 部の歴史上最高といわれる猛練習をし、見事日本一に輝いた慶応義塾大学蹴球部(慶応ラグビー部)のフィットネス・コーチが著した書。副題に「慶応ラグビーの強さと栄光の秘密」とある。この種の本はやたら感情移入が強かったり、「見てきたようなニュー・ジャーナリズム」風であったりするのだが、この本は抑制がきき、冷静に、それでいて情熱が伝わる筆致で書かれている。それは、著者が慶応高校から慶応大学を通じてウィングの選手としてプレーしただけでなく、8年間フィットネス・コーチとして、科学性、客観性を持って取り組んできたからであろう。書名通り、慶応ラグビー部がどのような過程で強くなっていったか、フィットネス・コーチの視点で語られている。したがって、ラグビーの指導者にはすぐに役立つ内容が多いのは当然だが、何もラグビーだけにいえることではない、スポーツ・トレーニング全般におけるポイントが浮き彫りにされているため、どのスポーツの人が読んでも参考になる。
というのは、昭和59年度のシーズン、昭和26年以来34年ぶりに関東大学対抗戦グループで全勝優勝したときのフィフティーン中、高校時代に全国大会(花園)を経験した選手は1人もいず、主将松永(天王寺高)、右ウィング若林(小石川高)以外は全員付属校出身。伝統ある名門チームとはいえ、戦力的にはどちらかというと「ごくふつうの選手の集団」だった。大学選手権の歴史をみても、優勝は昭和44年(早稲田と引き分け両者優勝)以降なし(昭和53年は準優勝)で、名門といわれる割には、さほど“栄光”に輝いてはいなかったのだ。しかし、練習の長さ、すごさは名物だった。「弱いところをとにかくたたいてたたいて強くすることしか考えなかった当時の慶応ラグビーのあり方が、見直しを迫られる時期にあったことは確かだろう。当時はまさに、慶応ラグビーという意地だけで支えられていた時代だったのだ」(第2章より)
当時(昭和52年)、「黒黄会報」(OB組織黒黄会機関誌)に上田昭夫前監督が手記を書いた。そこで当時の慶応ラグビーについて5つの欠点を指摘している。
①基礎体力不足
②基礎プレーの甘さ
③気分的にムラが多過ぎる
④体を張った泥臭いプレーが見られない
⑤集中的に行う練習についていけない
思えば、5点とも克服されてしまっているわけだが、「練習によって勝つ」「あれだけの猛練習に比べたら、試合時間の80分は短いものだ」という“美風”に対し、首脳陣がこのままではだめだ、練習方法を改革し、意識を改革し、無敵の戦士をつくらねばという考えを抱き始めたのが昭和52年だったのだ。実際ウェイト・トレーニングがこの年から始められ(著者がコーチ就任)、是永選手という足は速いがひ弱い欠点のあったウィングが、別人のようにたくましくなった。この成果が15シーズンぶりに早稲田に勝ち、大学選手権準優勝につながった。この年度の卒業生は、記念に1組のウェイト・トレーニング用品を残していっている。
著者が「フィットネス・コーチ」になったのは翌年度からである。さらに、その年、ゲスト・コーチとしてオーストラリア協会公認コーチ、クリス・ウォーカーを迎えた。そうしたトレーニングによって、「慶応の全部員に、この『体力的必勝の信念』を芽生えさせていく」ことができたのである。
そこには、ラグビーという競技の特性の科学的分析、体力の具体的目標値(3.2kmを12分台、50m走を6.5秒以内、ベンチ・プレスを100kg3回×3セット。これができないと一軍に入れない)、トレーニング計画、プログラムの緻密さ、そして伝統の意地があった。
フィットネス・コーチである著者は、体育の専門家ではない。しかし、広告代理店の営業部長という職業柄、本場のアメリカン・フットボールの試合をよくみ、ノートルダム大学の練習も目の当たりにしている。さらに、前出クリス・ウォーカーの強い勧めもあって、オーストラリアでのコーチ・セミナーにも参加。こうした経験が、“科学的ラグビー”の大きな力になっていることだろう。誰しも最初は素人である。熱意があれば、現在のスポーツ医科学を現場に活かすことは、誰にでもできるのである(もちろん努力は必要だが)。スポーツ医科学は本来現場で役立つためにある。活用する気になれば、誰にでもできるのだ。
和崎元監督作成のスローガン3本のうちの最後は、「知性ある猛練習で、敵を凌駕せよ」だった。知性ある猛練習、これなくして日本一という高みには達し得ない。このインテリジェンスは、しかし、いうほど高みにはないのだ。そういっては失礼になるかもしれないが、特殊な人しか持ち得ないものではないということなのだ。
筆者は親切にも、“フィットネス・トレーニング”の実際を第13章で詳しく紹介している。また「付章」では「クラブチームのためのフィットネス講座」「高校生のためのフィットネス講座」と題し、具体的プログラムも挙げている。
「日本中のあまり強くないチームの指導者や選手の人たちに『おれたちもやってやろうじゃないか』と思ってもらいたくて、私はこの本を書いた」(あとがきより)
もとより、1つのチームが優勝するのは1人の存在のみによるものではない。監督、コーチ、マネージャー、OB、スポーツドクター、そして選手、全員の力によるものであるのは当然である。しかし、いかにもその全員が気だけ逸(はや)らせても実りはない。どうすればよいか、それが本書にある。
・主な目次
第1部 15人のスーパーラガーメンが新しい慶応ラグビー部を完成させた
第1章 「魂のラグビー」が蘇った
第2章 昭和52年当時の慶応ラグビー
第3章 慶応ラグビーに必要なもの
第4章 相手に勝つラグビーとは
第5章 フィットネストレーニングの登場
第6章 きびしいラグビーをめざす
第7章 上田−松永コンビの誕生
第8章 オーストラリア・ラグビーに学ぶ
第9章 コーチと選手はひとつの輪でつながっている
第10章 59年度のシーズンが始まった
第11章 大学日本一の座を目指して
第2部 ラグビープレーヤーはスーパーマンでなければならない
第12章 なぜ今、スーパーマンが必要か?
第13章 スーパーマンをつくる体力とは
第14章 スーパーマンをつくる体力トレーニング
第15章 スーパーマンにより近づくために
第16章 これであなたもスーパーマンになれる
(清家 輝文)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:1986-05-10)
タグ:ラグビー 慶応義塾大学 トレーニング
カテゴリ 指導
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東ドイツの水泳教程
ゲルハルト レビン 福岡 孝純 古橋 廣之進
知らないことを知るという。知れば知るほど、自分が知らないことを知らされる。比較的よく知っていると思っていても、そのことを人にわかりやすく説明したり、文章に書いたりするのは難しい。スポーツについても、仮に10年間やったところで、そのスポーツが「わかった」わけではない。経験を通じて得たものは語れても、体系立てていうのは大変なことである。
この本を読んで痛感させられたのは、水泳について、これほど緻密に、城を築くようによく書けたものだということだ。訳者もあとがきでこう記している。
「その記述は正確をきわめ、ブロックを一つひとつ積み上げるように精緻に行われている。非常に几帳面、かつオーソドックスになされている解説は、ややもすると視覚的な情報に慣れすぎているわれわれ日本人にとっては丁寧すぎる印象さえある。しかしこのようにしてのみ、客観的、かつ正確に運動の描写や解説が行われ得るといえよう」
全体317頁で図は154点。どちらかというと記述中心の本である。しかし、非常にわかりやすいし、「水泳」そのものが単にスポーツとしてのみでなく、人間の文化的所産として感じられるところまで描かれている。これは、著者の筆力の賜としたいいようがない。
著者は、東ドイツの現場で最先端にいるコーチで、日本でも出版された『東独の子ども水泳教室』の著者でもある。一言でいえば、この本はその著名コーチが書いた競泳をはじめとする水泳に関する専門書である。「とかく我が国のこの種の本が写真分析によるフォームや泳法などに関する形態的な記述で、長期的トレーニングの組み立てや構成が不足気味であるのに対し、本書は水泳のトレーニングを年齢や経験、パフォーマンスにより段階的に分類し、能力強化のプログラムを分析し、総合的、システマティックにとらえているところに特長がある」(訳者あとがき)。
確かに日本では、ビデオや写真やコンピュータなど視覚で捉える機材が豊富になり、ややもすると私たちは映像のほうがわかりやすいと思いがちである。しかし必ずしもそうではないし、むしろ逆に活字のほうがより正確、緻密にわかることもある。至難の技とはいえ、こうも優れたものをみせられるといかに自分が怠慢であるかを知らされる。
簡単に各章を紹介すると(主な目次の項参照)、第1章では東ドイツの水泳の現状、組織的関係と担当分野などについて、第2章では、水泳の生理・生物学的特性、トレーニングでのスポーツ医学面について、第3章では、有史以来の主としてヨーロッパに着目した水泳の歴史、その訓練法の発達について、第4章以下第7章までは競泳、飛び込み、水球、リズム水泳(シンクロナイズド・スイミング)の4種目における技術、基本訓練、指導法、トレーニングなどについて詳細に記されている。そして、第8章では、競技ではないレジャー・スポーツ、レクリエーションとしての水泳について、第9章ではドイツ水泳スポーツ連盟の競技規定についてまとめられている。
本書の全体を少しでも感じ取っていただくためにキーになる部分を引用しよう。
「『水泳の基本訓練』という概念は東ドイツで20〜30年前に生まれ、特定方法論的問題が基本訓練の目的、課題、内容、基本姿勢の中心となった。/水泳の基本訓練は水中でのスポーツ指導を目的とし、幅広い応用範囲(就学前、学校、競技、レジャーとレクリエーション、職場、水難救助)をもち、2段階に分かれて泳げない人や泳げる人に方向づけた教育を行う。/競技スポーツにおいても最高のパフォーマンスをつけるための長期的継続的構成は次のように決まっている。第1段階──基礎トレーニング 第2段階──強化トレーニング 第3段階──発展トレーニング 第4段階──ハイパフォーマンス・トレーニング(中略)基本訓練の第1段階には7歳くらいの子どもに対する競泳トレーニングの試みが入っており、これは第2段階(バッククロールとクロールキックの習得)へとつながる。長期的トレーニングでは第2段階のほうが内容的に中心となる」(第4章の2.競泳の基本訓練」より)。
いわゆるペリオダイゼーションの考え方である。東ドイツや共産圏諸国における理論と実際は少しずつ紹介されるようになり、それまでは、秘密のベールにおおわれているあまり、いろいろなことがいわれたものだが、こういった書が読まれることで、なぜ共産圏が強いのか、その計画性と段階的指導の緻密さに納得させられる。それは、共産圏だからできるということではなく、やりよう、考えようによっては日本でも十分に可能なことであろう。水泳関係者でなくともヒントが多く得られる本である。
主な目次
1. ドイツ民主共和国における体育とスポーツの分野での水泳スポーツの意義
若い世代の教育のために水泳スポーツが有する意義/水泳スポーツの種目とその位置づけ
2. 水泳が人体に及ぼす影響
生理学的および生物学的特性/水泳トレーニングにおけるスポーツ医学的特性
3. 水泳の歴史についての考察
人間社会における水泳の発達/水泳スポーツの発達/水泳基本訓練における指導法の発達
4. 競泳
泳法、スタート、ターンの発達/競泳の基本訓練/水泳の基本技能の養成(基本訓練の第1段階)/第2段階/競泳の指導法/競泳の基礎トレーニング
5. 飛び込みの基本訓練と基礎トレーニング
一般の飛び込み/飛び込みの基本訓練/飛び込みの基礎トレーニング
6. 水球の基本訓練
専門的な水泳技術/ボール技術/水球の専門技術の指導法/戦術の原則/水球の基礎トレーニングの注意
7. リズム水泳の基礎訓練
シンクロナイズド・スイミングとバレエ水泳の技術/シンクロナイズド・スイミングの技術的基本訓練/リズム水泳の指導法/リズム水泳の基礎トレーニング
8. レジャー・スポーツ、レクリエーションとしての一般の水泳
器具を用いない一般の人々の自由時間の水泳/器具を用いる一般の水泳/ユーモラスな水泳と飛び込み/複合競技/水中でのゲーム/一般の水泳の練習実施のための運営と方法上の注意
9. DDRドイツ水泳スポーツ連盟の競技規定について
一般競技規定/競泳の競技規定/飛び込みの競技規定/水球の競技規定/以下略
(清家 輝文)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:1986-10-10)
タグ:水泳 飛び込み 水泳 シンクロナイズドスイミング
カテゴリ 指導
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133キロ怪速球
山本 昌
現役のプロ野球選手、山本昌は、自らの野球人生を「悔いがある」と語る一方で、「1回きり」の心構えで過ごしてきたからこそ成功したともいう。
著者は、若いころ戦力外通告におびえながら選手生活を送ってきた。選手生活を通して、自らの持つすべての力を引き出して日々を過ごし続けてきたことが、やり直しがきかないプロ野球の世界での成功を導いた最大の要因であると語る。
成功するためには、運も必要であり、自分ひとりの力たけでは不可能である。成功を望む人が知りたい、うまくいく人といかない人との差はどこにあるのか。チャンスをつくるための準備には何が必要か。到来したチャンスを逃さないためにはどうしたらよいのか。といった様々な疑問をプロ野球の世界を通して語られている。
決して才能に満ちあふれ、期待された選手ではなかった。その証拠に、一年目に登板すらできなかった史上初の200勝投手でもある。どこにでもいる野球少年が、最年長完投記録をはじめ、様々な最年長記録ホルダーという、息が長い特別の投手になった理由に「鏡」「時間」「好き」「階段」「なじむ」「観察力」「平均点」といったキーワードを挙げる。それらのキーワードを掘り下げ消化することで、読者が生きていく上の知恵、道標となるに違いない本である。
(服部 哲也)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2014-03-06)
タグ:野球 投球
カテゴリ 人生
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中国スポーツマッサージと体育療法
駱 勤方 ベースボール・マガジン社
世界中には数多くの手技療法がありますが、人間の身体の仕組みは国々によって大きく異なるものではありません。目の付けどころというのは手技療法においてもある程度共通したものが多いというのが私の率直な印象です。ましてや歴史の古い手技になれば、エッセンスとなるものも長い歴史により精査されたものが残るのが必然だと思います。
理由づけや説明は異なったものであっても、実際に施術すべきポイントは洋の東西を問わないかもしれません。
中国スポーツマッサージの手法が紹介されていますが、特殊なものという印象はほとんどなくて、西洋のマッサージ技術と親和性が高く、誰にでも取り入れることが可能な方法ばかり。ツボという中国独特の概念がオリジナリティーを醸し出しますが、紹介されているテクニックは初心者でも使えそうなものになっています。
体育療法も中国風エクササイズと捉え気軽に取り入れやすいものばかり。ウォーミングアップやクールダウンに使えば、目先も変わって面白そうです。同じことばかりやってマンネリ気味なときに挑戦していただくと新鮮な気持ちで取り組めそうです。
イラスト入りの解説ですからとてもわかりやすいです。100ページ足らずですが重要なポイントは押さえられていると思います。トレーナーでも選手でも気軽にお読みいただけるでしょう。逆に体系的に勉強したいという方には不向きです。
(辻田 浩志)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2016-01-14)
タグ:中国 体育 マッサージ
カテゴリ スポーツ医科学
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35歳からのカラダルールBOOK
谷本 道哉
運動、食事、生活習慣の3つのカテゴリーに分け、Q&A方式で身体に関する正しい知識を紹介していく。35歳からの、と銘打っているのは身体に変化が起きそれを自覚しやすい時期なのに加えて、無理のない方法に着目してほしいというのもあるだろう。
運動編では「10回オールアウト」や、長時間のデスクワーク中30分に一度は立ち上がるか、クッションを使う、といったことが勧められている。
回答役の谷本氏も、若い頃の重さにこだわった筋トレを反省しているという。だが、無理のない新しいルールを実戦すればこれからを健やかに過ごせることがわかる。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2016-04-10)
タグ:トレーニング 食事
カテゴリ トレーニング
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表現スポーツのコンディショニング 新体操・フィギュアスケート・バレエ編
有吉 与志恵 秋山 エリカ
1人1人の状況や目標に合わせてどう指導していくか。ときには負担の掛かるポーズやパフォーマンスを許容せねばならないかもしれない。新体操やフィギュアスケートといった表現スポーツではとくにそういった葛藤が大きい。ならば、ケガが起きにくいよう、元の身体をコンディショニングしていこうとまとめられたのが本書である。
姿勢をモニタリングし、課題があればリセットを行った上でアクティブコンディショニングを行う。これは技術向上にもつながる。見本写真も新体操選手が行っているのでイメージしやすい。痛みのない状態で練習や試合に臨めるように、という著者らの願いが伝わってくる。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2016-04-10)
タグ:コンディショニング 新体操 フィギュアスケート バレエ
カテゴリ 運動実践
CiNii Booksで検索:表現スポーツのコンディショニング 新体操・フィギュアスケート・バレエ編
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自転車競技のためのフィロソフィー
柿木 克之
化学分野の研究開発を行ってきた著者が、その手法を用いて運動生理学の研究を自転車のトレーニングにどのように生かしたかをまとめた。まず自転車競技における「強さ」を定義し、代謝の基礎知識に触れた上で、パワーメーターを用いたトレーニングの有効性を導き出す。そしてトレーニング計画など具体的な内容に入っていく。
自転車競技に取り組み人にとって示唆に富む1冊であるとともに、効率がよく、効果は最大限なトレーニングの組み立て方を学ぶことができる。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2013-04-10)
タグ:自転車
カテゴリ スポーツ医科学
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わんニャンたいそう
谷本 道哉
運動経験の少ない人にストレッチやトレーニングの指導を行う際、とってほしい姿勢や「正しい部位に効いている」感覚を納得してもらうのは意外に難しい。
本書では身近な犬・猫にたとえることで、誰にでもイメージしやすくしている。もちろん人間のモデルの写真も豊富に掲載されている。
1~4章前半は子どもから大人まで気軽に楽しく取り組める基礎的な内容、4章後半と5章はもう少し鍛えたいというニーズを満たす内容だ。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2015-02-10)
タグ:体操
カテゴリ 運動実践
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筋トレマニア 筋トレ用語事典
有賀 誠司
トレーニング指導を牽引する有賀氏が、トレーニング用語を整理し、「筋トレマニア」たちにも満足できる解説を行った。時代を超えて親しまれ、また研究が進み新たに生み出された中からピックアップして五十音順に並べた用語は、マシンや機器の名称、トレーニング方法や原則、スポーツ医科学用語、人物まで多岐にわたる。1つ1つの言葉の意味を正しく、詳細に説明するに留まらず、そのトレーニングを行う上での注意点、安全に行う工夫、上級者のための応用編といったプラスアルファがあるのが特徴だ。写真や図、コミカルなイラストも適宜添えられ、堅苦しくない。本書を片手に実際に動いてみようという気にさせられる。実践して初めて理解できることもある、とわかる。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2016-09-10)
タグ:用語 トレーニング
カテゴリ トレーニング
CiNii Booksで検索:筋トレマニア 筋トレ用語事典
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ランナーのためのメンテナンス・トレーニング 競技力向上につながる「ケガしない体づくり」
中本 亮二
近年トレーニングが変わりつつあります。パフォーマンス向上を目的として身体を鍛えるという点においては今も昔も変わりありませんが、トレーニングそのものよりもトレーニングを行う前の段階が飛躍的に変わってしまい、そしてまだこれからもさらなる進化が期待できそうな気がします。「トレーニングを行う前の段階」とは「いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どのように」という5W1Hのようなトレーニングの意義を細かく整理したうえでもっとも効果的なトレーニングを実践されているということです。とにかく人一倍鍛えるという姿勢そのものは悪くありませんが、ケガのリスクや鍛えるべき選手の状態とトレーニングの内容、目的に対する有効性など多くの問題点を考慮することがなければレベルアップの度合いに疑問符が付きます。近年はそういった問題を直視することでトレーニングの成果が問われる時代になったということなのでしょう。
前置きが長くなりましたが、本書は「ランナーのためのメンテナンス・トレーニング」というタイトルにまず対象者や目的が盛り込まれています。しかも「パフォーマンス向上」という包括的なものではなく「ケガをしない体づくり」という絞り込みが表紙からも伝わります。スキルアップなどを目的とした専門的トレーニングの土台という位置づけで「メンテナンス・トレーニング」の必要性を説かれています。ケガをしたら専門的な技術も水泡に帰すことは誰もが知っていることではありますが、それを具体的に示すことは意外に難しいことなのかもしれません。それこそが本書の意義ではないかと思います。しかもこういった説明は「はじめに」という序章に集約されています。さらにランナーの身体づくりに必要な項目の整理も本編に入る前に書かれています。お読みになる際はぜひ序章をしっかりお読みいただき、ご理解いただきたいです。そうすれば本編で紹介されるエクササイズの数々がブラッシュアップされたものになることでしょう。
本編で紹介されている多くのエクササイズには以前から知っているものもありました。ただそれぞれのエクササイズには「目的、回数、頻度、タイミング」が必ず示されています。これが新たな価値を付与していると思います。今まで何となくやっていたトレーニングの中にもランナーが抱えている問題点の解決の糸口になりうるものに変わっているかもしれません。目的がハッキリすれば自ずとやり方も変わってくるでしょう。傍目から見たら今までと同じトレーニングに見えても、当事者には今までとは全く違ったことをしているくらいの意識が持てるでしょう。
あくまでも本書は「ランナーのための」という限定がかけられてはいますが、お読みいただき本書の主旨が理解できれば、この考え方はあらゆるスポーツにも共通するはずです。きめ細かく紹介されたエクササイズも読みごたえがありますが、まずは冒頭29ページまでをしっかりお読みいただければと思います。
(辻田 浩志)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2021-10-23)
タグ:トレーニング ランニング メンテナンス
カテゴリ トレーニング
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名監督の条件
「すごい」という陳腐な言葉で表現したくない“名監督”たちの条件。どちらかと言えば「おもろいこと考えとる、おっさんたちや〜」がしっくりくる。その“おもろさ”は、実はスポーツでは一番大事なことかもしれない。特に、京大アメフト部の水野弥一監督は、その“おもろさ”では最上級かもしれない。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2001-07-10)
タグ:監督
カテゴリ 指導
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ランナーのためのメンテナンス・トレーニング 競技力向上につながる「ケガしない体づくり」
中本 亮二
陸上経験者であり、JISS などで多くのアスリートをサポートしてきた中本氏が、「陸上競技マガジン」の連載に加筆の上まとめた。
いい成績やいいタイムを出すには練習が、練習をしっかり行うにはケガの予防が欠かせない。筋トレなどの前に、痛みをかばうなどでついた悪いクセの修正、日々の疲労の軽減、本来の機能の回復に着目。ランナーに必要な 6 要素に応じたメニューを、ランニングの前・後・オフ日用、さらに初級・中級・上級に分けて紹介している。写真が豊富でわかりやすい。これらをコツコツ続けることで、いいサイクルが生まれる。本書をもとにセルフで「メンテナンス」できそうだ。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2021-03-10)
タグ:トレーニング ランニング メンテナンス
カテゴリ トレーニング
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強い打球と速いボール
George Brett 比佐 仁
メジャーリーグで23年間プレーをし、数々の輝かしい記録を残したジョージ・ブレッド氏に、バッティングやピッチング法、またそれを実現するためのパフォーマンスについて比佐 仁氏がインタビューし解説。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2002-09-10)
タグ:野球
カテゴリ 指導
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ラグビーのフィジカルトレーニング 競技力が上がる体づくり
太田 千尋 臼井 智洋
どんな活躍をしたいのか? という「パフォーマンスゴール」を軸に、自分に必要な要素を積み上げていくのが成長の一番の近道だという。本書の構成としては、正しい姿勢や動きを身につけるメディカルプレップ、ラグビーに必要なパワー・スピードを伸ばすフィジカルプレップ、体力をラグビーのプレーにつなげるスキルプレップと段階を踏んで解説しているが、スキルプレップから戻る形で自分が取り組むべきメニューを辿っていくこともできる。1試合通じて力を発揮し続けるコンディショニングにも触れる。すべてのメニューがフルカラーの写真付きで紹介されており、わかりやすい。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2021-10-10)
タグ:ラグビー
カテゴリ トレーニング
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コアビリティトレーニング
山下 哲弘 山田 ゆかり
“コアビリティ”とは何か
本書のタイトルは『コアビリティトレーニング』である。では、“コアビリティ”とは何か。まえがきの部分に「『コアビリティトレーニング』というのは、全身の改造トレーニングと考えて下さい。(『コアビリティ』とは『コア』が可能にする動きという造語)」とある。つまり、私の推測では「コア(Core)芯」と「アビリティ(Ability)能力」を掛け合わせた造語とみた。では、ここで言う“コア”とはどこの部分を指すのか。これについて筆者は「もう一度強調したいことは、『コアビリティ』の『コア』=『骨格』であるということ」と述べている。そして、さらに「コア=骨格」の骨格とは“背骨”を指すと強調している。このようにすべての動作の中心を背骨と捉えて、背骨中心に上肢と下肢を一体的に鍛えることを目的としたトレーニング法は、一般的には“コアスタビライゼーション”とか“スパイナルスタビライゼーション”と呼ばれ、最近特に注目を浴びてきたトレーニング法である。しかし、原理的には決して目新しいものではなく、私は従来から行われている“ボディバランスのトレーニング”の一種と理解している。筆者も、前述したが「『コアビリティ』とは『コア』が可能にする動き」と述べているように、背骨のアライメントを崩すことなく動けるように背骨を中心とした周囲の筋肉群をトレーニングすることが、結果的にボディバランスのよい動きを生み出すと考えているようだ。
一元的トレーニング法
今、私は本書のトレーニングを一種の“ボディバランストレーニング”と理解していると述べたが、ここで読者の理解を得るために私のイメージするボディバランストレーニングの具体例をいくつか挙げておく。まず基本としては①手押し車(腕立ての姿勢から両足をパートナーに抱えてもらい、両腕で歩く)、②バービー運動(直立姿勢から両手を地面に付き、同時に両足を後ろに投げ出して腕立て姿勢となり、再びもとの直立姿勢にすばやく戻る)、③倒立および倒立歩行、等。さらには、トレーナーあるいはコーチの指示に従って上下左右に動くトレーニングも高度なボディバランストレーニングと考えてよい。この種のトレーニングは、特に球技系では実際場面に動きが近似し実戦をイメージしやすいことから、従来から大いに実施されてきた。だから、特に目新しいトレーニング法ではないと申し上げたわけだ。しかし、トレーニングの順序という点から考えてみると、今まではまずウエイトトレーニングによって個々の筋肉を鍛え、筋力アップをしてから徐々に全体系、神経系トレーニングへというトレーニングの細分化が一般的であった。その点、本書に紹介しているコアビリティトレーニングは基礎的な筋力アップと実戦的動作に直結した筋肉の機能アップを同時に実現する一元的な方法を特徴とする。なおかつ器材をほとんど必要とせず、自らの体重のみを負荷として効果を得られる手軽さも魅力である。決して、ウエイトトレーニングの有効性を否定するわけではないが、トレーニング器材が十分でないチームやより選手の理解を得やすいトレーニング法を伝授したいと望むコーチ諸氏には、こういったトレーニング法が紹介されることは朗報と言えるのではないだろうか。
また、本書の後半には著者を師と仰ぐ日本人初のNFLプレーヤー河口正史氏自らがモデルとなって具体的なトレーニング法が写真で示されていたり、Q&A方式でこのトレーニング対する疑問点が多角的に検討されているなど実用性の高い配慮が随所に見られる。ぜひ一読を薦めたい。
(久米 秀作)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2005-03-10)
タグ:トレーニング
カテゴリ トレーニング
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バレーボールのフィジカルトレーニング 競技力が上がる体づくり
佐藤 裕務
トレーニングは、目標に合ったものを正しく行ってこそ効果が出る。強豪の大学バレーボール部でストレングスコーチを務める佐藤氏が、パフォーマンスアップにつながるトレーニングを解説する。また、トレーナーがバレーボールに起こりやすいケガの予防トレーニングを紹介する。豊富な写真はもちろん、シーズンのいつどのくらいやればよいかの指針もあってわかりやすい。さらにスポーツ栄養士がトレーニング効果を得るための食事の基本を、監督やコーチがチームづくりの面からトレーニングの重要性を説く。まさにスポーツ医科学チームに支えられているように感じる一冊だ。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2021-12-10)
タグ:トレーニング バレーボール
カテゴリ トレーニング
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筋肉をつける、使う、ケアする
谷本 道哉
B.B.MOOK 410 のスポーツシリーズNo.289。筋肉を「つける」筋トレ、「使う」基礎的トレ、「ケアする」コンディショニングなど、強くて使える快適な筋肉を作る3つのステップを楽しいイラストと写真で紹介。また、コアトレーニングについても掲載。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2006-08-10)
タグ:トレーニング
カテゴリ トレーニング
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アスリートのためのコアトレ 100のエクササイズ12の処方箋
有吉 与志恵
今までの骨格、筋肉の癖をリセットし、新しいからだ使いをイメージしながら、からだの位置関係や動きを修正する「筋の再教育」トレーニング。基礎知識、プログラム、ケーススタディなどわかりやすく紹介。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2006-11-10)
タグ:コアトレーニング
カテゴリ トレーニング
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瀬古利彦 マラソンの真髄
瀬古 利彦
「君なら世界一になれる」
「瀬古、マラソンをやれ。君なら世界一になれる」「ハイ」
この会話は、後に瀬古の師となる中村清との初対面の場で交わされたものだ。漫画のようだが、これを機にマラソン選手としての瀬古利彦が誕生した。漫画といえば、そもそも瀬古が走り始めたのも中学時代に見た「巨人の星」で飛雄馬の父ちゃんが「ピッチャーは走れなければ駄目だ。地道に努力しろ」と言ったのを信じたのが始まりらしい。一見、些細な会話の中に人生を大きく展開させるキッカケが含まれている。
ところで、当時はインターハイチャンピオンでも大学浪人するのが珍しくない時代だった。1974年、福岡インターハイで中距離(800m、1500m)2冠しかも2連覇という瀬古でさえ、その例外ではなかった。浪人中、アメリカに陸上留学をするが「練習を指導してくれる先生がいて、言われた通りに練習をこなしさえすれば、大きな舞台で結果を残すことができた」順風満帆な高校時代と違い、「信頼できる指導者」のいない留学先での生活は「思い出したくもないほどつらい毎日」へと一変する。そして「何を信じたらいいのかわからず、(中略)走ることがつらくて、つらくて、たまらなく」なってしまったという。
失意の中で帰国し、二度目の受験で早稲田大学に入学を決めた瀬古が、大学でも中距離で頑張ろうと思いつつ、競走部の合宿に参加した初日に冒頭のような会話がなされた。人生にリセットは利かないが、リスタートなら何度もあり得るのだ。
マラソン選手としての瀬古の活躍は多くの人が知るところだろう。本書には、それを支えた練習や、幻に終わったモスクワオリンピック代表から立ち直る過程、ケガからの再起、などなどについて詳細に語られている。「瀬古利彦の百カ条」と、当時の練習メニューまでついた豪華版だ。
どう読むか
この「走りの哲学」書をどういう気持ちで読んだらよいのか? これが問題だ。まず、書評するつもりで読んでみる。すぐに挫折した。本が付箋紙だらけマーカーだらけになってしまった。
次に現役のマラソン選手になったつもりで読んだ。瞬時に挫折した。競技に対する真剣さが違いすぎる。
今度はミーハー親父(死語かも?)となって読んだ。これなら読了できるかもしれない。40歳代以降の人にはたまらなく懐かしい面々が現役選手として登場してくるのだ。また、現在では当たり前になっているが当時はまだ導入されていないか珍しかった事柄もたくさん出てくる。マラソンレースにおけるペースメーカーの存在などはよい例だろう。他にも、アスレティックトレーナーやストレッチングという概念も草創期であり、皆手探りで実施していたし、スポーツドリンクに至っては運動中に水を飲むなど根性がないからだ、という極端な反感の態度を表す者も当時はいた。ストップウォッチも、ラップ計測機能がついたものはほとんどなく、腕時計タイプのものなど夢のまた夢のような時代だった。
しかし、その分「時計に頼らず、体内時計を研ぎ澄まし、ペース感覚を磨く」ことができる時代でもあった。科学的知識の浸透や便利な機能の開発はよいことだが、利用する主体である選手の知恵のほうが重要であることに、今も昔も変わりがない。
人生読本として
マラソンを人生にたとえることがあるが、マラソン選手の人生が書かれた本書は、人生読本としてそのまま十分に使える。たとえば「報われないケガはない。人間は駄目だと思ったときが始まりであり、乗り越えられない壁は与えられない」という一節の「ケガ」を“挫折”や“試練”に置き換えてみるとすぐわかる。
本書は人によっていかようにも読める内容だが、現代のマラソン選手や長距離選手に、早くオレたちを乗り越えろ、という厳しくも温かい愛情が最も大きなメッセージとして込められている。そして瀬古自身が新しい何かにリスタートをする決心が込められている一冊なのではないかと思う。
(板井 美浩)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2007-04-10)
タグ:マラソン
カテゴリ 指導
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平井式アスリートアプローチ 北島康介育ての親が明かす心の交流術
平井 伯昌
コーチとはいかにあるべきか。北島康介選手を始め、数々のトップスイマーを育成してきた平井氏が、日々どのようなことを考えているかをまとめたもの。水泳に情熱を注ぎ込み、スポーツバイオメカニクスなど科学的な知識や歴史小説、深夜に及ぶ水泳談義など、あらゆる分野や人から吸収しようという姿勢を示し続ける。なおかつ選手と腹を割って向き合う。選手たちがハードな練習ができるのは、コーチとの信頼関係があってのものである。
コーチは、これまでの経験、記憶、学んだことをもとに、ひたすら考えつづける。プールサイドを歩きながら考えを整理していくこともあるそうだ。そこから導かれる結論を、わかりやすく伝える。それを受けて選手は結果を出すのである。コーチングは生半可な覚悟ではできないことがよくわかるが、平井氏は「コーチングは楽しい」と締めくくっている。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2009-11-10)
タグ:水泳 コーチング
カテゴリ 指導
CiNii Booksで検索:平井式アスリートアプローチ 北島康介育ての親が明かす心の交流術
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身になる練習法 柔道 基礎から心技体を鍛える稽古
石田 輝也
著者は強豪・大成高校柔道部監督であり、選手としても日本トップクラスの成績を残した。大学や社会人カテゴリーで花開くための幹や根となる稽古をまとめ、ひろく紹介する本書。基礎練習は地味で苦しいものが多いが、どのメニューもなぜ必要か解説されているので選手も頑張りやすいだろう。準備体操だけで一章分費やされ、また曜日別の練習メニューの組み立て方も解説されており、現場に取り入れやすい。寝技や立ち技だけでなく、トレーニング項目の写真もすべて大成高校の部員がモデルになっており、この年代に無理のないメニュー構成になっている。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2017-08-10)
タグ:柔道
カテゴリ 運動実践
CiNii Booksで検索:身になる練習法 柔道 基礎から心技体を鍛える稽古
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バスケットボールの教科書 4 指導者の哲学と美学
鈴木 良和
ジュニア期のコーチングの専門家である鈴木氏による「バスケットボールの教科書」シリーズが最終巻を迎えた。これまで取り上げてきた技術論やチームマネジメントなどを踏まえ、この巻では指導者としてあるべき姿や美学を解いていく。とはいえ、今ある環境とメンバーで最も効率のよい練習メニューの選択や、スタッツ(データ)の客観的な分析、選手の意欲をいかに引き出すかなど、内容は基本的かつシンプルだ。だが、これを実践するのは簡単ではない。選手と同じくコーチにも五段階の成長過程があり、第五水準の「偉大な経営者」たる指導者には謙虚さがあるという。鈴木氏自身も第五水準の指導者でありたいと思っているそうで、決して押しつけないが読者の心を動かす力のある文章からそれが伝わってくる。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2017-09-10)
タグ:バスケットボール 指導
カテゴリ 指導
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競技力アップのフィジカルリテラシー キッズ・ユース期における動き&身体づくりの理論と実践
小林 敬和 森 健一
かつてはプレイヤーとして高い能力を有した者や競技成績が優秀だったものが指導者となり、彼らが持つ経験やノウハウを選手に与えるという指導者像が当たり前でしたが、近年の傾向としてはプレイヤーとしてのスキルと指導者としてのスキルを別のものとして捉える傾向が強くなりつつあります。もちろん実際に経験したスキル自体は否定されるべきものではありませんが、それ自体普遍性があるともいえず、チームや個々の選手に等しく当てはまるものではありません。とりわけ少年少女期は身体的・精神的に成長途上であり、彼らの成長を促進するという役割がスポーツに求められます。
本書はただ「勝つ」ということをスポーツというものの中心的な要素として据えるのではなく、人が人として健康に過ごし、スポーツという身体活動を通じて心理的・社会的に豊かになるための指導法が「フィジカルリテラシー」であると受け止めました。本書での「フィジカル」は、あくまでも身体活動という手段として捉えています。そして目的は、身体を、心を、考え方を、社会性を育むための取り組みであるとします。この考え方を強く意識してこそ、各論としてのエクササイズが生きてくるものだと感じました。おそらく理念ともいうべきここの部分が欠落すれば、現場で少年少女を指導する際に難しい選択を迫られたとき、大切な判断基準を失いそうな気がします。
正直に申し上げて、読み始めでは後半に掲載された具体的なエクササイズにのみ興味を持ちましたが、読むにつれてそれでは筆者の意図することが伝わらないと感じ始めました。こういった理念にのっとり、新しい時代のコーチングは身体能力や競技能力をアップすることが一番の目的とするのではなく、あくまでも「子供たちの成長」の一手段としての位置づけであることがはっきりと伝わります。「技術を教えてやる」というのではなく「子供たちの成長や時代の変化に対応するコーチング」という一文が本書全般に通じる考え方なのだと思います。
もちろんQRコードを利用して動画でエクササイズを見せる手法は今風で理解しやすいです。バランス、リズム、タイミング、フレキシビリティ、スタビリティ、モビリティという6つの要素を鍛える数多くのエクササイズは、鍛える目的がしっかり理解できるので納得したトレーニングで効果に直結しそうな印象が残ります。何となくやるトレーニングとは差が出るように思います。
少子化が問題となる昨今、健全なる青少年の育成には、スポーツを楽しんでみんなでやれる環境が不可欠な要素だと思います。そしてそれが一部の子どもだけではなく、多くの子どもたちにスポーツを楽しむ文化として広がることを願うばかりです。
(辻田 浩志)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2023-05-10)
タグ:フィジカルリテラシー
カテゴリ トレーニング
CiNii Booksで検索:競技力アップのフィジカルリテラシー キッズ・ユース期における動き&身体づくりの理論と実践
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バスケットボール ロバストシューティング
鈴木 良和
むかし部活でバスケットボールをしていましたが、毎日お昼休みは体育館でシュートの練習をしていました。だいたい6割以上は決めていたんですが、いざ試合になると成功率はかなり落ちました。中学生だったので意識も高くなくて先生に言われるがままに練習していたにすぎません。初心者だったのでそれはそれでよかったかもしれませんが、本書を読んでみると試合になるととたんに成功率が落ちる原因が理解できました。
「ロバスト」とは堅牢性であったり頑強性という意味ですが、外乱を受けても挙動が安定していたり、外部からの影響を受けないという意味で使われています。バスケットボールのゲームではディフェンスがシュートなどの攻撃を妨害するのが前提なので、ディフェンスなしでシュートの練習をしていても試合で決められるはずもなかったということ。
「大切なのは外乱因子に対する乱れに強いシュートの習得」と表紙に記されている通り、妨害されることを前提とした練習方法が本書の骨子です。気持ちよくプレーさせてもらえないという点で共通する野球からは、イチロー選手が何を考えて練習していたかも紹介されています。あらゆるスポーツでもレベルが上がればそれだけ考え方を変えていかないと通用しないという点では練習方法だけではなく、まず考え方から改める必要があることを教えられました。具体的な練習のプロセスもわかりやすく、段階を踏んだうえで徐々にゲームで使える技術に高めていくという点で、プレイヤーだけではなく指導者の方にも是非お読みいただきたいです。解説の多くは写真が主で一つ一つの項目でポイントを示してくれるのはありがたいです。理想的なのはチーム全員が本書を読まれ、意識の部分や具体的な方法を共有されることだと思います。
(辻田 浩志)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2024-11-18)
タグ:バスケットボール シュート
カテゴリ 運動実践
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